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神力の少年兵  作者: 夢野楽人
第二章 動乱編

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蟻地獄

  ◇◇◇


 ドアは開いたものの、しばらく待っても誰一人として降りてこない。

 不審に思った管制室の連中が、船へ通信を入れた。これに操縦士が答える。


「おい、どうした!?」


『あ、はい。その……女達を降ろそうとしたところ、暴れられて手こずってるようです。できれば手を貸していただけませんか……?』


「ちっ! 何やってやがる。しょうがねぇ、今行ってやる」


 数名の男達が昇降デッキを渡り、無重力区画を蹴って船内へ入っていく。


 ………

 ……

 …


 それからしばらく経っても、戻ってくる者は誰もいなかった。

 流石に妙だと思い、残った男らは警戒する。


「おい? 何してんだ!」


『そ、それが、今度は船内で罰とばかりに、ヤりはじめちゃいました……』


「……ったく、どうしようもねぇ奴らだな」

「どんだけ女に飢えてんだよ。基地にもいるのによ」


「馬鹿野郎が、まずはかしらに献上するのが先だ! 勝手に手ぇ出したらぶっ殺されるぞ!」


 聞いた管制室長は深々と頭を抱えた。

 仲間達は身勝手なので、その行動に疑いの余地はない。さもありなん。


「もういい、俺が行って止める! 何人かついてこい!」

「へいへい」 


 気だるそうに返事をした男達が、ぞろぞろと管制室を後にする。

 こうして残ったのはたったの二名。


 管制室長らが薄暗い船内へ踏み込んだ、その瞬間――


「…………ぐっ」


 潜んでいた数人の女兵士が一斉に飛びかかり、管制室長は口を押さえつけられ、抵抗する間もなく、電磁ナイフを喉や急所に突き立てられる。

 他の者も同じように、声を上げる間もなく絶命した。


 船内は蟻地獄。一度足を踏み入れれば最後、生きては出られない……。


 そして、一つの影がハッチから音もなく飛び出した。


 あまりの速さに監視カメラが捉えられない。その影は迷いもせずに、管制室の中に入った。


「なんだあ? …………がっ!」

「ぐはっ!」


「神拳……」


 残っていた二人が一瞬で殴り倒され、そのまま動かなくなった。

 続いて監視モニターの映像が、次々とブラックアウトしていく。

 影は手際よく警報装置のスイッチも全て切った。


 その頃、自室にいたかしらは、苛立った様子で内部モニターを見ていた。


「おい、どうなってやがる!」


 しかし返答はない。

 直後、館内放送が基地中へ流れ始めた。


『監視システムに障害が発生しました。復旧まで、しばらくお待ちください』


 聞いたことのない声に首をかしげるも、管制室に様子を見に来る者はいなかった。



「さあ、お祭りの始まりだ!」


 影……アラシは室内で不敵に笑う。


 放送を合図に船体各所のハッチが一斉に開放され、機甲羽衣をまとった団員達が、無重力空間へ次々と飛び出した。


 隊列を組み、それぞれ割り当てられた制圧ポイントへ向かっていく。

 基地内の構造は、事前に把握済み。

 さらに機甲羽衣のバイザーには、内部マップとナビゲーションが表示されており、迷う心配もない。


「八雲隊、動力部の制圧に向かう……」

「月城隊、通信室へ向かうであります」

「天羽隊、武器保管庫を確保する」


 各隊がそれぞれ、割り当てられた区画へ散開する。

 天女団は軍隊蟻のように、素早い動きで基地内部を侵食していく。

 一方その頃、傭兵団の男達は酒をあおり、博打に熱中していた。

 自分達のアジトに、死神達が静かに入り込んでいるとは夢にも思っていない。

 

 そしてついに、男と女が出()う。


「なんだ、お前ら⁈ ――――ぐはっ!」

「て、敵…………」


 暗灰色の機甲羽衣を見たのが彼らの最後だった。


「重力ブロックに到達しました」


『よし、発砲を許可する。敵を視認次第、排除しろ。容赦するな! ただし捕虜を発見した場合は最優先で救出せよ』


「了解」


 静香の命令で、隊員達は背中にあった自動小銃を引き抜き、一斉に構えた。

 重力を感じ、いつもの感覚が戻ってくる。床を踏みしめ通路を一気に駆け出す。


「いくぞー!」

「おおっ!」


 女達は手前の部屋から順番に突入していく。

 扉が勢いよく開かれ敵と見た瞬間にトリガーが引かれ、男達は反撃する間もなく、次々と倒されていった。

 男達の武器は手元になく、パワードスーツすら装着していない。

 完全な奇襲攻撃だった。


「ぎゃああああ!」


 ゴロツキ達の断末魔が、基地内に木霊する。慌てて武器庫に行っても、そこはもう制圧されていて、待ち構えている天羽隊に撃たれるだけ。

 待ち伏せの罠である。


「くそっ! なんで警報が鳴らねえんだ!? 何処ともつながらねえ!」

「管制室は何やってやがる! 監視カメラも何も映らねえぞ!」


 ようやく敵襲に気づき、武器を手に反撃へ出る者達もいた。

 しかし状況が全く分からず、他エリアとの通信も途絶しており、完全に分断されていた。

 いや仮に連絡が取れたとしても、応援が来ることはなかっただろう。

 どの区画も天女団によって制圧されつつあり、各所で激しい戦闘が発生していたからだ。


「「「ぎゃああああ!」」」


 狭い通路で、悲鳴の大合唱が響き渡る。

 男達はパワードスーツを装着し、電磁ナイフで必死に応戦したものの、短槍の間合いには届かず次々と貫かれていく。 


 電磁槍プラズマランサー――伸縮(スライド)式で、その槍先は高密度の電磁パルスをまとっていた。


 一撃を受ければ電子機器は焼き切れ、装甲すら高熱で融解する。

 どれほど高性能な新型機だろうと、関係なかった。


「ふんふんふ〜ん♪ ……もう終わり? なんて弱い」


 鼻歌まじりに電磁槍プラズマランサーを振るったのは、八雲弥生。

 彼女は『武装百般』とあだ名され、槍、ナイフ、銃、格闘に至るまで、あらゆる武器を使いこなす戦闘の天才だった。

 さらに指揮能力にも優れ、天女団の中でも危険人物として恐れられている。


「……八雲隊長、私達にも獲物をくださいよ」


 後方にいた隊員の一人が不満を言う。

 弥生が強すぎるせいで、敵が次々と片付いてしまうのだ。


「……うん、わかった」


 そして彼女らが通り抜けた通路は、敵の血で染まり、床は死体で埋めつくされた。

この作品がお気に召したら、応援・評価をいただけると幸いです。

笑っていただければ幸いです。


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