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神力の少年兵  作者: 夢野楽人
第三章 争乱編

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モノローグ サラ10

 現場に着くのはあっという間、まずは上空から観察します。

 ルナの黄龍号が生体スキャナーを使い、怪獣の内部構造を解析し、不明な部分はAIが補足してくれます。


 これで怪獣の情報は、ほぼ出そろいました。さあ攻撃……といきたいとこですが、その前に怪獣を移動させないと。


「ルナ、どう?」

「反応があった超音波を見つけたわ。嫌がる音を鳴らして誘導するわ」


 黄龍号が人には聞こえない音を出すと、怪獣は方向を変えて、広い空き地へ向かっていきます。

 動物で聴覚があれば、忌避音は効くものです。


「よくやったわ、ルナ。久々に全力で行くわよ!」

「周りを気にする必要もねえしな。腕がなるぜ!」

「思い切りいくわ!」


 試しにビームを撃ってみましたが、暖簾(のれん)に腕押しでした。


 ここはいつもの技より上の、『神力(テウルギア)』を使うしかありません。


 危険なので訓練でしか使ったことがなく、隊長からも使うのを禁止されました。

 消耗も激しいので封印していた力です。

 その威力は凄まじく、大きな街でも軽く吹き飛ばしてしまいます。


 私達は風防(キャノピー)の穴から、両腕を外に出して操縦をAIに任せました。

 手を使う必要があります。先手をとったのはルナ、空がまばゆく光ります。


「神雷光(メガフラッシュ)!」

 数万アンペアの巨大な雷が、怪獣を直撃しました。


「ギャアース!」


 流石に効いたようで、怪獣は倒れます。


「まだまだ、いくぜ! 神紅炎(プロミネンス)!」


 リジーが神力を使うと、炎の輪が怪獣を取り囲み、その巨体を締め上げました。

 数万度にも達するプラズマのガス。


 これに耐えられる生命体など、そうはいないでしょう。

 怪獣は叫びながら転がり回りますが、ガスがなくなるまで消えない炎です。


 さて、私の番ですね。妹達に比べると一番地味な技です。


「神凍気流(ダウンバースト)」


 正確にはマイクロバーストに近いですが、まず上空に強い寒冷渦(かんれいうず)を作ります。


 これにルナが作った雷雲が重なって、雲の中で冷たい空気が一気に下降を始めます。


 ド――――ン!


 猛烈な下降気流が冷気の塊となって、怪獣に降り注ぎます。

 気化熱によって周囲は急冷され、怪獣の体表が白く染まり、みるみるうちに凍りついていきます。


 地面も一面の氷に覆われました。


「やっぱり、姉貴の技が一番おっかねえな。暴風だけでも凄い」

「うんうん。リジー姉さんの炎も、私の雷も止められるからね」

「たいしたことないわよ。これもルナとの合わせ技だし」


 自然現象を引き起こす超能力はやはり疲れます。制御を誤れば大惨事になるので、やはり注意が必要です。

 怪獣に動きはありませんが……


「まだ生命反応はあるわ、お姉ちゃん」


「マジか⁈ あれだけの攻撃を食らわせてやったのに!」


「でしょうね。恐らくこの怪獣は人工生命体で……兵器。ホムンクルスが宇宙で話題になったようですが、狂科学者《マッド・サイエンティスト》という輩は、倫理観はなく平気で兵器を作りますから」


「ろくでもねぇな!」


 リジーの気持ちは分かります。隊長も次元破壊弾《アストラル・ブレイカー》を撃たれるとは思いもしなかったでしよう。生きていたので良かったですが。

 共和国の次に、兵器開発者も始末しないとダメですね。みんなが平和に暮らせない。


 まずは目の前の怪獣に集中です。


「氷が解けたら、もう一発お見舞いしてやりましょう」

「うん!」


 まだ神力は使えます。連続で放てば怪獣は倒せるはず。

 体内にある重力反応炉が、生命を維持してるらしく、みるみるうちに凍った体が解けていきます。頭部が復活すると、怪獣は咆吼をあげました。


「ギャオオォン!」

「なにっ⁈」


 いきなり怪獣が空に飛び立ちました。

 身体の半分は凍ったままなのに、もの凄い速さで飛び去っていきます。

 不利を悟ったのでしょう。


「逃げる気ね。そうはさせないわ!」


 私達は戦闘艇で追いかけますが、なかなか追いつけません。

 そうこうしているうちに大気圏を抜け、宇宙空間へ出てしまいました。

 ここでは水や空気がないので、神力(テウルギア)は使えません。

 怪獣を仕留めるのは難しくなり、私は悩みました。


 このまま追撃するか、あるいは撤退するか。


「姉貴、追いかけようぜ。やれるだけ叩いておこうぜ」

「せめて発信器を撃ち込んでおきたいわ、お姉ちゃん」

「……そうね、そうしましょう」


 妹達に促(うなが)されて、追いかけることにしました。

 追い払っただけで満足してはいけませんね。


 この怪獣が再び現れたとき、今度は誰かが犠牲になるかもしれない。

 次の対応を考えるためにも、まずはデータが必要です。 


「私が怪獣を引き付けるから、リジーとルナは死角から攻撃よ!」

「了解したぜ!」

「分かったわ!」


 超能力を使わなくとも、姉妹ならではの連係攻撃があります。

 これまで、息の合った攻撃で何機もの敵機を撃墜してきました。戦艦も撃沈してます。

 今回の相手は怪獣ですが基本は同じ。


「行くわよ!」


 蒼龍号を接近させて注意を引くと、怪獣は加速して向かってきました。

私はひらりと躱します。

 怪獣の攻撃手段は、EMPと体当たりだけのようで、移動後の姿勢制御や方向転換はかなり甘い。


 これなら余裕を持って避けられます。その隙に妹達が攻撃を浴びせました。


「くらいやがれ!」

「ミサイル発射!」


 多数のミサイルが怪獣に命中し、爆発が連続して起こりました。

 私に気をとられ、EMPを使う間もなかったようです。


「グオオォン!」


 直撃をくらった怪獣は、苦しそうに咆哮をあげました。もちろん音は聞こえません。

 外殻はかなりボロボロになっています。ビームは効かなくても、ミサイルは効いたようです。


「これは、いけるんじゃね?」

「うんうん!」


 私もそう思いました。押せ押せムードで攻めまくります、

 しかし突然、機体センサーが異常を知らせてきます。


「炉心温度が急上昇、怪獣が膨れ上がっていく! これはまずい‼ 全機急速離脱!」


 咄嗟に妹達の機体は反転しましたが……私は間に合いませんでした。


 怪獣が自爆して閃光が走り、蒼龍号は巻き込まれてしまいます。


 私はそのまま意識を失いました……。

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