モノローグ サラ10
現場に着くのはあっという間、まずは上空から観察します。
ルナの黄龍号が生体スキャナーを使い、怪獣の内部構造を解析し、不明な部分はAIが補足してくれます。
これで怪獣の情報は、ほぼ出そろいました。さあ攻撃……といきたいとこですが、その前に怪獣を移動させないと。
「ルナ、どう?」
「反応があった超音波を見つけたわ。嫌がる音を鳴らして誘導するわ」
黄龍号が人には聞こえない音を出すと、怪獣は方向を変えて、広い空き地へ向かっていきます。
動物で聴覚があれば、忌避音は効くものです。
「よくやったわ、ルナ。久々に全力で行くわよ!」
「周りを気にする必要もねえしな。腕がなるぜ!」
「思い切りいくわ!」
試しにビームを撃ってみましたが、暖簾に腕押しでした。
ここはいつもの技より上の、『神力』を使うしかありません。
危険なので訓練でしか使ったことがなく、隊長からも使うのを禁止されました。
消耗も激しいので封印していた力です。
その威力は凄まじく、大きな街でも軽く吹き飛ばしてしまいます。
私達は風防の穴から、両腕を外に出して操縦をAIに任せました。
手を使う必要があります。先手をとったのはルナ、空がまばゆく光ります。
「神雷光!」
数万アンペアの巨大な雷が、怪獣を直撃しました。
「ギャアース!」
流石に効いたようで、怪獣は倒れます。
「まだまだ、いくぜ! 神紅炎!」
リジーが神力を使うと、炎の輪が怪獣を取り囲み、その巨体を締め上げました。
数万度にも達するプラズマのガス。
これに耐えられる生命体など、そうはいないでしょう。
怪獣は叫びながら転がり回りますが、ガスがなくなるまで消えない炎です。
さて、私の番ですね。妹達に比べると一番地味な技です。
「神凍気流」
正確にはマイクロバーストに近いですが、まず上空に強い寒冷渦を作ります。
これにルナが作った雷雲が重なって、雲の中で冷たい空気が一気に下降を始めます。
ド――――ン!
猛烈な下降気流が冷気の塊となって、怪獣に降り注ぎます。
気化熱によって周囲は急冷され、怪獣の体表が白く染まり、みるみるうちに凍りついていきます。
地面も一面の氷に覆われました。
「やっぱり、姉貴の技が一番おっかねえな。暴風だけでも凄い」
「うんうん。リジー姉さんの炎も、私の雷も止められるからね」
「たいしたことないわよ。これもルナとの合わせ技だし」
自然現象を引き起こす超能力はやはり疲れます。制御を誤れば大惨事になるので、やはり注意が必要です。
怪獣に動きはありませんが……
「まだ生命反応はあるわ、お姉ちゃん」
「マジか⁈ あれだけの攻撃を食らわせてやったのに!」
「でしょうね。恐らくこの怪獣は人工生命体で……兵器。ホムンクルスが宇宙で話題になったようですが、狂科学者という輩は、倫理観はなく平気で兵器を作りますから」
「ろくでもねぇな!」
リジーの気持ちは分かります。隊長も次元破壊弾を撃たれるとは思いもしなかったでしよう。生きていたので良かったですが。
共和国の次に、兵器開発者も始末しないとダメですね。みんなが平和に暮らせない。
まずは目の前の怪獣に集中です。
「氷が解けたら、もう一発お見舞いしてやりましょう」
「うん!」
まだ神力は使えます。連続で放てば怪獣は倒せるはず。
体内にある重力反応炉が、生命を維持してるらしく、みるみるうちに凍った体が解けていきます。頭部が復活すると、怪獣は咆吼をあげました。
「ギャオオォン!」
「なにっ⁈」
いきなり怪獣が空に飛び立ちました。
身体の半分は凍ったままなのに、もの凄い速さで飛び去っていきます。
不利を悟ったのでしょう。
「逃げる気ね。そうはさせないわ!」
私達は戦闘艇で追いかけますが、なかなか追いつけません。
そうこうしているうちに大気圏を抜け、宇宙空間へ出てしまいました。
ここでは水や空気がないので、神力は使えません。
怪獣を仕留めるのは難しくなり、私は悩みました。
このまま追撃するか、あるいは撤退するか。
「姉貴、追いかけようぜ。やれるだけ叩いておこうぜ」
「せめて発信器を撃ち込んでおきたいわ、お姉ちゃん」
「……そうね、そうしましょう」
妹達に促されて、追いかけることにしました。
追い払っただけで満足してはいけませんね。
この怪獣が再び現れたとき、今度は誰かが犠牲になるかもしれない。
次の対応を考えるためにも、まずはデータが必要です。
「私が怪獣を引き付けるから、リジーとルナは死角から攻撃よ!」
「了解したぜ!」
「分かったわ!」
超能力を使わなくとも、姉妹ならではの連係攻撃があります。
これまで、息の合った攻撃で何機もの敵機を撃墜してきました。戦艦も撃沈してます。
今回の相手は怪獣ですが基本は同じ。
「行くわよ!」
蒼龍号を接近させて注意を引くと、怪獣は加速して向かってきました。
私はひらりと躱します。
怪獣の攻撃手段は、EMPと体当たりだけのようで、移動後の姿勢制御や方向転換はかなり甘い。
これなら余裕を持って避けられます。その隙に妹達が攻撃を浴びせました。
「くらいやがれ!」
「ミサイル発射!」
多数のミサイルが怪獣に命中し、爆発が連続して起こりました。
私に気をとられ、EMPを使う間もなかったようです。
「グオオォン!」
直撃をくらった怪獣は、苦しそうに咆哮をあげました。もちろん音は聞こえません。
外殻はかなりボロボロになっています。ビームは効かなくても、ミサイルは効いたようです。
「これは、いけるんじゃね?」
「うんうん!」
私もそう思いました。押せ押せムードで攻めまくります、
しかし突然、機体センサーが異常を知らせてきます。
「炉心温度が急上昇、怪獣が膨れ上がっていく! これはまずい‼ 全機急速離脱!」
咄嗟に妹達の機体は反転しましたが……私は間に合いませんでした。
怪獣が自爆して閃光が走り、蒼龍号は巻き込まれてしまいます。
私はそのまま意識を失いました……。
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