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神力の少年兵  作者: 夢野楽人
第三章 争乱編

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艦内演習

 ――二日目。


 第二種目は、「ボール・ロワイヤル」


 一個のバレーボールを奪いあい、持っている時間だけポイントが入る競技だ。

 これは全員がライバルだ。ただし、ボールを持っている者にしか攻撃できない。

 ボールを持っていない者への攻撃は禁止され、誰かがボールを奪った瞬間、全員の標的になる。


 落ちてるボールは、拾った者に得点権が移る。

 ボールを持っている者の位置は、全員に通知されるので逃げ続けるのは困難。

 大勢が敵に回るし、ボールを持てば片手が塞がるので、ボールの所有者は次々と入れ替わることになる。


 これも時間をおいて再出撃ができた。


「とった!」

「あまいわ!」


 初戦から白熱した展開になり、モニターで観戦してる者達は盛り上がっていた。


 特にある兵士の動きには目を見張る。

 ボールを持たずに下に叩きつけて弾ませ、そのままドリブルで高速移動する。

 これはルール違反ではない。敵に囲まれると、


「はい、あげる……」

「えっ?」


 わざとボールを敵にパスし、受け取った隙に攻撃して再度奪う。

 もしくは同士討ちを誘ったりと、あの手この手でポイントを稼ぐやばい奴がいた。

 誰かは決まっている。俺と志乃と静香は感想をもらす。


「やっぱり、弥生の戦法はえげつないな」

「だが、理にかなっている。それだけ優秀な兵士である証拠だ」

「まあ、優勝候補だからな……やり口はともかく」


 俺達は審査員で全員の能力を見ていた。任務を任せるにあたって参考にする。

 流石に集中砲火を受けて弥生もやられるが、かなりのポイントを稼いで、終わってみれば一番だった。

 団員達は弥生を褒め称えるか、悔しくて文句をつけるかのどちらかだった。


 あと琴音とエルフ達も、かなり健闘していた。超能力は使っていない。


「頭脳労働ばかりでは、いざという時に戦えませんからね。頑張ります」


 仕事はデスクワーク中心なので、体を動かすのは気晴らしになるし、新たなアイデアも浮かぶだろう。


 その一方、ノームや農務兵達は温和な性格なので、試合そのものを嫌がる。

 賞品に釣られることもない。


「……やりたくなーい」

「んだんだ。家畜の世話をしたい」


 俺は容赦なく全員を参加させた。

 ふだんは戦闘訓練を免除しているのだから、せめて月に一度くらいは特訓しないと、非常時に何も出来なくなってしまう。

 今は戦乱の世なので、常に戦う準備をしておく必要がある。敵は待ってくれないからな。


 嫌々やった割には、何人かは好成績を残した。


 肉体労働で体が鍛えられてるからだろう。やる気さえあれば強いのだ。

 こうして、二日目が終わった。



 最終日の種目は、「艦攻防戦」。


 攻撃側(アタッカー)と防衛側(ディフェンダー)に別れて、艦内で戦う。


 防御側は部隊を配置して、艦内部の重要区画(エリア)への侵入を防ぐ。

 攻撃側は外の開いてる所から突入し、交戦しながら要所を制圧していく。


 指揮官は静香と志乃で、二人の直接対決だ。指揮能力を問われる頭脳戦。

 敵の位置情報は分からず、ランダムに選ばれた部隊を指揮するので、かなり難しい。


 さらに兵士の復活はできず、やられたら終わり。


「勝たせてもらうわよ! 志乃」


「ふっ、その台詞そのままお返ししよう! 静香」


 二人は不敵に笑っていた。

 いつも一緒なので天音が嫉妬するくらい、二人の仲は良いが、ライバルでもあるのだ。

 シミュレーションでは何度も対戦しており、互いの手の内は知り尽くしていた。


 さて、実際に人を動かす試合ではどうなるか? 楽しみな戦いである。



 先攻は静香。


「一・二班は艦の腹部から突入、三・四班は艦後方から、電動登高器(パワー・アセンダー)で甲板に上って侵入よ。敵と遭遇したら即退却。五班から八班は待機」


『了解!』


 いきなり本隊を突入させる気はなく、先行部隊に偵察させて、敵の配置を探る作戦だ。

 遭遇した場所・攻撃された方向・敵の数を知れば、防衛側の状況はある程度は読める。

 慎重な静香ならではの作戦で悪くはない。しかし、相手は志乃である。


 しばらくすると部隊から、無線連絡が入った。


『こちら一・二班、左右から敵に挟まれました!』

『三・四班、敵が大杉! うわああああ!』


「えっ……」


 通信が途絶した。いきなり四小隊がやられてしまう。

 しばらくすると、生き残りの数人が戻ってくる。静香は報告を聞いた。


「見たところ、五小隊の五十人ほどが待ち構えていて、数の差で負けました」


「そうか志乃はエリアを守らずに、打って出たわけね。やられたわ」


 重要区画に侵入されたら負けなので、かなり危険な策ではあるが、静香の思考を読んだ志乃が一歩先んじたと言える。

 しかし、まだ試合は終わってはいない。防御側は守る場所が多いので、まだ逆転は可能だった。


「予備隊の九班と十班も動かすわ。全隊、固まって行動しつつ、エリアを奪いに行くわよ!」

「了解!」


 タブレットの艦内図を使い、攻める場所を指示していく。

 手薄になっている区画を見つければ、兵力を集中させて制圧した。

 防御側は部隊を分散せざるを得ないので、数の差で不利となる場面が多い。

 いくつか区画を制圧するも、静香は手応えのなさを感じていた。


「これは、わざと捨ててるわね。各班、敵の陽動に注…………」


『おらあ! 待ちやがれ――!』


 紅美の声を聞いた瞬間、静香は天をあおぐ。

 やるせなく頭をかきむしり、あきらめて現実逃避した。


「ああ、今日はいい天気ね…………あのバカ!」


 くじ運が悪かったとしか言い様がない。紅美を指揮することになった時点で、爆弾を抱えたようなものだった。

 確かに戦闘力だけはあるので、次々と区画を制圧していくのだが、いつものように調子に乗ってしまう。


 罠とも知らずに、逃げた敵を追いかけてしまったのだ。

 これに釣られて他の小隊も、紅美の後を追い、全隊がバラバラになってしまう。


 チャンスを見逃すほど志乃は甘くない。後方に回り込ませた部隊と、待ち伏せしてた部隊で挟み撃ちにしてしまう。


『うわああああ!』


「…………」


 味方部隊は総崩れ。こうなると静香も指揮のしようがなく、もはや挽回は不可能。

 ふて腐れて、ブツブツと恨み言を言うしかない。


 これで終わりかと思いきや、戦闘はまだ続いていた。


「オラオラー! 紅美様のお通りだー!」


「やられたー!」


 味方がやられていく中、紅美が一人で敵を倒し続け、奥まで突き進んでしまう。


「おいおい、マジか⁈」


 これには志乃もたまげて、慌てて命令を出す。


「全隊、なんとしても久遠軍曹を止めろ‼」


『了解しました!』


 あと少し指示が遅れていたら、逆転負けしていただろう。

 最終区画への侵入を何とか防いで、紅美は倒された。弾切れである。


 勝利はしたものの、部隊の半数以上が倒されてしまい、志乃は冷や汗をかいていた。


 攻守交代、今度は静香が守る番になった。

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