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【完結】クリムゾン・コート・クルセイド Vol.Ⅱ ”平和たる軍靴"  作者: アイセル
第五章 Face/Off

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対峙―⑦―

当作品の無断転載、AIを含めたあらゆる二次利用を禁止します!!

Do not reupload / use my writing for any purposes, including for AI!!

 ロックの翼剣"ブラック・クイーン"と"花葬"の日本刀"モーニング・グローリー"。


 二つの"命導巧(ウェイル・ベオ)"の打合いが突(・)如(・)沸(・)き(・)上(・)が(・)っ(・)た(・)雷(・)の(・)蔦(・)に遮られる。


「これは!?」


「"スコット決死隊"か!!」


 ロックは戸惑い、眼前の"花葬"が市役所の駐車場の北側に目を向ける。


 激闘によってひび割れた、"花鎧"の"花兜"。


 その隙間から見える眼が、蠢く"雷の蔦"に囲まれるサキを映す。


 一際大きな地割れが起き、彼女を隔てる様に雷(・)の(・)間(・)欠(・)泉(・)が噴き出した。


 ロックと花葬の間にも亀裂が走り、二人とも引き離される。


 その衝撃で、二人との距離が更に離れた。


 雷がロックの前を疾走する前、"花葬"の割れた兜から覗く眼が、も(・)う(・)一(・)人(・)の(・)人(・)物(・)――"薄紫色の牙《ヴァイオレット・ファング》"を捉える。


 二者が視線を交わすと、間もなく"花葬"がサキに関心を向けた。


――何だよ、一体……?


 ロックも"花葬"と同じ方角を見る。


 サキの眼の前で対峙している相手は、エヴァンス。


 エヴァンスの両脚と同じ銀鏡色が、顔と腕にも少しずつ侵食を始めていた。


「当たらない!! 当たらない!!」


 手入れは愚か、櫛(・)す(・)ら(・)入っていない金髪を抱え、両膝で蹲るエヴァンス。


 泣き叫ぶ彼女に呼応するように、彼女の足元から溢れ出る雷の蔦。


 それが、藻掻き苦しむ蛇の様にのたうち回った。


 蔦の厚さが、成人男性ほどの胴となり"政市会"会員たちを吹き飛ばす。


 何(・)人(・)か(・)が(・)蔦(・)蛇(・)の(・)毒(・)牙(・)に(・)掛(・)か(・)っ(・)た(・)。


 紫電の牙に喰われたものが、青白い魂となりエヴァンスに送られる。


「当たらない、あ(・)の(・)子(・)に(・)当(・)た(・)ら(・)な(・)い(・)!!」


 エヴァンスの視線が捉えるサキ。


 彼女へ雷の蔦を走らせるが、何(・)故(・)か(・)サ(・)キ(・)を(・)避(・)け(・)る(・)。


 しかし、サキから外れた蔦が"政市会"会員の男を襲い始めた。


「クソッタレ!!」


 ロックは吐き捨て、"駆け抜ける疾風(ギェーム・ルー)"による神経強化で"政市会"の男性会員に向かった。


 蔦に巻き込まれそうになった"政市会"会員を右腕で抱える。


 振り向きざまに――蔦の射程範囲外であろう――壊れた噴水近くへ放り投げた。


 雷の大蛇に飲まれようとした、もう一人の"政市会"会員を助けようとしたが、


「あら、"スパイニーィィィィ"!!」


 エヴァンスの銀鏡色交じりの肌と、泣きはらして赤くなった眼。


 その中に歓喜を灯しながら、ロックの仇名を叫ぶ。


 それが合図となり、広場を蹂躙した雷の蔦が一斉にロックに向かった。


 ロックの吐き捨てた言葉が、地をのたうつ轟音に消される。


 "駆け抜ける疾風(ギェーム・ルー)"で地を蹴りながら、後退。


 エヴァンスの蔦蛇の追撃から逃げる。


――あまりに、"命熱波(アナーシュト・ベハ)"が強すぎる!!


 "磁向防《スキーアフ・ヴェイクター》"が掻き消えるほどの熱力(エネルギー)量だ。


 "政声隊"メンバーも、ロックを喰らい損ねた蔦蛇の咢(あぎと)に飲まれていく。


 本来、"スウィート・サクリファイス"と"コーリング・フロム・ヘヴン"は、微量だが"磁向防《スキーアフ・ヴェイクター》"が流れていた。


 同時に、回復も行われる。


 ロック達に攻撃されても、その損傷(ダメージ)で――五(・)体(・)不(・)満(・)足(・)と(・)な(・)る(・)が(・)――致命傷となることはなかった。


 彼等の攻撃を上回る熱量(エネルギー)に、両団体が成す術なく蹂躙していく。


 ロックはエヴァンスの"雷蔦"から逃れるために、距離を稼いだ。


 エヴァンスに目を向けると、雷蔦を躱しながら"花葬"が彼女に肉迫。


 "花葬"の背後で、サキが立ち尽くしていた。


 "花葬"が右からの上段袈裟斬りで、エヴァンスの左肩を斬り落とそうとする。


 "花葬"の斬撃を躱し、エヴァンスが後退。


 彼女が靴型"命導巧(ウェイル・ベオ)":"ダンシング・クイーン"の右後ろ回し蹴りで、"花葬"に反転攻勢(カウンター)で応戦した。


 靴から生えた刃が、"花葬"の"花鎧"の花兜を切り裂いた。


 それから、"ウィッカー・マン"化した左足の甲の鉄槌が、"花葬"の右こめかみに炸裂する。


「仮面を被って鎧も着て、相当な恥(・)ず(・)か(・)し(・)が(・)り(・)屋(・)さ(・)ん(・)ね! ズ(・)タ(・)ボ(・)ロ(・)に(・)切(・)り(・)裂(・)い(・)て(・)、そ(・)の(・)面(・)曝(・)し(・)て(・)や(・)る(・)わ(・)!!」


 エヴァンスの激昂が、雷の蔦蛇を足元に呼び出す。


 彼女の両足に纏わりついた。


 "花葬"が逆手の"モーニング・グローリー"を構える。


 具足から火花が弾けると、エヴァンスに肉迫。


 刺突の軌跡に沿って、刃がエヴァンスのコートを切り裂いた。


「ロック!!」


 突如始まった"花葬"とエヴァンスの戦いを眺めていると、ブルースが駆け寄る。


 サキも続いてきた。


 後ろの"花葬"へ度々、彼女が眼差しを向ける。


「ブルース、オーツはどうした!?」


「鍛冶と一緒に、後退している!!」


 ブルースに促されてロックはエヴァンスの背後にいるオーツに目を向けた。


 分銅型の"命導巧(ウェイル・ベオ)":"アンダー・プレッシャー"を展開しているオーツが、扁桃の様に吊り上がった眼の鍛冶 美幸を守っている。


 苦悶に歪んだ顔で、エヴァンスの見境ない蔦蛇の攻撃を分銅型”命導巧(ウェイル・ベオ)”で受け流していた。


 その周囲が安全と踏んだのか、"政市会"会員も集まり始める。


「これは、どうなってるの……?」


 隣のサキが、戸惑っていた。


 サキの目線の先を見てみると、"政声隊"の集まる南の駐車場。


 炎、氷と雷が蹂躙していた。


 三つの攻撃の担い手は、三条。


 サミュエルとシャロンはその矛先に立たされている。


 彼らが避ける度に、"政市会"はおろか"政声隊"も三条の攻撃の餌食にされた。


 その中には、彼(・)ら(・)の(・)助(・)け(・)た(・)"政市会"会員と"政声隊"メンバーも含まれる。


 消し炭、氷漬けに感電死。


 その屍から、青白い光が出て、山の方へ飛んでいく。


「"命熱波(アナーシュト・ベハ)"が飛んでいく……」


「おい、ありゃなんだ!?」


 叫びながら一平も合流を果たした。


「あれは……"命熱波(アナーシュト・ベハ)"、魂(・)と(・)言(・)っ(・)て(・)も(・)い(・)い(・)」


 ブルースが淡々と答える。


「魂って……"超微細機械(ナノマシン)"とか"ベネディクトゥス"から色々聞いていたけど、そんな簡単に――!!」


 一平が抗議するが、ブルースの目線に押し黙る。


 彼が被りを振って、呼吸を整えると、


「じゃあ、死んだら皆、魂(・)に(・)な(・)る(・)と(・)し(・)て(・)、どうして、行(・)き(・)先(・)が(・)二(・)つ(・)に(・)分(・)か(・)れ(・)て(・)ん(・)だ(・)よ(・)!?」


 一平が示す通り、青白い光の行き先は二つ。


 一(・)つ(・)は(・)山(・)の(・)向(・)こ(・)う(・)。


 も(・)う(・)一(・)つ(・)は(・)、エ(・)ヴ(・)ァ(・)ン(・)ス(・)の(・)中(・)に(・)入(・)っ(・)て(・)行(・)っ(・)た(・)。


「待て……山って、あそこは……"是音(ぜおん)台高等科学研究所"の方角か!?」


 ブルースが魂(・)の(・)行(・)き(・)先(・)を見て、吐き捨てた。


 ロックはその名前を聞いて、


「ブルース……"白光事件"の"爆心地(グラウンド・ゼロ)"か!?」


 ロックも"白光事件"については、報告書で読んでいた。


 しかし、


「待てよ……そこは、"白光事件"の後で、産業用地(ハイテクパーク)が作られたんじゃ?」


「そして、事故の調査のため、立(・)ち(・)入(・)り(・)禁(・)止(・)って聞いたけど……」


 一平とサキの口から出た言葉から、ロックの頭にある報告書の内容と差異は無かった。


 ブ(・)ル(・)ー(・)ス(・)の(・)一(・)言(・)を(・)耳(・)に(・)す(・)る(・)ま(・)で(・)は(・)。


「"へルター・スケルター"……まさか、ナ(・)オ(・)ト(・)の(・)言(・)っ(・)て(・)い(・)た(・)話(・)は(・)マ(・)ジ(・)だ(・)っ(・)た(・)と(・)い(・)う(・)こ(・)と(・)か(・)……?」


「ブルース、テメェ……何を知っている!?」


 ロックが問い詰めると、


「ロック、あれ……?」


 サキからロックの背中合わせに言われて、振り向いた。


 それは、夕焼けの空に振る雪を思わせる白。


 それに彩られた少女が浮かんでいた。


「おい、龍之助!!」


 一平が叫んだ先。


 左側は、サミュエルの砂塵の竜巻と炎がぶつかり、シャロンが担う薄桃色の風と氷柱の嵐が吹き荒れていた。


 右では雷蔦の蛇が暴れまわり、銀鏡色の花武者が一頭ずつ流していく。


 その中心で、原田 龍之助が蹲っていた。


 右目から腕にかけて、青色に染めている。


 彼の傍らで、"赤い少女"が"白い少女"と対峙していた。

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© 2026 アイセル

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