モノローグ サラ7
――三カ月前。
「どうやら、マルクス軍が攻めてくるのは遅れるようですね。戦時国債を発行するそうですから、戦費が足りないのでしょう。動員も上手くいっていないようです。その間にこちらも準備を進め、作戦を練り直しましょう」
「はい、サラ司令」
諜報部からの情報で、敵がまだ動けないことが分かりました。これは朗報です。
私達は作戦計画を見直し、戦艦の造船を急ぐとともに、地方惑星に対する離反工作も始めました。
これが思いの他成功して、寝返ってくれる人達が大勢いました。
共和国やマルクスに不満を持つ人は多かった。
徴兵された上に、物資を徴発された恨みがあったから当然です。
「戦いが終わったら、俺達も同盟に入れてくれ」
「分かりました」
進軍の途中で、裏切る約束をした方もいます。やはり戦いたくないのでしょう。
誰だって平和を望んでいるのに、独裁者の命令で戦争にかり出され、命を失うことになればたまったものではありません。
国を守るため? ふざけるな! 自分達の利権を守るためだろうが‼
やはり、元凶を始末しなければなりません。
こうして同盟側の準備は整いました。マルクス軍は時間があったにも関わらず、十分な戦力を集められなかったようです。
千五百隻は予定の半分。しかも三方面に分散させて攻めてくるのですから、バカとしか言い様がない。
こちらにとっては有利で、もう勝ったも同然です。各個撃破のチャンス。
そして、マルクス軍が侵攻を開始しました。さあ、三途の川へ送ってあげましょう。
予定の進軍ルートを変えなかったので、待ち伏せするのは簡単で、戦いは一方的に進みました。
奇襲と罠にはまり、三大将が率いてきた艦隊は全滅しました。
戦勝報告を私達は輸送船の中で聞きました。参謀の興奮が伝わってきます。
『大勝利です! これもサラ司令の作戦があったからこそ! 本当にありがとうございます!』
「上手くいって良かったわ。残敵に警戒しつつ、次の戦いに備えてください」
『はい、皆様方のご無事を祈ります!』
笑顔で敬礼した後、通信は切れました。
私達姉妹は作戦開始前に同盟軍からは離れたので、戦場にいませんでした。
まさかこの一大事に総司令官が不在とは、誰も思わないでしょう。
ファミリー号は残したし、私の映像もあらかじめ録画しておいたので、偽装工作は上手くいくはず。
あとのことは参謀達に全て任せて、私達は敵の本拠地ランボー星へと向かっていました。
目的はただ一つ、マルクスの暗殺です。
全ての艦隊が出払ってる今が最大のチャンス。彼がいては戦争が終わりませんから、必ず仕留めます。
「ランボー星が見えてきたわ、お姉ちゃん」
「防衛は成功したが、あたい達の戦いはこれからだな? 姉貴」
「ええ、リジー。マルクスを消した後、必ず全員で帰りましょう」
妹達は大きく肯きました。敵地に乗り込むのですから、不安がないわけではありません。
こんな時に嵐隊長に縋りたくなるのは、私がか弱い女だからですね……つっこみはなしで。
とはいえ長姉である以上、弱音をはくわけにはいきません。
私達は準備を進めます。ウィッグをつけ、派手なメイクを施し、首や耳には宝石を飾ります。
あとは、お高いミンクコートを着込めば完成です。これで高級娼婦に変装しました。
肩と下半身はやや露出してますが、着ているのは戦闘用ボディースーツ。
コートも防弾仕様です。全身鏡を見れば完全に別人で、これなら私達と気づかれる心配はないでしょう。
「まあまあね。リジーも似合ってるわよ」
「ああ、折角着飾ったんだから、兄貴にも見せてやりたかったなー」
「うう、こんな格好恥ずかしい……」
ルナは見てるうちに我慢できなくなり、逃げてしまいます。
私とリジーは顔を見合わせ、直ぐに追いかけて連れ戻し、一緒に写真を撮りました。
良い思い出になるでしょう。
「隊長と再会した時に見せましょう」
「それはいいな、クラリスにも見せてやろうぜ」
「いやああああ! 消してえー、お姉ちゃん!」
ルナからすれば、二人に見られるのは嫌なのでしょう。
こうして騒いでるうちに、ランボー星の宇宙港に到着しました。
輸送船から降りると、無人の送迎車が迎えにきてましたので、私達は荷物をトランクに入れて乗り込みました。
税関を通ることもなく特別扱いです。
後は人目につかないルートを通り、マルクス所有の高級マンションに着くでしょう。
いわゆるヤリ……秘密別邸。私達は何も言わず無言で過ごします。
もう監視されてるでしょうから、あとは手はず通りに動くだけです。
やがて送迎車は、高級マンションの地下駐車場へ入っていきました。
薄暗い駐車場に車が止まり、自動でドアが開きます。トランクを開け荷物を持ちました。
待っていたのは二人の男性。
体つきからみるとマルクスの秘書とボディガードでしょう。私達を娼婦と思っているので、見下すような視線をむけてきます。気にせずに私は紹介状を手渡します。
「こちらを」
これ自体は本物ですが、本来ここへ来るはずだった女性達から、譲り受けた物でした。
彼女達はマルクスの相手をするのは嫌だったようです。
「あんな奴の相手をするのなら、豚と寝たほうがマシよ!」
高級娼婦としてのプライドもあったのでしょう。
生理的にも無理だったようで、金銭と引き換えに紹介状を渡してくれました。
秘書が紹介状を確認してる間に、私達は愛想良く名乗ります。
「アンよ」
「サツキだ」
「シャルです」
秘書は面白くなさそうに、こちらを見ました。
娼婦の世話など、やりたくもない仕事なのでしょう。恐らく何度もさせられてる。
「……どうやら、本物のようだな。あとはエレベーターに乗って最上階へ行け。議員は後から来る」
「その前に荷物を見せてもらおう。念のためだ」
体の大きいボディガードが命令してきました。
私は笑顔でこたえます。
「えー、構いませんけど……後悔しますよ」
「いいから見せろ」
「はい」
妹達の持ってるボストン・バッグには着替えやエロ下着が入ってるだけです。
問題は私のバッグの中身で、大人の玩具で一杯でした。
「うっ!」
「試してみますぅ? 男性にも使えますよぅ」
私は一つだけ取り出して、大きいソレを振って見せました。
「もういい! さっさと行け!」
ボディガードは顔を背け、早く行けとばかりに手を振ります。
私達は会釈をしてから、エレベーターに乗り込みました。
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