47 旅立
巨大鹿の襲撃から一週間が過ぎた。
あの戦い以来、私はずっと心のどこかでもやもやしている。世界にはあんなに強い魔獣が存在するという事実が、常に気持ちを不安にさせた。
……また同じようなのが襲ってこない保証はどこにもない。聖霊使いとして覚醒したとはいえ、もっと何かしっかり対策を立てておかないと、次は勝てないんじゃないだろうか。
そもそもあの巨大鹿、黒い悪魔というのはどこからやって来たんだろう?
(ルーシャ様、それはおそらく、人間達が言うところの魔域という場所からだね)
自宅のキッチンの椅子に座っていた私は、外からの思念に窓の方を向く。大狼ウルゼノスのジェシカが顔を覗かせていた。
勝手口から外に出ると、彼女は自分の背に乗るように促してきた。言われるままに乗せてもらい、一人と一頭で散歩しながら話を再開させる。
「魔域って確か、大陸の南にある魔獣しか生息していない地域?」
(そう、私達魔獣は進化を続けると魔域に向かうようになる)
なるほど、だから世間に溢れている魔獣は魔法の使えない若い個体ばかりなのか。
そういえば、ジェシカも次の進化で魔法を習得するって言ってなかったっけ? 世間ではウルゼノスなんて見掛けないし、まさか……。
「……ジェシカにも魔域からのお誘いが来ていたりするの? それ以前に、誰かが迎えにきたりするのかな?」
(来ないよ、生まれた時から備わっている本能みたいなものだね。無条件で人間を憎むようになっているのと同じだ)
「じゃあジェシカの場合、憎悪から解放されたからその本能も拒否できているってこと?」
(そうだと思う。きっと前のままなら魔域への誘導も抗えないほど強かったんだろう)
今は簡単に無視できる程度なんだとか。だとすれば、聖獣達が進化に伴って急にいなくなる心配とかはないね。
あとこれは推測だけど、魔域に行く段階になると、たぶん魔獣の人間への憎しみは一層強くなる。そして、月日を重ねるごとにもう払拭できないほど魂にしみついていくんじゃないだろうか。私の〈ヒール〉蘇生でも心変わりしなかったあの巨大鹿のように。
もしこの推測が正しかったなら、やっぱりあのクラスの魔獣は味方にできないということ。
何とか現状の方法で戦力を拡充させるしかないんだよね……。聖獣はいくらでも増やせるけど、黒い悪魔に対してはあまり意味がないと思う。欲しいのは最低でもテルミラお母さん級の戦士だ。そのお母さんでも一国に数人いるかどうかの魔法使いだから、簡単にはいかないわけで……。
まとまらない思念に反応するように、ジェシカが背に乗る私の方に振り返った。
(私にいい考えがある。実はそのことをルーシャ様に話したかったんだ)
「そうなの? いったいどんな考え?」
(既存の戦力を上位魔法が扱えるくらいまで鍛え上げればいい)
「確かにそれができればいいけど、すぐには無理でしょ。数年の時間が掛かるんじゃない?」
(ああ、人間ならそうかもね。だけど、私達ならもっと短時間で済むはずだ)
とジェシカは歩みを止める。いつの間にか私達は自宅の前まで戻ってきており、メイリムと六頭の大狼達が待っていた。
私に下りるように促したジェシカは聖獣達の前に移動して向き直る。
(ルーシャ様、私達はキアの所に行こうと思う。実力者揃いという牙の団の戦士達と訓練がしたいんだ)
(セレノアさんとの訓練は力の差がありすぎてちょっと……。聞けば、牙の団も黒い悪魔と戦うために絶賛訓練中らしいじゃないですか)
メイリムもその長い耳をピクピクさせながら思念を送ってきた。
そう、キアによればあの巨大鹿との戦いで力不足を痛感した牙の団は、改めて修行をし直して腕を磨いているみたいだ。ジェシカが言った通り、彼らは全員が中位魔法を使える実力者揃い。聖獣達もそこに入って訓練をすれば各々進化が早まる可能性は大いにある。でもその分、相当きつい日々が待っているはずだった。
……どうしても、心配な気持ちが湧き上がってくる。私が近くにいないから怪我をしてもすぐに治してあげられないし。
私の思いを察したジェシカが首を横に振った。
(ルーシャ様は優しすぎるから、ここにいると私達は甘えてしまうんだ。だから決断したんだよ)
(必ず体も魔力もビッグな兎になって戻ってきますから! 待っていてください!)
やる気に満ち溢れた思いをメイリムも伝えてくる。
二頭に続いて大狼達も行きたい意思を私にぶつけてきて、もう認めてあげるしかない状況になっていた。
「……分かったよ、私は皆を信じる。絶対に元気な姿で帰ってきてね」
旅立つ聖獣達と抱き合っていると自宅勝手口の扉が開く。中から姿を現したのは、旅支度を整えたレイエルだった。
「ルーシャ様が認めてくれてよかったです。では皆さん、出発しましょうか」
前提条件が変わったことで私の思考は一瞬停止。
「…………、話が違う! レイエルも一緒に行くなんて聞いてないよ! そんなの認めないからね!」
うろたえる私に対し、少年の反応はいつもと異なった。一歩下がって距離を取る。
「そう言うと思ったから内緒にしていたんです……。僕も今のままでは駄目だと決断しました。最低でもテルミラお母さんくらいに強くなれるまで帰ってこない覚悟です」
「なななな何を言ってるの! それってかなり先になるんじゃないの! 考え直して! 大体、こんな時に行かなくてもいいと思う! 明日が何の日か知っているでしょ!」
「……はい、知っています。すみません、ルーシャ様……」
「明日は私の誕生日なんだよ!」
「すみません、ルーシャ様……」
キャラデザはもう少しお待ちください。
編集部より公開可能なものをいただきましたので、現在こちらに貼る準備をしています。
トレイシー&ミーティア
「そんなに時間が掛からないのでは?」
「サイズ変更してミテミンに貼るだけですよね?」
……時間が掛かるのです。
8月頭には何とか。
トレイシー&ミーティア
「ですが、キャラデザは楽しみですねー」
「私達はどんな姿になっているんでしょう」
え……?
トレイシー&ミーティア
「え……? ってまさか、私達は……」
「デザインされてなかったり……?」
キャラデザが可能な数はどこも大体5人前後なんです。
トレイシー&ミーティア
「まずルーシャ様とレイエルさんは確定ですよね。あとセレノアさんも固いでしょうか」
「キアさんも重要な役どころですし、入っていそうじゃないですか」
「これで4人。あ、じゃあ私達ギリギリ入れるのでは!」
「ええ、きっとデザインされていますよ!」
テルミラ
「いやいや! ルーシャの育ての親という超重要な役どころの私がいるでしょ!」
ルーシャ
「あまり育てられてないけどね」
トレイシー&ミーティア
「「う……、テルミラさんより私達の方が出番は多いですよ……」」
果たして生き残るのはぐうたら聖母か、モブから這い上がった参謀達か。




