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【完結】クリムゾン・コート・クルセイド Vol.Ⅱ ”平和たる軍靴"  作者: アイセル
第六章 St.Anger

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脱出―②―

当作品の無断転載、AIを含めたあらゆる二次利用を禁止します!!

Do not reupload / use my writing for any purposes, including for AI!!

4月14日 午後6時24分


「下がれ!!」


ロックの声に反応した、矛槍を構えた龍之助と鎌を得物とするサミュエルが、巨大甲冑から離れた。


 ロックは翼剣型"命導巧(ウェイル・ベオ)"から、半自動装填(セミオートマチック)式拳銃型"命導巧(ウェイル・ベオ)":"イニュエンド"を取り出す。


 右手の銃が轟き、甲冑の巨人が炎に包まれた。


 穴という穴に炎が入り込む。


 暫くして甲冑の中を回りきったのか、穴から火柱が突き出た。


 "供物を味わう舌(チェンガ・ラサール)"の"疑似物理現象"によるサーモバリック爆弾が、甲冑の巨人を火達磨に変える。


――マジかよ!?


 "酸素喰い"と言われるサーモバリック爆弾による炎の蹂躙をしても、動じない五メートルの巨大甲冑にロックは内心舌打ちした。


 火達磨から黄昏の空を爛々と照らした炎が立ち消える。


 傷一つ負っていない巨大甲冑が、壊れた庁舎と夕焼けを背負い、ロック達を見下ろした。


 甲冑の頭部に咲く、三輪の炎の華。


 一平の"命導巧(ウェイル・ベオ)":"ライオンハート"から放たれた"疑似物理現象"――"爆轟咆破《ルガ・アン・スプレガイ》"――による、可燃物、炎と助燃剤をまとめた攻撃が、崩れた庁舎の陰影に染まる銀色の騎士甲冑を照らす。


「つうか、これ……"ウ(・)ィ(・)ッ(・)カ(・)ー(・)・マ(・)ン(・)"というなら弱(・)点(・)と(・)か(・)な(・)い(・)の(・)か(・)よ(・)!?」


 一平が叫びながら、"ライオンハート"の両拳に付けられた空の"弾倉(マガジン)を外して、新しいものに充填。


「だそうだけど、ロック、サキ、シャロン……見(・)え(・)る(・)か(・)!?」


 ブルースからいきなり話題を振られ、ロックは舌打ちをしながら、


「それを攻撃するために、"供物を味わう舌(チェンガ・ラサール)"。を放ったんだよ!!」


ロックの眼には、騎士型甲冑の胸部に大きな"熱の塊"が見えた。


 "ウィッカー・マン"は機械生命体である。


 機(・)械(・)で(・)あ(・)る(・)以(・)上(・)、動(・)力(・)源(・)な(・)し(・)で(・)は(・)動かない。


 他の"命熱波(アナーシュト・ベハ)使い"と違い、ロックとサキは、その動力源が見える。


 それぞれ所属する"ブライトン・ロック社"と"ワールド・シェパード社"の両社とも、二人がその力を得られた経緯の解明には至っていない。

 

 "望楼(ヴェルヴェデーレ)"に所属するシャロンについても、同様だった。


「見えるけど装甲が硬いから、貫けない!!」


 サキが"命導巧(ウェイル・ベオ)":"フェイス"を、騎士甲冑の胴に向けて撃った。


 "鶏冠(ガレア)"の守護者――"ヴァージニア"がサキの隣に現れ、右手の弓に結晶を作る。


 "フェイス"の片刃の切っ先から放った蒼白い光に向け、"ヴァージニア"が右手の弓から結晶を放った。


 結晶がサキの"命導巧(ウェイル・ベオ)"の光を受け、蒼白い鏃(やじり)と化す。


 甲冑の胸部で爆散した。


 蒼白い光の雨が、甲冑巨人の全身を覆う。


『砕けろ!!』


 蒼く広がる光の前に、出現する短髪の少女――サキのもう一人の守護者――"ライラ"が吠えた。


 細身の剣と化した彼女の右手を、光の中で振るう。


 斬閃が、巨大甲冑を覆う蒼い光の霧を震わせた。


 振動で生まれた指向性熱力(エネルギー)の槍が、一斉に五メートルの巨大甲冑を貫く。


 光の振動で伝わった熱力(エネルギー)が、甲冑の内で爆ぜた。


「だから、内(・)か(・)ら(・)装(・)甲(・)を(・)剥(・)が(・)し(・)た(・)!!」


「いや、さ(・)っ(・)き(・)の(・)会(・)話(・)から、こ(・)れ(・)か(・)ら(・)攻(・)略(・)の(・)流(・)れ(・)に(・)な(・)る(・)と(・)思(・)っ(・)た(・)ら(・)、す(・)っ(・)飛(・)ば(・)し(・)て(・)終(・)わ(・)り(・)か(・)よ(・)!?」


 ロックはサキの仕事の早さに舌を巻きながら、内部からの爆発で立ち尽くす巨大甲冑に迫る。


 "駆け抜ける疾風(ギェーム・ルー)"により、体中の神経を強化した神速移動。


 右逆手に構える"ブラック・クイーン"の"籠状護拳(バスケットヒルト)"による拳打を放った。


 巨大甲冑の頭部から、質量と力の乗法から来る反作用の力がロックの右腕に伝わる。


 反作用に応え、生じた作用の力により、巨大甲冑は吹っ飛んだ。


 ロックは順手に切り替え、巨大甲冑を追う。


 彼の背後を火球が過った。


 一平の"爆轟咆破《ルガ・アン・スプレガイ》"による火炎榴弾が、ロックの攻撃を援護。


 巨大甲冑が立ち上がろうとしたところに、その頭部と肩に炎の華が開花、散華する。


 黄昏時の空を焼き尽くさん、炎の花々の下に沈もうとしていた。


「サミュエル、龍之助、決めるぞ!!」


「ブルース……今(・)ま(・)で(・)の(・)出(・)来(・)事(・)か(・)ら(・)、命(・)令(・)で(・)き(・)る(・)ほ(・)ど(・)偉(・)い(・)と(・)自(・)覚(・)で(・)き(・)る(・)?」


「応!!」


 サミュエルの抗議と龍之助の同意を背に、ブルースは二振りのショーテル型"命導巧(ウェイル・ベオ)"を腰に付けて、飛ぶ。


 音の力による揚力で、甲冑巨人の頭上を飛翔。


 甲冑巨人が、右手の鶏の嘴を突き出す。


 鶏の頭をした槌が、苔色の外套(コート)の男に向け、伸びた。


 嘴から迸る光弾がブルースの背後を捉える。


 二発がブルースを過り、三発目は、彼が腰に構えたショーテル型"命導巧(ウェイル・ベオ)":"ヘヴンズ・ドライヴ"の交差斬りで防いだ。


 ブルースが歯を食いしばりながら、その衝撃で"磁向防《スキーアフ・ヴェイクター》"を発動。


 青白い光弾が破裂し、周囲を焼くほどの閃光が辺りに降り注いだ。


 甲冑巨人がその衝撃を防ぐために左手も上げたため、胴を晒す。


 サミュエルの鎌の刃を畳んだ"命導巧(ウェイル・ベオ)":"パラダイス"の散弾銃(ショットガン)の銃口が、金色の一擲を放った。


 龍之助が、サミュエルの斜(はす)向かいで、"命導巧(ウェイル・ベオ)":"セオリー・オブ・ア・デッドマン"を構える。

 

 蒼い矛槍からの"加圧水流(ウォータージェット)"が、サミュエルの金色の礫に続いた。


 二人の集中攻撃が、甲冑巨人の胸部装甲を抉る。


 引き剥がされた胸部装甲の内にあるのは、青銅色の球体だった。


 青銅色の球体が輝くと、


「まさか……こ(・)の(・)熱(・)源(・)は(・)!? みんな逃げて!! それは、弱(・)点(・)じ(・)ゃ(・)な(・)い(・)!!」


 シャロンが叫び、"滑輪板(スケートボード)"で後退した。


 地上に降り立ったブルースが、腰に一対のショーテル型"命導巧(ウェイル・ベオ)"を収める。


 ロックも彼の隣に並び、


「サキ、一平、龍之助、後ろに来い!!」


 言われた三人は甲冑巨人から離れ、ロックとブルースの背後に回る。


 ロックは、ブルースと共に右手を突き出した。


 青銅色の球体から放たれた閃光が、ロックの眼前に広がる。


 右腕に衝撃が走り、全身を揺るがした。


「堪えろ、ロック!!」


「分かってる、ブルース!!」


 ロックの出した"磁向防《スキーアフ・ヴェイクター》"を、隣のブルースも展開。


 二重の結界が、破壊の光を受け止める。


 遅れて、爆発音と破砕音の二重奏がロック達を襲った。


 衝撃波によって後退り、光が消えていく。


「これは……一体……!?」


 龍之助が息を呑む。


「ロックとサキの見た光は弱点じゃない……熱源は、むしろ障壁(バリア)にして、蓄積した損傷(ダメージ)を熱力(エネルギー)にしたもの。そして、それが放出されたのが……」


 シャロンの視線が球(・)体(・)と(・)同(・)じ(・)形(・)に(・)抉(・)れ(・)た(・)庁舎、駐車場に置いてあった車に舗装された路地に向けられる。


 その爆心地(グラウンド・ゼロ)に立つ、甲冑巨人。


 剥がれた胸部装甲の内に秘められた、青銅色の球体が割れる。


 割れ目から覗く、生(・)ま(・)れ(・)た(・)ま(・)ま(・)の(・)服(・)を(・)着(・)た(・)人間。


 肩と鎖骨を外に晒した人間は女性だが、茶色に染まった頭髪をう(・)な(・)じ(・)が(・)隠(・)れ(・)る(・)長(・)さ(・)まで切り揃えていた。


 ロックの隣にいたサキと一平が、その女性を見て、眼を見開いた。


 龍之助も戸惑いながら、その女性の名を絞り出す。


「地(・)自(・)労(・)の、雑(・)賀(・)……多(・)恵(・)だと!?」

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© 2026 アイセル

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