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【完結】クリムゾン・コート・クルセイド Vol.Ⅱ ”平和たる軍靴"  作者: アイセル
第六章 St.Anger

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脱出―⑫―

当作品の無断転載、AIを含めたあらゆる二次利用を禁止します!!

Do not reupload / use my writing for any purposes, including for AI!!

「ブルース……『ロ(・)ッ(・)ク(・)が(・)敵(・)に(・)な(・)っ(・)た(・)』って、言ったよね?」


 片刃に機関銃の柄の付いた"命導巧(ウェイル・ベオ)":"フェイス"に銃弾を装填しながら、サキはブルースに問う。


 彼が頷くと、


「戦(・)っ(・)た(・)こ(・)と(・)があるの!?」


 サキの鋭い視線を翠眼に受け、ブルースが天を仰ぐ。


 炎を思わせるパーカーの一平と、上半身裸でスリムフィットを履く龍之助も苔色の外套(コート)の男に視線を向けた。


「ああ……去年のクリスマス、ロンドンで」


「ブルース……もしかして、ク(・)リ(・)ス(・)マ(・)ス(・)の(・)夜(・)に(・)突(・)如(・)飛(・)来(・)し(・)た(・)未(・)確(・)認(・)飛(・)行(・)物(・)体(・)の(・)事(・)件(・)か(・)!?」


龍之助の口から、サキの脳裏にある事件が浮かぶ。


逡巡とした目と眼鏡の光が、ブルースに向いた。


 彼の問いにポニーテールにしたロックの弟、サミュエルも神妙な顔つきとなる。


「……その混乱で、"ワールド・シェパード社"と"ブライトン・ロック社"が激突した。そして、派遣された"ワールド・シェパード社"の中隊――五部隊の内の一隊を半死半生で壊滅させ、もう一隊を全(・)滅(・)さ(・)せ(・)た(・)」


「ブルース……部隊って何人だ?」


 一平が困惑して、ブルースに問う。


「一平……現代の分隊が概ね10人前後の筈だから、その十倍強……ただ、考え方自体が対人のもので、兵装にもよるけど……」


サミュエルの回答に、一平が言葉を失う。


龍之助も、ブルースに倣い天を仰いだ。


 サキの周囲から言葉が少なくなる中、"紅黒の魔人"となったロックの"チキンブロウ"への攻撃は激しさを増している。


 黄金の巨大嬰児が、破壊された右の眼窩を中心に頭部を再生。


 紅黒の輝きを発するロックの一撃一撃が、その隙を与えない。


 黄金の嬰児の眼窩から後頭部をロックの紅黒の一撃が貫く。


 崩れた身体を右脚で支えようとする"チキンブロウ"に、ロックが膝(・)か(・)ら(・)下(・)を右(・)拳(・)の(・)一(・)振(・)り(・)で(・)砕(・)い(・)た(・)。


 紅黒の暴風が前のめりとなる巨大嬰児に迫る。


 紅黒の閃光が、巨大な額を蹴り上げた。


 右眼窩を再生させた顔の額に傷が新たに刻まれる。


 眼まで達した窪みが、どこか涙を思わせた。


「問題はロ(・)ッ(・)ク(・)の(・)や(・)っ(・)た(・)こ(・)と(・)じ(・)ゃ(・)な(・)い(・)」


 ブルースの視線が、ロックと"チキンブロウ"を捉える。


 巨大な嬰児が寝返りを打ちながら、"紅黒の魔人"から逃げた。


 這いずる黄金の背中を逃さず、ロックが紅黒の双翼を広げる。


 跳躍をして、両足を紅黒の槍にして"チキンブロウ"目掛けて急降下。


 重力加速度と体重を掛けた紅黒の一擲が、巨大嬰児の背に突き刺さった。


 雑賀の腹の底から上げた悲鳴が、黄金色の嬰児から轟く。


 彼女の鳴き声に呼応するように、嬰児が上体を上下させた。


「どういうことだ、ブルース?」


 龍之助が首を傾げる。


「"命熱波(アナーシュト・ベハ)使い"の中で、"ウィッカー・マン"の弱点を見られるのはサキ、シャロンにロックだ」


 ブルースの言葉に、龍之助が何かに気づいた顔をする。


 一平もそ(・)の(・)意(・)味(・)を(・)理(・)解(・)し(・)て(・)呻いた。


「ロックは、"命熱波(アナーシュト・ベハ)使い"の中で、近距離と遠距離の攻撃が出来る……」


「そう万(・)能(・)型(・)だ……だから」


 サキの言葉をブルースが引きつぐ。


「ロックは戦(・)力(・)で(・)は(・)な(・)く(・)な(・)っ(・)た(・)」


「最悪なことに『見(・)境(・)も(・)な(・)い(・)』……止めないと、僕たちだけでなく住(・)民(・)に(・)も(・)危(・)険(・)が(・)及(・)ぶ(・)!!」


 "滑輪板(スケートボード)"を地に叩きつけるシャロンに応える様に、サミュエルが鎌を畳んだ散弾銃を構える。


「みんな……ど(・)ん(・)な(・)姿(・)で(・)も(・)、ロ(・)ッ(・)ク(・)はロ(・)ッ(・)ク(・)!!」


 サキは"命導巧(ウェイル・ベオ)":"フェイス"の機関銃の柄を握る。


 蒼く輝く片刃の切っ先を、ロックに向けた。


 "紅黒の魔人"が、嬰児の背中に右拳を叩き込む。


 "超微細機械(ナノマシン)"が、ロックの作った穴を塞がんと増殖。


 しかし、ロックの左拳が巨大黄金嬰児の背中の塞ぎかけた傷口をかき回す。


 再生が追い付かない巨大嬰児の肉体の痛みに喘ぐ、雑賀。


 彼女の絶叫が瓦礫に包まれた商店街に響いた。


「ロック……雑賀を引(・)き(・)ず(・)り(・)出(・)す(・)勢(・)い(・)じゃねぇか!?」


「まずいよ……ナ(・)ノ(・)マ(・)シ(・)ン(・)が(・)身(・)体(・)の(・)深(・)部(・)に(・)入(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)な(・)ら(・)、それが生(・)命(・)維(・)持(・)装(・)置(・)に(・)な(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)!! 引きずり出したら、死んじゃうよ!!」


 一平の言葉に、シャロンが叫ぶ。


『ロックを、助けて!!』


 サキの頭にファンの声が響くと、"命導巧(ウェイル・ベオ)":"フェイス"を突き出した。


「ロックを……助けよう!!」


――ロックに助(・)け(・)て(・)も(・)ら(・)っ(・)た(・)……だから、今(・)度(・)は(・)……私(・)の(・)番(・)!!


 サキは片刃の輝いた"フェイス"から、蒼白い弾丸を放った。


 紅黒の装甲が、サキの放った攻撃を弾く。


 彼女の眼の前から"紅黒の魔人"の姿が消えた。


 生(・)温(・)か(・)い(・)風(・)が(・)吹(・)き(・)、ブルースが駆け寄った。


 苔色の外套(コート)の青年の目に映るのは、サキ。


 サキの背後に二人の"命熱波(アナーシュト・ベハ)"の守護者、"ライラ"と"ヴァージニア"が現れた。


 守(・)護(・)者(・)と(・)対(・)峙(・)す(・)る(・)"紅(・)黒(・)の(・)魔(・)人(・)"と化したロックが迫る。


 "ライラ"の右手から生えた"細剣(レイピア)"が、"紅黒の魔人"の右腕の一振りで消える。


 "ヴァージニア"の右手の弓から放った"フォトニック結晶"の鏃が、"紅黒の魔人"の前で炸裂した。


 鶏冠の兜(ガレア)の"命熱波(アナーシュト・ベハ)"の攻撃に怯んだ隙を突き、サキは距離を稼ぐ。


「正気に戻れ!!」


 サキと入れ違いに、"紅黒の魔人"と化したロックに飛び掛かるブルース。


 二振りのショーテルが、翡翠色の輝きと共に振り下ろされた。


 紅黒の光に阻まれ、双刃を振りかぶったブルースが宙に止まる。


 紅黒の光を纏った右回し蹴りが、ブルースの腹を大きく抉った。


 声を出す間もなく、ブルースが瓦礫の積まれた商店街に吹き飛ぶ。


 "紅黒の魔人"が、跳躍。


 剣の双翼を羽ばたかせ、サキに突進した。


「させない!!」


 龍之助が、サキの前に躍り出る。


 蒼く輝く矛槍の一撃をロックに放った。


 紅黒の光と蒼い光が衝突。


 その衝撃で粉塵が、舞い上がる。


 サキの視界から一瞬、二人が消える。


 粉塵が晴れると、"紅黒の魔人"の右腕が龍之助の首を掴んでいるのが見えた。


 龍之助の名前をサキが呼ぼうとした時、炎が"紅黒の魔人"の背後から上がる。


 炎は、一平から放たれた。


 龍之助を囮にして、一平が背後から忍び寄ったのだ。


 爆轟と共に紅蓮の炎が"紅黒の魔人"を焼き尽くす。


 勝利に満ちた一平の顔をサキは見られなかった。


 龍之助を掴む手で、"紅黒の魔人"は裏拳を一平に見舞う。


 当たると龍之助も手放し、一平にぶつけた。


 二人が意識を失ったまま瓦礫の上に重なり、倒れる。


「兄さん、随分と好き放題してるじゃない?」


「バカ兄貴、サキから離れろ!!」


 サミュエルとシャロンが、それぞれの得物を構えて、サキの前に出た。


 "紅黒の魔人"の関心はそ(・)こ(・)に(・)向(・)い(・)て(・)い(・)な(・)か(・)っ(・)た(・)。


 微かに上を向く彼の視線。


 その先を見ると、再生を終えた"黄金の嬰児"――"チキンブロウ"――が、サキの背後で仁王立ちしていた。

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© 2026 アイセル

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