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【完結】クリムゾン・コート・クルセイド Vol.Ⅱ ”平和たる軍靴"  作者: アイセル
第六章 St.Anger

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脱出―①―

当作品の無断転載、AIを含めたあらゆる二次利用を禁止します!!

Do not reupload / use my writing for any purposes, including for AI!!

4月14日 上万作(あまんさく)市役所付近のビルの屋上。 午後6時17分


 "パトリキウス"の眼下で広がる風景は、夜(・)も(・)目(・)を(・)瞬(・)か(・)せ(・)る(・)ほ(・)ど(・)煌(・)び(・)や(・)か(・)だ(・)っ(・)た(・)。


 空から落ちて来た高さ五メートルの"巨大騎士甲冑"が、市役所を壊して前進。


 鶏の頭部を模した右手の槌を振りかぶる。


 紅い外套(コート)のロック=ハイロウズが、その一撃を受ける切り込み隊長となった。


 ロックの後方支援の形で、河上 サキの軽機関銃と大きな片刃を組み合わせた"命導巧(ウェイル・ベオ)"が、巨大な甲冑の胴に光弾を浴びせられる


 彼女の隣で、"命導巧(ウェイル・ベオ)":"ヘヴンズ・ドライヴ"による二振りのショーテルの鍔部分の機関銃を使い、ブルースが巨人に弾幕を張っていた。


 二人の攻撃で、歩みを止めている巨大甲冑の頭部に、ロックが翼剣型"命導巧(ウェイル・ベオ)":"ブラック・クイーン"を振り下ろす。


 ロックの頭部への斬撃が命中し、ブルースの二振りのショーテルによる交差斬撃が続いた。


 巨大甲冑の腹部が大きく抉られ、膝をつく。


 跳躍したサミュエルが散弾銃に付けた大鎌の刃――"命導巧(ウェイル・ベオ)":"パラダイス"――に砂塵の一刃を、巨大甲冑の右肩に振り下ろす。


 思ったよりも切れ味が冴えず、金色の砂塵の刃が途中で食い込む。


 甲冑の鶏の頭部の右腕部が、サミュエルの斬撃を跳ねのけた。


 鋼鉄の鶏の嘴が、サミュエルを捉える。


 シャロンが薄桃色の風となり、サミュエルを抱えた。


 嘴の鉄槌が、サミュエルのいた場所を擂鉢にした。


 空を切り地中を大きく抉った巨大甲冑の上半身に、一平と言う男が"ライオンハート"という拳型の"命導巧(ウェイル・ベオ)"に付けた銃口から放った炎の榴弾で迎撃。


 榴弾の爆轟で大きく身体を反らす甲冑の胴に、原田 龍之助の矛槍型"命導巧(ウェイル・ベオ)":"セオリー・オブ・ア・デッドマン"の刺突で追い打ちを仕掛ける。


 蒼い一撃に、甲冑が上半身を仰け反らせた。


 尻餅を突いた甲冑に、ロック、ブルースとサミュエルの三名が上空から来襲。


 しかし、巨大甲冑が両腕を振り回す。


 三人が"命導巧(ウェイル・ベオ)"を構えて、"磁向防《スキーアフ・ヴェイクター》"を発動。


 不可視の結界で甲冑の攻撃を受け止める。


 衝撃に流されるように、ロック達が吹っ飛んだ。


「"ソ(・)カ(・)ル(・)"の(・)出(・)る(・)幕(・)じ(・)ゃ(・)な(・)い(・)と思うけどね……」


「お(・)前(・)達(・)が(・)出(・)る(・)時(・)点(・)で(・)、"俺(・)た(・)ち(・)"が(・)入(・)る(・)余(・)地(・)は(・)十(・)分(・)に(・)あ(・)る(・)と思うがな……"サロメ"、"コロンバ"?」


 "パトリキウス"は背後からの声に振り向く。


 声の主は、扁桃(アーモンド)を思わせる吊り上がった眼の女。


 ポンチョを着た細い男――"コロンバ"が、扁桃の眼の女の隣に立っていた。


「"命熱波(アナーシュト・ベハ)"の様な"UNTOLD(アントールド)"に振り回された奴らには、駆け込み寺が必要だ……"ホステル"、"ワールド・シェパード社"は愚か、"ブライトン・ロック社"も…碌(・)な(・)こ(・)と(・)を(・)考(・)え(・)て(・)い(・)な(・)い(・)からな」


 "パトリキウス"の皮肉めいた口調に、"コロンバ"が弾けた様に笑い出した。


 そんな嘲笑に染まる"コロンバ"の眼に、"パトリキウス"が映る。


 "赤毛"に膝丈までのパンツを纏う自身の姿。


 彼の業物を思わせる鋭い眼光を"コロンバ"が愉快そうに受け止めると、


「でも、その割には随分とフ(・)ッ(・)ト(・)ワ(・)ー(・)ク(・)が(・)重(・)い(・)よ(・)う(・)だ(・)け(・)ど(・)な(・)――?」


 道化の仮面を思わせる笑顔を浮かべながら、


「いや……動(・)け(・)て(・)な(・)い(・)と言った方が良いかな? ……ところで、ブリジットの他に、今日はお(・)供(・)の(・)"狼(・)く(・)ん(・)"と(・)"牛(・)く(・)ん(・)"が見えないようだけど――」


「分(・)か(・)っ(・)て(・)い(・)て(・)聞(・)い(・)て(・)く(・)る(・)なら、相当、悪(・)辣(・)だな」


 含みを持った笑みの"コロンバ"に、"パトリキウス"は硬質を含んだ声で返す。


「……そうそう、"バタリオン・ピース"として対応に追われていたよね……噂(・)一(・)つ(・)で大変だね、ホント!!」


 "コロンバ"が大仰に両手を叩く。


 "パトリキウス"の中で、"ポンチョ"の男が悪(・)戯(・)を(・)楽(・)し(・)む(・)猿(・)の(・)様(・)に(・)見(・)え(・)た(・)。


――"ハチスカ文書"……本当に厄(・)介(・)な(・)も(・)の(・)を(・)広(・)め(・)て(・)く(・)れ(・)る(・)!!


文(・)書(・)の(・)存(・)在(・)の(・)有(・)無(・)は(・)定(・)か(・)で(・)は(・)な(・)い(・)。


 しかし、内容だけは妙(・)に(・)生(・)々(・)し(・)か(・)っ(・)た(・)。


 曰く、



『体外受精を利用した人体実験が行われた』



 そういった噂が、"B.L.A.D.E.(ブレイド)"地区で出回っている。


 その中に伊那口が含まれていたのもまずかった。


 加えて、巷を騒がしている十代の少年少女の怪死事件。


 被害者が『そ(・)の(・)手(・)術(・)か(・)ら(・)生(・)ま(・)れ(・)た(・)子(・)ど(・)も(・)た(・)ち(・)』という内容も致命的だった。


 "B.L.A.D.E.(ブレイド)"地区内では、上万作(あまんさく)市との敵対も辞さない強硬論が出始めている。


 その状況の打開に奔走しているのが、元"七聖人"が一人――"ブリジット"。


 "ライト"と"バイス"の所属している"バタリオン・ピース"の内部の強硬派を抑え、他のチームの牽制にも努めていた。


「そ(・)こ(・)ま(・)で(・)わ(・)か(・)る(・)な(・)ら(・)、こ(・)ち(・)ら(・)の(・)動(・)き(・)を気(・)に(・)す(・)る(・)必(・)要(・)は(・)な(・)い(・)の(・)で(・)は(・)な(・)い(・)か(・)?」


 "パトリキウス"は、変わらぬ鋭い視線を"コロンバ"に送る。


「私たちは忙(・)し(・)い(・)のだからな」


「それなら、"ワ(・)ン(・)ダ(・)ー(・)ウ(・)ォ(・)ー(・)ル(・)"の(・)向(・)こ(・)う(・)側(・)には、興(・)味(・)は(・)無(・)い(・)ということだね?」


 扁桃(アーモンド)の眼を象(・)牙(・)色(・)にして、女が言う。


 その口調はどこか、嬉々としていた。


「競(・)争(・)率(・)が(・)高(・)く(・)て(・)ね(・)」


 扁桃(アーモンド)の眼の女が、柘榴色の唇を吊り上げる。


 "パトリキウス"は"競争率"という言葉から、その内容に納得した。


 "サロメ"が指すのは、"破宴の王母"という名の"命導巧(ウェイル・ベオ)使い"の女――三条 千賀子。


 "サロメ"に続いて、"ウィッカー・マン"の調整が出来る者であり、この世界で"UNTOLD(アントールド)"による自律兵器の起動が出来る者だ。


 "パトリキウス"は、


「"リリス"の復活か……お前らが、色んなところにアクセスを得ているのは歯痒い。だからと言って『や(・)め(・)ろ(・)!!』という言葉に聞く耳も無い。好きにしろ」


「見逃してくれんのか?」


 訝しげにつぶやいたのは、"コロンバ"だった。


「話した内容の割に、随分と寛大な対応じゃないの?」


「こっちの興味は、"ア(・)ン(・)ゲ(・)ン(・)の(・)子(・)牛(・)"だ……貴(・)様(・)ら(・)の(・)行(・)動(・)に(・)と(・)や(・)か(・)く(・)言(・)う(・)つ(・)も(・)り(・)はないが、ア(・)イ(・)ツ(・)ら(・)の(・)邂(・)逅(・)は住(・)民(・)た(・)ち(・)の(・)目(・)覚(・)め(・)に繋がる」


 "パトリキウス"の言葉に、"コロンバ"が肩を竦める。


 面白みのない回答で、興味が失せたようだ。


 "パトリキウス"は一息吐くと、


「精々、そ(・)ち(・)ら(・)の(・)火(・)遊(・)び(・)でこ(・)ち(・)ら(・)も(・)巻(・)き(・)込(・)ま(・)ん(・)こ(・)と(・)だ……馬(・)鹿(・)話(・)や与(・)太(・)話(・)の(・)出(・)来(・)る(・)頭(・)で一(・)秒(・)で(・)も(・)"長(・)く(・)"生(・)き(・)た(・)い(・)の(・)な(・)ら(・)な(・)」


 腹を抱えて大笑いをする"コロンバ"、鋭い目線の"サロメ"を背にその場を後にした。


 その前に見た眼下の喧騒を思い出す。


 "政市会"は庁舎北側の駐車場で、オーツと蹲るエヴァンスと、"スウィート・サクリファイス"を装備した会員達が事態の推移を見守っていた。


 "政声隊"も、トルクを付けた者たち――黒シャツの"力人衆"も含め――も負傷者を運び、三条の背後に回っている。


 ただ、どちらの陣営も戦意を喪失。


 両陣営のどちらにも属さない"命熱波(アナーシュト・ベハ)使い"と、突如乱入した大型甲冑による"死(・)闘(・)"に眼が釘付けとなっていた。

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© 2026 アイセル

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