宿りし光と闇
「ってて…」
ロレスとルシアがまどを開けてみると、ルシア家の前には、五人の天使らしき者たちがいた。4人が折り重なるように倒れ、一人はこちらに背を向けて立っていた。
「フラエル…思い…!どいてくれ…!」
一番下の天使だろうか…埋まっていて良く分からないが、こもった声が聞こえた。
「あぁ、悪い」
一番上にいた黄色髪のフラエルと呼ばれた天使が立ち上がり、それを境目に、緑・青と天使がどんどん立ち上がり、最後にさっきこもった声を出したであろう天使が、立ち上がった。
「楽しいところをおさわがせして悪かったな」
赤髪の天使が、申し訳なさそうにそういった。
「あんた誰だ?」「あなた方は…何者ですか…?」
ロレスとルシアは、まずそれについて問いかけた。
「ん、おっと!自己紹介してなかったか!俺はこの天使たちのリーダーのファイエルだ!炎を司る天使ってとこだ!」
ファイエルは白い歯を見せながら、胸を叩いた。続いて、青髪の美顔の天使が歩み出た。
「私はミヴィエルです。私は水を司ります。よろしくお願いしますね」
ミヴィエルはニコリと微笑むと、深くお辞儀をして後ろにさがった。続いて、緑髪の後ろ髪を縛った天使が歩み出た。
「ハリエルです…少しお世話になります…」
ハリエルは軽くお辞儀をして後ろに下がった。続いて、がっしりとした体型の黄色髪の天使が歩み出た。
「ハリエルだ。よろしく頼む」
ハリエルはそう言ってすぐに後ろに下がってしまった。続いて背を向けていた紫髪の天使が前に歩み出た。右目は隠れて見えない。
「ヤミエルだ。貴様等、狙われてるから気をつけろ」
ヤミエルは鋭い眼光で言い放ち、背を向けて後ろに下がった。
5天使の紹介が終わったところでロレスとルシアが自己紹介をしようとしたところ、ファイエルは2人を止めた。
「おっと、あんたら2人は知ってるぜ!あんたはロレス・カークロー。世界一えらいカークロー家の一人息子で、現王子だ。んで、こっちがルシア・グライス。ロレスの婚約相手で、ロレスが来るのを心待ちにしてたんだよな!」
ファイエルがそういうと、2人は驚きを隠せず、只々首を縦に振るだけだった。
「っつったところで、こんな個性的な俺たち天使だけど、よろしく頼むぜ。んじゃ、俺たちがここにきた本題を話そうか」
そういってファイエルが話し始めようとした時、ルシアが先に口を開いた。
「あの、もし良かったら家の中に来ませんか?こんな所ではなんですし…あと、天使様ですし」
ファイエルはその言葉を聞き、少し考えてからニッと笑った。
「そうだな!俺たちとしてもあんたら達にしか聞かせられない話だし、そうさせてもらうぜ」
そう言ったところで、ルシアは玄関の生き方を5天使達に説明し、玄関から入ってもらった。一応、ソファは長い者が一つあり、食事をするイスが2つあったため、ソファに3人とイスに2人座ってもらい、ロレスとルシアは床で話を聞くことにした。
「なんか俺たちばっかり優遇されてなんか悪いな」
ファイエルは申し訳なさそうな顔で頭をかいた。
「まあまあ、せっかく来たんですしどうぞ」
ルシアは笑ってそう答えた。
「サンキューな。それで、本題だ」
ファイエルは一息つくと、表情険しく話しはじめた。
「こんな話信じられないかと思うけど、あんたら2人は、堕天使に見られてると思うぜ!」
「「堕天使?」」
2人は顔を見合わせて首をひねった。
「そうなんです…堕天使はそういった、能力を持っているんです…」
ミヴィエルは話を繋ぐようにそう答えた。
「堕天使達はその能力を使って、消したい相手の下見をするのです…」
ハリエルは無表情のままだが、声は芯を持って部屋に響いた。
「それに、お前の父親をさらった悪魔も、そいつらと手を組んでる…」
フラエルは重みのある声でそう答えた。
その言葉を聞き、ロレスは肩を揺らした。
「だが、安心しろ。あんな朽ちた連中、俺がこの手で潰してやる」
ヤミエルはそんなロレスに鋭い視線を送りながらも、力強い言葉をかけた」
「ヤミエル、また勝手な行動するのはやめろよ!これで何回目か解ってるよな?」
だが、その言葉をファイエルは否定した。どうやら、ヤミエルは自分一人で堕天使や悪魔に対して戦いを挑んでいるらしい。
「だが、俺たちがこう話している間にも、奴らはここまで迫ってきているかもしれない…だから俺が先手を打つんだよ」
だが、ヤミエルは聞く耳も持たない。ファイエルもいつもの事らしく、それ以上は止めなかった。
「ってなわけで、それを忠告しに来たってわけだ!あんたらを護衛したいけど、生憎俺たちにも天界の仕事があってな」
ファイエルはそういうと、ソファから立ち上がった。それに続いて、他の4人も立ち上がった。
「あの…俺たちはどうすれば…?」
ロレスは少し不安でもあるため、ファイエルに聞いた。
「おぉ、悪い悪い!急いでてすっかり忘れてたぜ!」
ファイエルは頭をかき、口を開いた。
「堕天使も悪魔も、物理攻撃と魔法攻撃には弱いから大丈夫だぜ!あんたらの武器や魔法でも充分戦えるぜ。それに、彼奴らはお前達を殺すわけじゃなく、生け捕りにしろと上から言われてるらしいから全力で戦っても大丈夫だ」
ファイエルは笑ってそう言い、玄関へと進んだ。他の4人も玄関を目指し進んだ…が、ヤミエルが出て行こうとする前に、くるりとこちらを向いた。
「もし危なくなったらこの魔法を詠唱しろ。すぐ来てやる。死ぬなよ」
ヤミエルは魔法の書いた紙切れをロレスに渡すと、そのまま帰っていった。途端に、部屋は静まり返った。
「ルシア…俺から離れるなよ…」
ロレスは少し緊張し、ルシアを抱き寄せた。
「はい…離れません」
ルシアはギュッとロレスの服の裾を掴み、体を寄せた。
「ねぇアモルーっ!」
アミーリはアモルに問いかけた。アモルはその問いかけに気づかなかったのか、そのままアミーリを素通りしてしまった。
「ねぇアモルってばー!聞いてんの?」
アミーリは少し不満そうにアモルに問いかけた。
「んあぁ、すみません。少し考え事をしていました。どうしました?」
ここはサマルドロスのいる城の中。つまり、一番の悪の根源である。その中で、アモルとアミーリは先ほど、サマルドロスの命令でロレスの元へ行けと指示を出されたのである。
「あのさ、私がロレスちゃんを生け捕りにしてもいい?」
アミーリは無邪気に笑った。
「まったく…アミーリは男が好きですねぇ…いいですよ、許可します。ただし、傷つけたり変な色気を使うのはよしてくださいよ」
アモルは呆れ顔とともに、軽い忠告をした。
「大丈夫!まかせて!私が好きな男はアモルだけだからねー」
アミーリはそういうと、アモルの腕に体を絡ませた。露出の多い胸や腹をアモルの腕に押し付けてさりげなくアピールをしてみた…が、そんなアミーリの気持ちにとっくに気付いての行動がまったく気付いていないのか、アモルは思案顔のままであった。
(多分、我々2人の動きに気づき、天使達がロレス達に何か吹き込んでいると推測されます…それに、ヤミエルの奇襲も考えられますね…気が抜けません…)
こんな事を考えながら、アモルは無意識的にアミーリを抱き寄せ、そのまま城の出口へと向かった。
そんな2人の交差する複雑な関係を手に燃やした炎で見ていたエルベは、アモルを凝視しながら不気味な笑みを浮かべていた…




