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神力の少年兵  作者: 夢野楽人
第三章 争乱編

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ニアミス

「破孔壁を、溶接して塞ぐぞ」

「補修材を持ってこい。気密性を保持しろ!!」

「ふう、忙しい忙しい」


 ノームの整備部隊が、一生懸命修理に取り組んでいた。

 敵旗艦を調べたところ、直せばまだ動くらしい。船体が使えるなら持って帰りたいとこだ。

 使い道は俺に考えがある。

 敵から分捕った物を使うのは、なんとも言えない気分の良さがあり、天女団全員が癖になっていた。狩猟本能の名残なのかもしれない。

 戦利品は各部隊が争うように、味方艦に移送していた。

「酒みっけ。へっへへへ」

「……がめるなよ、紅美」


 だんだん海賊団と化してるな……。



 艦橋でも略奪が行われていた。ただし物ではない。

 まずはノームの電子戦(ハッカー)部隊が、旗艦の艦内システムを完全に掌握した。

 艦長や指揮官さえも知らない秘匿データがあり、それをアクセスできるようにしたのだ。

 やったのはノームの天才ハッカー、美奈子。自作のハッキング装置を使って、複雑なセキュリティをあっという間に破ってしまう。


「はい、完了」

「ありがとう、美奈子。さて、少し見て見ましょう…………おほほほほほ! これは宝の山ですわ。知らない情報が一杯ありますね!」


 端末(タブレット)を見ながら、狂ったように笑って喜ぶ琴音に、美奈子は引き気味だった。


「リーダーは本当に情報が好きですね……」


「ええ、知る、識る、脳汁ですよ! 知識を得ると脳汁がドバドバ出てくるので、この快感はたまらない。そして情報をまとめて伝えれば、アラシさんと天女団のみんなから、褒めてもらえますから二度美味しい。みんなのお陰ですわ」


「人の役に立ってこそ、生き甲斐がありますからね」

「その通りですわ!」


 琴音は笑みを浮かべながら、さらにデータを掘り進めていく。

 もちろん全てのデータはコピーするが、速読と超記憶力によって、琴音は全ての情報を頭に入れてしまうのである。

 まさに人間コンピューター、エルフの頭脳は半端なかった。



 一段落つき準備ができたところで、基地に戻ることにした。近い宙域だったので、帰りも早く着くだろう。

「よし、帰還する」

「了解しました! 司令」


 全艦隊は時空転移を開始する。着くまでの間、俺達は会議を開いた。

 人が住めそうな惑星を見つけたので、どうするか静香と志乃から意見を聞いた。


「折角良い惑星(ほし)を見つけたんだから、利用しない手はないわね。ただ今は自惑星(ホーム)の開拓で手一杯。残念だけど手を出してる、余裕なんてないわ」


「静香の言うとおりですね。今は人手が足りなすぎる。無理に手を広げることはないでしょう。ただ将来に備えて、無人探査機を送りましょう。惑星データを収集しておくのが良いかと」


「確かに余裕はないからな。これ以上仕事を増やしたら、みんなぶっ倒れちまう。志乃の案を採用して、しばらくこの惑星は放置する」

「はい」


「あと、分捕った戦艦だが戦力としては使わない。やはり損傷が大きいようで使えん。なので地上に係留保管して操縦シミュレーターや、……にして再利用しよう」

「それは良いわね! アラシ」

「流石です! 司令」


 これで会議は終わり、俺はタルボット星の代表を呼んだ。


 詳しい事情を聞くので、二人にはそのまま残ってもらう。

 しばらくすると大男が部屋に入ってくる。見た感じがっしりした体格だ。

 身長は一八〇センチ前後、日に焼けた浅黒い肌で、無精髭を生やしていた。


 服がかなりくたびれてるのは、追っ手から逃げ回っていたせいだろう。

 身だしなみを整えてる暇などないわな。

 大男は俺達を見て、不安そうな顔をしていた。俺は椅子をすすめる。


「俺の名はアラシ・テンマ。天女団の総司令だ。ちなみに共和国とは敵対していて、ホークブルク家と同盟を結んでる軍隊だ。まずは事情を聞かせてくれ」


「俺はアーロン・アンソニー。タルボット星難民団の代表だ。まずは命を救ってくれたことに感謝する。あと、肉を食わしてくれたことにも……美味かった」


 アーロンが頭を下げてくる。俺達が別の軍隊と分かり、少しは安心したようだ。

 そして、今までの経緯を簡単に話し始める。ただ口調はかなり乱暴だった。


「俺達はマルクスの野郎の奴隷だった。さらに税金と食料を徴収しようとしやがったので、みんなで反乱を起こして、大脱出(エクソダス)したんだ。タルボット星を離れ辺境惑星同盟領へ向かっていたが、別な難民船が後をつけられ、追っ手に見つかっちまった。そこで俺達は囮となって、大半の難民を脱出艇で逃がした。逃げてるうちにワームホールに飛び込んじまい、気がついたらあそこに出ちまったってわけさ」


「……そうか。大変だったようだな」


 話を聞いた静香と志乃は、深く感じ入ってるようだった。

 仲間を逃がすために自ら囮となって、しかも体当たりしようとしたのだから、並大抵の覚悟ではない。

 それだけ生活が苦しかったのだろう。やっぱり、人から搾取しかしない共和国はクソだな!


 俺はアーロンに、今後について話をした。


「取りあえず、うちの惑星に全員来てもらう。落ち着いてから身の振り方を決めてくれ。俺達も訳ありでな、色んな奴が集まって暮らしている。詳しいことは、他の者に話を聞いてくれ」


「分かった。お言葉に甘えさせて貰おう。しばらく厄介になる」

「ああ」


 これで会談は終わった。後は志乃と静香が、受け入れの手配をしてくれるだろう。

 今は乱世で行き場のない者達が、これからもやってくるかもしれないな。


 俺は自室に戻る途中、あることを思い出して首をかしげる。

 思念探知をした際に、別の思いが聞こえたような気がしたのだ。


「あれ何だっけかな? …………気のせいか」


 そう思って部屋に入った。


 ◇◇◇


 アラシ達が去った後、誰もいない惑星の海から、宇宙クルーザーが浮かび上がってきた。

 全長120㍍の豪華宇宙船、動くホテルと言ってもいい。

 大勢の乗客が乗れるのに、乗っているのはたった一人。あとは身の回りの世話をするロボットがいるだけ。


 彼は艦橋でレーダーを確認した後、甲板に出てのびをする。

 ロボットにデッキチェアと、そして高級酒とつまみを運ばせた。

 椅子に座り、海を眺めながら優雅にグラスを傾ける。


「ふう、まさかこんな所に、戦艦が来るとは思わなかったな」


 アロハシャツ姿で、サングラスをかけて寝そべってる男は、共和国の元最高評議長アカスリだった。

 妻子を捨てて首星から逃げだした後、アカスリは宇宙クルーザーに乗り込み、私有惑星を転々としながら、逃亡の旅を続けていた。


「AI任せの旅も考えものだな。行き先がランダム過ぎて、こんな辺鄙な宙域まで来ちまった。愛人のバービーは置いてきちまったし、他の女を手に入れんとな。ナニが我慢できん。仕方ない、多少危険だが人のいる場所へ行くか」


 宇宙を破壊しておきながら、アカスリは反省などしていなかった。

 サイコパスで良心が欠如していれば当然だ。己の欲望のままに生きている。


 ニアミスである。


 もし出くわしていたら、アラシは戸惑ったかもしれないが、天女団の全員が許さなかっただろう。宇宙の敵である。

 アカスリは悪運も強かった。酒を飲んだ後、この惑星から去って行った。

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