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神力の少年兵  作者: 夢野楽人
第二章 動乱編

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ボスの武器はやばかった

「オラオラ、かかってこいや!」


「くそっ! この野郎!」


「後ろががら空き、甘いニャ!」


 訓練場で激しい白兵戦が繰り広げられていた。

 だが戦況は女達が圧倒的に優勢、才能と特訓の(たまもの)で、ゴロツキ達は遥かに劣る。


「いったぞ、夏美!」

「任せるニャ!」


 紅美が蹴飛ばした男を、夏美が爪で仕留める。凸凹コンビは強く戦闘センスも高い。

 二人の上官は八雲と月城だが、特殊分隊扱いとなっていて、別行動を許されていた。


 弥生曰く、

「……獣が言うことを、聞くわけがない」


 とサジを投げた。椿も獣人達の独断行動には、目をつむっている。

 むしろ、自由に暴れさせた方が良いからだ。


 弥生が天才型なら、紅美は野生の勘に優れた直感型だった。

 理屈ではなく、本能で戦うタイプ……まあ脳筋だが。

 その戦果は一目瞭然。

 床には男達が倒れ伏している中で、特殊分隊は誰一人傷を負ってなかった。


「さて、次の場所へ行くか」

「賛成ニャ!」

『駄目だ、二人ともそこで待機……』


 そこに弥生から無線で命令が入る。


「おいおい、もっと暴れさせろよ」


『もう基地の制圧は八割方完了してるし、他の隊の手柄を奪うんじゃない。逆らうなら機甲羽衣を強制停止させるぞ』


「わかった、わかった。それは勘弁してくれ」


 獣に首輪はつけられていた。

 いくら紅美でも機甲羽衣を停止させられたら、戦いようもなく命が危ない。

 ましてや敵地のど真ん中である。弥生の脅しはきいた。


 ――しかし直ぐに状況が変わる。


『これはマズいな……仕方ない』

「どうした弥生?」


『味方部隊が敵の親玉と交戦したが、強くて負傷者が多数出ている。紅美のいる場所が一番近いから、首をとってこい』


 紅美は一瞬黙ってから、大喜びする。


「マジか⁈ そりゃ大手柄じゃねえか! 嬉しい命令だぜ、弥生。愛してるぞ!」


『気持ち悪いこと言うな‼ いいからサッサと行け!』


「おう! 行くぞ夏美!」

「ヤるニャア!」


 二人は同時に床を蹴って突き進む。後続は置いてけぼり。

 獲物に向かって二頭の肉食獣はまっしぐら。ナビも見ずに本能で位置を嗅ぎ当てる。

 


「んニャッ⁈」

「うっ!」


 紅美達がラウンジにたどり着いた時、バーカウンターは破壊され、砕けた酒瓶と仲間達が倒れ伏していた。

 機甲羽衣がひしゃげ、手足が折れている。


「……うう」

 うめき声を上げてるので、まだ死んではいないが重傷。

 これを見て紅美はブチ切れる。夏美も猫目を吊り上げた。

 

「ずいぶんと、やってくれたなてめえ! 覚悟はできてんだろうなぁ⁈」

「殺すニャッ!」


「こっちの台詞だ売女ども! ジョンのバカ共はしくじったようだな⁈ だったら俺様が直々に、お前らを一人残らず叩き潰してやる!」


 傭兵団の頭、ガルバス・ガメラスは、二メートルを優に超える巨漢。

 大型のパワードスーツを着てるので、三メートル近い。

 ヘルメットはしておらず、剃り上げられた禿頭は鈍く光り、傷だらけの顔(スカーフェイス)は凶暴さを物語っている。


挿絵(By みてみん)


 全身を覆うのは、重装甲型のパワードスーツ。

 黒鉄色の装甲が幾重にも重なり、出力も桁違いで膂力も凄まじい。

 左腕には大型シールド。

 エネルギー障壁が展開されており、銃弾を弾き返し砲撃すら耐える。


 そして右手には――巨大メイス。


 鋼鉄の塊のような先端には、無数の突起と電磁発生器が埋め込まれ、一撃ごとに火花と衝撃波を撒き散らす。まともに喰らえば、人間など肉片(ミンチ)になるだろう。


 ガルバスはその凶悪な武器を肩に担いで、不敵に笑っていた。

 無論、紅美はビビることもなく、腰から電磁ナイフを二本抜き放つと、一気に間合いを詰める。


「ふん、その程度か」


 鋭い斬撃が繰り出されるも、ガルバスは巨盾で容易く受け止めてしまう。

 しかし動きが少し止まる。

「衛生兵! 今のうちに負傷者を運べ! 天音のとこへ急げ!」

「了解!」

 後方にいた衛生兵達は、倒れた団員を抱えてこの場から去った。


「ほう、時間稼ぎか? こざかしい真似を、くらえ!」


 死の鉄槌が振り下ろされるが、天音はバックステップで素早く躱し、ガルバスの攻撃は空を切る。

 隙だらけになったこの瞬間を、夏美が見逃すはずもなく、大ジャンプして頭上から襲いかかった。

 高周波振動爪(ソニック・クロー)が、ガルバスの顔面めがけて突き出される。


った…………ニャ⁈」


 仕留めたと思った瞬間、火を噴いたメイスが襲ってきたのである。

 咄嗟に夏美は両腕をクロスさせて防御するが、壁に吹っ飛ばされてしまう。

 ガルバスの態勢は崩れていたはずなのに……。


「大丈夫か、夏美⁈」

「平気ニャ!」

 空中で回転しながら受け身をとり、獣装外骨格(ビーストフレーム)も衝撃を分散させているのでダメージはない。

「ぬるいわ、雑魚ども!」

「ちっ! ロケットブーストか」


 巨大メイスの内部には、固形燃料式ロケットブースターが内蔵されていた。

 噴射によって凄まじい加速を生み、信じられない速さで振り回せる。

 しかも威力は絶大、ガルバスに隙はなかった。


 二人は連携して攻め続けるものの、巨盾で全て防がれ、ガルバスの猛攻をしのぐだけで精一杯。

 一撃でもまともに食らえば、機甲羽衣ごと叩き潰されるだろう。

 身軽なので回避し続けられていたが、やがて疲れが見え始める。


「はぁっ……はぁっ……」

「硬いニャ……」


 そしてついに、紅美の動きが止まった。


「おりゃあ! 死ねい!」

「くっ…………」


 顔面にメイスが迫る。


  ◇◇◇

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