追いかけた先は、あの世
暗がりの向こうから、突如として重機関銃が火を噴いた。
一列に並べられた数挺が絶え間ない閃光を放ち、凄まじい連射音とともに、弾丸の雨が男達に叩き込まれる。
パワードスーツの装甲に火花が散り、衝撃で体がのけぞる。
「ぐっ!」
生身であればとっくにあの世いきで、体は原形をとどめない。
パワードスーツが何とか銃撃を防いでいたが、それも限界がくる。
大口径の重機関銃は凄まじい威力を誇り、いくら新型でも耐えきれなかった。
装甲は軋んで胸部プレートはへこみ、もろい関節部は徐々に破壊され、やがて手足が吹っ飛ぶ。
「ぎゃあああああああ!」
罠にかかり不意打ちをくらっては、ゴロツキどもに為す術はなく、反撃すらかなわない。
割れて裂けた装甲は、身体に食い込んで深手を負わせる。男達は次々と倒れていった。
「くそ、逃げろ!」
後方にいて無傷だった者らは、武器を捨て背を向けて走り出し、宇宙船へ逃げ戻ろうとする。
「一匹も逃がすな! 司令を撃った罪、きっちり償わせてやる!」
「おうっ!」
志乃と部下達は怒り心頭だった。
応接室での様子は隠しカメラを通じて、天女団の誰もが見ていたのだ。
エスパーのアラシはやられないと分かってはいたが、敬愛する者を撃たれて、黙っていられるわけがない。
しかも自分達を、皆殺しにするとぬかしたゲスどもである。
一人たりとも生かしておく気はなかった。
「吶喊!」
隔壁が完全に上がり、中からバイクに乗った女兵士達が飛び出す。機甲羽衣のバイク・トルーパーだ。
女達が片手に持っているのはランス、ではなく電磁式パイルバンカー。
バイクは速度を上げて、逃げてる男達にあっという間に追いつく。
背後をとってからパイルバンカーの先端を、パワードスーツの背面にぴたりと押し当てる。
「死ね!」
トリガーボタンが押されると、杭が轟音とともに撃ち出された。
「ぐはぁ!」
パワードスーツの装甲を軽々と突き破り、人体を貫通して、胸から尖った先端が飛び出す。
新型であろうと、障子紙を破るようなものだった。無敵の兵器などない。
やられた男は、少し苦しんだ後で絶命。杭は逆回転しながら元の位置に戻っていく。
バイク部隊は、次々と敵を血祭りに上げていった。やがて立ってる者はいなくなる。
「残敵なし、これより敵艦の制圧に向かう」
「了解」
バイク部隊は、そのまま男達の船へと向かって行った。分捕るのが目的なので銃は使わない。
目の前にくるとバイクから降り、電撃警棒を持って、開いてる昇降口から乗り込んでいく。
ただ、中に護衛は一人もいなかった。天女団を甘く見ていて、船が奪われるなど想像すらしてないのだ。
それでも慎重に中を進んで艦橋に入ると、
「ひぃいいい! 殺さないで! お願いします!」
一人の男が両手を挙げて、命乞いしてくる。着ていたのはボロい作業服で、武器は持ってなかった。
「僕は操縦士として、雇われただけなんです。死にたくない! びぇえーん!」
「…………」
目の前で号泣されてしまい、これには女達も戸惑う。
流石に殺すのは気が引けたので、志乃に連絡した。
『……後で司令に判断していただこう。捕虜として連れてこい』
「分かりました」
泣いてる男は縛られ、外へと連れ出された。
奪った船には増援部隊が駆けつけ、守りは万全となった。残ってる男達に戻る場所はない。
またノームの電子戦部隊が艦橋に入り、船の制御権を手に入れて、内部データを根こそぎ奪った。
得た情報は琴音と分析班へと転送される。天女団はまるで一つの生き物のようで、その動きに一切の無駄がない。
統率のないガルバス傭兵団とは雲泥の差である。
さて女の尻……弾む胸を追いかけていった男達は、船からかなり離れてしまっていた。
追いつくのに時間がかかり、部隊はバラバラで長蛇の列となっている。
「オラ、待ちやがれ!」
「…………チラッ」
女達はときどき後ろを振り返りながら走っていた。男達を惹きつけ、誘い出すのが役目だった。
天女団の中で、足の速い兵士達が選ばれている。
新型パワードスーツは、力と装甲は高いものの、機動力では機甲羽衣に劣る。
つかず離れずの状態が続いていたが、女達に疲れが見え始め足が遅くなる。
「もう十分でしょう」
「そうね。任務完了」
「つかまえ――――⁈」
先頭の男の手が体にかかる寸前、女達は急加速して離れていく。これは疲れた者の動きではない。
それもそのはず、彼女たちは脚部強化ユニットを足に装着し、ズボンの中に隠していたのだ。
これで疲れた足でも高速で走れる。囮の任務は終わり、あとはバラバラに離脱するだけ。
男達は置いてきぼりにされ、女達は視界から消えていった。
「くそっ、逃げやがった! あとで覚えてやがれ!」
女を取り逃がして苛立ったが、それが男の最後の言葉となった。銃声が木霊し、三方向からの一斉射撃を浴びて倒れ伏した。
ガルバス傭兵団の男達は偽装退却に引っかかり、もはや逃げ場はなかった。
ハニートラップとも言えるだろう。
「くそっ、撃て撃て! ――ぐおっ!」
「か、囲まれてる! どうすりゃいいんだ⁈」
「聞いてねえぞこんなの!」
男達は喚くだけで、反撃すらできない。位置がバラバラでは連携も取れず、まともに銃を撃つことすらできなかった。
どこを向いていいのか迷ってるうちに、集中砲火の餌食となる。
静香が指揮してる部隊は、前列がしゃがんで後列がその上から撃っていた。
それが三方向から同時に攻撃している。隊列に乱れはなく完璧な布陣だ。
圧倒的な弾幕の前には為す術もなく、男達に勝ち目はなかった。
「嘘だ……こんなのありえねえ…………」
現実逃避して動きが止まれば、正確に狙撃されてあの世行き。
「や、やめろ! 降参す――」
手を挙げて降伏しようとしても、今更許されるはずもなく、容赦のない一斉射撃が男を沈黙させる。
静香は怒りをにじませて言い放つ。
「私達を殺しに来ておきながら、殺される覚悟もないのは、ふざけてるわね!」
「全くです、静香様!」
「……皆殺しの刑」
「あっ! 逃げたであります」
「よっしゃあ! アタイらの出番だな‼」
「いくニャア!」
紅美と獣人達が駆け出す。
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