Narrow space? My eternal space!
ローカル駅の清掃用具入れ。そこに不認識の呪いがかけられている。
見た目は従業員用ロッカー。幅四十五センチメートル、奥行き五十一センチメートル。高さ百八十五センチメートルとやや大きめ。
そこそこ乗り継ぎ客が多いフルド駅では、清掃スタッフもそれなりの人数がいる。その分だけ道具も増えるわけで、同じ形の直方体が階段下のスペースに五個。いや実際は六個なのだが、それを見た者は慄きと共に事実を語る。
手前の扉が悲鳴を上げ、間髪入れず派手に開いた。その中から人間が現れれば驚く。一糸纏わぬ若い女性なら、なおのこと奇妙極まりなく。
「帰ってきたあっ!」
蹴った勢いのまま、両腕を掲げて高らかに叫ぶ。
最終列車が出たからだろう、目につく範囲は無人だった。問題なく動けるか、見えるか聞こえるか確かめ、少し考えて着るものを取り出す。健康的な濃い色の膚を強調した、動きやすいコーディネート。これから暑くなることも考えている。小躍りしたい気持ちを抑えきれず、格闘の基本動作を繰り返した。
「もう着替えたのか。早いな」
「誰かさんが来ると分かっていたからね。それとも一回くらいは見ておきたかった?」
振り向きざま拳を突きつける。色白なエルフの男は、女物の衣服を片づけているところだった。かつての相棒は、こういうところで気が利かない。実務上の問題がなければ、他は勝手にしろの一点張りだったのである。ランディが姉と同じ家にいたのは就学前まで。一方の彼は、どこかで女性と共に暮らす機会があったのだろう。
そしてアスランのリアルに対し告げたハルマーという名。あれは法術や創術の言葉で『灰色』を意味する。昔の業が因縁となり、等価値の名前を三つ有していた。過去を清算しない限り、新しい呼び名が上回る重みを持つことはない。個の特定を阻む意味では、アカシャに記載がないのと同じ。
「クラリス=ヴェルファーシア」
「ん?」
女が血を噴きながら破裂した。
無論、即死である。片づけを終えた頃、手前の扉が今度は蹴り飛ばされた。足元に零れる蝶番を指先で拾う。
「…抹殺されるようだ」
「存在できないのではなく、ね」
クラリスと名付けられる子供は、毎年それなりにいる。姓が違っても反応するとしたら、なかなか念の入った嫌がらせだ。胎内で溶けるか血塗れになるか。いずれにしても呪われた名前として忌避されるのは間違いない。有色人種のセラフィナ=カスキを名乗る仕返しも考えたが、火に油を注ぐだけだろう。
「ま、適当に考えておくわ。それより今すぐしなければならないことは?ランディ救出と四年前の関係者保護が思いつくところだけれど」
「フランク=プールとアイシャ=ルシエンテスを含む五人が認識されている。他三名はグラキエル内で生存を確認した」
足りない。ある意味、事態の中心に最も踏み込んだ女が。
「……それだけ?」
「ああ。元ラフィニアの手下は、救う価値もないらしい」
アスランの本体は確保済み。全く後始末をしなかったため、女子大生の押し込み誘拐事件としてマスコミを賑わせている。絶望的な捜査状況にもかかわらず、話題性ゆえ休学届を認められたのがせめてもの救いか。
「…厄介ね。自業自得とはいえ」
下手なことを吹聴されても困る、というのが本音だった。
「同じ顔のインカネイトで親元に帰れば、記事を書いてお金に……」
「…………………………」
「冗談よ冗談。本気にしないで」
舌打ちは黙殺された。ハルマーが大きめのバッグを投げつける。
「とりあえず着ておけ。当座の通貨も入っている」
これだけあれば、また動きやすいものを買えるだろう。やたら威圧的なデザインや、入手した経緯については触れないでおく。
「リトラへ行ってくる。すまないが、しばらくお別れだ」
クラリスのことは頼まれたのに、姉であるらしいアウラのことは頼まれなかった。意外な現実にハルマーは引っ掛かりを覚えている。自分を起こせば弟は独りになってしまう――アウラが告げた謎の言葉。それらの意味するところを確かめなければならない。
調整槽を造るため戻ったとき、周りには誰もいなかった。廃工場から地下鉄の廃線に変わっており、アスランの本体も別の場所に移されたと思われる。断絶の結界が解かれているのは、定まった名を持たない者であることと、ミスラ側で動く必要が出たときのことを考えたのだろう。アウラの行き先には、一つだけ心当たりがあった。
「当てにしている。独りでは心許ないもの」
一応、再会の約束をした。どちらかが死ぬかもしれないとき、そうしておけば相手の励みになったりもすると。
四年も関わったのに、クラリスはハルマーの事情を知らなかった。それでも大変な苦労をしてきたことは何となく解る。ランディと似た雰囲気を持つエルフの男を、いつしか頼もしく思うようになっていた。
代わりの代わりの、そのまた代わり。あるいは、もっと多いかもしれない。聖人クラリス=ヴェルファーシアは情の深い女だったと、歴史書には記されている。
だが真実は違う。とにかく怖かったのだ。自らの決断で他人の運命を左右するのが。
責任を押しつけたり、人任せにするつもりはない。ただ傍にいてくれれば。誠実さを以て心に寄り添ってくれれば……
幼馴染みの騎士レオンハルト=リトラー。最後のセリム王ヴィンセント=ルノーシス。教団所属の暗殺者アウレリオ=アルモンテ。エルニアの英雄騎士ラルシアス=ルグリア。ランディそしてハルマー。片思いもあれば深く心を通わせた相手もいたが、不器用な優しさを持つ男達を、クラリスは愛した。
「…言伝を憶えているか?」
ランディがハルマーを通して残したこと。遺言とは呼ばない。ラフィニアに囚われながらも、まだ生きていると信じたかったから。
働け――常日頃ランディが呟いた言葉。思わず顔が渋くなる内容だが、最初に聞かされたときは苦笑したものである。数百年の長きに亘り、見守ってくれた男はもういない。あの辛辣なインドア派に、自分はどこまで見透かされていたのだろう、と。
「あれには続きがある。君の元を去るとき、伝えるよう言われていた」
自分がラフィニアに敗れることを予見して。前回捕まったときは、クラリスの目があったゆえモノ扱いを免れた。辛うじて生き延びたのは、運命の監視者がアカシャになき未来を読むミーミルの首を欲しがったため。
姉を目覚めさせる準備が整うまで、ランディは辛抱強く待つだろう。セラフィナコピーの失敗作に過ぎない自分がどうなろうとも。クラリスはそう考えていた。何百年後か分からないが、そのときついでに助けてもらえればと。だが彼は逃げなかった。勝算などないにもかかわらず、直接対決を恐れなかったのである。
四年の間、ずっと不思議に思ってきた。慎重なはずのランディが、何を思って無謀な行動に出たのかと。真意を聞かされたクラリスは、暫し彼のために泣いた。
《……だが、無理はするなよ。お前が殺されかけても救える者はいない。ミスラへ戻ることができたなら、普通の人間として暮らす選択肢もあることを憶えておけ。今ならアイシャやアリス、当世の新しい友人達がいるだろう。俺やラフィニアと違って、元々お前はこの世界に生まれてきたのだから……》
☆★☆★☆★☆★☆
荒野。低い草に混じって、大きな木が生えている。
見渡して五、六本。それらの生む陰影が、昼間はオアシスのように感じられるはず。
だが、今は夜だった。穏やかな光がしんしんと降り注ぎ……草の根と滴、砂礫の間に吸い込まれてゆく。
何も聞こえない。小さな者達の饗宴はおろか、さざめく風の独り言さえ。
ここは涸れた土地。地味薄く、人里から遠い見捨てられた場所。
そのような僻地であれ、好んで集う酔狂はいる。いや余人が訪れたりせず安心できるからかもしれない。半ば景色と同化した二人も、独特の嗜好を持つ変わり種だった。
ひとりは上背のある逞しい男。大樹の枯れ枝に腰掛けながら、安楽椅子で寝ているかのように落ち着いている。両手持ちの無骨な鉄塊は到底扱いきれぬものと思われたが、彼はその異形を軽々と弄んだ。何らかの奇跡が働いているのだろう、濃い褐色の瞳には野蛮さと知性の光が等しく同居している。
もう一人は女だった。黒一色の戦闘服に、それとは対照的な蜜色の髪。女性としては背が高いほうであり、額は男の目元に迫る。武器は持っておらず、代わりに何割増しか素早そうだ。こちらは樹軸に背中を預け、星々の調べを聴き取るのに余念がない。
漠然と空を眺めながら、男のほうが呟いた。
「…あんたの言うとおりだったな。作家さん」
「……ん………?」
女は僅かに身じろぎ、曖昧な声を洩らす。半分眠っていたのだ。完全に落ちてしまえば元の世界へ戻されるが、周りの者には見た目で違いが分からない。
「何だよ。聞いていなかったのか……とすると今はレオンのほうか?」
憮然として確かめた。それなりに恥ずかしいことを言ったという自覚がある。
「いいえ、私よ。もちろん……この子も起きているけれど」
借り物の身体に右手を当てて微笑む。引っ込んでいる持ち主のほうは、どうやら彼女よりも明瞭な意識を保っているらしかった。
(はい、ギルドマスター。ねぼすけのクラ……じゃないライターに代わって、私が全部聞いておきました)
そう呼ばれた男は、微妙な表情を作り上げた。
「マスターはやめろって。大体お前の相棒、うちのメンバーじゃないだろうが」
「そうね。客分扱いはしてもらっているけれど。正式な構成員ではないのは確かだわ」
ようやく左脳が働きはじめた。クラリスの意識はレオンの脳内に一時保存された擬似記憶であり、この表現は物理的かつ神経学的にも正しい。
(何ですか二人がかりで。仲間には違いないでしょう)
「ああ、そうだ。違いない。だからお前も説得してくれ。わけの分からん理屈はやめて、早いとこうちのギルドに入ってくれるように」
「その話は前にも断ったでしょう?一人のほうが都合いいのよ。いろいろとね」
Partner Persona System――自分のインカネイトと会話できる機能――通称PPSの実装に伴い、クラリスとレオンはいくつかのことを取り決めていた。いや彼女らだけではない。古参の言霊使いとインカネイトが、ある選択とそれに伴う工夫を余儀なくされた。
名前の問題である。ひとつの身体にひとつの意識、それゆえ区別する必要を感じなかったのだが。今やインカネイトは単なる器ではない。合意手続が成立したプレイヤー同士に限り、相手インカネイトとの念話もできるようになった。プレイヤーまたはインカネイトのどちらかに、必然として新しい名前の需要が発生した次第である。
そこで器と魂は話し合った。今の名前をどちらが継ぐべきか。結果は既に出ている。順を追って一人ずつ説明するとしよう。
最初にクラリス。彼女の新しい名前は『writer』。文脈や状況次第では著者という意味にも記者という意味にもなる。最も単純な訳では『文字を書く者』ということになるか。どうやら『作家さん』という呼ばれ方が大層お気に入りらしい。
レオンは今までどおり『Leon』。父親のところには残らず、平穏な過去より不安だらけの未来を選択した結果である。
フランクは、それ以上に複雑だ。まずミスラ側でフランク=プールの名を捨て、デイヴィッド=ボーマンとして戸籍を作りなおした。これはアカシャを書き換えたのではない。地道に書類を偽造したクラリスの仕事。
それからインカネイトのスミスについて。その気力も湧かないために、また足がつくのを恐れて一度もログインしなかったことが幸いした。クラリスにPPSのことを聞かされ、所謂ゲームの神様と思っていた存在が彼なのだと思い至る。
スミスは今もアスルタンに取り残されているらしい。直接ログインすれば二人目の彼が造られ、初代スミスとの繋がりは断たれてしまう。廃墟の街まで迎えに行くには、また別の肉体が必要になる。それゆえの2ndキャラであり、名を『カナロア』という。ちなみにプレイヤーのほうは『アサギ』。どちらも海に関わる単語だ。大陸西岸の南北に長いハディス市は、建国当初から夕陽の名所と呼ばれる場所が多かった。
スミスとは相変わらず音信不通。処分されたとは思わないが、回収できたなら実験台にするくらいのことはしていよう。皇帝スペイディア以降の新型と違って、今のところプレイヤーのログインなしには行動できない。グラキエル世界の主としては貧弱。
クラリスは『魔王』との関係を黙っていた。知っているのは、ランディから全てを聞かされているハルマーだけ。イスカ達三人には悪趣味な協力者として誤魔化し、アイシャには存在自体教えていない。フランクは若さと時間、ジェイコブは親しい友人を奪われた。二人の立場からすれば深刻な裏切り。
ラフィニアはクラリスの新しい友人達に無関心だったが、今後もそうとは限らない。念のため自分と同じ処置を与え、A型インカネイトで実生活を過ごしてもらうことにした。行方不明から四年経過したアスランは最も騒がれたひとりだが、更に一年過ぎて世間の興味も薄れた。人生の遅れを取り戻すように楽しい大学生活を送っている。
「それで、あんたはどうするんだ?」
目的は何もないんだろう。なら俺と一緒に来ないか。言外の誘い。
「悪いけれど無理。仕事で忙しいから」
「…まだ何も言っていないぞ」
「助けが要るときは呼んで。空いていれば駆けつける」
「分かった。だがあんたのほうは、俺の助けなど要らないというつもりだな?」
「……………………」
「まぁいい。俺もリアルじゃ手一杯だ。この歳で軍人は肩が凝るよ」
フランクは正式にデイヴィッド=ボーマンと改名、ミスラ陸軍研究所でマナ工学研究者の職を得ていた。主任研究員であり、給与は前職と比べものにならない。
階級は技術大佐。研究畑の軍人としては最高位である。アーノルド=ケディス大統領の依頼を受けたクラリスが、最先端の技術者としてフランクを紹介した。軍にはヤンシャオの元社員も多数迎えられている。正体を見抜かれたりしないか、その意味では薄氷を踏む思いの毎日だが。
デイヴィッドとアイシャは一緒に暮らしていなかった。
互いの実年齢を知った結果、デイヴィッドのほうが冷めたのだ。開店したばかりの店『ラプサス』には通い詰めており、歳の離れた兄妹か親子のような関係を築いている。時には奥の部屋からグラキエルへログインすることもあるらしい。
ユンイェは中等科の三年生になった。一応高等科の受験を控えているため、アリスからグラキエルのプレイ時間を厳しく制限されている。自分は入り浸りのくせにと文句を言われても聞く耳持たないそうだ。仕事の仮想実験という理屈もあるが、そこには自分勝手な想いも秘められていた。ドリームシェアで長く眠りに就いているほど、アウレア側では肉体年齢の進みを遅らせることができるのだ……
アリスの父ジェイコブは、フェリック社のCEOに就任した。クラリスと『魔王』の同盟が成立し、また『魔王』を黒幕と知らないゆえの人事である。社内に創業当時の仲間を多く持つ彼は、半ば叩き上げの人物として歓迎された。
そしてハルマーは、今もリトラ共和国へ向かったまま戻っていない。
リカルド精錬所から遠く離れた僻地であり、高密度マナを使える環境にないゆえグラキエルにもログインしていなかった。
ランディと同じで様子伺いをするような性格ではなし、ほぼ一年に亘って音信不通の状態が続いている。便りがないのは無事の証と言うが、携帯端末の一つも持たせればよかったと唇を噛むクラリスだった。
(……逃げられたのかしら?)
それより今はラフィニアのこと。一日も早く和解しなければ、アイシャ達の本体を解放したとき不自然に寿命の長い人間ができてしまう。
彼女は今、どこで何をしているのか。神社庁遺跡のアジトを調べに戻ってみたが、そこにラフィニアの姿はなかった。ランディが私掠船団を組織していた絶海の孤島にも。魔境と呼ばれる場所は全て捜した。最近は殺されることもなく、霞のように消えてしまったのではと心配になる。一方で『クラリス』の名を持つ新生児の死産率は異常なまま。今なお許せなく思っていることの証左だろう。
アウレアにもインカネイトビルダーを建造したことで、全能の間による絶対的な攻撃力は相対化した。全知の間を用いた検索にも限界がある。
生まれたばかりのA型インカネイトは出自の不自然さゆえ目立つが、時間を重ねるほど抽出要件が複雑になってくる。多数のA型インカネイトを使い分ければ、いずれ拾いきれない個体も出るという具合。
残る手段は原始的なもぐら叩きのみ。期待を裏切られた憎しみだけで邁進するには効率が悪く、また全てを殲滅できる見込みも薄いのは火を見るより明らか。
それを悟ったからこそ、鳴りを潜めているのだろう。しかし先に癇癪を起こした手前、自分から会いにゆくのも腹が立つ。クラリスが見つけてくれるのを待っている?だとすれば、まず簡単には気づかない場所に隠れているわけで……
(…面倒な子。もう勝手にすれば)
別にラフィニアがいなくとも、いやむしろいないほうが新しい友人達と仲よくできる。五百年前の大災厄まで彼女の仕業だったとは、いくら何でもやり過ぎだ。サウロンも満足している以上、束の間の平和を破ろうとする者はいない。
「ねえミスター。今夜あたり一杯どう?リアルの店で」
右手を軽く持ち上げながら囁いた。
「おっと。それはデートの誘いか?」
腰に両手を置いたライターは、悪戯っぽく笑うと半分だけ振り返る。
「アイシャとアリスさん、G型達も連れ出せる子は全部。それにフェリック社の新しいCEO殿も呼んで。彼が協会の幹部ということは、先日会ったときに教えたわよね?」
本当はハルマーも、アスランの本体も呼びたかった。他の仲間と親しくないアスランも、ハルマーがいれば遠慮なく顔を出せる。そして……ランディ。無事を確認できれば、クラリスはもちろんアイシャとアリスが喜ぶだろう。
「……野郎も来るのか」
情けなく凹んだ表情に吹き出して。
「アイシャは子供だぞ。外していいんじゃないか?」
「残念。会場はアイシャの店です。苦手なのは分かるけれど、手を出した以上は最後まで責任持ちなさい。どのような答えを出すにしてもね」
ますます情けない顔になる。アイシャを子供と言うなら、一つだけ上のアリスも子供だ。いずれ十八歳を超えており、仲間外れにする理由ではない。
「そういうことでよろしく。落ちて買い出しに行ってきます」
言うなり駆け出した。本物の俺は老人だとか、背中で往生際の悪い男が騒いでいる。だがクラリスは思う。人を愛する気持ちは、何年生きようがなくならないと。
そうしたいと願う限り、大切な誰を亡くしても幸せだろう。新しい友人と出会って、また別の関係を築いて。その過程をすら大切にする。隙間風が吹き込んだときには、そっと懐かしい人々のことを思い出す。
(何を考えてるか、当ててみせましょうか?)
レオンが珍しく挑戦的なことを言った。
(幸せだなぁって。このまま、みんなといられますように)
双方が不死にならない限り、別れは必ずやってくる。そうであってさえ、一つは既に起きてしまった。とはいえ本人に悔いがなければ、それほど悲しいものではない。
「は・ず・れ。まだまだ未熟ね。こういうことに関しては」
(そりゃあ生まれてから五年も経ってないけど……)
拗ねた内なる声に喉を震わせて笑う。
時間は沢山。したいことも沢山。そう考えると胸が躍った。
彼女の道を阻む者は、もういない。




