モノローグ レイレイ
私の名前は、レイレイ。漢字だと泪泪になります。
独立連合共和国軍の少佐という肩書きは捨て、今は偽名を名乗り、特派員として活動してる。
取材と言えばどこに行っても、怪しまれないからね。サングラスをかけトレンチコートを着て目立たない格好に見えますが、中には派手なチャイナドレスを着ています。
セレブのパーティ会場などに忍び込むためで、またいざという時動きやすいので、私の趣味だ。隠れおしゃれでもある。
今、私は中立惑星モレルに来ていた。
共和国や帝国に属さない国は数多く、独自の外交や貿易で成り立っている。
もっとも、富豪たちの隠し資産を預かって潤っている国だ。自国で何かやらかしたら、モレルへ逃げ込めるようになっていた。
大災害の被害はあったものの、その金のおかげで復興はどこよりも早い。そして自然と情報も集まってくる場所だ。
私はアカスリと天馬嵐を探すべく、ある場所へ向かっていた。
富裕層が住む高層マンションからは少し離れた場所に、老朽化した建物が並んでいる。
スラムではないが、貧富の格差ははっきりと分かる。
私は古びたアパートの前に立ち、ドアをノックした。
返事がないのは分かっているので、施錠されてないドアを開けて勝手に中に入る。
空き巣が入ったとしても直ぐに立ち去るだろう。なにせ室内はゴミ屋敷だ。
空になった酒瓶や散らかった生活用品で、足の踏み場すらないが、奥にあるパソコンだけが異彩を放っていた。
「キャシー、いるの?」
大声で名を呼ぶと本と書類の山が動いて、その中からぼさぼさ頭の女が顔を出した。
眠そうな顔で私を見ている。元はいいのに残念美人。もっとも、私と同じで恋愛に興味はない。
彼女の名前は、キャシー・スクラップ。
こう見えても凄腕の探偵で占い師でもある……そして超能力者だ。
腕はいいのだが営業力がないので、依頼がほとんどなくて貧乏生活をしている。
最初に出会った時は、空腹で倒れていた。
私が腹一杯食べさせて、軍の調査を依頼すると見事に真相を突き止めてみせた。
それから私は雇い主兼、彼女の支援者となって面倒を見ている。
軍閥化する前から共和国軍内の不正は多かったので、キャシーのお陰で裏側を暴き出すことができた。
後は大伯父の指令官にチクるだけ。そのせいで幹部連中からは嫌われて、天馬嵐と戦うように命令された。私を消したかったのだろう。
既得権益にしがみつき、私腹を肥やす連中ばかりだ! それが当たり前だと思っている。
だから伯父は苦労していた。
寝ぼけてるキャシーは、目をこすりながら言う。
「なんだレイラか……寝る」
「こらあー、仕事しろ! 援助を打ち切るぞ!」
「うう、港区で立ちんぼをするのは嫌だな。ああ、それ以前に声をかけられた例しが、一度もなかった。仕方ない、飯のために我慢しよう」
悪びれず、興味のあることしかしないズボラだった。
そしてゴミの中を漁り始めた。
「ん」
と言いながら、見つけたタブレットを渡してくる。
私は周りを片付けて座る場所をつくり、調査内容を見ていく。
ココに来る前にメールで事情は説明していたが、すでにキャシーの調査はかなり進んでおり、アカスリの尻尾を掴みかけていた。
「……相変わらず早いわね」
「大したことはない。悪徳政治家が逃げる場所は中立惑星か、極秘の私有惑星に決まってる。ただ宇宙航路図には載ってないから、見つけるのは大変だ」
キャシーは心理や行動を読むのが得意で、調査対象になりきって、相手がどう動くかを脳内シミュレーションするのだ。
そして推理する。
「だが見栄っ張りの金持ちが、同じ場所に引きこもっていられるわけがない。友人や知人に見せびらかしたくて、SNSに写真や動画を投稿してしまう。アカスリ本人ではないが、馬鹿な愛人が軽い気持ちで上げてる。旅行にも勝手に出かけてるようだし、愛人を追っていけば、アカスリはいずれ見つかるだろう」
「用心深い元最高評議長も、愛人から足がつくなんて思ってないでしょうね。引き続き調査をお願い。それで彼の方はどう?」
「無理だな、情報が全くないからな」
「……そうよね」
天馬嵐の方は半ばあきらめている。この大災害後では、惑星居住履歴の確認すら不可能だからだ。データは失われてるし、人も亡くなっている。
私がガッカリしてると、突然キャシーが目を見開く。
「なっ⁈」
「どうしたの? キャシー」
「……強烈な念話が聞こえた。これは彼だ! 嵐と言ってる」
「ええええええー!」
詳しい話を聞くと、どうやら三姉妹宛に送られたようで、自身の安否を伝えたらしい。
「記憶を失ったらしいが、あの状況下で生きていただけでも凄いな」
「ええ、流石は宇宙最強のエスパーね。居場所はわかりそう?」
「大体は分かるけど、今は追わない方がいい。三姉妹が捜索に動くはずだし、もし鉢合わせればレイラの命は危うい。しばらく様子見だな」
「そうするわ。アカスリを捜すのに集中するから、ココに私も住むわよ」
「ええ、いやだ。帰れ!」
案の定抵抗してきたが、キャシーは私には逆らえない。
「家賃を払ってるのは誰? まずはゴミ出しと掃除ね。寝場所を確保しないと。あと臭いわよ、服を脱ぎなさい!」
「くっ、スッポンポンになれと言うのか⁈ ああ、弱みを握られた私はレイラに服従するしかない。どんな変態プレイをすればいいんだ?」
「馬鹿なことを言ってないで早くしなさい! この駄目人間!」
私はまず風呂場を掃除し、湯を張ってキャシーをバスタブに放り込んだ。
何日風呂に入っていないのか、見当もつかない。
たまに面倒を見てやらないと、キャシーはゴミに埋もれて暮らす羽目になる。
生活力が皆無。
それでも、その潜在能力は群を抜いてる。
超一流のハッカーだし、使える超能力は読心術と過去視で、探偵にはうってつけだ。
ただ、超能力のことは秘密にしてある。
世の中にはエスパー脅威論があり、過激な集団がいて、排除しようと活動してるらしい。
もしくは利用しようと企む者もいる。
だから世のエスパー達は、目立たないよう密かに暮らしている。私も秘密を漏らしたりはしない。
だらしないとこばかりのキャシーだが、見放せないのは、やはり友人だからだろう。
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