↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】クリムゾン・コート・クルセイド Vol.Ⅱ ”平和たる軍靴"  作者: アイセル
第六章 St.Anger

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

75/175

脱出―⑪―

当作品の無断転載、AIを含めたあらゆる二次利用を禁止します!!

Do not reupload / use my writing for any purposes, including for AI!!

 温かい風と共に、ロックは目を覚ます。


 振り向くと、いつも大切な人たちがいた。


 父、母、弟のサミュエル。


 そして、ロックとサミュエルの後で生まれた妹のレナ。


 穏やかな風の下に建つ家、隣人に囲まれた騒々しい日々。


 何物にも代え難い日常が、いつもそ(・)こ(・)に(・)あ(・)っ(・)た(・)。


 否、あ(・)る(・)は(・)ず(・)だ(・)っ(・)た(・)。


 続(・)く(・)は(・)ず(・)だ(・)っ(・)た(・)。


 炎(・)に(・)包(・)ま(・)れ(・)た(・)日(・)が来るまでは。


 炎とともに訪れた男。


 彼の足元に、炎の様に赤く真(・)っ(・)赤(・)な(・)血(・)が(・)広(・)が(・)っ(・)た(・)。


 父と母から流れている。


 血と炎という赤色に包まれた世界で笑う"イ(・)ン(・)ヴ(・)ァ(・)ネ(・)ス(・)・コ(・)ー(・)ト(・)の(・)男(・)"。


 弟と妹の泣き叫ぶ声。


 その全てが、紅(・)黒(・)い(・)風(・)と(・)な(・)り(・)ロックの中に入りこむ。

 

 血が沸き、天地が逆転する感覚の荒波に、ロックは飲まれていった。



※※※



『お願い、ロックを……止めて!!』


 河上 サキは、その声に思わず息を呑んだ。


――ファンさん!?


 戸惑うサキを他所に、目の前に突如として現れた紅黒い竜巻。


 それがロックを包み込む。


 そればかりか、市(・)役(・)所(・)に(・)隣(・)接(・)す(・)る(・)商(・)店(・)街(・)の(・)瓦(・)礫(・)を(・)巻(・)き(・)上(・)げ(・)、青(・)白(・)い(・)炎(・)も(・)か(・)き(・)消(・)し(・)た(・)。


 時間としては、数秒くらいしか経っていない。


 だからこそ、ロ(・)ッ(・)ク(・)の(・)立(・)っ(・)て(・)い(・)た(・)位(・)置(・)に(・)現(・)れ(・)た(・)モ(・)ノ(・)に(・)、サキは眼を疑った。


「もしかして……」


 サキは呟きを漏らす。


 彼女の眼の前に立つのは、自分を一回り大きくした何か。


 上半身が膨張し、その背から生えた双翼。


 身体の表面は、金属の光沢を思わせる輝きを発する紅黒色に覆われていた。


 光の見え方のせいだろうか。


 騎士の甲冑を思わせる無(・)機(・)質(・)さ(・)と、甲殻類を思わせる有(・)機(・)質(・)さ(・)を併せ持っていた。


 "チキンブロウ"――三条が指して言っていた、巨大な"黄金色の嬰児"――の、鏡を思わせる皮膚の頭部が、その魔人然とした大きな人型を捉える。


「……おお、これぞ……"ス(・)パ(・)イ(・)ニ(・)ー(・)・ノ(・)ー(・)マ(・)ン(・)"!!」


 顔の半分が銀鏡となった茶髪で毛皮の外套(コート)を着た男――"スコット決死隊"のダグラス=スコット=クレイ――が歓喜で飛び上がりそうにして、言った。


「触れるもの全てを切り裂き、串刺しにしそうなほど鋭(・)い(・)剣(・)の(・)翼(・)! そして、龍(・)を(・)思(・)わ(・)せ(・)る(・)頭(・)部(・)!! ボクが憧れ、胸を焼かれ、そして……死(・)の(・)深(・)淵(・)を(・)見(・)せ(・)つ(・)け(・)た(・)、破壊の化身!!」


 サキ達はおろか、金色の嬰児すらダグラスの眼中に無いのだろう。


 多弁となり、恍惚色に染まる眼を輝かせていた。


「まずいぞ……」


 サキの隣で、ブルースがショーテル型"命導巧(ウェイル・ベオ)":"ヘヴンズ・ドライヴ"を構える。


 狐の毛皮を思わせる茶髪の優男が顔を強張らせる中、


「そうだよね……」


 シャロンが右手で立てた"滑輪板(スケートボード)"を蹴り、車輪を大地に叩きつける。


 無言で散弾銃型"命導巧(ウェイル・ベオ)":"パラダイス"の上に畳んだ鎌の刃を、サミュエルが起こした。


「ちょっと待て!! ……あ(・)れ(・)は(・)、ロ(・)ッ(・)ク(・)……な(・)ん(・)だ(・)よ(・)な(・)?」


 自分の背より頭二つ高い、紅黒い人型を指した一平が聞く。


 目の前に起きたことに困惑し、額に皺を寄せ、言葉を絞り出していた。


「それ以前に……熱(・)流(・)が(・)体(・)中(・)を(・)回(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)……」


 龍之助が蒼い右眼で、見据える。


「一平、龍之助……そ(・)う(・)だ(・)、一(・)緒(・)に(・)戦(・)っ(・)て(・)い(・)た(・)ロ(・)ッ(・)ク(・)だ(・)……」


 ブルースが二人に答えると、


「同時に言えば、倒(・)す(・)べ(・)き(・)敵(・)だ(・)」


 両極端な言いぐさに、一平と龍之助は眉を顰める。


 特に一平が、


「待て、一体どういう――」


 食って掛かると、大(・)地(・)を(・)蹴(・)る(・)音(・)が二(・)つ(・)聞(・)こ(・)え(・)た(・)。


 紅黒い鎧か甲殻を纏った大男と、毛皮の外套(コート)に包まれたダグラスが消える。


 銀の雫をまとった右拳をダグラスが、"紅黒の魔人"に放った。


 テルミット反応で発生した炎の一撃が、"紅黒の魔人"の龍を思わせる頭部に向かう。


 驢馬のしゃれこうべから放たれる炎の舌が、"紅黒の魔人"に触れることは無かった


 鈍く輝く紅黒の右拳を突き出し、炎を潜り抜ける。


 紅黒の颶風が、ダグラスの腹に入った。


 骨と肉が、爆轟の中心地となって周囲を震わせる。


 サキの肌を撫でる衝撃。


 刹那、紅黒の右手で首を掴まれたダグラスの巨体が、瓦礫に叩きつけられていた。


――見えない!!


 "紅黒の魔人"の動きは、身体の大きさの割に速い。


 "紅黒の魔人"が、背中の剣翼を羽ばたかせる。

 

宙に浮かんだと思うと、ダグラスから一歩分距離を離した。


 宙返りをしたあと、更なる爆轟が毛皮の外套(コート)の男の中心で発生。


 中空からの滑空からの紅黒の飛び蹴りが、ダグラスの腹をぶち抜いた。


 周囲を震わせる衝撃に、毛皮の外套(コート)の男から叫びは聞こえない。


 否、ロックの攻撃の衝撃が、周(・)囲(・)が(・)息(・)を(・)呑(・)む(・)音(・)と(・)共(・)に(・)かき消した。


 ダグラスの口から吐き出された血と歯の欠片が、夜の天蓋の下で放物線を描く。


「何だってんだよ、アレ!?」


 一平が叫んだ。


 眼が強張り、彼の眼の中には"紅黒の魔人"の殺戮しか映っていない。


「……ブルースの言ったようにロックだよ、一平?」


 サキは自分でも驚くほど、目の前の事実を冷静に受け止めていた。


 彼女の眼の前で、紅黒の甲冑魔人からダグラスが距離を離す。


 ダグラスが周囲に、銀色の奔流を発生させる。


 銀色の奔流が炎を作ると、大口を開いた驢馬のしゃれこうべとなった。


 ダグラスの声と共に、"驢馬のしゃれこうべ"が"紅黒の魔人"と化したロックに向かう。


 炎が飲み込むと、ダグラスは確信に満ちた笑みを浮かべた。


 しかし、彼(・)の(・)勝(・)利(・)の(・)笑(・)顔(・)が(・)唐(・)突(・)に(・)消(・)え(・)る(・)。


 表情どころか、姿(・)も(・)消(・)え(・)た(・)。


 サキが戸惑った時に、大きな足音が響く。


 金色の嬰児――"チキンブロウ"――が、"紅黒の魔人"に向かった。


 両腕の黄金槌で、ロックを叩き潰そうとする。


 しかし、それは振り下ろされなかった。


 それどころか、槌(・)を(・)な(・)す(・)両(・)拳(・)ご(・)と(・)潰(・)さ(・)れ(・)る(・)。


 "黄金の巨大嬰児"の攻撃を潰したのは、"紅(・)黒(・)の(・)魔(・)人(・)"が(・)放(・)り(・)投(・)げ(・)た(・)ダ(・)グ(・)ラ(・)ス(・)。


 彼の身体が、巨大嬰児の両手の手首から肘まで破壊したのだ。


 "紅黒の魔人"が、翼を羽ばたかせて跳躍する。


 商店街を見下ろせる位置まで飛翔し、放り投げたダグラスに肉迫。


 空中を漂うダグラスに、右拳を振り下ろす。


 鈍い紅黒の光の放つ殴打音と共に、ダグラスの身体が急降下。


 両手を失い、潰れた両肘で月を仰ぐ"チキンブロウ"の頭の右半分が、撃ち放たれたダグラスで大きく抉られる。


 衝撃と土煙の立つ商店街を背に、"チキンブロウ"が仰向けに倒れた。

面白いと思ったら、リアクション、評価にブックマーク、よろしくお願いいたします!!


© 2026 アイセル

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。