新生 椿事詳細。一瞬の栄光
miss
絶望の中、待ち侘びた瞬間...やっと味方が現れた。気が急く、一瞬だけ窺うと髪色は同じだが別人だった。しかも偽者は視線を逸らしもせずに合わせて居る。余程の無能らしく両の目が違うのも御蔭で確認できた。腹筋を鍛えていなければ嘲笑していただろうに。可笑しい、この程度の小物に容易く葬られる輩では有るまい。一体何処へ行方を眩ましたのか。褒められないが肘を手摺に乗せ顎を右手で支える。一々、一挙一動に感動する烏合の衆。喉を掻き切ってその囀りを止めてはいけないだろうかと考え、思考を停止した。埒が明かない、いっそ斬り捨てようか?腰に佩びた飾りを撫ぜた。
輝かしい色彩に負けず存在を主張する紅の絨毯を辿って視線を巡らす。似つかわしくない豪奢な椅子に座した御方は儚げな美貌の顕現だった。今日から私はこの女の夫なのだ、少しの時間、見惚れたのを―揺れる白銀の髪、伏せられた瞳を覆う長い睫毛、鼻梁の整った麗しい顔。憂いを帯びた表情が私を認め縋る様に向けられた瞬間―口煩い女中に窘められた。(無礼な!この私を誰と心得る、)口を開き掛け喉まで上った言葉を無理に呑み込んだ。未だ正体を明かす訳には!
さっと顔を伏せ諌言を聞き入れた振りをする。ここは穏便に済ませるに限る。行方を眩ませた下界の人間、否、人と呼ぶのもおこがましい醜悪な生物に唯一の賛辞を。奴は図々しくも数年間居据わり多大な害悪を齎した。だが、目が醒めたらしく私が手を下す前に消え失せていた。姫様の婚約者等、所詮務まる筈の無いこと。最初から判り切った事だったのだ。
事態を重く観た祭司が代理を立てることを提案し、皆了承した。候補者筆頭の私が当然、その大役を引き受け現在に至る。段上へと続く一歩一歩が此れまでの忍耐を語った。(もう良いだろう...)今日この時から、私は王に為る、これは必然であり何人であろうとも逆らえない宿命なのだ!




