みんな一緒
「俺の名前はテンマ・アラシ。まずはそちらの領分に、無断で入ったことを詫びよう。俺達天女団は、資源と食料を求めて南部にやってきた。できれば交渉したい。ちなみに君らを造った者ではないし、俺の隣にいる女性も造られた存在だ」
「……私達を処分しにきたわけではないのですね?」
「ああ、君らがいるとは知らなかった。なにせ管理AI相手に反乱を起こして、ようやくまとまったばかり。1500人の大所帯だから色んな物が必要でな。何か望みがあれば、遠慮なく言ってくれ」
「そうでしたか、刃向かったのは私達と同じですね。その結果、放棄されましたが……後悔はありません。それでは怪我人や病人がいるので、診ていただけませんか? 薬がないので処置だけでもお願いしたい」
「なにっ⁈ 分かった。今すぐ仲間を呼ぶ!」
俺が合図すると、静香はうなずいて連絡を入れた。
『炊事班、了解しました。魚と肉を持って行くであります!』
『医療班、直ちに向かいます! 静香様』
時を置かずして椿と天音の部隊がやってきて、エルフ達の容姿に驚いたものの、急いで調理と治療を始めた。
米と果物だけではタンパク質不足になって、傷は治りにくくなるし病気になりやすいから、食わせることにしたのだ。
天音と衛生兵達は病床にかけつけ、診断装置を使い、病人に薬を投与した。
怪我人も消毒と止血の後、縫合と固定が行われた。
「危ない者もいましたが、もう大丈夫です。ですが、この環境下では再び容体が悪化するでしょう。不衛生なので、本部病室への移送を進言します!」
「ご苦労。向こうの代表に話してみるから、他の者も診てやってくれ」
「はっ! 了解しました」
そして喜びの声が聞こえてきた。
「うまいニャー!」
「みんな、もっと食べるであります!」
椿が焼いた肉や魚を、ケモ耳達が喜んで頬張っていた。猫だしな。
小柄な少女達も笑っている。たぶんエルフと獣人・ノームなのだろう。
俺は代表から礼を言われた。
「本当にありがとうございました。感謝いたします。それでは私についてきてくれませんか? アラシさん」
「ああ」
俺は護衛を断り、エルフ女と一緒に歩いていく。道すがら聞いてみた。
「あんた頭が良いよな? 全部分かっているのか?」
「はい、そのように造られましたので。エルフの設定は長命で頭が良く、見目麗しくて、魔法が使えるそうですね……あ、見えてきました」
そこはコンクリートでできた建物だった。恐らくホムンクルスを造る研究所。
すでに原形を留めておらず、壁はヒビ割れて草木に建物は覆われていた。
エルフ女は扉を開けて、俺は一緒に中に入った。明かりはなかったが、窓から差し込む外光が内部を照らしている。たぶん動力切れ。
やがて所長室と書かれた部屋にきて、エルフ女は保管庫からボロボロの書類を取り出し、俺に手渡してくる。
「これをお読みください。事情が分かると思います」
俺はソファに座って書類を読み始めた。要約すると静香達と同じで、男の玩具として彼女らは造られた。
どうやら兵器会社とは別の研究機関らしい。
この惑星に割り込んできたのか、元からいたのかは分からないが、いずれにせよろくな連中ではない。
志乃らと違うのは、遺伝子改造を加えて亜人種を造ったことだった。
エルフやケモ耳とヤりたい!
新たな人種を創造したい!
ファンタジーを現実にしようとしやがった。そこに倫理観はない。
金を持ちすぎると、人はろくでもない欲望に取り憑かれる。
そして狂科学者は、それを実現しようと禁忌の研究に手を染める。
糞野郎どもが!
人は科学を発展させ過ぎたのかもしれない。この分だとモンスターも造ってるんじゃねえーか? あーやだやだ。
想像したくなかったので、俺は考えるのを止める。エルフ女は言った。
「こうして私達は造られましたが、歩留まりが悪かったようで、ほとんどのホムンクルスは製造過程で死にました。もともと自然界にはいない生物ですから、私を含めた成功例はほんのわずかです」
「……そうか」
「成果の悪さにパトロンは出資を止め、残った私達は引き渡される予定でしたが、連れていかれる前にみんなで暴れました。知能が高く造られたので、洗脳は効きませんでした。そして研究員達は死に、誰も来なくなって今日に至ります……」
物資がない中でも知識を総動員して米を作り、みんなで協力して生きてきたのだろう。
しかし、ジリ貧のようだ。亜人達は元気がないように見える。
人が生きるには食い物以外にも、必要な物があるからな。俺は提案する。
「じゃあ、俺達の仲間にならないか?」
「えっ⁈」
「天女団は俺以外は、女の人造人間だけだ。危害を加える者はいないし、同じ境遇なので上手くやっていけると思うぞ。どっちにしろ病人をココに置いてはおけん」
「感謝の言葉もありません。是非お願いします」
「あと製造番号で呼びたくない。人なんだから、名前をつけさせてくれ……そうだな語呂合わせで、琴音なんかどうだ?」
「琴音……私の名前……うう、ありがとうございます」
泣かせてしまった。人間扱いされたのが嬉しかったのだろう。
しばらくして俺達は集落に戻り、琴音は仲間になる話を全員に伝えた。
椿の餌付けが上手くいったようで、これに反対する者はいなかった。
やはり美味い食い物は、言葉より説得力がある。
天音もしっかり面倒を見たようだし、静香と志乃は本部に連絡して、受け入れ準備を進めていた。
病人や怪我人は本部に送るとして、他の者達は南基地でコッチの生活に慣れてもらう。
いきなり環境が変わると、人は不安でおかしくなってしまうからな。
全員の亜人達に名前をつけ、必要なことは仲間達が教えていく。彼女らも素直で協力的だった。
密林内に詳しく、果実や鉱物の場所を教えてくれたおかげで、基地開発が捗る。
稲と種籾も貰ったので、ようやく稲作も始められるようになる。
これはコッチが教わることとなり、農園基地に亜人達がやってくることになった。
農務兵らは噂していた。
「なんでも司令が猫を拾ったそうよ」
「じゃあ餌をあげないとね。クスクス」
と笑っていたが、実物を見て驚く。
「よろしくニャア」
「猫は猫でも、猫娘じゃん!」
「わーい、わーい!」
みんなのマスコットになり可愛がられる。世話係の年少組は喜んで一緒に遊んでいた。
もっとも獣人は身体強化されており、手足を硬質化させ、爪を伸ばして戦える。
力もあって足も速い。じゃなきゃ、密林で生きていけなかっただろう。
エルフの魔法は超能力研究の産物のようで、使いようによっては強力な武器になる。
ノームは手先が器用な上に、狭い場所に入れるので整備兵をやってもらっている。
仲間達は彼女らを受け入れ、共に生活するうちに落ち着き、笑顔も見せるようになってきた。
琴音は言ってくる。
「私達に居場所を与えてくださり、本当にありがとうございます。何なりと命じてくださいね、アラシさん。戦いであろうと喜んで応じます」
「その時は頼む。平和に暮らしたいとこだが、もうすぐ敵がやってくる。戦闘は避けられないだろう……」
俺はみんなを守るため覚悟を決めていた。
お読みいただきありがとうございます。この作品がお気に召しましたら
ブックマークと★評価よろしくニャア




