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神力の少年兵  作者: 夢野楽人
第三章 争乱編

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全滅、失踪、大混乱

 サラ達は無事にランボー星から出ていった。異変に気づいた者はいない。

 事態が動き出したのは、その日の昼過ぎ。凶報が官邸にもたらされ、蜂の巣をつついたような騒ぎになる。


「遠征軍から、連絡が途絶えました。状況不明!」

「不確定情報ですが、艦隊は全滅したもよう!」

「信じられん!」

「本当かどうか、各方面に確認しろ!」


 政府の情報官達は休む間もなく、必死で働いていた。国の一大事である。

 こんな状況でも、マルクスが女遊びをしてるかと思うと、怒りしか沸いてこない。

 秘書は連絡を取ろうとしたのだが、携帯電話にでるなり、


『やかましい! お前らでなんとかしろ!』


 怒鳴られて、すぐに切られてしまった。

 いつものことなので、時間をおいてから、もう一度電話をかけるも……


『黙れ! 俺が楽しんでるとこを邪魔するな! 殺すぞ!』


 と脅されてしまい、それ以上は連絡しにくくなった。

 マルクスは本気でやりかねない男だから、なおさら恐ろしい。

 仕方なく秘書はショート・メッセージを送り、後で読んでもらうことにした。


「今はとにかく情報収集をしておこう。対応策を考えるにしても、状況が分からなければ話にならん。どうせ上級評議員は、後始末を俺達に押しつけるだけだからな」


「……そうですね。しかし遠征が失敗したとなると、国家の存亡に関わります。果たして、我々にどこまで対処できるのか……」


 官僚達は頭を抱えていた。軍が敗れたことは、皆薄々感じていた。

 もともと遠征計画には無理があったからだ。

 それでも、手をこまねいているわけにはいかず、最善策を講じる必要があった。

 もうマルクスだけの問題ではなく、自分達の身にも関わってくるので、誰もが真剣に仕事に取り組んでいた。


 こうして、慌ただしい一日が過ぎる。マルクスからの連絡はない。



 ――次の日の朝。


 不興を買うのを承知で電話をかけるも、またもや怒鳴りつけられ、切られてしまった。

 それでもめげずに何度もかけるが、マルクスの反応は同じ。


「……これは、絶対におかしい。携帯の位置情報ではマンションからは、動いていないようだが……何かあったのではないか?」


 マルクスが無能だとしても、遠征軍の戦況が気にならないわけがないのだ。

 何しろ侵攻計画を立てて出兵を命じたのは、マルクス本人なのだから。

 異変を感じた秘書は同僚達と一緒に、直接マンションに向かった。


 最上階の入り口でインターホンを鳴らしてみる…………反応がない。


 何度押しても返事はこないが、なぜか携帯にはつながって、罵声だけが返ってくる。


「これは異常事態だ! 責任は俺がとる! 鍵屋じゃ、ここの扉は開けられん。解体業者に連絡してドアを破壊する!」

「分かりました!」


 しばらくして、解体業者がやってくる。

 分厚いドアに近づいて調べると、男は難しい顔をして言った。


「こりゃあ、普通のチェーンソーじゃ無理ですな。鍵の部分だけ、プラズマカッターで溶断するしかありませんぜ。時間もかかりやすが、本当に壊していいんですかい?」

「構わん。あと、このことは他言無用だ」

「へいへい、特別料金さえいただけりゃ、何も言いませんぜ」


 秘書は肯き、電子契約書にサインをすると作業が始まった。

 ここで待っていても仕方ないので、あとは業者に任せて秘書達は下に降り、昼食をとることにした。これから大変な仕事があるので、食わねばならない。

 数時間後、溶断作業は完了し正面扉は開いたものの、各部屋にも鍵がかかっており、開けるのに苦労することになる。


 その前にフロア内で、大声で呼びかけてみた。


「マルクス様ー! どこにいますかー?」

「大丈夫ですかー!」


 もちろん返事はない……ただの屍なのだから。台座が喋ることもなかった。

 もう一度、マルクスの携帯にかけてみるが、フロア内での着信音がしない。


「ここに、スマホはないのか⁈ 一体どこに?」

「調べます…………反応は屋上です!」

「議員はそこにいるのか?」


 慌てて階段をかけ上がり、屋上扉を開けて外に出てみたが誰もいない。

 あったのは、黒いボストンバッグのみ。

 一人が近づこうとしたところ、秘書が慌てて腕を掴んだ。


「待て! 離れろ! いかにも怪しいぞ!」

「あっ、はい!」


 その勘は正しかった。ボン! と音を立ててバッグが爆発したのである。

 幸い規模は小さく被害はなかったが、バッグは黒焦げになって中にあった装置と、大人の玩具の破片が辺りに飛び散った。


「一体なんなんだ……?」


 これは証拠隠滅である。

 バッグの中にはマルクスのスマートフォンと、自動応答装置が入っていたのだ。

 電話をかければ、マルクス本人が返事をしているように聞こえる。

 これに秘書は騙されていた。

 そして、人がバッグに近づくと爆発する仕掛けだったのだ。


 装置は焼け焦げ、玩具の電子部品と混ざりあったので、何が入っていたか調べようもない。

 電話が通じなくなったことだけは確かだ。


 秘書達はしばらく呆然としていたが、気を取り直してマルクスの行方を捜した。

 軍警察に相談すべきなのだが、政府のトップが行方不明などと、公表するわけにはいかない。

 国内はもちろん、地方惑星や同盟にも大きな影響を与えてしまう。


 だから、口の固い者だけで捜索するしかない。これでマルクスの死体でも見つかっていれば、話は簡単だった。

 下級評議員達を集め、臨時の代表を選出すればいい。


 しかし、本人が生きている可能性がある以上、誰も政治を担う権利がないのだ。

 ただの不在では、上級評議員の地位を引き継ぐことはできない。

 表向きは法治国家である以上、法律に従うしかなかった。官僚なら尚更。


「そうだ! ここに来ていた娼婦がいたな、何らかの事情を知ってるはずだ!」


 秘書は三人の女達を思い出した。まさか彼女らがエスパー姉妹で、事件の犯人だとは思いもよらなかった。

 急いで連絡を取ろうとするのも、すでにランボー星を出たあとだった。

 デリヘルの運営先である、ヴィーナス派遣会社に問い合わせて見るも、


『アンに、サツキに、シャル? そのような者は登録されておりませんが……』


「なん…だと…」


 秘書は頭が真っ白になってしまった。もうどうしていいか、分からない。

 名探偵がいたとしても、証拠もなく容疑者も分からないのでは、解決のしようがなかった。ドラマやアニメのように、都合良くはいかない。



 オロオロしているうちに、時間だけが過ぎて、やがてマルクスの不在を隠しきれなくなってしまう。


 数日が経って、辺境惑星同盟が高らかに勝利宣言をしたのだ。

 侵攻してきた艦隊を全滅させたと、誇らしげに宇宙中へ向けて発表したのだ。


『我々、辺境惑星同盟は共和国軍を完全に撃破した! 共和国、恐るるに足らず! 立ち上がれ、抑圧された星民達よ! 共和国の独裁者を打ち倒すのだ!』


 ランボー星はもちろん、宇宙に衝撃が走る。政府には問い合わせが殺到した。


「一体どうなってる⁈ 上級評議員はどこにいる? さっさと出てこい!」

「マルクスに説明させろ!」


 国民の声を抑えきれず、秘書はマルクスが行方不明であると公表するしかなかった。

 これで政府は大混乱に陥る。

この作品がお気に召しましたら、ご感想などお寄せいただけましたら幸いです。

執筆の活力とさせていただきます。

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