ガルバスの切り札
ガキン!
「大丈夫か、紅美」
「大将!」
俺はメイスを障壁で防いだ。なかなか威力はあるが、ロケット弾の直撃に比べたら大したことはない。
ガルバスは攻撃を跳ね返されて驚いたようだが、怒涛の連撃を叩き込んでくる。
ゴォン! ドコン! ガコン!
暴風のように振り回される巨大メイスを、俺は左手一本で防ぎつつ、ガルバスを無視して紅美達と話す。
「夏美も無事のようだな、二人とも下がるといい。あとは俺がやる」
「助かったぜ、大将」
「やっぱり、群れ雄ニャ!」
この間もガルバスはメイスを振り回していたが、攻撃は全く当たらず、奴も疲れて後ろに下がる。
「くっ……小僧! てめえ、一体なにもんだ!」
「今から死ぬ奴に名乗る必要もないが、特別に教えてやるぞハゲ。天女団総司令、アラシ・テンマだ。冥土の土産に覚えておけ」
「このガキィ! なめるなぁ‼」
激昂したガルバスは盾を前にして突っ込んできた。いわゆるシールドチャージ。
重戦車じみた突撃で、生身で喰らえば即死だろう。
「神影走」
俺は奴の目の前から一瞬で消え、勢いを止められなかったガルバスは、壁に突っ込んでしまう。
「ぐおおおおっ⁈」
轟音と共に壁が砕けて、天井も崩れ落ち、瓦礫に巨体が半ば埋まる。
このくらいで死にはしないだろう。
後方から歓声が上がった。振り返ると、静香を除いたいつもの面々が集まっている。
どうやら基地の制圧は完了したらしい。応援にかけつけてきたようだ。
「さすがは司令だ。敵の頭目を完全に手玉に取ってる」
「……それに比べて、紅美は情けない。仕留め損なうとは」
「うるせえ! 今日はちょっと調子が悪かっただけだ!」
「敵は相当な猛者であります。しかし、アラシ殿の方が更に上であります」
俺は皆に指導する。まだまだ実戦経験が足りないからな。
「こういう奴を正面から相手にするな、狭い場所や罠に誘い込め。落とし穴なんか効果的だぞ」
「……なるほど」
瓦礫の中からガルバスが姿を現す。
「うがあぁ!」
「あと、こういう手もある」
俺が指を鳴らすと、空中に浮かんでいた大量の酒瓶が一斉に傾き、中身がガルバスの頭上へ降り注いだ。
おちょくったわけではない。俺はライターに火をつけて投げつけた。
ライターが当たると、ガルバスの頭が激しく燃える。人間蝋燭のできあがり。
「あぢゃあぢゃじゃじゃじゃあ!」
ヘルメットをしてないのが悪い。相手の弱点をつく戦法だ。
ガルバスは武器を放り投げて、のたうち回る。
「ぶひゃひゃひゃひゃ!」
「あはははははははは!」
無様なガルバスを見て、仲間達は大笑い。腹を抱えて苦しんでいた。
やばい、フレンドリーファイヤーだ。
あとで聞いたが、戦況モニターを見てた者らも、笑い死にしそうなったそうだ。
「ふぅ……ふぅ……てめえ、エスパーだな⁈」
それでもガルバスは立ち上がる。
近くに転がっていた消火器を使い、白い噴射剤を頭に浴びせ炎を消し止めている。
もっとも顔や頭は火傷を負ったようで、ダメージは大きい。
早急に細胞再生治療が必要だ。させんけど。
「ようやく気づいたか? ハゲ。最初から、お前じゃ俺には敵わないんだよ」
「舐めるな、小僧! 俺様が何の備えもしてないと思ったか⁈ 笑笑先生、お願いします‼」
すると奥の扉が開き、派手な拳法着を着て、眼鏡をかけた優男が出てくる。
自信たっぷりに男は言った。
「任せたまえ、ガルバス君。消えた宇宙最強エスパーの遠い遠い親戚である、この笑笑の敵ではない」
(……俺に親戚なんていたか? 記憶を失ってるしなあ……まあ、どっちにしろコイツは……)
そして優男は俺の前に来るなり、スプーンを取り出す。
「はああああああ!」
端をつまんだ優男が気合いをいれると、スプーンが少しずつ曲がっていき、やがて先端が切断されて床に落ちた。
かなり時間がかかっている……。
「…………」
これを見た俺と仲間達は絶句する。
「ふっふふふ、どうやら恐ろしくて声もでないらしいな。私の力がわかったら、さっさと立ち去るがいい」
「流石は先生!」
笑笑は勝ち誇り、ガルバスは感心していた。
こっちは心底呆れかえってるだけだぞ、このインチキ手品師が!
まあいい、だったら俺も超能力勝負をしてやろう。
「ほー、凄いな。お返しに俺の芸も見せてやろう」
俺は落ちていた金属パイプを拾って曲げていき、犬の形を作る。
バルーンアートならぬ、アイアンアートだ。もちろん普通の人間にはやれない。
これに味方は拍手喝采。
「おおっ、可愛い! 流石は司令」
「な、なかなか凝ったトリックだな。どうせ仕掛けがあるんだろ? 全然大したことはない」
(おまいう!)
「まあいい、お遊びはこれまでだ。これを見て驚くがいい⁈」
三流マジシャンは空き缶を手に取り、ゆっくり両手を離した。
すると、なんと空き缶が宙に浮かび上がる。ああ、なんてことだ!
「どうだ! これが空中浮遊だ! 凄いだろ⁈」
「……ふぅ、やれやれ」
指から出ているナノワイヤーが、俺には見えていた。さて茶番は終わりにしよう。
コイツがエスパーじゃないのは、最初から分かっていた。
超能力者特有のオーラがない。
「じゃあ、俺も空中浮遊を見せてやろう。ただ飛ぶのはお前だ、神風船!」
「えっ⁈ ぎゃあー!」
俺は笑笑を宙に浮かせ、そのまま高速で振り回す。
悲鳴が出なくなったところで、逆さ吊りの状態にし、俺は冷たく問いかける。
「このまま頭を、床にぶつけてやろうか?」
「ご、ごべんなさい……あっしはタダのペテン師っす。ゆるぢでくだじゃい……」
笑笑は涙を流して鼻水を垂らしていた。
これを見てガルバスは絶句する。自分が騙されてたとは思ってなかったのだろう。
詐欺師は巧妙だし、頭が悪いと引っかかる。
だが闘志は衰えていなかった。この点だけは褒めてやろう。
「くそったれがー! 絶対にぶっ殺してやる! ――俺様の武器はどこだ⁈ どこへいった⁈」
ガルバスは自分のメイスと盾を探すが、見回してもどこにも見当たらない。
「こっちだ、ハゲ!」
メイスを握っていたのは紅美。敵の武器を、そのまま放置しておくはずもなかった。
「この野郎! 返しやがれ!」
「おらよっ!」
紅美がメイスをバットのように振り、突っ込んできたガルバスの巨体を吹き飛ばす。
ドガン!
壁に叩きつけられたガルバスは動かなくなる。
「やっぱメイスは重てぇな。アタイには合わねえや」
ようやく決着はついた。
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