20 はじめての狩
どうやら新規の討伐依頼は出ていないようだったので、俺は常時依頼として出されている、ゴブリン討伐に出かけることにした。
普通、こういった討伐依頼は休日に受けるものなのだが、俺はあえて、この夕方に討伐に出掛けることにした。
理由は簡単だ。
魔物は、夜に討伐した方が、通常の十倍くらいの効率で経験値が取得できるからだ。
まぁ、その代わりに相手もそれなりに強くはなっているのだが。
──というわけで、俺は現在、学園の近くにある山の中に来ていた。
え?明日の授業とか大丈夫なのかって?
あぁ、それなら心配ご無用。
教科書はアーカイヴスの能力で丸暗記してきましたから。
ここがアーカイヴスのすごいところなんだが、この能力は、本から得た知識を、知恵と技術として体得することができるんだとか。
つまり、自分で作った技を、細かく説明したものを紙なり何なりに書いて、それにアーカイヴスを使えば、もうそれだけでその技を習得したことになるのである。
アーカイヴス、マジでチート過ぎるだろ……。
というわけで、俺はまず、魔物たちの狩りを見学することにした。
そこから、魔物たちの行動パターンとか、攻撃の弱味とかを見抜き、あとは実践でそれを体得しよう、という考えである。
なんと浅はかな考え方なんだろうか。
……とはいえ、それが出来てしまうのが、アーカイヴスの怖いところなんだよな……。
レベルさえ上げれば、見た目はほほ変わらずに筋力とか敏捷力とか上がるし、アーカイヴスの能力で、上がった瞬間にそれに順応していくというチートプレー。
無理なら無理で、あのモヤモヤで遠距離攻撃すればいい話だし。
そんなことを思っていると、目の前に三匹のゴブリンの群れを見つけた。
焚き火を焚いて、なにやら武器の手入れをしているようだ。
……全員ナイフだけか。
火を扱っているってことは、それなりに知性はあるらしいな。
……仕掛けるか。
見学するっていっても、相手の敵がいないんじゃ意味がない。
俺は黒いモヤモヤを霧のようにゴブリンの周囲に出現させた。
すると、さっきまで何ともなかった彼らが、大声をあげて騒ぎ始めた。
ふと、背後から気配。
俺は、咄嗟にそのモヤでシールドを作り上げた。
すると、その瞬間に後ろからうめき声が上がった。
一応拘束して、俺は再びそのゴブリンの群れに攻撃を加えた。
魔物のコアは、心臓と同じ場所にある。
コアさえ破壊すればいいのだから、俺は無駄に傷つけることなく、その心臓部を破壊していく。
すると、体の中に何かが流れ込む感覚を覚えた。
【750EXPを取得しました】
お、結構入ったな……。
「あと一匹か……」
それくらいなら、すぐにでも見つかるだろう。
今夜のノルマはとりあえずレベル2だな。
そんなことを思いながら、俺は後ろを振り向いた。
さっき捕まえたやつの確認をしよう。
それがもしゴブリンなら、今ここで葬ればレベルアップ待ったなしだ。
そう思いながら、俺はぐるぐる巻きにしていた拘束を、一部だけほどいた。
するとそこには、緑色の宝石が嵌め込まれた、ダガーナイフがあった。
おそらく、誰かがとっさに身代わりに使ったのだろう。
それにしても、高そうなナイフだ。
嵌め込まれている宝石は、アーカイヴスの鑑定によるとカラーダイヤらしい。
それに、このダガーナイフの刃も特徴的だ。
なんといっても、刃の形が扇形をしている。
投げナイフには向かないデザインである。
「このナイフは何?」
【authorityが不足しています】
またオーソリティー不足かよ……。
ということは、結構いいアイテムなのか。
そんなものを魔物が持っていたとは考えられないし、夜盗でも無さそうだ。
持っていそうな人と言えば、それなりの熟練者か、もしくは金持ちだな。
「現在の所有権は?」
【現在の所有権保持者:ウィリアム・マーキュライト】
今はこれは俺の物ってことでいいんだな。よし。
後で売るか。
「前の所有権が無くなる条件は?」
【条件Ⅰ:ドロップしてから一年以内に所有者に戻らなかった場合。
条件Ⅱ:所有権を保持している人物が死亡した場合。
条件Ⅲ:所有権を保持している人物が、魔法の干渉を除き、自らの意思で手放した場合。
条件Ⅳ:アイテムの破損率が99%を越えた場合】
つまり、これはもう俺が勝手にしてもいいってことだな。
……にしても、条件Ⅳって、厳しすぎないか、それ?
それってほぼ粉々状態なんじゃ……。
(……じゃ、あと一匹狩って帰りますか)
こうして俺の、夜中の狩りという日課が始まったのであった。




