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反逆の心臓  作者: だいふく丸
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第5話【8】

 月が雲に隠れているせいか、ビジネス街は大きな闇に包まれているよう暗い。


 昨日から左目に蝶の眼帯を巻くその女は、車窓からまばらなビル明かりを眺める。


「ヒミコさま、着きました」


 蝶ネクタイでタキシードのベテラン執事が、黒光りする車のドアを開けた。


 そのまま、高層ビル内の一室へと白金髪の女を案内する。


「あなたたちって、時間通りに揃わないわね」


「なんたって自由を愛する死神ですから」


「そうだったわね。福ちゃんはどう?」


「しばらくは入院です。切断箇所が思った以上に重傷で、近藤家の霊力はすごいと、丸ちゃんが言っています。なんにせよ、福太朗くんには義手が必要です。はたして、七夕の日に間に合うかどうか……」


「左腕でしたっけ? グレネードランチャーでも付けてあげましょう」


「では、柴田先生に依頼しときましょう」


 エレベーターを降り、その老人は細長い腕で重々しい鉄扉を軽々しく開けた。


 多彩な髪色と虹彩をした老若男女が全員、その女に顔を向けた。


 サソリ座の若い女がいう、


「ヒミコちゃん、遅いで」


 てんびん座の若い男がいう、


「ヒミコ様も人間ですから」


 かに座の血の気が多い男がいう、


「七夕まで待てねぇわ。今日、襲撃しようぜ」


 おとめ座の攻撃的な中年女がいう、


「何を言ってんのよ、カニ怪人。カニ鍋でも食ってなさい」


 うお座の鈍感な中年男がいう、


「カニも魚も煮たほうがウマいよな」


 やぎ座の大人しめな少年がいう、


「カニも魚も臭いから嫌いです」


 いて座の空気を読む性別不明な者がいう、


「ジンギスカンが言うなって」


 おうし座の長身の少女がいう、


「ヤギさんよりも、牛さんのほうが美味しいです。とくにハツ!」


 ふたご座の自信家の男がいう、


「なんで肉の話になったんだ。そうだ、れいちぇるずを潰す話をしよーぜ!」


 ふたご座の自信家の女がいう、


「私たち、れいちぇるずに対抗して、キラキラ男子を集めてアイドルを作ってさ!」


 しし座の筋肉質な女がいう、


「なんでって、魚より肉だからよ。十二の星座が集ったことだし、今晩はクマ鍋ね」


 みずかめ座のにこやかな老婆がいう、


「いやいや、鍋ならスッポンでしょう。あれ、スッポンって魚だっけ?」


「死神はヒト鍋一択だろう。こないだ話した仮面だ。全員分ある」


 おひつじ座の紳士な老人が呆れる。まっさらな仮面を配膳カートで運ぶ。


「あなたたちに集まってもらったのは、このプレゼントを渡すためよ」


 殺神隊の幹部たち、十二の星座と称される死神たちが再び主の方へ向く。


 テーブルには、彼らの大小さまざまな武器が置かれている。どれも女の眼帯と同じ蝶の紋章が彫られている。


 女は仮面を一枚一枚ブーメランのよう投げた。星座にちなむ仮面に変化していく。


「この間、百鬼夜行ひゃっきやこうと犯推会とでお会いしたの。今年の七夕の日に関してね」


 カニの面を付けた男がいう、


「ほー、それで具体的に何を話したんだ?」


 妖精の面を付けた女がいう、


「バカ、まだ話している途中でしょうが!」


「んだと、チャーシューがッ! ハサミで真っ二つにしてやラア!」


 血の気が多いカニ男が両腕に霊気を集約したとき、ヒミコという魔女の左眼から一羽の漆黒の蝶が羽ばたく。虚を突かれた男の真上から鱗粉を巻き、女が指を鳴らすと、一瞬でカニが石化してしまった。一同は女主人に拍手を送った。


「焦らないで聞いてちょうだい。いよいよ、黄金の夜明け計画を進める。私が誕生し、GFEを作り、殺神隊でみんなを集める種まきを終えたから。水を撒く時期に入りましょう。金色の武士を助けに行きましょう。近藤金之助を」


 ヤギの面の少年が問う。


「本当に生きているんですか、大統領殺しの反逆者って」


「百聞は一見に如かず。私は近藤金之助を殺神隊の新しいボスにする予定よ」


 天秤の面の青年が賛同する。


「七翼の武士団長がボスなら、文句はありませんね」


「私たちが勝つには近藤金之助を仲間にしなければならない。かつてこの地に栄えた、黄金で輝く王朝を取り戻せるなら、あなたたちに財宝なんて全部あげる」


 獅子に変化する女が喜ぶ。


「《大和三花剣やまとさんかけん》……不死山噴火が楽しみですよ」


「ええ。《ニホン》をあの女から取り戻し、千年の眠りから目覚める、愛しい王子様と愛の国を作りましょう。《シン・ニホン》を!」


 不死山が噴火するとき、再び大和の地は荒れるだろう。


 千年前から続く古の、複雑に絡み合った愛の糸を解くには、重ねに重なった霊魂の歴史と相まって、火の鳥の怒りによって燃やすしかないのだから。


 そして、火の鳥は新たな命を授けるだろう、未来を導く新たな国王を。


「宴の最後に、みんなで歌いましょう。古代ニホンに伝わる愛のおまじないを」


 そして、女はみなの前で歌った。


 

 君が代は 千代に八千代に さざれ石の 巌となりて 苔のむすまで

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