モノローグ サラ9
私達はランボー星から出た後、チャーター船で過ごしていました。
船内でニュースを見ていると、同盟の勝利宣言が報じられました。
それから三日後になって、ようやくマルクスが行方不明だと公表されます。
いつまでも国民に隠し通せず、仕方なく情報を開示するしかなかったのでしょう。
どうやら、まだ遺体は発見されてませんね。
「ふん、ろくに現場も調べてないんだろうな? 姉貴」
「ええ、マルクスの不在を隠すために、マンションの現場検証はしてないでしょうね」
「それに、国民の大半は『マルクスも逃げた!』と思っているわ。同盟に敗北したし、アカスリの前例があるからね。責任を取らせるため、捜索を求める世論が高まるでしょう。私もネットでデマを流すし、誰も死んでるとは思わないわ。うふふふ」
私達は笑いました。これでしばらくは、同盟領に攻め込まれる心配はなくなりました。
他の上級評議員の動きは気になりますが、距離があるのでランボー星とその傘下を、わざわざ助けにはこないでしょう。
その間に、ランボー星では下級評議員による主導権争いが始まるはず。
独裁者マルクスが不在の今、誰もが権力を手に入れようと動き出すでしょう。
ああ、醜くておぞましい。
その争いが長引けば長引くほど、ランボー星の国力は失われていき、甘い汁を吸ってきた連中は苦しむことになる。ざまあみろ!
地方惑星を食い物にしてきたのですから、当然の報いです。
そもそも私達にとって、共和国は怨敵なのですから容赦はしません。
しばらくして、とある中立惑星の宇宙港に到着しました。
ここで返船し、私達は停泊していたファミリー号へと向かいます。
同盟に一時あずけていましたが、しっかりと整備されて、無事に戻ってきました。
久しぶりの我が家です。乗降ハッチが開き、私達は中に入ります。
「お帰りなさいませ、サラ様、リジー様、ルナ様」
出迎えてくれたのは、メイドアンドロイドのエマでした。
彼女は炊事・洗濯・掃除をこなす家政婦ロボットで、私達が不在の間は船の管理もしてくれます。
「ただいま、エマ。何か変わったことは?」
「特にはございませんが、クラリス様からメールが届いております」
「たぶん、定時連絡ね。そろそろ直接会って話し合わないと」
「うん、お姉ちゃん。これでしばらく戦争はなくなるから、天馬団は休業して、お兄ちゃんを捜しに行きましょう」
「ルナに賛成だ。早く兄貴を見つけて保護しないと、夜もおちおち眠れん」
「そうね、クスクス」
妹達も思いは同じで、早く隊長に会いたいのです。
容姿が変わって少年になったようですが、成長を待てばいいだけで、育てた後はお楽しみ。そっちの方が燃えそうです!
クラリスや同盟本部に電子メールを送り、エマが煎れた紅茶を飲んで一息つきました。
妹達もラウンジでくつろいでいました――突然! 警報が鳴り響きます。
「何事⁈」
「今、調べるわ!」
ルナが端末を操作すると、壁の大型モニターに、複数の映像が表示されました。
どうやら近くで爆発が起きたようです。事故かと思いましたが、何やら様子がおかしい。
「おいおい、戦闘艇がやってきたぜ!」
「偵察ドローンを飛ばすわ!」
監視カメラの映像だけでは、はっきり分かりませんから、ルナの良い判断です。
これも隊長から教えられた教訓。
「状況が分からないまま下手に動くな。最悪、民間人を巻きこんじまう」
なので私達は慎重に動きます。
やがて、ドローンからの映像が送られてくると、
「なんだありゃ⁈」
「あんな生き物、見たことないわ!」
「まるで怪獣……」
モニターに映ったのは、四つ足の巨大な生物。推定で体長15㍍、体重はおよそ80㌧。
全身を黒灰色の硬い外殻が覆い、ところどころに青白い発光が走っています。
口には肉食恐竜のような鋭い牙が並び、額からは一本の巨大な角が伸びています。
気になったのは金属の腹部で、巧妙に隠していますが、あれはたぶん重力反応炉。
私達は驚きました。しばらく固まってましたが、私は頭を振って動きます。
「エマ、該当する動物はある?」
「検索中…………いえ、発見登録された中には存在しません」
「そう、未発見動物にしてはおかしいわね……」
怪しいのは確かですが、正体を探ってる場合ではありません。何とかしないと。
「防衛隊の攻撃が始まったぜ!」
「ビームが効いてないわ!」
数機の戦闘艇は怪獣を攻撃しますが、ビームを受けても怯む様子がありません。
これは外殻がケイ素系で、かなりの高温にも耐えられるのでしょう。
今度はミサイルで攻撃すると、怪獣が咆吼を上げて、頭部の角が光りました。
「電磁パルス!」
ミサイルは命中することなく、途中で爆発するか迷走してしまいます。
打つ手なし。ヤケクソになった一機の戦闘艇が、怪獣に接近してバルカン砲を浴びせますが、ダメージは与えられず反撃されて墜落しました。パイロットは脱出したようです。
「姉貴どうする?」
「もちろん行くわよ!」
「うん!」
このままでは街が破壊されてしまいます。それを見過ごせるわけがない。
隊長でしたら、もうスッ飛んでいたでしょう。
ただ出撃前にやることがあります。まず、この惑星の防衛隊本部と連絡をとりました。
それなりに伝手はあるので、すぐに通信がつながりました。
「こちらは天女団、元辺境惑星同盟軍司令官のサラ。責任者と話がしたい」
『こちらは防衛軍司令のトム。噂の三姉妹か? 今は立て込んでいるのだが……』
「状況は把握している。未確認生物の撃退に協力をしたい」
『その申し出はありがたいが、我らの攻撃は効果がなかった。なにか手があるのか?』
「私達なら、別の手段を試せるかもしれない。超能力者だからな」
『……分かった。協力に感謝する。攻撃は任せよう。こちらは民間人の救助に専念する』
「了解した」
勝手に戦うわけにはいかないので、まずは軍の許可をもらいました。
その間に妹達は、戦闘艇の発進準備をしていました。私が指示するまでもありません。
パイロットスーツに着替えながら作戦を決めて、妹達と一緒に格納庫へ急ぎます。
私達の愛機の名は蒼龍、緋龍、黄龍。
改造と改良を重ねたので、並の戦闘艇とは性能が段違いです。
それぞれ操縦席に乗り込み、発進準備をします。
「みんな、いくわよ!」
「おう! 姉貴」
「うん! お姉ちゃん」
私達は飛び立ちました。
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