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神力の少年兵  作者: 夢野楽人
第三章 争乱編

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最後のあがき

 残るはβ星に進軍している、ドジール総大将のみ。


 こちらの艦隊は襲撃されることもなく、機雷に阻まれもしなかったが、別なことで進軍が遅れていた。


『動力機関(パワーユニット)が故障しました。航行不能です』

『あーこっちは、時空転移装置(シフト・ドライブ)が動きません。艦隊に付いていけません』


「敵と戦う前に、故障と戦わねばならんのか……」


 ドジールは頭を抱えた。理由は分かってるから誰も責めようがない。

 つまるところ、艦船のメンテナンスが間に合わなかったのだ。

 大半がボロ船。長距離を移動すればするほど、故障率は跳ね上がる。

 進軍はままならず、時間だけが過ぎていく。このままでは作戦予定時刻に間に合わない。

 他の大将達と合流するので、遅れるわけにはいかなかった。


「もう待てん。使えん艦は置いていく」

「しかし司令、それでは戦力が減ることになります」


「構わん。また壊れるかもしれんのに、何時までも待ってる余裕はない。どうせ故障したのは補給艦ばかりで戦力にはならん。修理が終わり次第、追いかけてくるように伝えろ」

「了解しました」


 副官は乗り気ではなかったが、進軍を止めてるわけにはいかなかった。

 こうして約百隻が離脱する。しかし、故障の大半は大嘘だった。

 地方から動員された兵士達は、辺境惑星同盟と取引をして、参戦しないことを約束していたのだ。

 そしてこの戦いの後に、同盟に参加する予定。


「マルクスなんぞのために、命をかけられるか!」


 恨まれていたので、離反工作は思った以上の成果を上げていた。

 最初から戦う気はなく、離脱する機会を待っていたのである。


 だが、ドジールはそれを知らない。動員兵を疑うこともしない間抜け。

 贅沢ばかりしてきたので、貧しい者の本音が分からなかった。


「よし、これで少しは身軽になったろう。全艦、進軍を再開せよ!」

「了解!」



 ――そして、数日後。


 ドジール艦隊は何事もなく、β星へと到着した。

 ただ補給艦を含めて、追いついていない艦も多く、艦数は六百隻に減っていた。

 念には念を入れ、まずは周囲をくまなく探索する。


「敵影、一切見当たりません!」

「これはα星に三姉妹は行ったな、ヘボーンは運がない。無事にこっちに来られると良いが……まあいい、こちらは惑星の占領を開始する。まずは降伏勧告をしろ」

「はい」


 副官が通信兵に指示をだす。しかし、しばらく待っても音沙汰はなかった。


「どうした?」

「それが全く応答がありません。それどころか、どの周波数からも電波が発信されておりません。まるで誰もいないかのようです」

「ありえん。無人だとでも言うのか?」

「どうしますか、司令?」


 ドジールは腕を組み、少し考えてから言った。


「罠の可能性もあるな、まずは海兵隊に地上を調査させろ。降下艇を少しだせ」

「分かりました」


 すぐに数隻の降下艇が発進し、降下を開始する。

 大気圏を抜けβ星の地表が近づいてくると、建物や道路や鉄道は見えた。

 しかし、車や電車などの乗り物は動いておらず、人っ子一人見当たらない。

 その映像は旗艦にも送られ、ドジールは驚く。


「まさか、本当に無人なのか⁈」


 そう、β星の全住民はすでに疎開していたのだ。もともと人口は少なかったし、三カ月もあれば余裕を持って避難できた。α星も同じで、状況が落ち着いたら戻る予定。

 戦争中なので仕方なく、星民達は我慢して疎開したのだ。


 ならばドジールにとっては無血占領できて、めでたい話だがそうではなかった。

 海兵隊が主要施設を調べたところ、艦は一隻も残されておらず、食料と弾薬と燃料は全く見つからなかった。

 敵に利用される物資を残しておくはずもない。これではβ星を前線基地として、同盟領に侵攻する計画はおジャンになった。


 一から補給施設をつくるなど不可能。そして、ランボー星に帰還するのも困難になる。

 略奪品を当てにしていたのだから、甘い作戦計画だったと言わざるを得ない。

 もっとも状況を確かめもせずに侵攻し、ルナが流した偽情報に踊らされた面もある。


 留まるも地獄、戻るも地獄である。


「ザルーノ、ヘボーンと連絡はつかないのか? 補給艦はまだ来ないのか?」

「確認中です」

 焦ったドジールは他人に頼ろうとしたが、もう二大将は亡くなっていた。

 それを知る由もなく、時間だけが過ぎていく。どうしていいのか分からない。

 そして……


「時空転移反応を遠方に確認……味方(・・)の補給艦です!」

「おおっ!」

「他にも艦が、続々と転移してきます」

「やれやれ、アイツら間に合ってくれたか」


 ドジールはホッとしかけるが、


「待ってください、司令! こ、これは敵艦隊です! 敵旗艦ファミリー号を確認! 辺境惑星同盟軍です‼」

「なんだとー!」


 索敵担当がもたらしたのは、吉報ではなく凶報だった。

 しかも味方のはずの補給艦は敵に回り、敵味方識別装置(IFF)を切り替えてしまう。

 ドジール艦隊は何もしないまま包囲された。味方は六〇〇隻で、敵は一二〇〇隻。

 戦力差は二倍で、さらに三姉妹がいるなら勝ち目などない。

 そこに旗艦に通信が入った。モニターに映ったのはサラである。


『これより、総攻撃を開始します』


「待て!」


 ドジールが叫ぶも、通信は一瞬で切られた。交渉をする気も、降伏を認めるつもりもないのだろう。ただの最後通告だ。


「司令……」

「分かっている。全艦戦闘準備、撃って、撃って、撃ちまくれ!」

「了解」


 同盟艦隊が交戦距離に入ると、双方の撃ち合いが始まった。

 とはいえ、ドジール艦隊は惑星を背にして囲まれており、圧倒的に不利である。

 味方艦は瞬く間に撃沈されていく。数の差は覆しようもない。

 同盟艦隊の被害は少なく、ドジール艦隊が全滅するのも時間の問題。

 そして死が間近に迫ってくると、人は見苦しく足掻くものだった。


「き、旗艦を降下させろ! 地上へ逃げるんだ!」

「わ、分かりました!」


 ドジールは味方を見捨て、唯一の逃げ場へと必死に向かう。

 周りに敵がいるので意味はないが、藁にもすがる思いだった。

 しかし、なぜか同盟艦は追ってこない。

 旗艦が大気圏を抜け、ドジールは脱出艇で外へ逃げようとするが、


「ミサイル、多数接近!」

「そんな……」


 数十発の対空ミサイルをくらい、旗艦は轟沈した。地上に隠されていた最後の罠である。

 こうしてドジール総大将は逝き、残った艦も宇宙の藻屑と消えた。


 かくして侵攻作戦は失敗し、辺境惑星同盟軍の大勝利に終わった。

この作品がお気に召しましたら、ご感想などお寄せいただけましたら幸いです。

今後の執筆の励みになります。


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