油断と反撃
「はっはははは! たわいもねえ、所詮はお飾りのガキか」
「な、なんてことを! これでは、だまし討ちではありませんか⁈」
「そう怒るなよ。あんたが交渉してたおかげで、こいつは油断してたからよ、感謝するぜ。あとはホムンクルス共を皆殺しにして、生き残った奴らを娼館に売り飛ばせば、後腐れはねえ。これで、そっちの依頼も完了だ。めでたし、めでたしと」
「酷い……これでは、私が片棒を担いだも同然ではありませんか⁈」
「もう遅え、仲間は動き出してる。俺は正面ゲートを開け…………なにっ⁈」
パチパチと、俺は手を叩きながらゆっくりと起き上がる。
障壁を張っていたので、当然ながら無傷だ。クララとジョンは驚いていた。
「本音が聞けて良かったぜ。これで心置きなく、お前らをぶっ殺せるわ!」
「くそっ! 弾が外れたのか⁈」
「いや、ちゃんと額に当たったぜ、良い腕だな。ただ身体に届いてないだけだ」
「まさか貴様、エスパー⁈ くそっ! もう一発……」
「弾は返すぜ、神鉄砲」
「ぎゃあああああ!」
次弾が発射される前に、俺の念弾がジョンの肩を貫く。もう銃は撃てまい。
俺は内線で護衛兵を呼ぶ。
「死なない程度に治療してやれ。あとは徹底的に尋問しろ! 途中で死んでも構わん」
「分かりました司令。コッチに来やがれ、この野郎!」
ジョンは引きずられるようにして、部屋の外へと連れ出された。
「くそったれ……」
痛みのせいか声は小さかった。俺は震えたまま立ってるクララに言った。
「さて、ゴロツキとグルだったあんたを、このまま帰すわけにはいかなくなった」
「違います、無関係です! ……といっても信じてはいただけませんね。私をどうする気ですか……?」
「あんたの上司と直接話がしたい。連絡は取れるか?」
「私が乗ってきた船を中継すれば可能です。通信機を貸してください」
「いいぜ、自由に使ってくれ」
俺は応接室にある、モニター通信機の使用を許可した。
本部基地のAIが周波数を調整して、連絡先とつながる。映ったのは初老の男性。
口髭をたくわえた、厳つく迫力のある顔つきだ。まずはクララに話をさせる。
「……所長すみません。交渉に失敗しました」
『何があった? 詳しく話してみろ? クララ』
「はい、実は…………」
状況説明を聞いた所長は、顔を真っ赤にして激怒した。
『あの糞どもがー! 約束を破りやがったな! 余計な真似をしやがってー! とりあえず無事なんだな⁈ クララ』
「はい、今のとこ危害は加えられてません」
ここで俺が割り込む。
「さて、変わるか。あんたは席を外してくれ」
「分かりました」
クララは部屋を出て行き、俺は通信モニターの前に座る。
「さて、俺が天女団総司令のアラシだ。こうなった以上、そちらの社員は預からせてもらう。無用な危害を加えるつもりはないが、それもあんたの出方次第だ」
『なっ! アラシだと⁈ …………それで要求はなんだ』
「今うちに攻め込んできてる、ガバガバ傭兵団?の雑魚を片付けたら、連中のアジトに乗り込んで潰すつもりだ。この件を外に漏らされると困る。つまりは口止めだ」
『他言無用のブーメラン要求か。分かった、誰にも言わん。他にはないのか?』
「もう一つあるが、それは最後だ。俺らは物が欲しいわけじゃない。片がつき次第、クララ嬢は解放する。あんたへの連絡も許可するから、安否確認を毎日するといい」
『……分かった。ならばこちらも、ガルバス傭兵団の情報を渡そう』
「それは助かるな。約束は必ず守ると誓おう」
こうして所長との話はついた。
俺はクララを呼んで、取り決めた内容を話す。
「……そうですか、分かりました。私は大人しくします」
「軟禁するわけじゃないから、出歩いてもらって構わないぞ。それとココにいる間、頼みたいことがあるが、後にしよう。まずはバカバカ傭兵団の、無様な最期を見ようじゃないか。ははははは!」
名前を覚える気もなく、俺は椅子に腰を下ろして戦況をモニターで見る。
俺が出向くまでもなく、片がつきそうだった……。
◇◇◇
ジョンが本部に入ってから、三十分後。
「よし、行くぞ! ホムンクルスは見つけ次第、撃ち殺せ!」
「はいはい、了解。しかし、もったいねえな。使い捨ての玩具なのによ。殺る前にヤりたかったな」
「何匹かは残るだろ? それで我慢しようや」
傭兵団と名乗っていても、寄せ集めのチンピラで只の犯罪者である。
人を殺すのを何とも思っていない、いかれた野郎達だ。
ろくに戦闘訓練もしてないが、装備だけは良く、新型パワードスーツは機甲羽衣を凌駕する。
これで圧倒できると高をくくり、始めから勝ったつもりでいた。
荒くれ者どもが、三隻の船から次々と降りてくる。総勢120名。
武器の点検をしながら、周囲を警戒するように見回していた。
「……発着場には誰もいねえな。警戒はぬるい、ぬるすぎる」
「所詮は作り物のホムンクルスだ。女の兵士なんて、たかが知れてる」
「ジョンの奴、上手くやったんだろうな? 正面ゲートを開ける手はずになってるが……ん?」
遠くに三人の女兵士が見えた。タンクトップ姿で軍用パンツ、編み上げブーツを履いていた。
武器は持っておらず、パワードスーツの男達に気づいて悲鳴を上げる。
「きやあああああ」
「たすけて、えええ」
完全に棒読み台詞で、わざとらしくその場から逃げ出した。
拡大望遠して女を見てみると、ノーブラで大きな胸を揺らしながら走っている。
これを見て、欲情しない方がおかしい。
荒くれ者達は女とみれば見境なく、手当たり次第に襲いかかっていくのが普通。
「が、我慢できねえ! 股間がスーツに当たって痛てえぞ」
「丸腰相手にビビることはねえな、ヤっちまえ!」
「ひゃっはー! 俺が一番だ!」
統制もなにもなく、約半数が女達を追いかけていく。
しかし、残った男達もいた。
「ちっ、馬鹿野郎どもが。アジトに帰ったら頭にどやされるぞ」
「そうだな、下手すりゃぶっ殺される。俺らは正面口に行こうぜ、まずは仕事を終わらせんとな」
一応リーダーはいるのだが、あってないようなもので、命令など聞く耳をもたず誰もが好き勝手に動く。
ガルバス傭兵団は親玉が暴力で束ねているが、ここには来ていなかった。
相手が女と知ってなめてかかり、手下達に任せたのだ。
隊列も組まず、男達はピラミッド基地へだらだらと近づいていく。
やがて正面ゲートが、重々しい音を立てながらゆっくりと上がり始めた。
「どうやら成功したようだな。少しくらいはジョンを褒めてやるか」
「やめとけ、アイツは直ぐに図に乗る」
「そうだな、はっははははははは!」
笑っていると、突然隔壁の上昇が止まってしまう。まだ半分しかゲートは開いていない。
「なんだ、故障か?」
一人が不用意に近づくと、太い銃口が光に反射して見えた。
「撃て!」
「了解!」
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