脱出―③―
当作品の無断転載、AIを含めたあらゆる二次利用を禁止します!!
Do not reupload / use my writing for any purposes, including for AI!!
胴体部分が剥げた銀鏡色の巨大な西洋甲冑。
その胸部から、青銅色の球体が剥き出しとなっている。
雑賀 多恵と言う女の姿が、球体の割れ目の間から覗かせていた。
顔から胸までの肌を晒され、彼女の崩れ切った化粧が涙に混じる。
化粧と涙の混じった唾を吐きながら、叫んでいた。
「……どういうことだ?」
目の前の雑賀 多恵と言う女性と巨大甲冑を見て、ロックは思わず呟く。
「……熱源が、全身を回ってる……?」
サキの一言に、ブルースが顔を蒼白にした。
「三条、お前……あの女を"ウィッカー・マン"に取り込んだのか!?」
ブルースの糾弾に、ロックは言葉を失った。
隣のサキの顔から血の気がなくなり、シャロンも舌打ちをする。
一平と龍之助だけが、事態を理解していないように見えたが、
「取り込んだって……」
一平の口調に、わずかに戸惑いの色が籠る。
一平の考え得る中で最悪の結末に至ったこと。
それを、否定できる希望にすがるような声をしている。
「……つまり、雑賀とあの"ウィッカー・マン"が一つになってしまった……ということか?」
事態を受け入れることに抵抗を隠そうとしない龍之助に、ブルースが重く頷いた。
一平が、ブルースの反応を見て、右手の"命導巧":"ライオンハート"を構えた。
「……あらあら、ご不満でしたかしら?」
一平達の反応をする理由が心底分からないという体で、三条が向き合う。
「……この"ウィッカー・マン"、"母体"に優しいから、女性解放のために使えると思ったのでしたけど……」
「なら……その女性から生まれた"未成年の主張"を聞いてくれるか、弁護士さんよ?」
三条の言葉に、一平の声が、夜の帳に染まりつつある空気に響いた。
一平を臨む三条の顔。
ロックは、今までの三条とは違う、不自然なまでの喜に染まった顔に戸惑う。
一平の声と共に、ロックは構えた。
「一昨日きやがれ、クソッタレ!!」
一平の右手の"ライオンハート"から"爆轟咆破"の咆哮と共に、ロックは三条に斬りかかった。
炎に包まれた咆哮は、三条に届かない。
ピンク色のパンツスーツの女の前で、三人の人物が浮かんでいた。
「三条さん、これって――!?」
「リカコ、どうなっているのよ……」
「リカコ、マキナ……私たち、浮いていて――!!」
三人の人物――脂肪太りの女、ヤニ混じりの歯の女、ガタイの良いが妙に肌艶の良い黒縁眼鏡男――が、空中で騒いでいた。
無傷ではあるものの、目の前で一平の放った炎に晒されたことで、三人の混乱に拍車がかかる。
「リカコさん、マキナさん、カンタさん……誰もあなた方を助けないとは、酷いですね」
三条の声はどこか、哀れみがあり穏やかな声だ。
しかし、ロックは、彼女の背後にいる"S.P.E.A.R."の秋津 澄香を見た。
彼女の顔が、三条の声の緩急に合わせて、蒼白になっていくところを。
三人の中年が三条に同情を求めているが、ロックと秋津の心中などお構いなしに見える。
三条の一声が、そんな三人の運命を決定づけた。
「だから、使ってあげます。"政治に声を張り上げ隊"の面々が逃げる時間……精々稼いでくださいね?」
リカコ、マキナ、カンタの三名が、同じタイミングで口をあんぐり空けた。
三人に赤、白、青緑の光が注がれる。
三条の召喚した両手から、三色の光が出ていた。
両手から放たれる三色の光が、煌きを増していく。
光が三条を覆い始め、両手から腕が現れた。
腕から、肩と顔を作り出す。
純金の頭、銀色の両腕と胸をしている。
その背後には、識別不能な言語で書かれた石碑が浮かんでいた。
「三条の"命導巧":"パラノイド"の"真名"……"ライティングス・オン・ザ・ウォール"を解放か……?」
ブルースが、吐き捨てた。
「これは……"ウィッカー・マン"か……?」
「だが、違う……」
困惑する一平に、龍之助が首を横に振る。
龍之助の右眼が蒼色に染まり、隣で“赤い少女"――"アイ"が現れた。
「……"レン"!?」
"レン"と言う"白い少女"が、三条の召喚した"ライティングス・オン・ザ・ウォール"と言う人型の銀色の肩に乗る。
"アイ"の声に反応することなく、虚空を見つめる。
純金の頭をした人型の下に佇む三条。
彼女の前に、三色の光が降り立った。
光は、三体の人型になる。
脂肪女のリカコは、拳と脚が赤く染まっていた。
歯に付いたヤニが目立つマキナは四肢が氷となり、カンタの恰幅の良い肉体は青緑の静電気に覆われていた。
「……あなたたち、最近不平不満が多いと聞くので、仕事と"やりがい"を与えましょう……精々、私たちの平和のために頑張ってくださいね」
三条の期待の言葉は、三人の中年への死刑宣告と同義の様だった。
三人の眼がロック達を捉え、戦叫を上げる。
しかし、敵意の発露に反応したのは、意外なものだった。
『さんじょ――ッ!!』
青銅の球体から突き出た、雑賀 多恵が、ピンク色の弁士の放った三色の敵意に呼応する。
青銅色の胸部を剥き出しにした銀鏡色の巨大甲冑が歩みを始めた。
甲冑の進行方向には、三条 千賀子。
「……まずい、あの雑賀を取り込んだ"ウィッカー・マン"が街の方へ行くぞ!!」
一平が叫ぶと、
「ロック、三条を叩け!! サキ、一平と龍之助は、あの三人組を頼む!! 残りは――」
ブルースの言葉に、
「"ウィッカー・マン"を――」
「止めるんでしょ!!」
ブルースの言葉に、サミュエルとシャロンが応えた。
ロックは"駆け抜ける疾風"で、三条との距離を縮める。
順手で構えた"ブラック・クイーン"を、三条に向けて振りかぶった。
翼剣は三条の額の寸前で止まる。
純金の頭をした人型の、銀色の右腕が受けたからだ。
「そういえば……ロック=ハイロウズ、あなたからの意見を聞いていませんでしたね……あの"ウィッカー・マン"……"チキンブロウ"について」
三条の唐突な一言に、彼女の目に映るロックが眉を顰める。
一瞬、判断が付かなかったが、雑賀と言う女性を取り込んだ"ウィッカー・マン"が頭に浮かんだ。
ブルースの"命導巧":"ヘヴンズ・ドライヴ"に付けられた機関銃の銃撃が甲冑巨人の足を止める。
サミュエルの"命導巧":"パラダイス"の鎌による一振りが、甲冑巨人の頭部を斬りつけた。
斬撃が、揺れる巨人が後退らせる。
シャロンが"滑輪板"の滑走からの両脚蹴りで尻もちを付かせた。
「……"臆病者の一撃"だったら、いまいちだな」
ロックは"頂砕く一振り"の一撃で、"ライティングス・オン・ザ・ウォール"から出た巨人と石碑を斬りつけた。
「一つ言うなら"鳩の喧嘩"でどうだ?」
ロックの斬撃で、純金の頭の守護者が背後に吹っ飛ばされる。
その衝撃を受け、三条の前髪が微かに舞い上がった。
「……イマイチですね」
「"政市会"と同じくらい、な?」
ロックの不敵な笑みに、三条の眼が微かに鋭くなった。
面白いと思ったら、リアクション、評価にブックマーク、よろしくお願いいたします!!
© 2026 アイセル




