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神力の少年兵  作者: 夢野楽人
第三章 争乱編

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モノローグ サラ9

 私達はランボー星から出た後、チャーター船で過ごしていました。

 船内でニュースを見ていると、同盟の勝利宣言が報じられました。

 それから三日後になって、ようやくマルクスが行方不明だと公表されます。


 いつまでも国民に隠し通せず、仕方なく情報を開示するしかなかったのでしょう。

 どうやら、まだ遺体は発見されてませんね。


「ふん、ろくに現場も調べてないんだろうな? 姉貴」


「ええ、マルクスの不在を隠すために、マンションの現場検証はしてないでしょうね」


「それに、国民の大半は『マルクスも(・)逃げた!』と思っているわ。同盟に敗北したし、アカスリの前例があるからね。責任を取らせるため、捜索を求める世論が高まるでしょう。私もネットでデマを流すし、誰も死んでるとは思わないわ。うふふふ」


 私達は笑いました。これでしばらくは、同盟領に攻め込まれる心配はなくなりました。 

 他の上級評議員の動きは気になりますが、距離があるのでランボー星とその傘下を、わざわざ助けにはこないでしょう。


 その間に、ランボー星では下級評議員による主導権争いが始まるはず。

 独裁者マルクスが不在の今、誰もが権力を手に入れようと動き出すでしょう。

 ああ、醜くておぞましい。


 その争いが長引けば長引くほど、ランボー星の国力は失われていき、甘い汁を吸ってきた連中は苦しむことになる。ざまあみろ!

 地方惑星を食い物にしてきたのですから、当然の報いです。


 そもそも私達にとって、共和国は怨敵なのですから容赦はしません。



 しばらくして、とある中立惑星の宇宙港に到着しました。

 ここで返船(へんせん)し、私達は停泊していたファミリー号へと向かいます。

 同盟に一時あずけていましたが、しっかりと整備されて、無事に戻ってきました。


 久しぶりの我が家です。乗降ハッチが開き、私達は中に入ります。


「お帰りなさいませ、サラ様、リジー様、ルナ様」


 出迎えてくれたのは、メイドアンドロイドのエマでした。


 彼女は炊事・洗濯・掃除をこなす家政婦ロボットで、私達が不在の間は船の管理もしてくれます。


「ただいま、エマ。何か変わったことは?」

「特にはございませんが、クラリス様からメールが届いております」


「たぶん、定時連絡ね。そろそろ直接会って話し合わないと」


「うん、お姉ちゃん。これでしばらく戦争はなくなるから、天馬団は休業して、お兄ちゃんを捜しに行きましょう」


「ルナに賛成だ。早く兄貴を見つけて保護しないと、夜もおちおち眠れん」

「そうね、クスクス」


 妹達も思いは同じで、早く隊長に会いたいのです。

 容姿が変わって少年になったようですが、成長を待てばいいだけで、育てた後はお楽しみ。そっちの方が燃えそうです!


 クラリスや同盟本部に電子メールを送り、エマが煎れた紅茶を飲んで一息つきました。


 妹達もラウンジでくつろいでいました――突然! 警報が鳴り響きます。


「何事⁈」

「今、調べるわ!」


 ルナが端末を操作すると、壁の大型モニターに、複数の映像が表示されました。

 どうやら近くで爆発が起きたようです。事故かと思いましたが、何やら様子がおかしい。


「おいおい、戦闘艇がやってきたぜ!」

「偵察ドローンを飛ばすわ!」


 監視カメラの映像だけでは、はっきり分かりませんから、ルナの良い判断です。

 これも隊長から教えられた教訓。

「状況が分からないまま下手に動くな。最悪、民間人を巻きこんじまう」

 なので私達は慎重に動きます。


 やがて、ドローンからの映像が送られてくると、


「なんだありゃ⁈」

「あんな生き物、見たことないわ!」

「まるで怪獣……」


 モニターに映ったのは、四つ足の巨大な生物。推定で体長15㍍、体重はおよそ80㌧。

 全身を黒灰色の硬い外殻が覆い、ところどころに青白い発光が走っています。

 口には肉食恐竜のような鋭い牙が並び、額からは一本の巨大な角(つの)が伸びています。

 気になったのは金属の腹部で、巧妙に隠していますが、あれはたぶん重力反応炉。


 私達は驚きました。しばらく固まってましたが、私は頭を振って動きます。


「エマ、該当する動物はある?」

「検索中…………いえ、発見登録された中には存在しません」

「そう、未発見動物にしてはおかしいわね……」


 怪しいのは確かですが、正体を探ってる場合ではありません。何とかしないと。


「防衛隊の攻撃が始まったぜ!」

「ビームが効いてないわ!」


 数機の戦闘艇は怪獣を攻撃しますが、ビームを受けても怯む様子がありません。

 これは外殻がケイ素系で、かなりの高温にも耐えられるのでしょう。

 今度はミサイルで攻撃すると、怪獣が咆吼を上げて、頭部の角が光りました。


「電磁パルス(EMP)!」


 ミサイルは命中することなく、途中で爆発するか迷走してしまいます。

 打つ手なし。ヤケクソになった一機の戦闘艇が、怪獣に接近してバルカン砲を浴びせますが、ダメージは与えられず反撃されて墜落しました。パイロットは脱出したようです。


「姉貴どうする?」

「もちろん行くわよ!」

「うん!」


 このままでは街が破壊されてしまいます。それを見過ごせるわけがない。

 隊長でしたら、もうスッ飛んでいたでしょう。


 ただ出撃前にやることがあります。まず、この惑星の防衛隊本部と連絡をとりました。

 それなりに伝手はあるので、すぐに通信がつながりました。


「こちらは天女団、元辺境惑星同盟軍司令官のサラ。責任者と話がしたい」


『こちらは防衛軍司令のトム。噂の三姉妹か? 今は立て込んでいるのだが……』


「状況は把握している。未確認生物の撃退に協力をしたい」


『その申し出はありがたいが、我らの攻撃は効果がなかった。なにか手があるのか?』


「私達なら、別の手段を試せるかもしれない。超能力者(エスパー)だからな」


『……分かった。協力に感謝する。攻撃は任せよう。こちらは民間人の救助に専念する』

「了解した」


 勝手に戦うわけにはいかないので、まずは軍の許可をもらいました。

 その間に妹達は、戦闘艇の発進準備をしていました。私が指示するまでもありません。

 パイロットスーツに着替えながら作戦を決めて、妹達と一緒に格納庫へ急ぎます。


 私達の愛機の名は蒼龍、緋龍、黄龍。


 改造と改良を重ねたので、並の戦闘艇とは性能が段違いです。

 それぞれ操縦席に乗り込み、発進準備をします。


「みんな、いくわよ!」

「おう! 姉貴」

「うん! お姉ちゃん」


 私達は飛び立ちました。

この作品がお気に召しましたら、ご感想などお寄せいただけましたら幸いです。

今後の執筆の励みになります。


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