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転生幼女、教団はじめました。  作者: 有郷 葉


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55 贈物2


 大きすぎる贈り物に私は声が出ず、会議室も静まり返ってしまった。

 この静寂を破ったのはヨルンシスさんで、いつになく慌てた様子で声を張り上げる。


「少し早いですが休憩にいたします! ケイトリン様、ご昼食をどうぞ!」


 女王様の入室からわずか数分で会議は中断となった。

 彼女が部屋を出ていくと、すぐにキアが立ち上がってこちらに向かってくる。


「どういうことだ! 支援の要請じゃなかったのか! ルーシャ、絶対に受け取るなよ! もうすぐ滅ぶ王国だぞ!」

「分かってるって……。貰って困るプレゼントとしてこれ以上の物はない……」


 もちろん滅びかけの王国なんて受け取る気はさらさらない。

 ……ケイトリンさん、割と軽い感じで言ったけど、最初から心に決めている風だった。でも、それならどうしてエルフィリス国との合併じゃなく私の勢力圏としてなんだろう。

 疑問を口にすると、ヨルンシスさんが首を横に振りながら。


「決まってますよ、ルーシャさん個人の力に期待してです。万が一にもナザネシア王国を滅亡から救う手立てがあるとすれば、あなたが本気で……。ともかく、あの王国の国土はエルフィリス国とほぼ同じ大きさなのですから、到底抱えきれるものではありません。絶対に受け取らないでください」

「そうだぞ、私達より遥かに巨大な勢力圏が欲しいからって駄目だからな!」


 キアがもう一度念を押してきていた。


「勢力圏なんて今のセントルーシャだけで充分だよ……。大丈夫だって」


 とりあえず、あちらの申し出は断る方向でまとまり、私達も昼休憩に入ることになった。


 私達エルフィリス側とケイトリンさんの控え室は別になっている。

 誕生日プレゼントに貰った木彫りの熊を見つめながら、私はあの女王様のことが気になっていた。さっきの提案は、内に秘めた思いはやっぱり軽々しいものじゃなかったように思う。

 ……気になって仕方ない。ちょっと様子を窺いがてら話を聞いてこよう!


 こっそりと控え室を出ようと扉に向かって移動していると、不意に背後から。


「こら、やっぱり心配した通りだわ……」


 テルミラお母さんが呆れたような眼差しを投げかけてきていた。そのまま言葉を続ける。


「あんたは本当に色々と拾ってくるけどね、今回ばかりは絶対にやめた方がいい。背負うものの重さがこれまでと段違いよ」

「……何を言ってるのか分からないなー。ちょっと外の空気を吸いに散歩にいくだけだし」


 勝手に視線が泳ぐ私に対し、お母さんは「一応、警告はしたからね」と去っていった。

 通路に出た私は気持ち密かにケイトリンさんの控え室を目指す。今度は誰にも見つかることなく辿り着き、扉をノックした。


「お待ちしておりました。どうぞお入りください」


 ……周囲にケイトリンさんの気配らしきものを感じる。魔力の感知で私だと分かったのか。

 でも、待っていたって私が来るのを予想していたということ?


 部屋に入るとすぐ目の前にケイトリンさんが。私に向かって頭を下げてきた。


「先ほどは大変失礼いたしました。さぞ驚かれたことでしょう」

「はい、それはもう……」

「今日がお誕生日だと伺ったもので、あやかって冗談めかしに言えば場が和むかと思いまして」

「では冗談だったのですか?」

「いいえ、本気です。ルーシャ様、ナザネシア王国を貰ってください」


 ケイトリンさんはいたって真面目な顔で再び王国を押しつけてきた。


 ……この女王様、礼儀正しくてきっと頭もいいんだろうけど、すごく淡々としている。それはともかく、やっぱり王国を譲りたい気持ちに変わりはないみたいだ。


 立ったままだった私達は、ひとまずテーブルを挟んで座った。ここは客室で通常の椅子なので、例によって私は魔力で椅子ごと浮き上がる。それから話を再開させた。


「簡単に仰りますが、そもそも私がどんな人間かご存じなのですか?」

「もちろんです。我が王国もエルフィリスの動向は常に探っておりますので。それに、ルーシャ様のご活躍は素晴らしいものですし」


 なるほど、私なら滅びかけの国も何とかできると考えたか……。

 それにしても、ケイトリンさんは自分の国に愛着はないのだろうか。私が引き継げば土地や人は残っても、ナザネシア王国自体が滅亡することに変わりはない。

 そういえば、彼女はつい最近までずっと他国に留学していたという話だった。急に受け継ぐことになった王国なんて邪魔だと思っていたりとか?


 私があれこれ思考を巡らせているのが分かったらしく、ケイトリンさんは微笑みを浮かべる。


「言葉で説明しても私の真意までは伝わらないでしょう。私の記憶を魔力に乗せてお送りします」

「記憶を?」

「私がどうして王位を受け継いだか、どうしてルーシャ様にお譲りしようと思ったか。全てをご理解いただきたいのです。その上で今回の件をご判断ください」


 彼女がそう言った直後、私の頭の中に記憶の塊が流れこんできた。






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