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【完結】クリムゾン・コート・クルセイド Vol.Ⅱ ”平和たる軍靴"  作者: アイセル
第六章 St.Anger

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脱出―③―

当作品の無断転載、AIを含めたあらゆる二次利用を禁止します!!

Do not reupload / use my writing for any purposes, including for AI!!

 胴体部分が剥げた銀鏡色の巨大な西洋甲冑。


 その胸部から、青銅色の球体が剥き出しとなっている。


 雑賀 多恵と言う女の姿が、球体の割れ目の間から覗かせていた。


 顔から胸までの肌を晒され、彼女の崩れ切った化粧が涙に混じる。


 化粧と涙の混じった唾を吐きながら、叫んでいた。


「……どういうことだ?」


 目の前の雑賀 多恵と言う女性と巨大甲冑を見て、ロックは思わず呟く。


「……熱(・)源(・)が、全(・)身(・)を(・)回(・)っ(・)て(・)る(・)……?」


 サキの一言に、ブルースが顔を蒼白にした。


「三条、お前……あ(・)の(・)女(・)を(・)"ウ(・)ィ(・)ッ(・)カ(・)ー(・)・マ(・)ン(・)"に(・)取(・)り(・)込(・)ん(・)だ(・)の(・)か(・)!?」


 ブルースの糾弾に、ロックは言葉を失った。


 隣のサキの顔から血の気がなくなり、シャロンも舌打ちをする。


 一平と龍之助だけが、事態を理解していないように見えたが、


「取(・)り(・)込(・)ん(・)だ(・)って……」


 一平の口調に、わずかに戸惑いの色が籠る。


 一(・)平(・)の(・)考(・)え(・)得(・)る(・)中(・)で(・)最悪の結末に至ったこと。


 それを、否(・)定(・)で(・)き(・)る(・)希(・)望(・)にすがるような声をしている。


「……つまり、雑(・)賀(・)とあ(・)の(・)"ウ(・)ィ(・)ッ(・)カ(・)ー(・)・マ(・)ン(・)"が一つになってしまった……ということか?」


 事態を受け入れることに抵抗を隠そうとしない龍之助に、ブルースが重く頷いた。


 一平が、ブルースの反応を見て、右手の"命導巧(ウェイル・ベオ)":"ライオンハート"を構えた。


「……あらあら、ご不満でしたかしら?」


 一平達の反応をする理由が心底分からないという体で、三条が向き合う。


「……この"ウィッカー・マン"、"母(・)体(・)"に(・)優(・)し(・)い(・)から、女(・)性(・)解(・)放(・)の(・)た(・)め(・)に(・)使(・)え(・)る(・)と思ったのでしたけど……」


「なら……その女(・)性(・)か(・)ら(・)生(・)ま(・)れ(・)た(・)"未成年の主張"を聞いてくれるか、弁護士さんよ?」


 三条の言葉に、一平の声が、夜の帳に染まりつつある空気に響いた。


 一平を臨む三条の顔。


 ロックは、今までの三条とは違う、不自然なまでの喜(・)に(・)染(・)ま(・)っ(・)た(・)顔に戸惑う。


 一平の声と共に、ロックは構(・)え(・)た(・)。


「一(・)昨(・)日(・)き(・)や(・)が(・)れ(・)、ク(・)ソ(・)ッ(・)タ(・)レ(・)!!」


 一平の右手の"ライオンハート"から"爆轟咆破《ルガ・アン・スプレガイ》"の咆哮と共に、ロックは三条に斬りかかった。


 炎に包まれた咆哮は、三条に届かない。


 ピンク色のパンツスーツの女の前で、三人の人物が浮かんでいた。


「三条さん、これって――!?」


「リカコ、どうなっているのよ……」


「リカコ、マキナ……私たち、浮いていて――!!」


 三人の人物――脂肪太りの女、ヤニ混じりの歯の女、ガタイの良いが妙に肌艶の良い黒縁眼鏡男――が、空中で騒いでいた。


 無傷ではあるものの、目の前で一平の放った炎に晒されたことで、三人の混乱に拍車がかかる。


「リカコさん、マキナさん、カンタさん……誰(・)も(・)あ(・)な(・)た(・)方(・)を(・)助(・)け(・)な(・)い(・)とは、酷(・)い(・)で(・)す(・)ね(・)」


 三条の声はどこか、哀れみがあり穏やかな声だ。


 しかし、ロックは、彼女の背後にいる"S.P.E.A.R.(スピア)"の秋津 澄香を見た。


 彼女の顔が、三(・)条(・)の(・)声(・)の(・)緩(・)急(・)に(・)合(・)わ(・)せ(・)て(・)、蒼(・)白(・)に(・)な(・)っ(・)て(・)い(・)く(・)と(・)こ(・)ろ(・)を(・)。


 三人の中年が三条に同情を求めているが、ロックと秋津の心中などお構いなしに見える。


 三条の一声が、そ(・)ん(・)な(・)三(・)人(・)の(・)運(・)命(・)を(・)決(・)定(・)づ(・)け(・)た(・)。


「だから、使(・)っ(・)て(・)あ(・)げ(・)ま(・)す(・)。"政治に声を張り上げ隊"の面々が逃(・)げ(・)る(・)時(・)間(・)……精(・)々(・)稼(・)い(・)で(・)く(・)だ(・)さ(・)い(・)ね(・)?」


 リカコ、マキナ、カンタの三名が、同じタイミングで口をあんぐり空けた。


 三人に赤、白、青緑の光が注がれる。


 三条の召喚した両手から、三色の光が出ていた。


 両手から放たれる三色の光が、煌きを増していく。


 光が三条を覆い始め、両手から腕が現れた。


 腕から、肩と顔を作り出す。


 純金の頭、銀色の両腕と胸をしている。


 その背後には、識別不能な言語で書かれた石碑が浮かんでいた。


「三条の"命導巧(ウェイル・ベオ)":"パラノイド"の"真名"……"ライティングス・オン・ザ・ウォール"を解放か……?」


 ブルースが、吐き捨てた。


「これは……"ウィッカー・マン"か……?」


「だが、違う……」


 困惑する一平に、龍之助が首を横に振る。


 龍之助の右眼が蒼色に染まり、隣で“赤い少女"――"アイ"が現れた。


「……"レン"!?」


 "レン"と言う"白い少女"が、三条の召喚した"ライティングス・オン・ザ・ウォール"と言う人型の銀色の肩に乗る。


 "アイ"の声に反応することなく、虚空を見つめる。


 純金の頭をした人型の下に佇む三条。


 彼女の前に、三色の光が降り立った。


 光は、三体の人型になる。


 脂肪女のリカコは、拳と脚が赤く染まっていた。


 歯に付いたヤニが目立つマキナは四肢が氷となり、カンタの恰幅の良い肉体は青緑の静電気に覆われていた。


「……あなたたち、最近不(・)平(・)不(・)満(・)が(・)多(・)い(・)と聞くので、仕(・)事(・)と(・)"や(・)り(・)が(・)い(・)"を(・)与(・)え(・)ま(・)し(・)ょ(・)う(・)……精々、私(・)た(・)ち(・)の(・)平(・)和(・)の(・)た(・)め(・)に(・)頑張ってくださいね」


 三条の期待の言葉は、三人の中年への死刑宣告と同義の様だった。


 三人の眼がロック達を捉え、戦叫を上げる。


 しかし、敵意の発露に反応したのは、意(・)外(・)な(・)も(・)の(・)だ(・)っ(・)た(・)。


『さんじょ――ッ!!』


 青銅の球体から突き出た、雑賀 多恵が、ピンク色の弁士の放った三色の敵意に呼応する。


 青銅色の胸部を剥き出しにした銀鏡色の巨大甲冑が歩みを始めた。


 甲冑の進行方向には、三条 千賀子。


「……まずい、あの雑賀を取り込んだ"ウィッカー・マン"が街の方へ行くぞ!!」


 一平が叫ぶと、


「ロック、三条を叩け!! サキ、一平と龍之助は、あの三人組を頼む!! 残りは――」


 ブルースの言葉に、


「"ウィッカー・マン"を――」


「止めるんでしょ!!」


 ブルースの言葉に、サミュエルとシャロンが応えた。


 ロックは"駆け抜ける疾風(ギェーム・ルー)"で、三条との距離を縮める。


 順手で構えた"ブラック・クイーン"を、三条に向けて振りかぶった。


 翼剣は三条の額の寸前で止まる。


 純金の頭をした人型の、銀色の右腕が受けたからだ。


「そういえば……ロック=ハイロウズ、あなたからの意見を聞いていませんでしたね……あの"ウィッカー・マン"……"チキンブロウ"について」


 三条の唐突な一言に、彼女の目に映るロックが眉を顰める。


 一瞬、判断が付かなかったが、雑賀と言う女性を取り込んだ"ウィッカー・マン"が頭に浮かんだ。


 ブルースの"命導巧(ウェイル・ベオ)":"ヘヴンズ・ドライヴ"に付けられた機関銃の銃撃が甲冑巨人の足を止める。


 サミュエルの"命導巧(ウェイル・ベオ)":"パラダイス"の鎌による一振りが、甲冑巨人の頭部を斬りつけた。


 斬撃が、揺れる巨人が後退らせる。


 シャロンが"滑輪板(スケートボード)"の滑走からの両脚蹴りで尻もちを付かせた。


「……"臆病者の一撃(チキンブロウ)"だったら、いまいちだな」


 ロックは"頂砕く一振り《クルーン・セーイディフ》"の一撃で、"ライティングス・オン・ザ・ウォール"から出た巨人と石碑を斬りつけた。


「一つ言うなら"鳩の喧嘩《ドーヴズ・ダストアップ》"でどうだ?」


 ロックの斬撃で、純金の頭の守護者が背後に吹っ飛ばされる。


 その衝撃を受け、三条の前髪が微かに舞い上がった。


「……イマイチですね」


「"政(・)市(・)会(・)"と(・)同(・)じ(・)く(・)ら(・)い(・)、な?」


 ロックの不敵な笑みに、三条の眼が微かに鋭くなった。

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© 2026 アイセル

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