ボスの武器はやばかった
「オラオラ、かかってこいや!」
「くそっ! この野郎!」
「後ろががら空き、甘いニャ!」
訓練場で激しい白兵戦が繰り広げられていた。
だが戦況は女達が圧倒的に優勢、才能と特訓の賜で、ゴロツキ達は遥かに劣る。
「いったぞ、夏美!」
「任せるニャ!」
紅美が蹴飛ばした男を、夏美が爪で仕留める。凸凹コンビは強く戦闘センスも高い。
二人の上官は八雲と月城だが、特殊分隊扱いとなっていて、別行動を許されていた。
弥生曰く、
「……獣が言うことを、聞くわけがない」
とサジを投げた。椿も獣人達の独断行動には、目をつむっている。
むしろ、自由に暴れさせた方が良いからだ。
弥生が天才型なら、紅美は野生の勘に優れた直感型だった。
理屈ではなく、本能で戦うタイプ……まあ脳筋だが。
その戦果は一目瞭然。
床には男達が倒れ伏している中で、特殊分隊は誰一人傷を負ってなかった。
「さて、次の場所へ行くか」
「賛成ニャ!」
『駄目だ、二人ともそこで待機……』
そこに弥生から無線で命令が入る。
「おいおい、もっと暴れさせろよ」
『もう基地の制圧は八割方完了してるし、他の隊の手柄を奪うんじゃない。逆らうなら機甲羽衣を強制停止させるぞ』
「わかった、わかった。それは勘弁してくれ」
獣に首輪はつけられていた。
いくら紅美でも機甲羽衣を停止させられたら、戦いようもなく命が危ない。
ましてや敵地のど真ん中である。弥生の脅しはきいた。
――しかし直ぐに状況が変わる。
『これはマズいな……仕方ない』
「どうした弥生?」
『味方部隊が敵の親玉と交戦したが、強くて負傷者が多数出ている。紅美のいる場所が一番近いから、首をとってこい』
紅美は一瞬黙ってから、大喜びする。
「マジか⁈ そりゃ大手柄じゃねえか! 嬉しい命令だぜ、弥生。愛してるぞ!」
『気持ち悪いこと言うな‼ いいからサッサと行け!』
「おう! 行くぞ夏美!」
「ヤるニャア!」
二人は同時に床を蹴って突き進む。後続は置いてけぼり。
獲物に向かって二頭の肉食獣はまっしぐら。ナビも見ずに本能で位置を嗅ぎ当てる。
「んニャッ⁈」
「うっ!」
紅美達がラウンジにたどり着いた時、バーカウンターは破壊され、砕けた酒瓶と仲間達が倒れ伏していた。
機甲羽衣がひしゃげ、手足が折れている。
「……うう」
うめき声を上げてるので、まだ死んではいないが重傷。
これを見て紅美はブチ切れる。夏美も猫目を吊り上げた。
「ずいぶんと、やってくれたなてめえ! 覚悟はできてんだろうなぁ⁈」
「殺すニャッ!」
「こっちの台詞だ売女ども! ジョンのバカ共はしくじったようだな⁈ だったら俺様が直々に、お前らを一人残らず叩き潰してやる!」
傭兵団の頭、ガルバス・ガメラスは、二メートルを優に超える巨漢。
大型のパワードスーツを着てるので、三メートル近い。
ヘルメットはしておらず、剃り上げられた禿頭は鈍く光り、傷だらけの顔は凶暴さを物語っている。
全身を覆うのは、重装甲型のパワードスーツ。
黒鉄色の装甲が幾重にも重なり、出力も桁違いで膂力も凄まじい。
左腕には大型シールド。
エネルギー障壁が展開されており、銃弾を弾き返し砲撃すら耐える。
そして右手には――巨大メイス。
鋼鉄の塊のような先端には、無数の突起と電磁発生器が埋め込まれ、一撃ごとに火花と衝撃波を撒き散らす。まともに喰らえば、人間など肉片になるだろう。
ガルバスはその凶悪な武器を肩に担いで、不敵に笑っていた。
無論、紅美はビビることもなく、腰から電磁ナイフを二本抜き放つと、一気に間合いを詰める。
「ふん、その程度か」
鋭い斬撃が繰り出されるも、ガルバスは巨盾で容易く受け止めてしまう。
しかし動きが少し止まる。
「衛生兵! 今のうちに負傷者を運べ! 天音のとこへ急げ!」
「了解!」
後方にいた衛生兵達は、倒れた団員を抱えてこの場から去った。
「ほう、時間稼ぎか? こざかしい真似を、くらえ!」
死の鉄槌が振り下ろされるが、天音はバックステップで素早く躱し、ガルバスの攻撃は空を切る。
隙だらけになったこの瞬間を、夏美が見逃すはずもなく、大ジャンプして頭上から襲いかかった。
高周波振動爪が、ガルバスの顔面めがけて突き出される。
「獲った…………ニャ⁈」
仕留めたと思った瞬間、火を噴いたメイスが襲ってきたのである。
咄嗟に夏美は両腕をクロスさせて防御するが、壁に吹っ飛ばされてしまう。
ガルバスの態勢は崩れていたはずなのに……。
「大丈夫か、夏美⁈」
「平気ニャ!」
空中で回転しながら受け身をとり、獣装外骨格も衝撃を分散させているのでダメージはない。
「ぬるいわ、雑魚ども!」
「ちっ! ロケットブーストか」
巨大メイスの内部には、固形燃料式ロケットブースターが内蔵されていた。
噴射によって凄まじい加速を生み、信じられない速さで振り回せる。
しかも威力は絶大、ガルバスに隙はなかった。
二人は連携して攻め続けるものの、巨盾で全て防がれ、ガルバスの猛攻をしのぐだけで精一杯。
一撃でもまともに食らえば、機甲羽衣ごと叩き潰されるだろう。
身軽なので回避し続けられていたが、やがて疲れが見え始める。
「はぁっ……はぁっ……」
「硬いニャ……」
そしてついに、紅美の動きが止まった。
「おりゃあ! 死ねい!」
「くっ…………」
顔面にメイスが迫る。
◇◇◇
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