モノローグ クララ2
午後からは質疑応答式の授業となり、女性達の質問に私が答える。
ちゃんと受け答えができるか、やや不安ではあった。そして授業が始まる。
トップバッターは、東雲大尉だった。
「男についてお聞きしたいのだが、アラシ司令は『野獣・強姦魔』など、男性を否定する言葉ばかりを口にされる。確かにやってきた傭兵団はクズだったが、世の男達はろくでなしばかりなのだろうか?」
「それは一部の男達で、真っ当で立派な方もいます。皆さんと同じく、私も事務所の所長に命を救われています。これは男女関係なく、人としての在り方の問題で、善人もいれば悪人も世の中にいます。たぶん、『悪い男に気をつけろ!』と言ってるのだと思います」
「なるほど、納得した。やはり司令はお優しい」
「うんうん。ここまで我らを思ってくださる方は、他にはいない」
彼女達は嬉しそうにしていた。どうやら掴みは良かったようだ。
――ただ、問題はここからだった。
「それでは次の方」
「はい、はーい!」
少女達が大きな声で手を上げ、矢継ぎ早に質問してくる。
「キスって、どんな味ですか?」
「え……」
「男の人を勃○させるには、どうすればいいですか?」
「ええ――⁈」
「S○Xをしたことはありますか? 最初は痛いって、本当ですか?」
「あわわわわわわ!」
まさかの質問にびっくりして、私は完全に取り乱してしまう。
性教育なんて聞いてない!
恥ずかしい質問に答えられず、私は完全に固まってしまい、見かねた東雲大尉が声をかけてくれた。
「すまない、クララ先生。もう少し話しておくべきだった。我らはアラシ司令に恩を返したいと思ってるが、司令は何もお望みにならない。だからせめてお子を授かり、偉業を後世に伝えて、いつまでも称えたいのだ」
「それで、子作りの話になるわけですね……」
東雲大尉が肯くと、獅堂大尉がクスクスと笑いながら言う。
「とまあ志乃はそう言ってるけど、みんなアラシのことが好きで、子供が欲しいのよ。これって女の本能よね。ホムンクルスでも子供は産めるようだし、だから私達は親衛隊を組織して、大家族計画を進めてるの。アラシが成長するのを待ってる」
「司令がセッ……できるまで後4、5年はかかる。その間に準備を進めたいので、性に関する知識が必要なんです。だから、クララ先生にお聞きしたかった」
「……そうでしたか」
「雄と媾って子供を産むニャアアア!」
「この手で自分の子を抱きたい!」
獣人と少女達がはしゃぎ出す。性に強い関心を持ってるのだろう。
子孫を求めるのは、生き物として自然な本能だ。女にしか子供は産めないし。
ただそうした経験が全くないため、私は姓について教えられないのだ。
それでも断ってしまうのは悪いので、別な提案をした。
「皆さん、ごめんなさい。私は男性とお付き合いしたことがなく、経験もありませんので、人から聞いた話で良ければお話しします」
「それで構いません、よろしくお願いします!」
全員が一斉に頭を下げてきたので、もはや教えるしかなかった。
知り合ったきっかけとか、どう付き合って結婚したかなど、知り合いの話を私は語る。
また妊娠・出産・育児に関しても、知ってるかぎりの事を話した。
又聞きなので実に曖昧だ。それでも彼女らはメモを取りながら、真面目に聞いてくる。
質問は聞いているだけで恥ずかしくなるような内容で、答える私も口にする度に顔が熱くなる。
それでも、しどろもどろになりながらも言葉を紡いだ。
もしこれが、
「先生、今日の下着の色は? へっへへへ」
などと女教師をからかう男子生徒だったら無視できたが、みんな真剣なので、私もそれに応えるしかなかった。
メンタル・ライフがどんどん削られていく。そして痛いとこも突いてくる。
「美人なのに先生に経験がないのは、やはり大災害の影響でしょうか?」
「え、ええ。生活するだけで手一杯なので、だ、男性とお付き合いしてる余裕はありませんね……」
「なるほど、仕方ないですね」
私は思わず嘘を言ってしまった。絶対に言えない。
本当は好きな人がいて、どうしても諦めきれずにいるからだ。
所長には奥さんがいるので、完全にアウト。
かといって強引に迫ることもできず、心はズキズキと痛む。
「そろそろ授業も終わりの時間ですね」
「また明日もよろしくお願いします」
「…………はい」
長い苦悶の時間がようやく終わり、どっと疲れが押し寄せていた。
私は、めった打ちにされたピッチャーの気分だった。もうライフはマイナス。
これがしばらく続くのかと思うと、気が滅入る。
「大丈夫か?」
「ええ……何も……問題ありません」
食堂で落ち込んでた私を見て、アラシ司令は気遣ってくれたが、何も言えなかった。
男の人に、「子供の作り方、教えてまーす♡」などと言えるわけがない!
それでも気を奮い立たせ、空元気を出して頑張ることにしたのだが……
「処女先生! 体位を教えて下さい! できれば実践で‼」
「いやああああああああああっ!」
この作品がお気に召しましたら、ご感想などお寄せいただけましたら幸いです。
今後の執筆の励みになります。




