使命と旅立ち
「ロレス、あんたがいなくなるとあたしも寂しくなるねぇ」
「俺もです。ただ、城を襲ってきたやつを、ぶちのめしたから帰ってきますから」
ロレスはそう言い、宿屋のおばさんに笑いかけた。時が経ち、ロレスは立派な青年王子へと成長していた。そして今、自分の父親を助け、竜王子を倒すために旅に出るところであった。この村も竜王子たちの攻撃を受け、ボロボロになっていた。修復は始まっているが、まだまだ破壊された部分の方が多いくらいだ。
「あ、一つ言い忘れました。俺のことは誰にも話さないでもらえますか?」
「当たり前だよ!あたしは口が硬いんで有名だからね。存分に戦ってきな!」
おばさんは自信たっぷりと言わんばかりにロレスの背中を叩き、見送ってくれた。
ルナは、アモルの手下によってさらわれてしまった…ルナも救うべく、ロレスはまずは、一緒に戦ってくれる〔最強〕の名を持つ人々を探すことから始めることにした。父親であるランス直筆の手紙に、そう書いてあったからだ。そう書いてあるということは、相手も承知のうちだろう。そして、一番気を使うことは、自分が王子であるということを周りにバラしてはいけないということだ。もしカークロー家の王子だとわかってしまえば、続々と人が集まってしまい先に進めなくなる。
そのため、慎重に今いる村の中を進んだ。まず探しに出るのは…と思い紙を一通り見た。 しかし、かすれて読めないところもあり、行く場所も分からなかった。そのため、まずは隣の村にでも行こうと思い、ロレスは村を飛び出し、隣の村へと向かった。
草原を歩いていると、二匹の魔物が現れた。まるで狼と悪魔を足したような外見で、よだれを垂らしていた。竜王子の手下だろうか…
「ちょうどいい」
ロレスは持っていた薄い本を開いた。本には、カークロー家にまつわる色々な魔法が記されている。
ロレスが魔法詠唱をすると、光の粒子が手のひらに集まった、現れたのは細身の片手剣であった。初代のカリス・カークローが使っていたとされる貴重な剣だ。ロレスはその剣を頭上に掲げ、さらなる魔法詠唱を行った。途端に、剣は真っ赤な炎に包まれた。ロレスがその剣を一匹の魔物に振りかざすと、炎は空を切るようにして魔物に吸い込まれていった。炎に包まれた魔物はギャンッと悲鳴をあげ、跡形もなく消えてしまった。続いてロレスは、薄い本の別ページを見て、魔法詠唱を行った。途端に剣が光の粒子となって飛び散り、新たな武器が光の粒子となり現れた。それは伝説の幻獣カプリコーンから作られたとされる槍だった。その槍を腰を落として構え、新たな魔法詠唱。すると、槍は竜巻のような風をまとった。ロレスが槍を構えて一閃!すると、風は竜のごとく渦巻きを作り、魔物に向かっていった。吸い込まれた魔物は目を回しながら、闇の粒子となって消えてしまった。
通り道の邪魔をする者がいなくなったところで、ロレスは隣村へと足を進めた。幸い道中、先ほどのように魔物が現れることはなく、足を止めることもなく隣村に着いた。
隣村もまた、竜王子たちの攻撃により、ガレキの村と化していた。
そんな村の中に足を踏み入れると、様々な人たちが挨拶をしてくれた。やはり、服が豪華だからだろうか…
「あんた、偉い豪華な格好してるな」
近くの中年ぐらいの口ヒゲを生やした男性が仏頂面で皮肉っぽくそういった。ロレスは確かに、自分の格好では皮肉を言われても仕方ないと思っていた。
「すみません…」
誤ったあと、ロレスはばれない程度に経緯を明かした。
「実は、俺はある村の王子でして、村々を攻撃してきた相手を討伐しようと思っているんです」
そう言われた男性は、顎に手をやり、少し考えてから口を開いた。
「ほぉ…そりゃすまなかった。外見で判断するのは悪かったな」
「いえいえ、こんな服でいる俺のほうも悪いですし」
ロレスは本心でそういった。しばらく男性と話していたが、本心を打ち明けたあたりから既に仏頂面は無く、気さくな感じであった。
「よし、本当にあんたのことを疑って悪かったな。今村長呼んでくるから少し待ってな」
男性はスッと立ち上がると、軽快に道を走っていった。男性との話を聞いていない人たちは、男性の表情の変わりように、ロレスを只者ではないと思ったようで、不思議な目で見ていた。
「よっ、待たせて悪かったな」
しばらくすると、男性が尊重を連れて歩いてきた。
「いえいえ、俺のほうからこの村を訪ねたわけですから、とんでもないです」
ロレスは男性に敬意を表した。男性はニコッと微笑むと、そのまま席を外した。
「遠路からはるばるご苦労様じゃな。ワシはこの村の村長をやっておるもので、ノーモル・ビラノルアという」
ノーモル村長は、深々と頭を下げたたため、ロレスも慌てて頭を下げた。
「こんにちは。俺はある国の王子で、ロレスといいます」
その名を聞いて、ノーモル村長はロレスの耳元に口を近づけると、小声で囁いた。
「まさか、カークロー家のお方ですかな?」
その言葉に、ロレスは固まってしまった。それを察したノーモル村長は、さらに言葉を続けた。
「まあ落ち着きなされ、貴方を必要とされてるお方がこの村にいますぞ。そこまで案内しましょう」
とりあえず、ここで話をするのも危ないので、ノーモル村長にくっつきながら、ロレスは自分を必要とする者の元へと向かった。
そこは、なんと普通の一軒家であった。幸い人通りは全く無く、ロレスは安心した。
「おーい、ルシア殿、いますかな?」
ルシア。その言葉を聞き、ロレスは心臓が跳ね上がった。
ルシアといえば、自分の婚約相手だという女性であった。正直家の外見で判断したくないが、ロレスは色々と頭の中でルシアの顔を思い浮かべ、一人でドキドキしていた。
「はーい!」
声が聞こえ、扉が開け放たれた。そこに立っていた女性は、ロレスにとって、心が締め付けられるようであった。
艶のある綺麗な黄緑色の髪、テッペンにはアホ毛が出ていてなんとも可愛らしい。瞳はつぶらだが、光が灯っている。服装は貧相だが、ロレスにとっては手に余るほどの女性であった。
ルシアは村長を見て、その後となりに立つロレスを見て目を見開いた。向こうもこちらを察したのか、目を大きく見開いた。
「それじゃ、ワシは帰りますぞ」
村長はそんな二人に微笑みかけると、察しがいいのか帰っていった。
しばらく二人は見つめ合い、やがてロレスは口を開いた。
「ロレスだ…」
それを聞いた途端にルシアは駆け出し、ロレスに抱きついた。身長差があるため、ルシアの顔はロレスのお腹あたりに収まるかたちとなった。
「ロレス様…」
ルシアは消え入りそうな声でそう呟いた。顔は真っ赤であった。しばらく二人は抱き合い、お互いの温もりと初対面ながら惹かれ合うほどの強い愛を確かめ合った。




