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神力の少年兵  作者: 夢野楽人
第二章 動乱編

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悪党に墓標はない

「逃げろ、逃げるんだー!」


「誰が逃がすかー!」


 降伏できないと分かり、残った男達は蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。


「射撃中止!」

 静香の命令で銃撃は止み、二組の追撃部隊が一斉に駆けだす。


 一つは紅美を中心とした、軽量化された機甲羽衣を装備し、高い機動力を誇る接近戦特化部隊。


 もう一つは獣人達の部隊で、新たに開発した獣装外骨格(ビーストフレーム)を体に装着していた。

 装甲はなく骨組みだけだが、軽量で獣人のパワーを数倍に引き上げることができる。

 まともに対峙すれば、その姿すら捉えられないだろう。

 

 足の遅い男は追いつかれ、紅美がジャンプして襲いかかる。


「くらえ!」


 後頭部への飛び膝蹴りだ。そのまま頭を持って体重を乗せ、顔面を地面に叩きつける!


 プロレス技の仔牛の焼印押しカーフ・ブランディングだ。


「んぎゃあああ!」


 バイザーが破れて破片が顔面に突き刺さり、男は悲鳴を上げた。

 まだ紅美の攻撃は終わらない。


「もう一丁!」


 うつ伏せになった男を踏みつけて、両腕を掴んで背後に引っ張り上げていく。

 ビキッ、バキッ!と音がして肩が破壊され、激痛で男は気絶して再起不能。


 トドメは後続に任せて、紅美は次の獲物を探すがいない。


「なんだ、もう終わりかよ。弱い奴らだ。いや……夏美達が強すぎるだけか」


 かつては闘った獣人だが、今では気の合う仲間で頼もしかった。

 何も考えずに敵に突っ込む脳筋達である。



 B723改め、夏美は四つ足で地を蹴り、瞬く間に逃げていた男に追いついていた。


「ひぃいいいい! 助けてくれえ‼」


「死ねニャアああ!」


 大ジャンプして男の両肩に跨がり、そのまま首を反らせて鋼の爪を突き刺す。

 薄い装甲など、高周波振動爪(ソニック・クロー)の前では、布を裂くようなものだった。


 首から鮮血を吹き上げて男は倒れる。返り血を浴びる前に、夏美は次の敵に襲いかかっていた。

 獣人達の動きは凄まじく、まるで躊躇がない。男達は狩られる獲物でしかなかった。


 血煙が舞い上がり、修羅場と化した戦場に悲鳴が響く……そして敵はいなくなった。


「勝ったニャ!」

「にゃおおおぉぉん……」

「えいえい、オー!」


 獣人の遠吠えが勝ち鬨となった。


 ◇◇◇


 俺は応接室のモニター越しに戦況を見届け、通信回線を開いて全員をねぎらった。


「皆よくやってくれた。だが、勝利を喜ぶ前に周囲を警戒しろ。もし生き残りがいたら捕まえておけ」


『了解しました』


「本部AI、無人機に命令だ。敵死体を集めて遺体袋に詰めろ、石灰処理も忘れるな。回収した遺体はコンテナに積んでおけ。墓穴などいらん。この惑星ほしに埋めてやる気はない!」


『はい、マスター』


「あとは各自、大隊長の指示に従うように、以上」


 後処理は静香と志乃に任せた。

 勝って浮かれてる暇はなく、次の作戦の準備をしなくてはならなかった。

 敵のアジトに殴り込みだ! 絶対にケジメを取らせる!


 おっとその前に、震えてるクララを落ち着かせないとな。


 ボカシのない地獄絵図を見せられては、トラウマになるかもしれんな。めんご、めんご。

 だが戦闘集団である俺達と交渉にきた以上、このくらいは覚悟してもらわないと。

 俺がある仕事を頼むと、クララは引き受けてくれた。


 戦いが終わっても、兵士達は忙しい。むしろ後始末の方が大変だ。

 機甲羽衣と武器の整備・点検と、弾薬の補充など休む暇はない。


 戦場の片付けは無人機やドローンがするものの、最終確認は人の手で行われる。不発弾でも残っていたら、後で命取りになりかねないからだ。


 ただ昔のような悲壮感はなく、おしゃべりしながら作業をしていた。


「司令は正しい! 犠牲となった同胞が眠るこの地に、ゲスどもの墓を作ったら、大地が穢れるわ!」

「うんうん、まったくだ。アッチに行った時、戦友に怒られちまう」


「しかし、敵の死体はどうするんだろうな?」

「たぶん、宇宙に捨てるんじゃね?」


 そして、逃げ潜んでいた一人の男が捕まった。やはり全滅させたつもりでも、取りこぼしは必ず出る。なので何度も確認しないと安心はできない。


 ほんのわずかな油断が、命取りになるからな。


『ちっ!』


 モニターで見たその男は不貞不貞しい面構えで、捕らえられてもなお、女達をにらんでいた。

 屈した様子などなく、隙あらば刃向かう気だろう。


 先に捕まった操縦士とは正反対、彼は泣きっぱなしなので気の毒になっていた。

 俺は口に手を当て少し考え込む。さて、コイツらをどうしたものか?


「そういえば、アイツはどうなったかな?」


 ふとジョンを思い出し、尋問を任せてるドS特務班に連絡した。


 隊長の鬼龍院狂華は、平謝りしてくる。


『司令、申し訳ございません。やり過ぎ(・・・・)て死ぬ寸前です。司令に手を出した者を許せず、態度も悪かったので手加減できませんでした。情報を全く引き出せておりません』


「……そうか、俺の指示だから気にするな。残り二人の扱いは慎重に頼む。その前に奴らの本性を暴き、生きた教材になってもらおう。やることは…………」


「了解しました。直ちに準備します!」



 二人は縄で両手を縛られて連行され、それぞれ別室で尋問されることになった。

 口裏合わせを防ぐため、互いの存在は知らせない。


 取り調べが始まる寸前、尋問官がイヤホンで連絡を受ける。


「なにっ! 捕虜が逃げただと⁈ 分かった、今そっちに向かう!」


「しばらく、ジッとしてろ!」


 緊迫した空気が走り、尋問官は部下を引き連れて、慌ただしく部屋を出ていった。

 ドアは開け放れたままになり、残った見張りはたった一人。


 この状況の中、操縦士は大人しくしてたが、傭兵団の男は逃げ出すチャンスとばかりに動きだす。

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