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神力の少年兵  作者: 夢野楽人
第二章 動乱編

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同じ捕虜でも待遇差がひどい件

 人の気配がなくなると、男はおもむろに見張りの女に話しかけた。


「なあ……アンタ。とっておきの情報があるんだが、知りたくないか? これはアンタの手柄になるぞ」

「本当か?」


「ああ話すから、この縄を切っちゃくれねえか? 喋るにも痛くてたまらん」

「いいだろ」


 見張りがナイフで縄を切ると、


「ありがと、よっ!」


 男はいきなり、腹めがけて拳をくりだす。見張りを倒して逃げ出す算段だった。

 手柄に釣られて騙された女を、出し抜いたつもりだったが、


「ぎゃあああああ! いてええええ!」


 男は拳を押さえながら、のたうち回る。合金に覆われた腹部を思い切り殴れば、指の骨を折るのは当たり前。

 見張りの正体は女アンドロイドで、この騒動は俺が仕組んだ芝居である。


 いかに男が卑劣な存在であるかを、部下達に教えるのが目的で、隠しカメラで全員が様子を見ていた。

 ロボットと気づかなかった馬鹿男を、アンドロイドがつまみあげて指示を仰いでくる。


「司令、コイツをどういたしますか? 殺しますか?」


『尋問するから、そこまではしなくていい。だが逃げようとした罰として、腕を軽く折っとけ』


「了解しました」


 アンドロイドが無造作に男の腕を強く掴むと、ボキッと音がして男は悲鳴を上げる。


「ぐぎゃああああっ‼」


『皆、見ての通りだ。ゴロツキに「反省」という二文字はなく、懲りることを知らない。男はジャングルの野獣と思え。ただ草食系の操縦士は客室に案内して、美味い飯でも食わせてやるといい。素直に協力するはずだ。馬鹿男の方は徹底的にやれ、狂華。ただ死ぬとマズいから「火釘」だけでいい、それで十分だ』


「任務、承りました。今度は上手くやってみせます!」


 殴打や刃物を使った拷問だと、死ぬ確率が高いので、俺は別の方法を指示する。


 急所や太い動脈を避けて、長い釘を身体に打ち込みライターで炙ると、熱せられた金属が体内を焼いて苦しむことになる。


 死にはしないが火傷は治らず、放っておいても痛みは続き、治療しなければ壊死する。

 これに耐えられるはずもなく、馬鹿男はあっさり口を割った。

 


 二日後、操縦士は船の艦橋にいた。


「定時報告、殲滅作戦は順調です」


『そうか……ん、他の奴らが見当たらねえな? どこに行った?』


「それは、あの……皆様、お楽しみ中です……」


『ちっ! そういうことか。上手いことやりやがったな、俺も行けばよかったぜ。土産(・・)を忘れんな、と伝えておけ! いいな⁈』


「わ、わかりました」


 傭兵団本部との通信は切れた。隣にいた俺は操縦士を褒め称える。


「よくやってくれた! これでアイツらは油断するだろう。うな重を昼飯に出そう!」


「ありがとうございます。アレ、美味しいですからね」


 食い物などで買収した結果、操縦士は味方になってくれた。拷問するだけが手段ではない。

 傭兵団での扱いは酷かったらしく、彼はかなり苛められたそうだ。


 それでも金を稼ぐために我慢していたが、部隊が全滅したとなれば、もはや従う理由もない。

 俺は船内にあった金を丸ごと彼に渡し、片が付き次第、自由の身にすると約束した。


「い、いいんですか⁈ これだけあれば、家族が助かります!」


「ああ、俺達に金は必要ないからな。その代わり、最後まで付き合ってくれ。その腕を見込んでのことだ」


「わかりました。僕も少しくらいは、アイツらにやり返したい。安い給金でコキ使いやがって!」


 彼は拳を握りしめて言ったので、信用できるだろう。


 そして船の操縦技術やコツを、惜しみなく教えてくれた。現在の航路情報もだ。


 経験と知識は金では買えないので、本当にありがたい。これで殴り込み作戦が捗る。


 やはり、人の恨みは買うものではないな。一連のやりとりを見ていた仲間達も、しみじみと感じたようだ。

 


 クララも客人として扱ってるので、待遇に問題はないはずなのだが、頼んだ仕事で少し悩んでるようだった。

 そこで声をかけてみたが、


「部下達が何かしたか?」


「いえ、大丈夫です……大したことでは……ないです」


 とだけ答えて口を噤んでしまう。言いたくないこともあるだろうし、俺はそっとしておくことにした。

 あと数日で解放するしな、所長との約束は守る。


 そして司令室に、狂華が報告にくる。


「洗いざらい吐かせました」


「よくやってくれた、狂華」


「ありがとうございます、司令!」


 褒められて、狂華は嬉しそうにしていた。どこか恥じらいを見せる乙女である。

 もっとも尋問の最中は性格は一変し、とても人には見せられないが。


「となると馬鹿男は用済みだな、アンドロイドに始末させるか」


 刃向かってくる奴を生かしておいても、ろくなことにはならない。

 情けをかけたところで、いずれ復讐に来るだけなので消すことにした。


「私どもで、やりましょうか?」


「いや、もう汚れ仕事はやらなくていい。時間の無駄だし、お前達に余計な負担をかけたくない」


「了解しました、失礼します…………やさしい」


 狂華は嬉しそうにしながら、司令室を出ていった。なぜだ?

 俺は作戦立案で忙しくなり、男のことなど頭から消えていた……。


  ◇◇◇


 狂華は上官である、志乃に報告していた。その隣には静香がいる。


「そうか……我らがPTSDになるのを、司令は心配してくださったのだな」


「今まで散々殺し合いをしてきて、何ともないから、私達は精神が崩壊しないように作られてるんでしょ。アラシは気にすることないのにね」


「むしろ獣をさばくほうが、精神的にきついです」


「まったくだ!」


 三人は笑った後で、目つきが変わった。


「アンドロイドにやらせるわけにはいかんな」

「ええ、ケジメは私達の手でつけないと収まらない。サブ・マスター権限で止めましょう」

「みんな、馬鹿男を始末したがってます」


 ちなみにジョンはトドメを刺され、とっくにあの世行き。

 天女団は自分達を殺しに来た、ガルバス傭兵団を許せなかったので、残った男も無残な死を遂げることになる。

 誰がやったかは不明で、無数の傷跡だけが身体に残っていた。

 

 男のことなどすぐに忘れ、静香と志乃は目の回るような忙しさだった。


「先の防衛戦もそうだが、作戦参加希望者が多くて困る。もう時間もないのに……」


「みんな手柄をあげたいからね。アジト殴り込み部隊の人選が大変……頭が痛いわ」


 二人は頭を悩ましていた。

この作品がお気に召しましたら、ご感想などお寄せいただけましたら幸いです。

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