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神力の少年兵  作者: 夢野楽人
第二章 動乱編

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祝勝会

「勝利と豊かな収穫を祝って、乾杯!」

「かんぱーい!」


 俺達はピラミッド基地の外で、祝勝会を開いていた。

 帰ってくる前に、志乃に連絡をいれたので、用意してくれてたようだ。

 会場は広く料理はバイキング形式。好きなだけ取れるのはいいが、並べられた料理は瞬く間になくなっていく。みんな、かなり食うからな。


「さあ、ドンドン焼くであります。バンバン作るであります」

「了解です! 月城隊長」


 炊事部隊は大忙し、椿は張り切っていた。

 農作物の収穫も滞りなく終わったようで、基地に山積みされている。

 皆が頑張ってくれたおかげで、もう飢える心配はないだろう。分捕り品もあるしな。


「お姉ちゃん達、食べて、食べて!」

「……え、ええ」

「僕ちゃんたち、美味しい? もう怖い人はいないからね」

「うん!」


 傭兵団のアジトから救い出した者達を、天女団の年少組が面倒を見ていた。

 天真爛漫で人懐っこく、誰にでも優しく接するので、警戒心は薄れていく。

 まだ戸惑っていたようだが、乱暴してた男達はもうおらず、まわりは女だけなので少しは安心したようだ。

 少しずつでも、体の傷と心の傷を癒やしてほしい。身の振り方は後後。



 まず俺は大隊長の志乃と静香をねぎらう。二人は一緒にいた。

「志乃、収穫作業と防衛任務ご苦労だった。祝勝会の準備にも感謝だ。静香も全隊指揮をよくやってくれた」

「はい、司令」


 志乃は喜んでいたが、静香は浮かぬ顔をしていた。


「了解……と言いたいけど、私は何にもしてないわよ。現場指揮は天音がやったし、基地制圧も各部隊が速攻で決めちゃったし、美味しいとこはアラシが持ってくし、私がやったのなんて物資の積み込みと船の移動くらい。全然活躍してないわ」


「はっはははは! それが指揮官というものだ。もう小隊長じゃないんだから、前線で暴れるのは部下達に任せろ。静香は全体を見て、皆を生かして帰す立ち場なんだ」


「うっ、そう言われると返す言葉がないわね」


「これは、私が行っても暇だったでしょうね。最前線に立つことがなくなるのは、少し寂しいですが、仕方ありません。まあ、静香の気持ちもわかるけどね。くっくくくく!」


「勝っても、負けても不満は残るもんだから、自分を納得させて今日は楽しめ。明日からはまた、次の戦略を練るからな」

「分かったわ」「了解です!」


 俺は二人から離れて、留守組を中心に声をかけていく。陰の立役者だからな。


 部下を労うのも総司令としての役目……と言いたいとこだが、俺に酒を勧めてくるアホがいるので、逃げ回っているのだ。


 紅美と飲んべえ友達で、弥生も混じって面白がっている。宴会の度にこれだ。


 今の俺は未成年だっつうの! フィクションでも飲んで酔っ払ったら、垢BANされるわい!


 これを察してサッと人垣をつくり、俺を隠してくれる仲間達もいて助かっている。

 昔の大男だったら隠れようはなかったな。


 今回の襲撃で分捕った物は、戦艦計十隻と武器弾薬と大量の燃料や物資、さらに敵が溜め込んでいた金品があった。

 船体外部にコンテナを無理矢理くくりつけ、強引に運んできたので、過積載もいいとこで苦労した。

 静香は何もしてないと言ったが、まとめた物資がバラバラにならずに済んだのは、十分すぎる功績だ。

 戦艦の習熟訓練は必要だが、これで攻めてこられても対処はできる。


 金品は今の俺達には不要なものだが、他との交渉のために取っておくことにする。

 ガルバスを倒したという話は、いずれ各惑星に広まっていくだろう。

 となれば俺達に接触してくる者も現れるはずで、その時に金が必要になるかもしれないからな。

 操縦士のように、来る奴全てが敵ではない。


 ああ、もう一つ戦利品? があったな。笑笑と名乗ってた詐欺師だ。


 アジトで生き残ったのはコイツだけ。

 傭兵団の一味ではないし、完全な敵対行動をとった訳でもないので、殺す理由はないが放置するわけにもいかなかった。笑える小悪党だからな。

 どうしようかと思っていると、いつのまにか狂華と尋問部隊の近くにきていた。


 全員俺に敬礼してくる。


「仕事の話ですまんな、狂華。アイツはどうしてる?」

「いえ、丁度良かったです。笑笑の扱いをどうするか、司令に伺いたかったので。今は不味いレーションを食わせてます」


 俺は少し笑ってしまう。

 食糧事情が改善したので、戦闘糧食(レーション)は誰も食べるのを嫌がり、仕事をサボった際の懲罰として食わせられていた。まあ、栄養バランスだけはいいんだがな。


「基本的に拷問は必要ない。ああいう輩は、強者の間を這い回りながら生き延びる、ネズミのようなものだ。少し脅してやれば、余計な情報までぺらぺら喋るだろう。大半は眉唾ものだが、中には使える情報も混じっている。怪しい情報を売るのも商売だ」


「分かりました、司令。琴音隊と協力して情報を引き出します」


「頼む。あと絶対に甘い顔はするな、つけあがって人を騙そうとしてくる。コッチの情報も探ってくるから気をつけろ。(つら)が良いから、結婚詐欺もやってるはず」


「なるほど了解しました。十分気をつけます」

「もっとも、私達には司令がおりますので、他の男になびくことはありません」

「うんうん」


「そ、そうか……」

 慕ってくれるのは嬉しいが、なぜか俺は身震いしてしまう。後は任せることにした。

 笑笑は殺さず、処分はあとで考えよう。



 俺が手を上げて離れると、


「あっ、大将みっけ!」

「……アラシ発見」

「待つニャアー!」


「またねえ!」


 いくら隠れていても、獣人の夏美には見つかってしまう。

 嗅覚が人より数倍鋭いから、俺の臭いで位置がバレてしまうのだ。

 変装しても意味はない。

 俺は大慌てで逃げ、料理を作ってる椿達のところへ向かう。良い匂いが漂っていた。


「焼きそばであります、アラシ殿。どうぞ」

「おう、ありがとな」

「美味そうニャ!」


 案の定、追ってきた夏美は食い物に注意がそれたので、俺は逃げることに成功する。

 もらった焼きそばを食いながら基地へと入り、使い捨て皿をゴミ箱へ入れ、病室へと向かう。

 今回の戦いで負傷した者達が、ベットに横たわっていた。


 それでも犠牲者が出ずに、怪我だけで済んで本当に良かった。戦争してるかぎりは仕方ないのだが。

 宴会場には来られないので気分だけでもと、医療班が交代で料理を運んできて、面倒を見ていた。

 俺は天音をねぎらう。


「負傷者の世話、ありがとな天音。医療班にも感謝だ」

「ありがとうございます、司令。任務ですのでお気遣いなく」

「こちらこそ感謝いたします!」


 俺は負傷者を見舞った後、天音と話す。


「やはり、もう少し薬品と医療機器が必要かもしれません。それと軍医ですね。私は医者もどきで、応急処置に毛が生えた程度しかやれないので」


「……確かに。天女団(うち)に軍医はおらず、自動治療装置とナノマシン任せだからな。負傷者が増えると手が回らなくなる。重傷者が出たら手遅れだ。分捕り品で多少増えたが、これは考えねばならんな」

「はい」

 俺は病室を後にし司令室へと向かう。頭の中では、次の戦いが始まっていた。


 ホークブルク家を潰す!

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