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神力の少年兵  作者: 夢野楽人
第二章 動乱編

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ガルバスの切り札

 ガキン!


「大丈夫か、紅美」

「大将!」


 俺はメイスを障壁(シールド)で防いだ。なかなか威力はあるが、ロケット弾の直撃に比べたら大したことはない。

 ガルバスは攻撃を跳ね返されて驚いたようだが、怒涛の連撃を叩き込んでくる。


 ゴォン! ドコン! ガコン!


 暴風のように振り回される巨大メイスを、俺は左手一本で防ぎつつ、ガルバスを無視して紅美達と話す。

「夏美も無事のようだな、二人とも下がるといい。あとは俺がやる」

「助かったぜ、大将」

「やっぱり、群れ雄ニャ!」


 この間もガルバスはメイスを振り回していたが、攻撃は全く当たらず、奴も疲れて後ろに下がる。


「くっ……小僧! てめえ、一体なにもんだ!」

「今から死ぬ奴に名乗る必要もないが、特別に教えてやるぞハゲ。天女団総司令、アラシ・テンマだ。冥土の土産に覚えておけ」

「このガキィ! なめるなぁ‼」

 激昂したガルバスは盾を前にして突っ込んできた。いわゆるシールドチャージ。

 重戦車じみた突撃で、生身で喰らえば即死だろう。


神影走(デウス・スプリント)


 俺は奴の目の前から一瞬で消え、勢いを止められなかったガルバスは、壁に突っ込んでしまう。

「ぐおおおおっ⁈」

 轟音と共に壁が砕けて、天井も崩れ落ち、瓦礫に巨体が半ば埋まる。

 このくらいで死にはしないだろう。

 後方から歓声が上がった。振り返ると、静香を除いたいつもの面々が集まっている。

 どうやら基地の制圧は完了したらしい。応援にかけつけてきたようだ。


「さすがは司令だ。敵の頭目を完全に手玉に取ってる」

「……それに比べて、紅美は情けない。仕留め損なうとは」

「うるせえ! 今日はちょっと調子が悪かっただけだ!」

「敵は相当な猛者であります。しかし、アラシ殿の方が更に上であります」


 俺は皆に指導(レクチャー)する。まだまだ実戦経験が足りないからな。


「こういう奴を正面から相手にするな、狭い場所や罠に誘い込め。落とし穴なんか効果的だぞ」

「……なるほど」

 瓦礫の中からガルバスが姿を現す。

「うがあぁ!」

「あと、こういう手もある」

 俺が指を鳴らすと、空中に浮かんでいた大量の酒瓶が一斉に傾き、中身がガルバスの頭上へ降り注いだ。

 おちょくったわけではない。俺はライターに火をつけて投げつけた。

 ライターが当たると、ガルバスの頭が激しく燃える。人間蝋燭のできあがり。


「あぢゃあぢゃじゃじゃじゃあ!」


 ヘルメットをしてないのが悪い。相手の弱点をつく戦法だ。

 ガルバスは武器を放り投げて、のたうち回る。


「ぶひゃひゃひゃひゃ!」

「あはははははははは!」

 無様なガルバスを見て、仲間達は大笑い。腹を抱えて苦しんでいた。

 やばい、フレンドリーファイヤーだ。

 あとで聞いたが、戦況モニターを見てた者らも、笑い死にしそうなったそうだ。

 

「ふぅ……ふぅ……てめえ、エスパーだな⁈」


 それでもガルバスは立ち上がる。

 近くに転がっていた消火器を使い、白い噴射剤を頭に浴びせ炎を消し止めている。

 もっとも顔や頭は火傷を負ったようで、ダメージは大きい。

 早急に細胞再生治療が必要だ。させんけど。


「ようやく気づいたか? ハゲ。最初(はな)から、お前じゃ俺には敵わないんだよ」

「舐めるな、小僧! 俺様が何の備えもしてないと思ったか⁈ 笑笑先生、お願いします‼」


 すると奥の扉が開き、派手な拳法着を着て、眼鏡をかけた優男が出てくる。

 自信たっぷりに男は言った。


「任せたまえ、ガルバス君。消えた宇宙最強エスパーの遠い遠い親戚である、この笑笑の敵ではない」

(……俺に親戚なんていたか? 記憶を失ってるしなあ……まあ、どっちにしろコイツは……)


 そして優男は俺の前に来るなり、スプーンを取り出す。


「はああああああ!」


 端をつまんだ優男が気合いをいれると、スプーンが少しずつ曲がっていき、やがて先端が切断されて床に落ちた。

 かなり時間がかかっている……。

「…………」

 これを見た俺と仲間達は絶句する。

「ふっふふふ、どうやら恐ろしくて声もでないらしいな。私の力がわかったら、さっさと立ち去るがいい」

「流石は先生!」


 笑笑は勝ち誇り、ガルバスは感心していた。

 こっちは心底呆れかえってるだけだぞ、このインチキ手品師が!

 まあいい、だったら俺も超能力(・・・)勝負をしてやろう。


「ほー、凄いな。お返しに俺の芸も見せてやろう」


 俺は落ちていた金属パイプを拾って曲げていき、犬の形を作る。

 バルーンアートならぬ、アイアンアートだ。もちろん普通の人間にはやれない。

 これに味方は拍手喝采。


「おおっ、可愛い! 流石は司令」



「な、なかなか凝ったトリックだな。どうせ仕掛けがあるんだろ? 全然大したことはない」


(おまいう!)


「まあいい、お遊びはこれまでだ。これを見て驚くがいい⁈」

 三流マジシャンは空き缶を手に取り、ゆっくり両手を離した。

 すると、なんと空き缶が宙に浮かび上がる。ああ、なんてことだ!


「どうだ! これが空中浮遊(レヴィテーション)だ! 凄いだろ⁈」

「……ふぅ、やれやれ」


 指から出ているナノワイヤーが、俺には見えていた。さて茶番は終わりにしよう。

 コイツがエスパーじゃないのは、最初から分かっていた。

 超能力者特有のオーラがない。


「じゃあ、俺も空中浮遊を見せてやろう。ただ飛ぶのはお前だ、神風船!」

「えっ⁈ ぎゃあー!」


 俺は笑笑を宙に浮かせ、そのまま高速で振り回す。

 悲鳴が出なくなったところで、逆さ吊りの状態にし、俺は冷たく問いかける。


「このまま頭を、床にぶつけてやろうか?」


「ご、ごべんなさい……あっしはタダのペテン師っす。ゆるぢでくだじゃい……」


 笑笑は涙を流して鼻水を垂らしていた。

 これを見てガルバスは絶句する。自分が騙されてたとは思ってなかったのだろう。

 詐欺師は巧妙だし、頭が悪いと引っかかる。

 だが闘志は衰えていなかった。この点だけは褒めてやろう。


「くそったれがー! 絶対にぶっ殺してやる! ――俺様の武器はどこだ⁈ どこへいった⁈」


 ガルバスは自分のメイスと盾を探すが、見回してもどこにも見当たらない。


「こっちだ、ハゲ!」

 メイスを握っていたのは紅美。敵の武器を、そのまま放置しておくはずもなかった。

「この野郎! 返しやがれ!」

「おらよっ!」


 紅美がメイスをバットのように振り、突っ込んできたガルバスの巨体を吹き飛ばす。


 ドガン!


 壁に叩きつけられたガルバスは動かなくなる。


「やっぱメイスは重てぇな。アタイには合わねえや」


 ようやく決着はついた。

この作品がお気に召したら、応援・評価をいただけると幸いです。

笑っていただければ幸いです。


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