Intermezzo Metamorphosis
刻々変わるクリア要件。
異様に多い再挑戦不可の限定イベント。
達成したはずのクエストに理不尽なペナルティが潜む。
プレイ料金は平均収入の七割以上。
失敗すればアカウント削除で即退場の鬼畜仕様。
こんなクソゲー聞いたことない!
ならやめてしまえば?それも一理あるだろう。
人生という名のブラック・ゲーム。
おはよう。
だれもいない。
こたえてくれない。
ほんとうに、だれもいないの……?
「………さ………」
「……わ……た……」
……なにか。
「……やく………られ……」
「………。……に…かせ……」
きこえる。
にんげんの、ことば。
「…から言ったでしょ!早くしなさいって!」
「………にゅぅぅ……」
「すぐ調子に乗って!教えたとおりやんなきゃダメでしょ!」
「………ごめんなさいぃ~……」
みみとめ。しっぽのけが、ねこみたい。
だれかと、にてる?
「……あ~ぁ。これからどうすんのよ。私達」
「うん……」
「うん、じゃなくてさ。食べるもの、ないんだよ?」
「……うん。分かってる……」
「……………はぁ」
ぴこっとうごく。しっぽ。みみ。
「……限界、かな」
「……限界、だよね」
「お腹いっぱい、ハリネズミを食べたいな……」
いたそう。
「泥で固めて……」
「まるごと炙って……」
「針が落ちたら……んぅ~っ!」
おいしいんだ。
「食べたいよね……」
「食べたいね……」
「お腹すいたね」
「すいたね……」
「僕達、このまま死んじゃうのかな……」
…………………。
「ねえ。あれ、何?」
「…………っ!」
「おっきいよ!すごく太ってる」
「しっ。こ、今度こそ……!」
どこから、でてきたの……?
「……やったぁぁあ!」
「十日ぶりの御馳走だね!」
「うん!」
…………あれ。
ねむく、なってきた……
「………や……………」
「……っ。たす………」
……へんなゆめ。
がけからおちて。
おなかがすいて。
ねむくなって。
あの子たち、どこにいるかな。
……また、へんなゆめ。
ひとりになって。
うごけなくなって。
ねむくなって……
どこか。とおくへ行こう。
☆★☆★☆★☆★☆
「……でいいんだな?」
「おぅ。気ぃつけろよ!」
「せーので行くぞ。せーの!」
「…っし、ここまで。休憩!」
「パンとビールを受け取ってくださーい」
……人!
こんなにいっぱい。
なにしてるの?
「もう一息だな」
「ああ……」
「完成すれば、街の新しい名所になるよ」
「親父らが来て三十七年。もう帰るのを諦めたってことだよな……」
大きな、やぐら。
とてもたかい。
大人がたてに五人。
なんだろう?
「休憩、終わり!」
「家族ができりゃ、そういう気になるのかもな……っと」
「嫁さんのお袋、まだ帰りたがってるけどさ」
ほかの人たちは。
みんな、かえりたいの?
「おい、気をつけろ!」
「全部無駄になるとこだったぞ」
「もう一回だ」
「離すなよ」
「動かすな」
おもそう。ゆれてる……
「もう少しだ……」
あぶない!
「おっ……?」
「……あ」
「ユウキ!?」
いやっ!
「ユウキ……?」
「どうなったんだ?今の」
「え……」
…………あれ?
「何か知らんが、助かったみたいだ」
「よかったなあ、おい!」
「浮いたように見えなかったか?」
また、ねむく……
だれかを助けたい。
そう思ったら、ねむくなる。
目をさますと、みんなかわってる。
見ていないはずなのに。
何でも知ってる。
ここはゆめの中。
ゆめが形をもつ。
手も足もないけれど。
ぜんぶ、わたしの思いどおり。
「…………………」
え?
「…………………」
…だれか、よんだ……?
「おい、見ろよ」
「ん?…何だありゃ」
「人間……だよな?普通の」
「違うだろ。綺麗すぎる」
「新しいクリメアか。ちょっと耳が尖ってる」
「んなもん造る技術、まだあったのかよ」
「愛玩用だったりしてな。技術革新はエロから始まる!」
「もう一つあるだろ。俺なら、そっちのほうに賭けるね」
きれいな人たち。
きゅうにふえてきた。
色がうすくて。
手も足もほそい。
どこか、はかなげ。
すがた形はちがうけど。
母さまたちににてる。
「あれが軍事用?うちの娘より細いのに?」
「分かんねぇぞ。クリメアの製造技術、実は魔法だって噂もあるからな」
「それこそまさか、だろ」
「さあ。そもそも誰が創ってんだ?」
「……………………」
わるいことなの?
「ほとんどの仕事がクリメアに取られたらしい」
「子供の頃に爺さんから聞いたよ。又聞きの又聞きの又聞きだけど」
「働かなくていいから、そのうち誰も気にしなくなった」
「迷宮入りってやつか?」
後で聞いてみよっと。
「……てことはさ」
「ん?」
「その魔法使い、まだいるんじゃないのか。新しい人種を使って、何か企んでるかも」
「……うーん」
「何もなければ、いいけどな……」
母さま、じゃないの……?
話を聞きたい。
母さまたちのこと、何か知ってるかも。
足元に文字をきざめば……
びしっ。
「え……な、何!?」
「どうした……おわっ!」
「……石畳が割れてるな」
「何か落ちてきたのか?」
「怪我はないか?」
「いえ……ありがとうございます」
…………しっぱい。
もう少し、やわらかいものに……
ぐしゃっ。
「……パンが破裂したな」
「プロトスの町では、パンも破裂するんですか?」
「なわけあるか!」
えーっと。こうすれば上手く……
「逃げろクリメアの嬢ちゃん!今日は神さん祟るらしい」
「あ。クリメアではなくエルフです。プロトスと子を生せますので、ホモ=サピエンスに含まれます」
「どっちでもいいから、とにかく走れ!」
あっ。こら!まちなさーい!
「きゃあああああああああ!」
「うわあああああああああ!」
「ぐぇ」
…また、やっちゃっ……
…あのお姉さんはどこ?
いつのまにかヒトがふえてる。
さがせるうちに見つけないと。
いた。町の外れ。
うす暗い森の近く。
どうして、こんなところに?
「………はぁ」
ためいき。何回も。
さっきは楽しそうだったのに。
いやなこと、あったのかな。
「……………」
でも。
いつまた会えるか。
ここで話を聞かないと。
文字を書くよりも。
かんたんで楽なほうほう。
「…誰っ!」
いたた。
この体、あんまり歩きやすくない。
「なんだ……リスか」
がさり。もたもたもた。
早く。早く何か言わないと。
「あ……」
「……種、欲しいの?」
やさしい目。ほっとする。
でも。
こんなに、さみしそう……
「硬いから気をつけてね」
ぽり。ぽり。ぽり。
「いいわね。あなた達は」
「……自由で」
んぐ。
「ううん。自由には違いないけど」
ごくん。
「私には、行く当てがない」
「…そんなの、みんな一緒だよ」
「……驚いた。あなた達、喋れたのね」
ぽり。ぽり。ぽり。
「……そういうふうにシェリィが創ったから」
「へぇ……?」
いけない。
よけいなこと言っちゃった。
「あなたのお母さんね。神様みたいなものかしら?」
「違うよ。シェリィは友達。母様は別の人」
本当だよ。神さまじゃないから。
「お姉さんのお父さんは、なんて名前の人?」
バルじゃありませんように。
「カイン。最初のエルフよ」
……知らない。
うそついてるのかな?
「知ってる人だと思った?」
うん。
「数えるほどしか会ったことないの」
お父さんなのに?
…って、わたし。
お父さんに会ったことない。
「巨きな樹から生まれた。親のない始まりの人」
「樹より生まれ出で、やがて樹へと還る」
「大きな仕事をした」
「でも、その仕事は間違っていた」
「過ちを償うため」
「我々は仲間を増やさねばならない」
「お姉さん……?」
「そう、父が言っていたの」
つぐなうために生まれたの……?
それって、さみしいことだよ。
「家族ができなかったら、ここへ来なさい」
「陽が昇る海の果て。小さな島の大きな森」
「そこに、お前の求めるものがあるだろう」
「三十年やってみた」
「でも私は、受け容れてもらえなかった」
「これから森へ還るところなの」
「…初めて行くところだけどね」
「一人で寂しくないの?」
「家族ができなかったから。そこに行けば、父さんに関わる何かはあると思う」
「また、会えるかな?」
「生きていればね。それとも一緒に行く?」
「……ごめん。私も母様を探さなきゃ」
「そう……」
「でも、ずっと見てるから。私には見えるから。返事は……できないかもだけど」
「憶えておくわ。寂しくなったら、話しかけることにする」
「お姉さんの名前、教えて」
「ティターニア。あなたは?」
「アウラ。みんなはそう呼ぶの」
「じゃあねアウラ。話せて嬉しかったわ」
これで七日目。
母様がいなくなってから。
六回休んで同じだけ目覚めた。
もう母様はいい。
わたしは、自分の力で生きていく。




