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神力の少年兵  作者: 夢野楽人
第三章 争乱編

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敵は降伏、こっちは後始末

「海兵隊との連絡途絶! 地上の状況は全くわかりません!」

「機関室が奪われました! 本艦は操艦不能です!!」

「敵パワードスーツ部隊、監視カメラを破壊しつつ艦内を進撃中! 阻止できません! まもなく艦橋(ブリッジ)に到達すると思われます!」


 ここまで、自分達がやられるとは思っていなかった。天女団の介入も想定外で、こんなは悪夢としか言い様がない。

 ほんの少し前には大勢の仲間がいて、皆で笑いあっていたのに……もう誰もいない。


 しかし彼らはただの悪党、軍閥海賊なのだ。被害者面をする資格などない。

 今まで弱者を散々甚振(いたぶ)ってきたので、そのツケを払う時がきたのだ。


 オペレーターの報告に、バルクは目を閉じて静かに応えた。


「……そうか。全隔壁を閉鎖、艦橋への出入口も封鎖だ」

「はい」


 もはやこれまで、バルクは覚悟を決める。

 戦況は覆らず、このままだと捕まるか、殺されるかのどちらかだ。


 たとえ生き残ったとしても、軍閥海賊の自分がタダで済むはずがない。

 方々から恨まれており、拷問された末に酷(むご)たらしい最期を迎えるだろう。


 上官達の悲惨な末路は見てきたので、そんなのはまっぴら御免。

 バルクは腰の拳銃を抜いて、副官に告げる。


「俺が死んだら降伏しろ。悪いのは全部この俺だ」

「司令!」

 バルクは頭に銃口を当てる。全隔壁を閉じたのは、死ぬ時間が欲しかったからだ。

 そして拳銃の引き金が引かれ……なかった。


「神影縛(デウス・バインド)。おっと、勝手に死なれたら困るな」


「き、貴様! 一体どこから⁈」


 バルクは声を上げることはできたが、指一本動かせなかった。その隙にアラシは拳銃を取り上げる。

 突然の出来事に、艦橋乗員(ブリッジクルー)は驚いたまま固まってしまう。

 アラシは神影走(デウス・スプリント)を使い、隔壁が閉まる前に、艦橋に駆け込んできたのだ。

 目にもとまらぬ走りを、見た者はいない。エスパーと気づいた時には手遅れ。


「降伏して、停戦命令をだせ。さもなくば、艦内の兵士を皆殺しにする!」


「止めろ! …………分かった。言うとおりにする」


 アラシの脅しにバルクは屈した。残った部下の命は、何よりも重い。


 だからこそ、全ての責任を負って死のうとしたのだ。


『全軍降伏し、停戦せよ……』


 艦内放送が流れると、銃声は徐々に止み、戦闘は終結した。


 ◇◇◇


 しばらくすると、静香が後続艦隊を引き連れてやってきた。

 戦闘は終了したので、事後処理が始まる。これが結構めんどくさい。


『武装解除を確認後、敵兵は陸(ろく)番艦、および漆(なな)番艦へ移送せよ。なお敵負傷兵は動かさず、その場で治療に当たれ。敵旗艦の接収作業は、エルフ部隊とノーム部隊に任せる』


『地上に逃げた難民達を捜索して、保護しなさい。残敵には十分注意するように。各部隊長は、タルボット星の代表と相談して対応するように』


『了解!』


 まあ、志乃と静香がいるので、俺は見てるだけで良かった。

 一足先に天嵐に戻って、偵察ドローンから送られてくる映像を、つぶさにマルチモニターで見ていた。

 何かあれば直ぐに動いて対処するつもりだ。もっとも部下達が優秀なので、安心して見ていられる。応用力もある。

 

 追っ手から逃げるために、難民達は森の中に散らばって隠れたらしく、捜すのに苦労していた。


「もう安全だー! みんな出てきてくれー!」


 と難民の代表が拡声器で大声を張り上げるも、なかなか出てこない。

 まだ警戒してるのだろう。殺されそうになってたから、仲間の声を聞いたくらいでは信用しない。


 そこで椿の炊事部隊が動いた。森林を動き回るのを止め、かまどを組んで、調理の準備を始めてしまう。

 炭火をおこし、金網の上で肉や野菜を焼き始める。バーベキューだ。


 そして、送風機をぶん回す。


「天女団名物、焼き肉作戦であります!」


 肉の焼ける香ばしい匂いが、森の中に充満していく。この匂い攻撃に耐えられた者はいない。

 腹が減っていれば尚更。

 身の危険も顧みず、難民達は匂いに吸い寄せられて姿を現した。


 全員ヨダレを垂らしている。逃亡生活でろくに食べていなかったようで、腹の虫もグーグーと鳴っていた。


「我ら天女団は、皆さんを助けに来たであります。まずは腹一杯、肉を食べてくだされ!」

「うおおおお!」


 椿が食事を勧めると、難民達は一斉にかけよってきた。もう我慢できなかったのだろう。

 炊事部隊が焼いた肉を皿に盛って渡し、防水布の上に座るよう案内した。

 立って食うのは、落ち着かないからな。ペットボトル水も配られ、ガツガツと肉を食べていた。


「……うまい」


 誰かがそう呟くと、難民達は肯いて涙をこぼしていた。

 天女団は飢える辛さを知ってるので、その気持ちは痛いほど分かる。

 甲斐甲斐しく世話を焼いていた。

 そして隠れていた難民達が、続々と集まってきた。風に乗って匂いはどこまでも漂い、人の食欲をそそる。


 遠くで仲間達が食ってる姿を見れば、安心して近寄っていける。


「もっと、焼くであります!」

「了解です!」


 炊事部隊は大忙し。もっとも椿達は慣れたもので、手早く肉を焼いて配っていく。

 料理が尽きる頃、難民達全員が集まっていた。防水布の上で寝転がって休んでいる。

 満腹になって至福の表情を浮かべ、もうすっかり寛(くつろ)いでいる。

 張り詰めた生活だったようで、疲れもピークに達していたようだ。

 少し休ませてから、艦に移送しよう。ひとまず俺達の惑星に連れて行く。


 難民達の輸送船は調べた所、もうボロボロで使えない。このまま放置することにした。


 さて、敵戦艦の状態はどうかな? 


 こっちも俺達の攻撃を受けて酷い有様だが、まだ航行はできるようだった。

 捕虜と入れ替わるように、エルフとノームの部隊が中に入っていく。

この作品がお気に召したら、応援・評価をいただけると幸いです。

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