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神力の少年兵  作者: 夢野楽人
第二章 動乱編

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みんな一緒

「俺の名前はテンマ・アラシ。まずはそちらの領分に、無断で入ったことを詫びよう。俺達天女団は、資源と食料を求めて南部にやってきた。できれば交渉したい。ちなみに君らを造った者ではないし、俺の隣にいる女性も造られた存在だ」


「……私達を処分しにきたわけではないのですね?」


「ああ、君らがいるとは知らなかった。なにせ管理AI相手に反乱を起こして、ようやくまとまったばかり。1500人の大所帯だから色んな物が必要でな。何か望みがあれば、遠慮なく言ってくれ」


「そうでしたか、刃向かったのは私達と同じですね。その結果、放棄されましたが……後悔はありません。それでは怪我人や病人がいるので、診ていただけませんか? 薬がないので処置だけでもお願いしたい」


「なにっ⁈ 分かった。今すぐ仲間を呼ぶ!」


 俺が合図すると、静香はうなずいて連絡を入れた。


『炊事班、了解しました。魚と肉を持って行くであります!』


『医療班、直ちに向かいます! 静香様』


 時を置かずして椿と天音の部隊がやってきて、エルフ達の容姿に驚いたものの、急いで調理と治療を始めた。

 米と果物だけではタンパク質不足になって、傷は治りにくくなるし病気になりやすいから、食わせることにしたのだ。


 天音と衛生兵達は病床にかけつけ、診断装置(バイタルスキャナー)を使い、病人に薬を投与した。

 怪我人も消毒と止血の後、縫合と固定が行われた。


「危ない者もいましたが、もう大丈夫です。ですが、この環境下では再び容体が悪化するでしょう。不衛生なので、本部病室への移送を進言します!」


「ご苦労。向こうの代表に話してみるから、他の者も診てやってくれ」


「はっ! 了解しました」


 そして喜びの声が聞こえてきた。


「うまいニャー!」

「みんな、もっと食べるであります!」


 椿が焼いた肉や魚を、ケモ耳達が喜んで頬張っていた。猫だしな。

 小柄な少女達も笑っている。たぶんエルフと獣人・ノームなのだろう。

 俺は代表から礼を言われた。


「本当にありがとうございました。感謝いたします。それでは私についてきてくれませんか? アラシさん」

「ああ」


 俺は護衛を断り、エルフ女と一緒に歩いていく。道すがら聞いてみた。


「あんた頭が良いよな? 全部(・・)分かっているのか?」


「はい、そのように造られましたので。エルフの設定は長命で頭が良く、見目麗しくて、魔法が使えるそうですね……あ、見えてきました」


 そこはコンクリートでできた建物だった。恐らくホムンクルスを造る研究所。

 すでに原形を留めておらず、壁はヒビ割れて草木に建物は覆われていた。


 エルフ女は扉を開けて、俺は一緒に中に入った。明かりはなかったが、窓から差し込む外光が内部を照らしている。たぶん動力切れ。

 やがて所長室と書かれた部屋にきて、エルフ女は保管庫からボロボロの書類を取り出し、俺に手渡してくる。


「これをお読みください。事情が分かると思います」


 俺はソファに座って書類を読み始めた。要約すると静香達と同じで、男の玩具として彼女らは造られた。

 どうやら兵器会社とは別の研究機関らしい。

 この惑星に割り込んできたのか、元からいたのかは分からないが、いずれにせよろくな連中ではない。

 

 志乃らと違うのは、遺伝子改造を加えて亜人種デミヒューマンを造ったことだった。



 エルフやケモ耳とヤりたい!

 新たな人種を創造したい!



 ファンタジーを現実にしようとしやがった。そこに倫理観はない。


 金を持ちすぎると、人はろくでもない欲望に取り憑かれる。


 そして狂科学者マッドサイエンティストは、それを実現しようと禁忌の研究に手を染める。


 糞野郎どもが!


 人は科学を発展させ過ぎたのかもしれない。この分だとモンスターも造ってるんじゃねえーか? あーやだやだ。

 想像したくなかったので、俺は考えるのを止める。エルフ女は言った。


「こうして私達は造られましたが、歩留まり(・・・・)が悪かったようで、ほとんどのホムンクルスは製造過程で死にました。もともと自然界にはいない生物ですから、私を含めた成功例はほんのわずかです」


「……そうか」


「成果の悪さにパトロンは出資を止め、残った私達は引き渡される予定でしたが、連れていかれる前にみんなで暴れました。知能が高く造られたので、洗脳は効きませんでした。そして研究員達は死に、誰も来なくなって今日に至ります……」


 物資がない中でも知識を総動員して米を作り、みんなで協力して生きてきたのだろう。

 しかし、ジリ貧のようだ。亜人達は元気がないように見える。

 人が生きるには食い物以外にも、必要な物があるからな。俺は提案する。


「じゃあ、俺達の仲間にならないか?」


「えっ⁈」


「天女団は俺以外は、女の人造人間だけだ。危害を加える者はいないし、同じ境遇なので上手くやっていけると思うぞ。どっちにしろ病人をココに置いてはおけん」


「感謝の言葉もありません。是非お願いします」


「あと製造番号で呼びたくない。人なんだから、名前をつけさせてくれ……そうだな語呂合わせで、琴音ことねなんかどうだ?」


「琴音……私の名前……うう、ありがとうございます」


 泣かせてしまった。人間扱いされたのが嬉しかったのだろう。

 しばらくして俺達は集落に戻り、琴音は仲間になる話を全員に伝えた。


 椿の餌付けが上手くいったようで、これに反対する者はいなかった。

 やはり美味い食い物は、言葉より説得力がある。


 天音もしっかり面倒を見たようだし、静香と志乃は本部に連絡して、受け入れ準備を進めていた。

 病人や怪我人は本部に送るとして、他の者達は南基地でコッチの生活に慣れてもらう。

 いきなり環境が変わると、人は不安でおかしくなってしまうからな。


 全員の亜人達に名前をつけ、必要なことは仲間達が教えていく。彼女らも素直で協力的だった。

 密林内に詳しく、果実や鉱物の場所を教えてくれたおかげで、基地開発が捗る。


 稲と種籾も貰ったので、ようやく稲作も始められるようになる。

 これはコッチが教わることとなり、農園基地に亜人達がやってくることになった。


 農務兵らは噂していた。


「なんでも司令が猫を拾ったそうよ」

「じゃあ餌をあげないとね。クスクス」


 と笑っていたが、実物を見て驚く。


「よろしくニャア」


「猫は猫でも、猫娘じゃん!」

「わーい、わーい!」


 みんなのマスコットになり可愛がられる。世話係の年少組は喜んで一緒に遊んでいた。


 もっとも獣人は身体強化されており、手足を硬質化させ、爪を伸ばして戦える。

 力もあって足も速い。じゃなきゃ、密林で生きていけなかっただろう。


 エルフの魔法は超能力研究の産物のようで、使いようによっては強力な武器になる。

 ノームは手先が器用な上に、狭い場所に入れるので整備兵をやってもらっている。


 仲間達は彼女らを受け入れ、共に生活するうちに落ち着き、笑顔も見せるようになってきた。

 琴音は言ってくる。


「私達に居場所を与えてくださり、本当にありがとうございます。何なりと命じてくださいね、アラシさん。戦いであろうと喜んで応じます」


「その時は頼む。平和に暮らしたいとこだが、もうすぐ敵がやってくる。戦闘は避けられないだろう……」


 俺はみんなを守るため覚悟を決めていた。

お読みいただきありがとうございます。この作品がお気に召しましたら

ブックマークと★評価よろしくニャア



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