新生 幕引き、
私を育んだグリカラは、…を嫌った。仮面を立てて安穏に生きてきた民は歓声を上げ、無知なる貴族は我が傍を渇望し、声無き従者は聴衆に紛れ頼りなる者を見失った私の嘆きは喧騒に消えてゆく。それらを、この祝すべき日を私はどれ程恨めしく待ち侘びた事だろう。我が胸中を理解する者は居らず、地位に傅く輩の虚の忠誠を白けた眼で見飽きた私。
晴天は新たな統治者を祝う様に、光に彩られた色の濁流を照らし淡い色の花弁が宙に舞う。人々はこんなにも狂喜し言祝ぎ謳うのに、独り滂沱の思いを抱える私は...貴方だけが頼みだ!如何か、如何か此の手を取っておくれ。他は何も望まないから、全てを捨てるから。切に願う私を外に連れ出して―
あの日、夢にまで見た願いは違う容で適った。傍らに愛すべき夫が居て、私は子を胸に抱き暮している。疎んでいたこの地、グリカラで満面の笑みを浮かべながら今日も平和を謳歌しているのだ。嗤われても仕方のない事だが、家族が傍に居るだけで人心地着き嘆きは去った。私のみに忠誠を誓う彼等を垣間見る機会も無く、残りの半生を費やすことに為りそうだ。
戴冠式は滞り無く終えた。(あくまでも記述的には、と注釈の付く結末を向かえたが。)歴代でも稀に見る椿事として民と私の記憶に深く刺さったが、後に差し障り無いので忘れるとしようか。今は唯、安穏としていたい。次必要とされるその時まで...




