女達の欲……要望
兵器会社の男らが、惑星を去ってから数日が過ぎる。
俺が姿を現さなかったのは、総指令官だと知られたくなかったからだ。今後に備え、存在を伏せておきたかった。
志乃が奴らに釘を刺してくれたが、それでも何かしらの動きがあると踏んでいる。
これで引き下がるなら苦労はしない。
拷……尋問、そして奪った宇宙船から手に入れた情報は膨大だった。
これをまとめるのに諜報部を新設し、琴音を情報分析官に任命して仕事を頼んだ。
頭脳明晰なエルフ達とAIの力もあって、資料はあっという間に仕上がり、全体会議で発表することになる。
報告資料は要点だけをまとめ簡潔な内容で見やすい。それでも情報の極わずかだ。
全部を理解するまで時間はかかるだろう。関係ないデータもあるしな。
俺は資料の入ったタブレットを持ち、本部の会議室へと向かう。
中に入ると、
「総員、アラシ司令に敬礼!」
小隊長らが立ち上がって敬礼する。俺が返礼して席に着くと、それを合図に全員が腰を下ろした。
今回はいつもの会議とは違い、内容はライブ配信され、天女団の全員がその様子を見守っている。
俺が今後の方針を決めるので、それだけ重要な会議だ。
大きなアンテナが完成して、強力な電波を発信できるようになったので、これでネットワーク接続が可能になった。ちなみに7Gの高速回線。
あとは機甲羽衣か、モニター端末でそれを受信すればいい。
これでリアルタイムでの情報共有が可能になり、通信も傍受されにくくなった。
まあ、暗号は使うけどな。
「それでは、報告を始めたいと思います」
資料を作った琴音が発表者だ。
全員がタブレットに目を凝らしている。紙はもったいないから使わず、印刷はしなかった。
「今は、星暦1991年のようですね。ほぼ一年前、独立連合共和国軍が一人のエスパーを倒すのに、次元破壊弾を使用しました。その結果、時空歪曲事変が起きて、宇宙は大災害に見舞われました。私達が住んでる惑星は無事でしたが、災害の爪痕はまだ深く残っているようです。そして、そのエスパーこそ、アラシさんです」
皆が俺に注目する。
「……全く記憶はないがな、どうやってココにきたのかもわからん。当時はもっと力があったようだから、俺を恐れて殺そうとしたんだろうよ」
「司令を害そうとしたことは、非情に腹立たしいですが、アラシ司令が現れてくださらなければ、空腹で我らは命を落としていたでしょう」
「うんうん、アラシが獲物を捕ってくれたお陰で、私達は助かった」
「……解体はしんどいけど」
弥生の発言に笑いが起きる。
「それでは続けます。その後の事は皆様が御存じの通りで、私たち亜人も救われ、感謝に堪えません。生活は豊かになって飢える事もなくなりました。しかし、敵がやってきました……」
「司令が予見されてた通りで、これは由々しき事態だ」
「なーに、全員ぶっ潰せばいいだけだろ? アタイがやってやるぜ!」
「簡単に言うな、紅美! 相手は兵器企業だ。機甲羽衣の弱点は知り尽くしてるし、他にも多くの兵器を保有しているだろう。正面からぶつかれば、こっちが撃破されるだけだ」
「かと言って、おとなしく殺される気はないであります!」
「そうだ、そうだ!」「いてこましたれ!」
会議はヒートアップした。
攻めてくると分かっていて、逃げ出すような者は天女団にはいない。
皆、やる気満々である。やっと手に入れた平和を、失うわけにはいかない。
邪魔する者は、一人残らず叩き潰す! 誰もがその思いだ。
俺が手を上げると場は静まった。
「まずは、拷……尋問ご苦労だった静香、志乃。資料を作ってくれた琴音にも感謝だ。脅しはかけておいたが、これで引いたりはしないだろう。弱いと見れば、襲いかかってくるのが人間だ。共和国も俺が生きてると知れば、必ず侵攻してくるはず。となれば敵に備えるしかない」
「我ら一同、アラシ司令とともに戦います!」
「ありがとう志乃。改めて言うが、戦争は絶対になくならない。ならば生き残るには戦うしかなく、自分の身は自分で守るしかないんだ。他人や他国を当てにするな。大国に頼っても、金や資源を奪われるだけで、何もしてはくれない。最悪の場合、そいつらが裏切って敵に回る」
「なるほど、軍事同盟を信じては駄目なんだな、アラシ」
「ああ、そこで今後の方針だ。本部基地は頑丈で重力バリアも張れるから、籠城してもしばらくは持ちこたえられる。その間に俺が遊撃隊を率いて敵を討つ。地下シェルターを各地に築き、そこを拠点にゲリラ戦を展開するつもりだ」
「司令が得意とする、敵陣潜入攻撃ですね。これなら勝てるでしょう」
「ああ陸戦なら勝機はあるが、俺達に空戦能力がないのが問題だ。今は戦闘機はおろか、ミサイル一つ作れん。上空から激しい攻撃をされたら、耐え忍ぶしかないが、反撃の機会がきたら一気に攻め込む!」
「……どうするの?」
「奪った宇宙船で隠れて急接近し、敵艦に乗り込んで強襲をかける。白兵戦なら俺達は負けはしない。狙うは敵旗艦だ! そこでみんなには、艦内制圧訓練をしてもらう」
「やってやるぜ、大将! アタイが先陣を切る!」
「ああだから、私達は本部で無重力訓練をしてたのですね? 司令。敵艦に乗り込んで戦うために」
「その通りだ天音。これからの戦いは宇宙になるだろう。もっとも大災害の影響で、敵は少ないかもしれんが、最悪を想定し油断はしない。あとは船にあるシミュレーターで、操縦を学んでもらう。得点が出るので順位が高かった者には、奪った補給物資の中から、好きな物をやろう」
「おおっ! やっぱり酒だな」
「いやいや、お菓子だろ!」「紅茶、コーヒー!」
「まずいレーション、いらない」
皆欲しい物があるので、会議場は盛り上がった。
ただ訓練するだけでは、やる気は出ない。仲間同士で競い合ってこそ、力は伸びる。
「もちろん、白兵戦の訓練にも報奨品を出す。しかし参加できない者もいるから、残りはくじ引きで配分する。全員分はないが、みんな頑張ってくれ!」
「了解しました!」
これで大半の者は満足するのだが、人の欲望は様々で大変だ。
そして俺に別な要望を出してくる。女達は猛烈に迫ってくるので、正直恐い。
「いつも通り、別なものでもいいんですよね⁈ ねっ、司令!」
「あ、ああ……俺ができる範囲でな」
「一緒にお食事してください!」「格闘術の御指導お願いします。特に寝技!」
「私とお風呂に入りましょう‼」
「ゴラぁ!」
笑いと怒号が飛び交い、会議場がやかましくなると、鞭を叩きつけて志乃が一喝した。
「私だってしたことないのに、抜け駆けすんじゃない! ……ゴホン、失礼しました。それでは定例会議を進めます。司令」
「……頼む」
男は俺一人しかいないから、誰もが興味津々なのだろう。異性に関心を持つのは、ごく自然なことだ。
まだ子供だからナニをするわけでもないが、過度なスキンシップは止めてくれ。
そういえばアイツらも、ギラついてた時があったような……女おっかねぇ。
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