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神力の少年兵  作者: 夢野楽人
第二章 動乱編

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出陣式

 ついにこの日がやってきた。


 うちに攻めてきた、ガルバス傭兵団のアジトへカチコミに行く。

 落とし前をつけさせてやる。遠征隊は約二百名。

 奪った船四隻とクララの船も使わせてもらい、彼女と操縦士も同行する。

 作戦が終わり次第、二人は解放する。


 手の空いてる団員達が離着陸場に整然と並んでいた。俺達の見送りだ。

 農作物の収穫が近いので、無駄な人員を割くわけにはいかず、各自仕事を続けてもらっている。

 食い物生産が第一で、戦争など三の次だ。


 出陣式が始まり、俺は演説を行う。


「これより我々は、敵の本拠地へと乗り込む。初めての宇宙で、不安に思う者もいるだろう。だが安心しろ、お前達は一人ではない、隣には仲間がいる、そして先頭にはこの俺が立つ! 我々を女の軍隊と侮っている奴らに思い知らせてやれ! 俺達がどれほど恐ろしい存在かをな! 此度の戦いは、ただの襲撃ではない。天女団の名を宇宙に刻む初陣だ!」


「「「おおおおおおおおっ‼」」」

「天女団に栄光を!」

「宇宙に我らの名を轟かせろ!」


 歓呼の声がしばらく続き、やがて遠征隊員達が船に乗り込んでいく。

 整然と行軍する中、見送りにきた者らが左右から声をかける。


「必ず帰ってこいよー!」

「私達の分まで暴れてこい!」

「留守は任せろ!」


 大きな声援に仲間達は手を上げて応えていた。

 俺は志乃の近くに行って声をかけた。今回彼女は防衛指揮官として留守を守る。

 静香とのジャンケン勝負での結果で、遠征に行けなくなってしまい、かなり落ち込んでいた。


「連れて行けなくてすまんな。収穫も近いし、その後の保管や管理にも人手がいる。留守を安心して任せられるのは、志乃だけだ」


「……はい、司令」


「ちょっと、しゃがんでくれ」

「はい? ――なっ!」

「次は必ず連れていくから我慢してくれ、志乃」


 俺は志乃を抱きしめて、耳元でささやいた。


「し、司令……」


 志乃の顔がみるみる赤くなる。気づいた団員達もざわつき始めた。


「うわあああっ⁈ 司令が志乃大隊長を抱きしめてる!」

「こんな出撃前に何してるんですか⁈」

「ずるーい! 私も慰めてほしい!」

 

 その声を無視して俺は静かに離れた。

 志乃は顔を真っ赤にしたまま、俯いてしまう。


「……約束ですよ、司令」

「ああ、約束する」


 俺は背を向けて手を振り乗船する。


「出発!」


 号令とともに、五隻の船が轟音を響かせて飛び立つ。

 離着陸場では、見送りに集まった団員達が一斉に敬礼していた。

 その姿を窓越しに見つめながら、俺は敬礼を返す。

 大気圏を突破したところで、航海長が報告してきた。


「司令、全艦問題ありません。予定航路へ移行します」

「よし、このまま速度を上げろ。警戒は最大で頼む」

「了解しました」

 

 敵のアジトまでは約二日の道のり。その間に作戦の最終確認をしておく。

 もっとも、仲間達はシミュレーション訓練を重ねてきたので、あとは本番で度胸を示すだけだ。

 緊張と不安の中、団員達は黙々と装備の確認を続けていた。



 やがて前方モニターに、敵基地の姿が映し出される。

 一見すればただの小惑星にしか見えない。

 しかし表面には亀裂が走り、その隙間から砲台や通信アンテナが突き出ている。

 岩盤をくりぬいた発着口には鋼鉄のゲートが見える。中には数隻の船が係留されているだろう。


 あれこそが、ガルバス傭兵団の本拠地。ついに作戦が始まる。

 クララの船と兵器会社の船は遠方に隠れて待機させ、内部には予備戦力部隊が出撃に備えていた。


 まずは操縦士が通信を入れる。


「殲滅作戦は完了しました。入港許可をお願いします」


「よう俺だ。ちゃんと土産(・・)を持ってきてやったから、お前ら感謝しろよ」


 向こうのモニターには、ジョンの姿が映っているだろう。もちろん、奴はとっくに死んでいる。

 演じているのは俺で、AIで加工された映像が、リアルタイムでジョンの顔と声へ変換されていた。

 また格納庫内で薄布を着て、縛られた女性団員達の動画も流す。これは本物の映像だが、事前に撮影しておいた芝居だった。


 芝居を演じていた者らは、今は機甲羽衣をまとい、臨戦態勢に入っている。


『ちっ! 調子に乗るなジョン。今ゲートを開けてやる』


 鋼鉄の隔壁が少しずつ左右へ開いていく。

 通信を切り操縦士は微速前進を始めた。後方の二隻も連動して動く。

 管制レーザーに従って船は進んで行くも、全く乱れがない。やはり良い腕だ。


 船がゲート内へ入ると、背後の隔壁が閉じられた。目の前には複数の船が停泊していたが、人の気配はほとんどなく、見張りの姿も見当たらない。


 油断しているのもあるだろうが、退屈な警戒任務など、誰も真面目にやりたがらないのだろう。

 所詮は寄せ集めのゴロツキ集団である。アジトが攻められると思ってもみない。


 船が進むと接舷アームが伸びて、船腹ハッチへ接続された。

 船体は固定され低い振動と共に、接舷完了のランプが灯った。


「エアロック接続確認」

「艦内気圧、問題なし」


 オペレーター達が淡々と報告を続ける。俺は皆に言った。


「さて、始めるか」

「了解!」


 船の昇降口ハッチが開く。

この作品がお気に召しましたら、ご感想などお寄せいただけましたら幸いです。

今後の執筆の励みになります。


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