深い絆と学びの種
「あ…アモル…」
アミーリがうっすらと目を開けた。
「喋っちゃダメです!じっとしていてください」
アモルは真剣な表情でアミーリに訴えかけた。まだ傷口は開いており、血がとめどなく溢れ出ている。
「こういった時のために、最上級の治癒魔法を習得しておいてよかったです」
アモルはそう呟くと、アミーリの腹の上に手をかざし、呪文を詠唱し始めた。黄色の光が降り注ぎ、微妙にではあるが傷口がふさがっていく。
実はこの魔法、とても重要なもので、詠唱を間違えたり噛んでしまったり、また患者が大きく動いてしまうと効果が一気に消えてしまう。そのため、賭けのような魔法でもある。
アモルの額には汗が滲み、アミーリは決して動くまいと目を閉じて静かにアモルの詠唱が終わるのを待った。
10分ほど経っただろうか。
「お、終わりました…!」
アモルは息切れを起こし汗だくになり、がくりと膝を折った。
「ん…ありがと…」
アミーリは座り込むアモルの頭を優しく撫でた。アミーリの腹はふさがったが、腹はまだ血で染まっている。
「シャワー浴びてくるね」
アミーリはそう言って起き上がろうとしたが、身体に全く力が入らない。
「多分血が足りないんでしょう…」
アモルはそういうと、いきなり上着を脱ぎ始めた。
「ちょっ!?アモルもしかして!?」
「そうです。私の血を少し分けます」
アモルはそういってアミーリの側にしゃがみ、アミーリをベッドの壁にもたれかからせた。
「それじゃあアモルが大変じゃん!だって今魔法使ったばっかりだし」
「いえ、大丈夫です」
アミーリの心配をアモルは即座に振り払った。その目は真剣そのものであった。
「ん、分かった。痛かったらすぐ言ってね」
アミーリはそう言い、アモルの首元に噛み付いた。
「ぐっ…!」
アモルは軽く呻き、歯を食いしばった。
数十秒経ち、アミーリが噛み付いた傷口を舌で舐め、口を離した。
「ありがと!なんかすごいパワーもらっちゃった!それに、これでアモルとまた深くなれたね」
アミーリはいつもの笑顔をアモルに向けた。
アモルはその笑顔を見てフッと微笑み、そのまま倒れてしまった。
「ち、ちょっとアモルっ!?」
「だっ、大丈夫ですよ…ちょっと魔法詠唱頑張りすぎちゃいまして」
アモルは力なく笑った。
「もぅ…私のためにこんなに頑張ってくれるなんて…アモル大好き」
アミーリは少し恥ずかしそうにアモルにそういい、さりげなく頬にキスをした。
「一緒にお風呂はいる?」
「そっ、そんな事できませんよ!もぅ…何度言ったらわかるんですか…」
アモルは少し頬を染めながら俯いた。
「そうだよねー。そんなことしたら興奮して私の噛んだ傷口が開いちゃうもんね!じゃあ、私が出た後ゆっくり入って傷を癒してね」
アミーリはいたずらっぽく笑うと、そのままバスルームへと向かった。
「まったく…アミーリがいないとやっぱり私は始まりませんね」
アモルはそう呟き、静かに微笑んだ。そしてほおを一筋の涙が伝った。
こちらはルシア宅…ロレスとルシアは暗い顔で俯いていた。静かな沈黙の中、アモルのあの言葉が蘇る。
『貴方…最初に正々堂々といったのを覚えていますか…?』
そう、ロレスは最初にこう言った。しかし、自分たちの技が悪魔2人に当たらないうえに、嫁であるルシアに攻撃をかすめたアモルに激昂してしまい、そこで不意打ちという策を思いついてしまった。
そのせいでアミーリには大傷を負わせたが、王としての威厳は完全に捨て去る形怒鳴ってしまった。
「どうしたらいいんだ…」
ロレスはとても落ち込んでいた。ルシアも全くもってかける言葉が見つからない。気にすることないと言いたいが、逆効果になりそうなうえに怖くて何も言えなかった。
「俺は旅をはじめてまだまだ未熟だったな…それに、ここでくよくよ悩んでるあいだにも、他の村はサマルドロスに破壊されてるよな…」
ロレスはそう言い立ち上がった。
「ロレス様…?」
ルシアはいきなり立ち上がったロレスにびっくりしてロレスの顔を見た。ロレスの瞳は希望に満ちていた。
「俺、確かに卑怯で姑息な手口で勝ったけど、最後にあのアモルが付け加えてたよな。次会った時は満足な戦いを望むって」
「確かに言ってましたね…」
「だったら、満足いく戦いを出来るように俺たちがあいつらを見返してやれば、今回の失敗を取り戻せるんじゃないか?」
その言葉にルシアも少し心が救われる感じがした。
「なるほど…!失敗は成功のもとですね!確かに、今回のことを深く反省してるだけでは前に進めませんね。その反省を次の行動に生かさなきゃいけないってことですね!」
「そうだ!そうと決まったら、最強のギャンブラー探しの旅に出るぞ!」
「いつものロレス様ですね…よかったです!」
ルシアは元気になったロレスを見て涙ぐみながら微笑み、家を出る支度を始めた。
次の村を訪れるには、大山を超えるか洞窟を通らなければいけないようになっている。どんな魔物が住もうと、今の希望に満ちた2人は怖くなかった。




