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転生幼女、教団はじめました。 ~新しい家族とのんびり暮らしたいのに、最強の聖女様と崇める信者たちが放っておいてくれません。世界を救うとか本気ですか?~  作者: 有郷 葉
アフターエピソード

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45 聖霊


 説明してくれた男性スタッフにお礼を言って私はキッチンを出た。


 そのまま本部の玄関に向かうも、思い直して方向転換。

 やって来たのは魔法関連の本などが収められている書庫だった。番をしている神官に希望の数冊を告げる。


「承知しました、少々お待ちを。それにしても、ルーシャ様がここにおいでになるとは珍しいですね」

「はい、初めてです。そろそろきちんと勉強しようかと思いまして」


 まるで私が怠けているかのような会話になったものの、自分がまだ二歳児だったことを思い出して顔を上げた。

 神官が用意してくれた本の束を魔力で持ち上げ、ここでもお礼を言って書庫を後にする。


 それから今度こそ本部の建物を出て自宅へ……。しかし、再び思い直して方向転換。

 まんじゅうと共に祈りを捧げてくる巡礼者達に見守られながら町の外れに向かう。思った通りいつもの場所でレイエルと聖獣達が訓練をしていた。


 先に来ていたセレノアさんが一人で全員の相手をしているみたいだ。彼女は一番大きなジェシカを軽々と持ち上げてポーンと放り投げる。象サイズの大狼が子犬扱いだった(子犬は投げないけど)。


「揃いも揃ってまだまだ弱い。その程度で黒い悪魔と戦えると思っているのか」


 セレノアさんの挑発に、皆で闘志を燃やして果敢に立ち向かっていく。

 先頭のメイリムが四肢を広げて覆い被さるように飛びかかった。


(うわーん! 私だってルーシャ様のお役に! やるならやれです!)


 やけっぱちの兎の攻撃を聖姫はすんなりと回避。背後に回りこみ、素早くもふった後にやはり遠くに投げ返した。

 続いて六頭のウルムドが順に突撃し、こちらも各々もふられるだけもふられて投げ飛ばされる。


 一人残ったレイエルは少し離れた場所で魔力を高めていた。


「僕も今のままは嫌なんです!〈アイスロック〉!」


 頭上に形成された氷の塊がセレノアさんめがけて落下していく。だが、彼女が片手を伸ばすと、少年渾身の水霊魔法は停止。次の瞬間には結構な大きさの氷が蒸発して消滅した。


「もう中位魔法を習得するとはなかなかの成長速度。けど、水霊の力を引き出しきれていない」


 セレノアさんはそう話しながら、遠くから様子を窺っている私に視線を送ってきた。

 う、やっぱりあの子の感知は誤魔化せない……。分かったよ、私もちゃんと特訓するから。皆が頑張っているのを見てやらなきゃって気持ちになったしね。

 空中に浮き上がった私はゆっくりとその場を離れた。


 しばし飛行してだだっ広い草原の真ん中に着陸すると、借りてきた本の一冊を手に取る。

 これは聖霊魔法の入門書で、全くの素人が最初に読む本だ。だけど、聖霊と仲良くなるための鍵が書かれているはずだった。トレイシーさん達から直接〈ヒール〉を教わった私は、重要な基礎をすっ飛ばしていた可能性がある。


 入門書の必要そうな項目だけを抜粋して読み、大体は理解することができた。

 とにかく魔法というものは精霊との親和性が大切らしい。どれだけ精霊を愛し、精霊から愛されているかということ。これなくしてはいかなる魔法も発動しない。では、こんな重要なことも知らずに私はなぜ〈ヒール〉を使えているのか。答はたぶん、聖霊からめっちゃ愛されているから、だろう。


 ……途端に、聖霊に対して申し訳なくなってきた。聖霊、これまでいっぱい助けてくれてありがとう。遅いかもしれないけど私、今からでもあなたを理解できるように頑張るよ。

 と思った瞬間、不意に周囲から違和感が。


 意思を持った魔力のようなものがそこら中に浮かんでいるのに気付く。初めて感知したはずなのにすぐに分かった。だって、今まで何度もその力を借りてきたのだから。


 これが聖霊、いや、聖霊達だ。


 見回すと聖霊達は空間を埋め尽くすようにありとあらゆる所に漂っていた。

 そして……、すごい密集して私の体にくっついてる! 私、本当にめっちゃ愛されてた!

 あと何か「やっと気付いてもらえた!」と喜んでいるのも伝わってくる……。今までごめんね……。

 それにしても、これがセレノアさんの見ている景色か。じゃあ、彼女みたいに回復を手伝ってもらえたりもできるのかな?


「あの、私の体のだるさとか何とかできたりする? 可能なら魔力も回復させてほしいんだけど」


 こうお願いすると私にくっついていた聖霊達が忙しく動きはじめた。行ったり来たりして何かエネルギー的なものを私に運びこんでいる模様。


 おお、聖霊達がチャージしてくれている……。あ、すごい、一気に気分がよくなってきた。魔力も戻ってきているのが実感できるし、これならすぐに万全の状態になりそう。


「よし、今のうちに〈ホーリーショット〉に取りかかろう」


 私が書庫で借りてきた残りの本は、攻撃関連の聖霊魔法について記された書物だった。〈ホーリーショット〉は一番初歩の攻撃魔法になる。

 書物を読みはじめて程なく、私はパラパラとページを飛ばし飛ばしめくっていった。そのまま数分ほど経って本を閉じる。


 ……ちょっとありえない話だけど、私もう〈ホーリーショット〉が撃てる気がする。





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