対峙―⑦―
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ロックの翼剣"ブラック・クイーン"と"花葬"の日本刀"モーニング・グローリー"。
二つの"命導巧"の打合いが突如沸き上がった雷の蔦に遮られる。
「これは!?」
「"スコット決死隊"か!!」
ロックは戸惑い、眼前の"花葬"が市役所の駐車場の北側に目を向ける。
激闘によってひび割れた、"花鎧"の"花兜"。
その隙間から見える眼が、蠢く"雷の蔦"に囲まれるサキを映す。
一際大きな地割れが起き、彼女を隔てる様に雷の間欠泉が噴き出した。
ロックと花葬の間にも亀裂が走り、二人とも引き離される。
その衝撃で、二人との距離が更に離れた。
雷がロックの前を疾走する前、"花葬"の割れた兜から覗く眼が、もう一人の人物――"薄紫色の牙"を捉える。
二者が視線を交わすと、間もなく"花葬"がサキに関心を向けた。
――何だよ、一体……?
ロックも"花葬"と同じ方角を見る。
サキの眼の前で対峙している相手は、エヴァンス。
エヴァンスの両脚と同じ銀鏡色が、顔と腕にも少しずつ侵食を始めていた。
「当たらない!! 当たらない!!」
手入れは愚か、櫛すら入っていない金髪を抱え、両膝で蹲るエヴァンス。
泣き叫ぶ彼女に呼応するように、彼女の足元から溢れ出る雷の蔦。
それが、藻掻き苦しむ蛇の様にのたうち回った。
蔦の厚さが、成人男性ほどの胴となり"政市会"会員たちを吹き飛ばす。
何人かが蔦蛇の毒牙に掛かった。
紫電の牙に喰われたものが、青白い魂となりエヴァンスに送られる。
「当たらない、あの子に当たらない!!」
エヴァンスの視線が捉えるサキ。
彼女へ雷の蔦を走らせるが、何故かサキを避ける。
しかし、サキから外れた蔦が"政市会"会員の男を襲い始めた。
「クソッタレ!!」
ロックは吐き捨て、"駆け抜ける疾風"による神経強化で"政市会"の男性会員に向かった。
蔦に巻き込まれそうになった"政市会"会員を右腕で抱える。
振り向きざまに――蔦の射程範囲外であろう――壊れた噴水近くへ放り投げた。
雷の大蛇に飲まれようとした、もう一人の"政市会"会員を助けようとしたが、
「あら、"スパイニーィィィィ"!!」
エヴァンスの銀鏡色交じりの肌と、泣きはらして赤くなった眼。
その中に歓喜を灯しながら、ロックの仇名を叫ぶ。
それが合図となり、広場を蹂躙した雷の蔦が一斉にロックに向かった。
ロックの吐き捨てた言葉が、地をのたうつ轟音に消される。
"駆け抜ける疾風"で地を蹴りながら、後退。
エヴァンスの蔦蛇の追撃から逃げる。
――あまりに、"命熱波"が強すぎる!!
"磁向防"が掻き消えるほどの熱力量だ。
"政声隊"メンバーも、ロックを喰らい損ねた蔦蛇の咢に飲まれていく。
本来、"スウィート・サクリファイス"と"コーリング・フロム・ヘヴン"は、微量だが"磁向防"が流れていた。
同時に、回復も行われる。
ロック達に攻撃されても、その損傷で――五体不満足となるが――致命傷となることはなかった。
彼等の攻撃を上回る熱量に、両団体が成す術なく蹂躙していく。
ロックはエヴァンスの"雷蔦"から逃れるために、距離を稼いだ。
エヴァンスに目を向けると、雷蔦を躱しながら"花葬"が彼女に肉迫。
"花葬"の背後で、サキが立ち尽くしていた。
"花葬"が右からの上段袈裟斬りで、エヴァンスの左肩を斬り落とそうとする。
"花葬"の斬撃を躱し、エヴァンスが後退。
彼女が靴型"命導巧":"ダンシング・クイーン"の右後ろ回し蹴りで、"花葬"に反転攻勢で応戦した。
靴から生えた刃が、"花葬"の"花鎧"の花兜を切り裂いた。
それから、"ウィッカー・マン"化した左足の甲の鉄槌が、"花葬"の右こめかみに炸裂する。
「仮面を被って鎧も着て、相当な恥ずかしがり屋さんね! ズタボロに切り裂いて、その面曝してやるわ!!」
エヴァンスの激昂が、雷の蔦蛇を足元に呼び出す。
彼女の両足に纏わりついた。
"花葬"が逆手の"モーニング・グローリー"を構える。
具足から火花が弾けると、エヴァンスに肉迫。
刺突の軌跡に沿って、刃がエヴァンスのコートを切り裂いた。
「ロック!!」
突如始まった"花葬"とエヴァンスの戦いを眺めていると、ブルースが駆け寄る。
サキも続いてきた。
後ろの"花葬"へ度々、彼女が眼差しを向ける。
「ブルース、オーツはどうした!?」
「鍛冶と一緒に、後退している!!」
ブルースに促されてロックはエヴァンスの背後にいるオーツに目を向けた。
分銅型の"命導巧":"アンダー・プレッシャー"を展開しているオーツが、扁桃の様に吊り上がった眼の鍛冶 美幸を守っている。
苦悶に歪んだ顔で、エヴァンスの見境ない蔦蛇の攻撃を分銅型”命導巧”で受け流していた。
その周囲が安全と踏んだのか、"政市会"会員も集まり始める。
「これは、どうなってるの……?」
隣のサキが、戸惑っていた。
サキの目線の先を見てみると、"政声隊"の集まる南の駐車場。
炎、氷と雷が蹂躙していた。
三つの攻撃の担い手は、三条。
サミュエルとシャロンはその矛先に立たされている。
彼らが避ける度に、"政市会"はおろか"政声隊"も三条の攻撃の餌食にされた。
その中には、彼らの助けた"政市会"会員と"政声隊"メンバーも含まれる。
消し炭、氷漬けに感電死。
その屍から、青白い光が出て、山の方へ飛んでいく。
「"命熱波"が飛んでいく……」
「おい、ありゃなんだ!?」
叫びながら一平も合流を果たした。
「あれは……"命熱波"、魂と言ってもいい」
ブルースが淡々と答える。
「魂って……"超微細機械"とか"ベネディクトゥス"から色々聞いていたけど、そんな簡単に――!!」
一平が抗議するが、ブルースの目線に押し黙る。
彼が被りを振って、呼吸を整えると、
「じゃあ、死んだら皆、魂になるとして、どうして、行き先が二つに分かれてんだよ!?」
一平が示す通り、青白い光の行き先は二つ。
一つは山の向こう。
もう一つは、エヴァンスの中に入って行った。
「待て……山って、あそこは……"是音台高等科学研究所"の方角か!?」
ブルースが魂の行き先を見て、吐き捨てた。
ロックはその名前を聞いて、
「ブルース……"白光事件"の"爆心地"か!?」
ロックも"白光事件"については、報告書で読んでいた。
しかし、
「待てよ……そこは、"白光事件"の後で、産業用地が作られたんじゃ?」
「そして、事故の調査のため、立ち入り禁止って聞いたけど……」
一平とサキの口から出た言葉から、ロックの頭にある報告書の内容と差異は無かった。
ブルースの一言を耳にするまでは。
「"へルター・スケルター"……まさか、ナオトの言っていた話はマジだったということか……?」
「ブルース、テメェ……何を知っている!?」
ロックが問い詰めると、
「ロック、あれ……?」
サキからロックの背中合わせに言われて、振り向いた。
それは、夕焼けの空に振る雪を思わせる白。
それに彩られた少女が浮かんでいた。
「おい、龍之助!!」
一平が叫んだ先。
左側は、サミュエルの砂塵の竜巻と炎がぶつかり、シャロンが担う薄桃色の風と氷柱の嵐が吹き荒れていた。
右では雷蔦の蛇が暴れまわり、銀鏡色の花武者が一頭ずつ流していく。
その中心で、原田 龍之助が蹲っていた。
右目から腕にかけて、青色に染めている。
彼の傍らで、"赤い少女"が"白い少女"と対峙していた。
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