安心してください、ただの拷問です
◇◇◇
名も無き惑星に、2隻の宇宙船が近づいていた。それは輸送艦で食料などの補給物資が積まれている。
二人の乗組員が、無線で連絡を取り合っていた。
「本部AIに呼びかけてるが反応はない。そっちはどうだ?」
『こっちも応答はない。大災害がようやく収まって、すでに半年以上が過ぎているからな。惑星に被害はなさそうだが、管理AIに何かあったのかもしれん』
「ホムンクルス共は飢え死にしてるかもな。ははははは!」
『ネズミが死んだところで、気に病む必要はない。我々の仕事は現場の確認と報告。PS開発プロジェクトは撤退が決まってる。パトロンが亡くなって資金は尽きたし、今はそれどころじゃない』
「ああ、お互いに別な仕事に回されるだろう。今武器は売れんからな」
宇宙船が大気圏を抜け、地表が見えてくると、未開の地に妙なものを発見した。
「……レールなんてあったか?」
『いや、記録にはない。おいおい列車が走ってるぞ!』
男達は首をかしげる。
彼らは兵器会社の社員で、それぞれハカイダー・ダイナミクス社とブソウ・インダストリーに所属していた。
女のホムンクルスを造り、鐵乙女団と紅蓮姫団を戦わせて、パワードスーツの開発をしてた企業だ。
兵器実験場の惑星に現地確認にやってきて、その変化に驚いていると、いきなり着陸誘導信号が送られてくる。
ただ管理AIからの連絡はなかった。
「行ってみるしかないか」
『ああ、バラバラに行動するよりは、一緒に行った方がいいだろう』
場所はピラミッド基地近くの離着陸場。2隻の宇宙船が着陸すると、多数の兵士達が迎えにきていた。
しかし、これは本来ありえないことだった。本部は立ち入り禁止でホムンクルスは入れないはず。
タラップから降りた男二人は、笑顔の東雲志乃から敬礼される。
「ご苦労様です。指令官の命により、お迎えに上がりました。物資の搬出は我々が行います」
「……そうか、ならばロックを解除しよう」
男達は携帯端末を取り出して操作すると、輸送艦のハッチが開いていく。
すかさず兵士達が中のコンテナを、大型のフォークリフトで運び出す。
「それでは私についてきてください。指令官がお待ちです」
「分かった……」
志乃の後について行きながら、二人は会話する。
「これは、AIが故障したんじゃないか?」
「その可能性が高いな。代理のアンドロイドが、兵士達に命令してるんだと思う」
「調査が終わったら、さっさと帰るとしよう。あとは放置するだけだ。どうせもう二度とココにくることはない」
「そうだな、直す必要もない」
本部の中に入ると、なぜか二人は別々の部屋へと案内される。
会社が違うので企業秘密に関わるものと思ってしまい、怪しんだりはしなかった。
しかし狭い部屋には誰もおらず、二つの椅子とテーブルがあるだけだった。
二人の兵士が入ってきて出入口を固めると、志乃の態度は一変した。
先ほどまでの柔らかさは消え失せ、鬼のような形相で男に命令する。
「座れ! 持っている物を全部だせ!」
「お前、何を言ってる⁈」
「ちっ、まだ理解できんらしいな。やれ!」
「はっ!」
二人の兵士が男を拘束して、所持品を全て取り上げる。
力の強いホムンクルスに敵うはずもなく、抵抗は無意味で強引に椅子へ座らされた。
「何をする!」
「痛い目に遭いたくなければ、こちらの質問にだけ答えろ。余計なことは話すな! 貴様の名前と所属、兵器会社の情報、それに宇宙の情勢だ。知っていることをすべて吐け‼」
「ほ、ホムンクルス風情が調子に乗るな! ただの実験体のくせに! おい管理AI、アンドロイドにこいつらを排除させろ!」
しーん……命令したものの全く反応はなかった。管理者がアラシに変わったのを、知る由もない。
志乃は激高して手を上げる。
「誰がモルモットだ! このクソボケがー!」
「ぐわぁ!」
男は鞭に打たれて体が吹き飛んだ。すかさず兵士達が引き起こし、再び椅子へと押し戻す。
これは尋問であり、紛れもない拷問でもあった。
自分達を玩具のように扱ってきた兵器会社には、憎しみしかなく、その手下に容赦する気はない。
志乃達を人間とすら思っていないのが、何より腹立たしい。
(やはり私達を大事にしてくださるのは、アラシ司令だけだ)
そう思いつつ、志乃は何度も鞭を振るった。
これでホムンクルス達が、反乱を起こしたことを男は悟る。やがて屈服し、怯えきった様子で口を開く。
「痛い! わかったから、もう止めてくれ! 話す、全部話す……」
ただの社員なので、拷問には耐えられなかった。男が言ったことは全て録音され、あとで情報は精査される。
そしてもう一人の男は、天音・紅美・静香の三人から尋問されていた。
コッチの方がひどかったかもしれない。
「まずは、殴って責めるか」
「いやいや関節技を試させろ、天音」
「二人とも殺しちゃだめよ。急所は責めないように。今後のために、拷問データをとらないと」
「ぎゃあああああ!」
男は技の実験台にされてしまう。一応手加減はされてるが、たまったものではない。
泣きわめいて、「やめちくり」と懇願しても許されなかった。死んだ仲間に代わってのお仕置きである。
ようやく解放されて喋ったものの、やりすぎたせいで、ある性癖にめざめてしまう。
「もっとぶって~、お姉さ~ん♡」
「この変態野郎がー!」
「ああん♡ 気持ちいぃぃ♡!」
痛みが快感になってしまったようだ。
二人は洗いざらい吐かされたのち、ようやく解放される。
ただし宇宙船は一隻奪われてしまい、天女団の戦利品にされた。
アラシは最後まで姿を見せず、志乃は男達に言った。
「我らを放っておくなら、敵対はしない。それでも攻めてくるというのなら覚悟しろ! 一人残らず叩き潰す‼ 上にはそう伝えろ!」
「…………」
「はーい♡!」
二人は残された船に乗り、惑星を後にした。
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