お待ちかねのボーナスタイム
俺は管制室に移動し全軍に通達する。
敵は排除したが作戦は終わっておらず、むしろこれからが本番。
「敵の頭は拘束した。各員残敵に注意しつつ、物資回収を急げ。お待ちかねの強奪の時間だ。船も武器も根こそぎ持って行くぞ! あらゆる物を分捕れ‼」
「ゲヘヘへ、いただきだぜ!」
「全部アタイらのもんだー!」
俺達は海賊へと変わる。攻めてきた悪党から奪って何が悪い。
どうせ死んだ奴は使えんのだから、俺達が有効活用してやるだけだ。
「静香、来てるか?」
『ああ、アラシ。今ゲートに入ったところだ。予備部隊も出撃可能だ』
「よし、物資を積み込んだ船を順に出航させてくれ。それから外で待機だ。あとクララ嬢をコッチに連れてきてくれ。もうすぐ、ゲストも来るだろう」
『了解した』
天女団は生き生きと略奪を開始した。
ガルバス傭兵団に対する罪悪感はなく、力尽くで奪い取る感覚は、たまらない快感である。
その様子は、さながら特売品に群がる主婦達のようだった。
戦利品は直接運ぶか、バケツリレーで船へ積み込んでいく。
大きなコンテナは重力リフトで搬入し、全く無駄な動きがない。
仲間達が優秀なので俺は見てるだけで良かったが、判断を求められることもある。
『司令、捕らわれていた女性と子供らを発見しました。男子もいてかなりの人数です。いかがいたしましょうか?』
「奴隷……またか、ゴロツキどものやることは、いつも変わらんな。全員保護して船に移送しろ。俺達の惑星に連れていくしかあるまい。こんな場所には置いておけん」
『了解しました』
救助者の身の振り方は後で考えよう。
もっとも俺達は他星との繋がりがないから、ずっと面倒を見ることになるかもしれん。
大災害の影響で、受け入れ先もなさそうだし。
そして、クララが管制室にやってきた。
「ひっ!」
鎖で縛られたガルバスを見て怯えた。まだ生きてはいるが、パワードスーツは剥ぎ取られ、数人の見張りが銃を構えていた。暴れた瞬間に蜂の巣だ。
もっとも大怪我を負っているせいで、もう体力は残っておらず、黙り込んだままだった。
生かしておいてた理由はある。
「あのアラシ司令、一体何を……?」
「クララ先生、今までありがとう。本日をもって貴女を自由の身とするが、その前にこいつらとは無関係だったと、証明してもらいたい」
「えっ⁈」
俺はにこやかに銃を差し出した。
「コイツを撃ってくれ」
「なっ…………」
ガルバスを殺せと言われて、クララは動転していた。
無論、殺しなどしたことはないはず。震えたまま固まってしまう。
なんとか銃に手を伸ばそうとするが、途中で止まったまま。
そこに大きな手が後ろから伸びてきて、銃をひょいと取り上げる。
「あんまり、うちの社員をいじめないでくれないか」
「所長⁈」
クララの後に、アンダー交渉事務所の所長である、ブルート・ベルクマンがいた。
俺が無線で呼んでおいたのである。
現れた大柄な男は高級スーツを着込み、立派な口髭を蓄えていた。少し老けているが、周りを圧するほどの迫力がある。
ブルートは拳銃のスライドを引き、初弾を装填した後、ガルバスに銃を突きつける。
「ガルバス……約束を破り裏切ったらどうなるか、傭兵の掟くらい分かってるだろうな?」
「くっ…………」
直後、パンッ! と乾いた銃声が響いてガルバスは倒れた。
手慣れた動きに俺は感心する。銃は俺に投げ返された。
「あんた元傭兵か? 大した腕だな。約束通り、クララ嬢は連れてってくれ。操縦士と一緒に」
「そうさせてもらう。これで少しは信用してもらえたか? アラシ」
「ああ、十分だ。口より行動で示してくれたからな。これでアンタも戦友だ」
ブルートは俺達と一緒に、ガルバス傭兵団を潰したことになった。悪く言えば共犯。
しかし、本当の信用が生まれたと言っていい。物よりも、俺が一番欲しかったものである。
ブルートとクララが去った後、作戦も最終段階に入っていた。最後の後始末だ。
物資を山積みした船は外に出て、残ってるのはたった一隻。
俺は最後の船に乗り込み、椿に連絡を入れる。
「問題ないか? 椿。十分注意してくれよ」
『了解であります、アラシ殿。もう少しで、爆破準備は完了であります』
傭兵団の基地は、ゴロツキ共の死体ごと跡形もなく吹き飛ばす予定だ。
だからこそ、ジョン達の遺体もわざわざここへ運んできたのだ。
散々好き放題やってきた奴らに、墓など必要ない。誰にも知られぬまま、宇宙の塵となれ!
普段は総料理長として腕を振るっている椿だが、天女団の中では爆破のプロであり、爆弾娘として恐れられている。顔は純朴なんだけどねー。
本人曰く、
「料理も爆破も、仕込みと火加減が重要であります」
だそうで、その計算能力はAIもしのぐ。右に出る者はいない。
やがて椿と爆弾設置班が戻ってきて、船を発進させた。忘れ物はないな。
基地から離れ安全距離まで移動したところで、椿が起爆装置を取り出す。
「それでは皆さん、お待ちかね! 三、二、一……ポチッとな!」
次の瞬間、
傭兵団の基地が内側から膨れ上がり、爆炎が一気に噴き出した。
小惑星は巨大な火の玉と化す。
爆風は内部を駆け巡り、火の付いた残骸が四方八方に飛び散って、まるで花火のようだった。
これで基地は木っ端微塵、何も残るまい。
「成功であります!」
「ざまぁみやがれ! スッとしたぜ!」
「たまやー! かぎやー! 最高のショーだ!」
仲間達は歓声を上げて喜んでいた。これで作戦は完了。
俺は皆をねぎらう。
「皆よくやってくれた。ガルバス傭兵団は壊滅し、敵基地も爆破した。この勝利を喜ぼう。惑星に帰って祝勝会だ!」
「うおおおおっ!」
「了解であります!」
仲間達が勝利に浮かれる中、俺はブルートと連絡を取る。
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