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転生幼女、教団はじめました。  作者: 有郷 葉


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48 血迷


 全く説得に応じようとしないレイエルはそそくさとジェシカの背中に乗る。視線も合わせようとせずにそのまま別れの言葉を発した。


「……今のままでは、僕もルーシャ様に甘え続けてしまいます。これは自分自身への戒めなんです。ずっとあなたの傍にいるための。……ではお元気で。皆さん、行きましょう」


 少年の合図で聖獣達は走り出す。一人と八頭の姿はあっという間に見えなくなった。


 ……全然理解できない。ずっと傍にいたいなら、いてくれればいいでしょ。どうして明日が誕生日の私を残して行っちゃうの……? ひどくない? 明日、私の誕生日なんだよ?


 ……おのれ。……おのれレイエル!

 まさかもう反抗期か! 分かっているの! テルミラお母さんくらいまでってことは何か月も何年も帰ってこないかもってことじゃない! そんなの絶対に許さないから!


 内側から溢れる怒りの魔力で私の体は自然と空中に浮き上がっていた。


 こうなったら、力づくで連れ戻す……。よかろう、エルフィリス全国に百万人以上の信者を持つ聖女の私が本気を出したらどうなるか、見せてあげようじゃない!


【聖女ルーシャ教団 信者数=120万6817人】


 私にはこれだけの味方がいるんだ!(黒い悪魔の撃退でまた信者が爆増した)逃げきれると思うな! ていうか、私自ら連れ戻す!

 レイエルに向けて発進しようとしたその時、誰かに背後から頭を掴まれて引き戻される。


「こら、何を血迷ってるの。ちょっと落ち着きなさい」


 テルミラお母さんがため息をつきながら呆れたような眼差し。だが、今の私にはその言葉もあまり届かなかった。


「こんな状況で落ち着けるわけないでしょ! あのレイエルが何か月も何年も帰ってこないかもしれないんだよ! 移住してから私達はほぼずっと一緒だったのに!」

「だから、あの子は決断したのよ……。一度あんたから離れなきゃ駄目だって」


 追加で「レイエルのことを思うなら分かってあげなさい」とお母さんから言われ、ようやく私の頭も冷えてきた。勝手に涙が溢れてきて、崩れるように地面に両手をつく。


「うぅ、とても受けいれられそうにない……。家族は一緒にいるのが一番でしょ……」

「……情けない聖女ね。信者達がこの姿を見たらがっかりよ」

「うるさい、聖女だって人間なんだ……!」

「はいはい、人間だけど聖女なんだから、やるべきことはきちんとやりなさい。ほら、お迎えが来たわ」


 顔を上げるとこちらに歩いてくるトレイシーさんとミーティアさんの姿が見えた。

 これによって、今日から首都の拠点に出張しなければならなかったことを思い出す。明日に首脳会議が予定されており、それに先んじてキアやヨルンシスさんと打ち合わせすることが結構山積みだ。あちらで二泊以上しなければならず、結局私の誕生日は仕事一色だった。


 だからせめてレイエルには傍にいてほしかったのに、よりにもよってこんな時に決断して……、おのれレイエルめ。はぁ、やけに活き活きしている参謀達が憎くて仕方ない……。

 二人は私の目の前まで来ると、両手を広げて声を揃えた。


「「さあルーシャ様、参りましょうか!」」

「どうしてそんなに元気なの……。あれ、てっきりセレノアさんも一緒に行くと思っていたんだけど」


 首脳会議はこれまで何度か開かれていて、彼女はその全てについてきていた。


「セレノアさんなら先ほど、レイエルさん達と北に向かいましたよ」

「牙の団に稽古をつけてほしいとキアさんから要請がありまして。総監督するとか言ってましたね」


 とトレイシーさんとミーティアさんは順に教えてくれた。

 つまりキアは、セレノアさんが牙の団を訓練して、牙の団がレイエルや聖獣達を訓練するという構図を考えたらしい。実力差を考えれば、それが効率的なやり方なのかもしれない。誰よりも精霊のことが分かる聖姫は確かに総監督に向いているだろう。


 ……皆、キアからの誘いがあってそれに乗ったのか。

 私だけじゃなく、キアもしっかり戦力を育てる方法を考えていたということ。あの子はあれでも会議の首座で、軍のトップみたいな立場でもあるからそりゃそうだよね。


「皆それぞれに自分のやるべきことをやっているのか……」


 私の呟きに頷いたテルミラお母さんが風を周囲に舞わせはじめる。


「そういうことよ。あんたもさっさと自分の仕事にかかりなさい」


 風霊達によって瞬く間に空へと体を持ち上げられる。

 今回は私とお母さん、そして参謀の二人、の四人で首都へと向かうことになった。飛行しながら進行方向の東の空を眺める。


「レイエルのことはおいおい考えるとして、とりあえず私も頑張るしかないよね」


 少し前向きな発言をすると、トレイシーさんとミーティアさんは顔を輝かせた。


「そうですとも! 今や人々の話題の中心は我が教団!」

「私達がこの国を動かしていると言っても過言ではないのですから!」


 参謀達が張り切っていたのは、近頃教団の重要度が増しているかららしかった。彼女達が調子に乗りすぎているのは間違いないけど、実際にここ最近の首脳会議での議題は聖女ルーシャ教団に関するものが多い。国内で急増している信者達についてや、頭数が揃ってきた聖獣軍団の配備についてなど。


 でも、それらは大して急ぐ話でもない。何より急を要するのは黒い悪魔の対策関連だ。これには私のみならずキアを筆頭に会議の全員が危機感を募らせている。

 あの襲撃ではっきりとしたため。黒い悪魔の正体が語られてきた災害のようなものではなく、強い力を持った魔獣だということが。巨大鹿が最期に放った言葉から、今後さらに頻度を上げて襲ってくることも予想できた。

 つまり、これから始まるのは人類全体と魔獣との大戦なのでは、という危機感だった。





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キャラデザ


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