祝勝会
「勝利と豊かな収穫を祝って、乾杯!」
「かんぱーい!」
俺達はピラミッド基地の外で、祝勝会を開いていた。
帰ってくる前に、志乃に連絡をいれたので、用意してくれてたようだ。
会場は広く料理はバイキング形式。好きなだけ取れるのはいいが、並べられた料理は瞬く間になくなっていく。みんな、かなり食うからな。
「さあ、ドンドン焼くであります。バンバン作るであります」
「了解です! 月城隊長」
炊事部隊は大忙し、椿は張り切っていた。
農作物の収穫も滞りなく終わったようで、基地に山積みされている。
皆が頑張ってくれたおかげで、もう飢える心配はないだろう。分捕り品もあるしな。
「お姉ちゃん達、食べて、食べて!」
「……え、ええ」
「僕ちゃんたち、美味しい? もう怖い人はいないからね」
「うん!」
傭兵団のアジトから救い出した者達を、天女団の年少組が面倒を見ていた。
天真爛漫で人懐っこく、誰にでも優しく接するので、警戒心は薄れていく。
まだ戸惑っていたようだが、乱暴してた男達はもうおらず、まわりは女だけなので少しは安心したようだ。
少しずつでも、体の傷と心の傷を癒やしてほしい。身の振り方は後後。
まず俺は大隊長の志乃と静香をねぎらう。二人は一緒にいた。
「志乃、収穫作業と防衛任務ご苦労だった。祝勝会の準備にも感謝だ。静香も全隊指揮をよくやってくれた」
「はい、司令」
志乃は喜んでいたが、静香は浮かぬ顔をしていた。
「了解……と言いたいけど、私は何にもしてないわよ。現場指揮は天音がやったし、基地制圧も各部隊が速攻で決めちゃったし、美味しいとこはアラシが持ってくし、私がやったのなんて物資の積み込みと船の移動くらい。全然活躍してないわ」
「はっはははは! それが指揮官というものだ。もう小隊長じゃないんだから、前線で暴れるのは部下達に任せろ。静香は全体を見て、皆を生かして帰す立ち場なんだ」
「うっ、そう言われると返す言葉がないわね」
「これは、私が行っても暇だったでしょうね。最前線に立つことがなくなるのは、少し寂しいですが、仕方ありません。まあ、静香の気持ちもわかるけどね。くっくくくく!」
「勝っても、負けても不満は残るもんだから、自分を納得させて今日は楽しめ。明日からはまた、次の戦略を練るからな」
「分かったわ」「了解です!」
俺は二人から離れて、留守組を中心に声をかけていく。陰の立役者だからな。
部下を労うのも総司令としての役目……と言いたいとこだが、俺に酒を勧めてくるアホがいるので、逃げ回っているのだ。
紅美と飲んべえ友達で、弥生も混じって面白がっている。宴会の度にこれだ。
今の俺は未成年だっつうの! フィクションでも飲んで酔っ払ったら、垢BANされるわい!
これを察してサッと人垣をつくり、俺を隠してくれる仲間達もいて助かっている。
昔の大男だったら隠れようはなかったな。
今回の襲撃で分捕った物は、戦艦計十隻と武器弾薬と大量の燃料や物資、さらに敵が溜め込んでいた金品があった。
船体外部にコンテナを無理矢理くくりつけ、強引に運んできたので、過積載もいいとこで苦労した。
静香は何もしてないと言ったが、まとめた物資がバラバラにならずに済んだのは、十分すぎる功績だ。
戦艦の習熟訓練は必要だが、これで攻めてこられても対処はできる。
金品は今の俺達には不要なものだが、他との交渉のために取っておくことにする。
ガルバスを倒したという話は、いずれ各惑星に広まっていくだろう。
となれば俺達に接触してくる者も現れるはずで、その時に金が必要になるかもしれないからな。
操縦士のように、来る奴全てが敵ではない。
ああ、もう一つ戦利品? があったな。笑笑と名乗ってた詐欺師だ。
アジトで生き残ったのはコイツだけ。
傭兵団の一味ではないし、完全な敵対行動をとった訳でもないので、殺す理由はないが放置するわけにもいかなかった。笑える小悪党だからな。
どうしようかと思っていると、いつのまにか狂華と尋問部隊の近くにきていた。
全員俺に敬礼してくる。
「仕事の話ですまんな、狂華。アイツはどうしてる?」
「いえ、丁度良かったです。笑笑の扱いをどうするか、司令に伺いたかったので。今は不味いレーションを食わせてます」
俺は少し笑ってしまう。
食糧事情が改善したので、戦闘糧食は誰も食べるのを嫌がり、仕事をサボった際の懲罰として食わせられていた。まあ、栄養バランスだけはいいんだがな。
「基本的に拷問は必要ない。ああいう輩は、強者の間を這い回りながら生き延びる、ネズミのようなものだ。少し脅してやれば、余計な情報までぺらぺら喋るだろう。大半は眉唾ものだが、中には使える情報も混じっている。怪しい情報を売るのも商売だ」
「分かりました、司令。琴音隊と協力して情報を引き出します」
「頼む。あと絶対に甘い顔はするな、つけあがって人を騙そうとしてくる。コッチの情報も探ってくるから気をつけろ。面が良いから、結婚詐欺もやってるはず」
「なるほど了解しました。十分気をつけます」
「もっとも、私達には司令がおりますので、他の男になびくことはありません」
「うんうん」
「そ、そうか……」
慕ってくれるのは嬉しいが、なぜか俺は身震いしてしまう。後は任せることにした。
笑笑は殺さず、処分はあとで考えよう。
俺が手を上げて離れると、
「あっ、大将みっけ!」
「……アラシ発見」
「待つニャアー!」
「またねえ!」
いくら隠れていても、獣人の夏美には見つかってしまう。
嗅覚が人より数倍鋭いから、俺の臭いで位置がバレてしまうのだ。
変装しても意味はない。
俺は大慌てで逃げ、料理を作ってる椿達のところへ向かう。良い匂いが漂っていた。
「焼きそばであります、アラシ殿。どうぞ」
「おう、ありがとな」
「美味そうニャ!」
案の定、追ってきた夏美は食い物に注意がそれたので、俺は逃げることに成功する。
もらった焼きそばを食いながら基地へと入り、使い捨て皿をゴミ箱へ入れ、病室へと向かう。
今回の戦いで負傷した者達が、ベットに横たわっていた。
それでも犠牲者が出ずに、怪我だけで済んで本当に良かった。戦争してるかぎりは仕方ないのだが。
宴会場には来られないので気分だけでもと、医療班が交代で料理を運んできて、面倒を見ていた。
俺は天音をねぎらう。
「負傷者の世話、ありがとな天音。医療班にも感謝だ」
「ありがとうございます、司令。任務ですのでお気遣いなく」
「こちらこそ感謝いたします!」
俺は負傷者を見舞った後、天音と話す。
「やはり、もう少し薬品と医療機器が必要かもしれません。それと軍医ですね。私は医者もどきで、応急処置に毛が生えた程度しかやれないので」
「……確かに。天女団に軍医はおらず、自動治療装置とナノマシン任せだからな。負傷者が増えると手が回らなくなる。重傷者が出たら手遅れだ。分捕り品で多少増えたが、これは考えねばならんな」
「はい」
俺は病室を後にし司令室へと向かう。頭の中では、次の戦いが始まっていた。
ホークブルク家を潰す!
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