細事/だが、実は大事(おおごと)である。
長く感じる廊下を歩き切り階下に降る。現在地は六階で食堂は地下5階に在る、鵜且達の仕事場は突き当たりの端に存在し。鍵つきの重厚な扉が並ぶ最後に簡素な事務机が三つ、正直この待遇の悪さは何だろうかと悩んだ時期も有った。
しかし寡黙に従事する眞締の姿を見習い、今が或る。年明けには研修も終え希望部署の調査があるが。鵜且は半ば諦めながら此処を明記するのだろう自分に嗤った、矢鱈続く段々に危うく忘れ掛けた書類を探ると上着の内に入れてあった。手に持つのが億劫であり手提げの類も持ち合わせていない彼にはそこが調度良かったのである。ファイルに入れた上、プラスチックで出来た簡易ケースにまで収めてあるのだから折れる心配は無いと頷いて提出場所までふらふらと歩いて行った。
懐から提出書類の入ったケースを取り出した男を少し訝しく思いながら中身を受理した。そのまま危うげに転びそうで転ばない足取りで、階下の方へとその男は向かったらしく派手に落ちる音が響いた。痛そうだ、顔を顰め書類を確認する。驚いた事に普段なら期限の一ヶ月前くらいには提出される書類だ、急ぎ内線で上司に繋いだ。
あと、二、三の段差で前のめり。手摺から手が滑った、強かに打ち付けた身体が痛い。這い蹲って顔や手が痺れるのを感じながら、ぼやけた視界で物を探すと壊れていないようだと安心し気を失ってしまった。如何やらそのまま寝息を掻いていたらしく、気付けば食堂から遣って来た団体に囲まれていた。「この人、踊り場で眠りこけてるよ…」
頬を突かれる感触と乱暴に揺さ振られ目が覚めた、ハッとして勢い良く起き上がり誰かに額をぶつけ引っくり返った。また鈍い痛みに悶えていると相手方も涙目に為っている、少し笑えた。「…コイツ、」と鬼の面相で掴み掛かろうとする彼を周囲が諌め、リーダー格なのか最年長の男が「ところであんた、大丈夫か?こんな所で唯寝てたわけでも無いだろ、」と尋ねた。けれど何と応えれば良いのやら、重度の貧血と過労ならびに栄養摂取を怠り。挙句の果てに階段で足を滑らせ幸い致命傷の打ち身は無いが、疲れていたのかつい眠りこけていた等と馬鹿正直に明かせば良いのか?否、それは幾らなんでも言わない方が賢明だ。
「…寝ていたんだ、悪いか?」困り(呆れ)顔が複数名。




