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転生幼女、教団はじめました。 ~新しい家族とのんびり暮らしたいのに、最強の聖女様と崇める信者たちが放っておいてくれません。世界を救うとか本気ですか?~  作者: 有郷 葉
アフターエピソード

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43 潜入


 巨大鹿の討伐翌日。

 昨日は気を張って大量の魔力を消費したせいか、私はかつてないほどのだるさを抱えている。


 私だけじゃない。部屋に様子を見にいったらテルミラお母さんもダウンしていた。

 ベッドで横になったままお酒をちょびちょびと。私の顔を見るなり、何かお酒のあてを、とせがんできた。まあ、つまりいつも通りだ。

 かつてないほどのだるさとはいえ私はそんなにぐうたらに過ごすのは性に合わないので、お母さんのあてを作りがてらお昼ご飯の準備をすることに。教団ができてからの日々が忙しすぎて、私は貧乏性になってしまっている気がしなくもない。


 ……本当は、何でもいいから気を紛らわせたいんだよね。昨日感じた恐怖がまだ体から抜けない。

 もし私達が負けていたら、この国であの巨大鹿を止められる者は一人もいなかった。いったいどれだけの人が殺されていたか……。


「もう終わったことなのにいつまでも引きずって、……私は小心者すぎるかも」


 トレイシーさんやミーティアさんの図太さがちょっと羨ましい。戦いの後、あの二人はずっと鹿を仲間にできなかったことを悔やんでいた。国や皆の命が危なかったのに、さすがにどうかと思うけど。欲深すぎでしょ。

 鹿を失ったことについては、私は彼女達ほど惜しいとも感じない。鹿よりも欲しているものがある。私自身の力だ。昨日の戦いを経て、私は初めてもっと力が欲しいと考えるようになった。


 うーん、久々に修練でもするかな。いや、それよりもまずは……。


 考えている間にチキンカツがカラッと揚がったので、デミグラスソースをかけ、大量の千切りキャベツを添えてテルミラお母さんの所に持っていった。

 それから、先ほどまた外で紙芝居をする司教さんの姿が見えていたのでそちらに向かう。

 誰かと喋っていた方がまだ体のだるさを忘れられそうだったので。レイエルがいればよかったんだけど、早朝からジェシカ達聖獣と特訓をすると言って出掛けてしまった。彼も彼なりに昨日の戦いで思うところがあったらしい。


 自宅前の空地は教団の所有となっており、現在は聖獣達の家の建設中だった。その傍らで子供達に紙芝居を見せていた司教さんは、ちょうど実演を終えてからあげを配っている。


「子供達、もう話に飽きてきているのでは? 絶対にからあげ目当てで来ていますよ」

「これはルーシャ様、ご心配には及びませんぞ。新しい話を作家と絵師に発注しておりますからな。作品名は『聖女ルーシャ様 対 黒い悪魔』ですじゃ」

「私達の死闘、早くも物語になるんだ……。怪獣決戦みたいなタイトルだ」

「ともかく大変な偉業ですからのう。トレイシーとミーティアも国中の支部で連日公演すると言っております」


 ……あの参謀達はまったく。やっぱり彼女達は教団が成り上がることしか考えていない。

 思わずそう愚痴ると司教さんは首を横に振った。


「ルーシャ様は誤解なさっておられます。あの子達もそれなりに考えておりますぞ」

「え、本当ですか?」


 一概には信じられない言葉だったが、こっそり教団本部を覗きにいけば分かると司教さんは促してきた。まあ、ちょうど暇とだるさを持て余しているので行ってみることに。


 教団の本部に向かうべく、セントルーシャの町を浮遊して進む。


 そういえば、この町を勝手に聖地にしてしまったことを住民達は意外にも喜んでくれていた。私達が首脳機関の一つ、第七の勢力となったことも手伝って町を発展させるチャンスと捉えている模様。町の中心に観光スポットになる大聖堂を建てると意気込んでいる。

 教団と住民の間にも協力態勢が築かれており、実はそれで助かっている部分もあった。すでに国の全土から信者が聖地巡礼に来はじめていて、私に人が殺到しないように町の皆がうまく取り計らってくれていたりする。


 だから、こうやって町を浮遊していても人に囲まれることはなかった。遠巻きにまんじゅうを食べながら私に祈りを捧げているのが巡礼者達だ。(皆に頼まれて肉まんのレシピを提供したら、聖女様まんじゅうとして町の名物になった。味は日本のコンビニで売られていた物に寄せてあるので常習性が高い)

 口にまんじゅうを咥えつつ手を合わせて祈ったり、あるいは手の間にまんじゅうを挟んで祈ったり。

 ……我ながら何ともゆるい宗教だね。でも、個人的には宗教なんてこれくらいのゆるさで、たまにその人の心に寄り添うものでいいとも思う。


 こうして信者達に見守られながら、やがて私は教団の本部に辿り着いた。

 こっそり覗かなければならないそうなので、魔力も気配も抑えて建物内部に潜入を開始する。ところが、程なく背後から誰かに体を掴まれて口から心臓が飛び出そうに。


「ルーシャ様、私に会いにきてくれた?」

「びっくりさせないで、セレノアさん……」


 聖姫の人並外れた感知力を欺くことはできなかった。

 セレノアさんはここに住んでいるんだった……。あれ、それにしても彼女はあまり体がだるそうに見えないな。昨日完全に使い果たした魔力もすっかり元通りに、いや、むしろ前より増えているし。心も体も充実しているのがビシバシ伝わってくるんだけど……?


「どうしてそんなに元気なの?」

「分からない。昨日思いっきり戦ったら絶好調になった」


 ……鬼神か。とにかく回復速度が尋常じゃない。他の人には真似できないのは確かだろう。

 私がそうこぼすと、セレノアさんの無表情な顔が何か閃いたように一瞬輝いた。


「もしかしたら、ルーシャ様なら真似できるかもしれない」

「ん? いったいどういうこと?」

「聖霊に回復を手伝ってもらえばいい」

「そんなことが私にできるの?」

「できる、聖霊にめっちゃ好かれてるから。今、思い出した。私は昨日の戦闘後、眠りにつく前に火霊に何とかしろって言ったら奴らは何とかするって。起きたら何とかなってて絶好調になってた」


 えー……、それ、スピリチュアルすぎて私には無理な気がする……。





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