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私の中のリアル  作者: 五月雨
Account-List 7
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Intermezzo  Metamorphosis

 刻々変わるクリア要件。

 異様に多い再挑戦不可の限定イベント。

 達成したはずのクエストに理不尽なペナルティが潜む。

 プレイ料金は平均収入の七割以上。

 失敗すればアカウント削除で即退場の鬼畜仕様。

 こんなクソゲー聞いたことない!

 ならやめてしまえば?それも一理あるだろう。

 人生という名のブラック・ゲーム。

 おはよう。


 だれもいない。


 こたえてくれない。


 ほんとうに、だれもいないの……?



「………さ………」


「……わ……た……」



 ……なにか。



「……やく………られ……」


「………。……に…かせ……」



 きこえる。


 にんげんの、ことば。



「…から言ったでしょ!早くしなさいって!」


「………にゅぅぅ……」


「すぐ調子に乗って!教えたとおりやんなきゃダメでしょ!」


「………ごめんなさいぃ~……」



 みみとめ。しっぽのけが、ねこみたい。


 だれかと、にてる?



「……あ~ぁ。これからどうすんのよ。私達」


「うん……」


「うん、じゃなくてさ。食べるもの、ないんだよ?」


「……うん。分かってる……」


「……………はぁ」



 ぴこっとうごく。しっぽ。みみ。



「……限界、かな」


「……限界、だよね」


「お腹いっぱい、ハリネズミを食べたいな……」



 いたそう。



「泥で固めて……」


「まるごと炙って……」


「針が落ちたら……んぅ~っ!」



 おいしいんだ。



「食べたいよね……」


「食べたいね……」


「お腹すいたね」


「すいたね……」


「僕達、このまま死んじゃうのかな……」



 …………………。



「ねえ。あれ、何?」


「…………っ!」


「おっきいよ!すごく太ってる」


「しっ。こ、今度こそ……!」



 どこから、でてきたの……?



「……やったぁぁあ!」


「十日ぶりの御馳走だね!」


「うん!」


 

 …………あれ。


 ねむく、なってきた……



「………や……………」


「……っ。たす………」



 ……へんなゆめ。


 がけからおちて。


 おなかがすいて。


 ねむくなって。



 あの子たち、どこにいるかな。



 ……また、へんなゆめ。


 ひとりになって。


 うごけなくなって。


 ねむくなって……



 どこか。とおくへ行こう。



 ☆★☆★☆★☆★☆



「……でいいんだな?」


「おぅ。気ぃつけろよ!」


「せーので行くぞ。せーの!」


「…っし、ここまで。休憩!」


「パンとビールを受け取ってくださーい」



 ……人!


 こんなにいっぱい。


 なにしてるの?



「もう一息だな」


「ああ……」


「完成すれば、街の新しい名所になるよ」


「親父らが来て三十七年。もう帰るのを諦めたってことだよな……」



 大きな、やぐら。


 とてもたかい。


 大人がたてに五人。


 なんだろう?



「休憩、終わり!」


「家族ができりゃ、そういう気になるのかもな……っと」


「嫁さんのお袋、まだ帰りたがってるけどさ」



 ほかの人たちは。


 みんな、かえりたいの?



「おい、気をつけろ!」


「全部無駄になるとこだったぞ」


「もう一回だ」


「離すなよ」


「動かすな」



 おもそう。ゆれてる……



「もう少しだ……」



 あぶない!



「おっ……?」


「……あ」


「ユウキ!?」



 いやっ!



「ユウキ……?」


「どうなったんだ?今の」


「え……」



 …………あれ?



「何か知らんが、助かったみたいだ」


「よかったなあ、おい!」


「浮いたように見えなかったか?」



 また、ねむく……



 だれかを助けたい。


 そう思ったら、ねむくなる。


 目をさますと、みんなかわってる。


 見ていないはずなのに。


 何でも知ってる。


 ここはゆめの中。


 ゆめが形をもつ。


 手も足もないけれど。


 ぜんぶ、わたしの思いどおり。



「…………………」



 え?



「…………………」



 …だれか、よんだ……?



「おい、見ろよ」


「ん?…何だありゃ」


「人間……だよな?普通の」


「違うだろ。綺麗すぎる」


「新しいクリメアか。ちょっと耳が尖ってる」


「んなもん造る技術、まだあったのかよ」


「愛玩用だったりしてな。技術革新はエロから始まる!」


「もう一つあるだろ。俺なら、そっちのほうに賭けるね」



 きれいな人たち。


 きゅうにふえてきた。


 色がうすくて。


 手も足もほそい。


 どこか、はかなげ。


 すがた形はちがうけど。


 母さまたちににてる。



「あれが軍事用?うちの娘より細いのに?」


「分かんねぇぞ。クリメアの製造技術、実は魔法だって噂もあるからな」


「それこそまさか、だろ」


「さあ。そもそも誰が創ってんだ?」


「……………………」



 わるいことなの?



「ほとんどの仕事がクリメアに取られたらしい」


「子供の頃に爺さんから聞いたよ。又聞きの又聞きの又聞きだけど」


「働かなくていいから、そのうち誰も気にしなくなった」


「迷宮入りってやつか?」



 後で聞いてみよっと。



「……てことはさ」


「ん?」


「その魔法使い、まだいるんじゃないのか。新しい人種を使って、何か企んでるかも」


「……うーん」


「何もなければ、いいけどな……」



 母さま、じゃないの……?


 話を聞きたい。


 母さまたちのこと、何か知ってるかも。


 足元に文字をきざめば……



 びしっ。



「え……な、何!?」


「どうした……おわっ!」


「……石畳が割れてるな」


「何か落ちてきたのか?」


「怪我はないか?」


「いえ……ありがとうございます」



 …………しっぱい。


 もう少し、やわらかいものに……



 ぐしゃっ。



「……パンが破裂したな」


「プロトスの町では、パンも破裂するんですか?」


「なわけあるか!」



 えーっと。こうすれば上手く……



「逃げろクリメアの嬢ちゃん!今日は神さん祟るらしい」


「あ。クリメアではなくエルフです。プロトスと子を生せますので、ホモ=サピエンスに含まれます」


「どっちでもいいから、とにかく走れ!」



 あっ。こら!まちなさーい!



「きゃあああああああああ!」


「うわあああああああああ!」


「ぐぇ」



 …また、やっちゃっ……




 …あのお姉さんはどこ?


 いつのまにかヒトがふえてる。


 さがせるうちに見つけないと。



 いた。町の外れ。


 うす暗い森の近く。


 どうして、こんなところに?



「………はぁ」



 ためいき。何回も。


 さっきは楽しそうだったのに。


 いやなこと、あったのかな。



「……………」



 でも。


 いつまた会えるか。


 ここで話を聞かないと。


 文字を書くよりも。


 かんたんで楽なほうほう。



「…誰っ!」



 いたた。


 この体、あんまり歩きやすくない。



「なんだ……リスか」



 がさり。もたもたもた。


 早く。早く何か言わないと。



「あ……」


「……種、欲しいの?」



 やさしい目。ほっとする。


 でも。


 こんなに、さみしそう……



「硬いから気をつけてね」


 

 ぽり。ぽり。ぽり。



「いいわね。あなた達は」


「……自由で」



 んぐ。



「ううん。自由には違いないけど」



 ごくん。



「私には、行く当てがない」


「…そんなの、みんな一緒だよ」


「……驚いた。あなた達、喋れたのね」



 ぽり。ぽり。ぽり。



「……そういうふうにシェリィが創ったから」


「へぇ……?」



 いけない。


 よけいなこと言っちゃった。



「あなたのお母さんね。神様みたいなものかしら?」


「違うよ。シェリィは友達。母様は別の人」



 本当だよ。神さまじゃないから。



「お姉さんのお父さんは、なんて名前の人?」



 バルじゃありませんように。



「カイン。最初のエルフよ」



 ……知らない。


 うそついてるのかな?



「知ってる人だと思った?」



 うん。



「数えるほどしか会ったことないの」



 お父さんなのに?


 …って、わたし。


 お父さんに会ったことない。



「巨きな樹から生まれた。親のない始まりの人」


「樹より生まれ出で、やがて樹へと還る」


「大きな仕事をした」


「でも、その仕事は間違っていた」


「過ちを償うため」


「我々は仲間を増やさねばならない」


「お姉さん……?」


「そう、父が言っていたの」



 つぐなうために生まれたの……?


 それって、さみしいことだよ。



「家族ができなかったら、ここへ来なさい」


「陽が昇る海の果て。小さな島の大きな森」


「そこに、お前の求めるものがあるだろう」




「三十年やってみた」


「でも私は、受け容れてもらえなかった」


「これから森へ還るところなの」


「…初めて行くところだけどね」



「一人で寂しくないの?」


「家族ができなかったから。そこに行けば、父さんに関わる何かはあると思う」



「また、会えるかな?」


「生きていればね。それとも一緒に行く?」


「……ごめん。私も母様を探さなきゃ」


「そう……」


「でも、ずっと見てるから。私には見えるから。返事は……できないかもだけど」


「憶えておくわ。寂しくなったら、話しかけることにする」



「お姉さんの名前、教えて」


「ティターニア。あなたは?」


「アウラ。みんなはそう呼ぶの」



「じゃあねアウラ。話せて嬉しかったわ」



 これで七日目。


 母様がいなくなってから。


 六回休んで同じだけ目覚めた。


 もう母様はいい。


 わたしは、自分の力で生きていく。

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