対峙―⑥―
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"政声隊"の青緑の人型――確か、"アンペア"と聞いた――の雷が、一平を襲った。
一平は叫び声を上げると、雷鳴は不可視の結界に阻まれる。
「叫び声で"磁向防"を発生させる……普通!?」
驚くサミュエルが、背中を預けてくる。
一平と龍之助の戦いに、"政声隊"が流れ込んできた。
龍之助の危機で頭が一杯だった一平は、彼らに阻まれる。
対して、サミュエルの方にも目を向ければ、彼も同じく主たる標的から離されていた。
彼の相棒のシャロンが"滑輪板"を滑走させながら、三条の攻撃を躱す。
三条の召喚した巨大な両手の炎が、シャロンに向かって放たれた。
"滑輪板"を滑走させ、シャロンが避ける。
シャロンを追う炎に彼女を捕えようとした"政声隊"が、その餌食になる。
"政市会"が仲間を犠牲にする戦法を見せた矢先に、三条もそれを躊躇わない。
三条の攻撃の餌食になった者の肉体から、青白い光が上る。
光が数条、山の方へ向かっていった。
「……取り敢えず、あの娘を倒せませんけど……アレに送れるから、ヨシとしましょう」
三条が一人で納得しながら、大きな手に指示を出す。
掌で氷柱が作られ、シャロンの前方に放たれた。
氷柱が衝突する寸前、彼女が"滑輪板"を旋回。
氷柱から逃れながら、シャロンが滑走するが、
「三条さ――!!」
「私たちも――」
"政声隊"メンバーの声が口々に途切れる。
シャロンの代わりに、氷柱の餌食となったのだ。
「見境なしかよ、クソババア!!」
シャロンが吐き捨てる。
味方と敵の見境のない三条の攻撃に、一平の怒りの溶鉱炉も最高熱力まで燃え上がる。
「その怒り……今は抑えておいた方が良いよ?」
サミュエルが、一平の右に立って言う。
その声も、何処か熱気を帯びていた。
「アンタ、言ったろう……『龍之助は俺に任せろ』的なの……なら、まずは、そいつに集中しろ!」
どこか脂汗をにじませるサミュエルの言葉に、一平は冷水を浴びせられたように思った。
一平は、口から出かけた怒りを堪え、歯を食いしばる。
「……加えると、あの鉄面皮女……ムカつくけど、一平の分は残しておくよ?」
サミュエルの笑顔に、一平は親指を上げて応える。
「黙って聞いてれば、あなた方は人をババアや鉄面皮呼ばわりですか?」
感情の抑揚のない声で、三条が反応した。
「……実際、そうじゃん!! 猫すらも逃げるほどのクレイジーさじゃん!!」
「ジェンダー的に問題あることは承知だけど、絶対に、アンタと添い遂げたい殿方……皆無だよね?」
シャロンとサミュエルが口々に言うが、
「あら……そう思われているとは……しかし、一つだけ訂正がありますよ?」
三条が左手の甲を見せる。
薬指の表面が、仄かに青い。
大きな両手も、彼女に呼応して、
「私、これでも結婚していましたのよ?」
三条の言葉に、一平は少し感情が宿った様に思った。
間髪入れず、炎、氷と雷の三重奏がサミュエルとシャロンに放たれる。
「そういうとこだよ、クソババア!!」
シャロンが叫びながら、大きく旋回。
三条から離れる様に、攻撃を躱す。
同時に、"政声隊"から離れる様にして、移動した。
サミュエルがシャロンに合流を図ったと同時に、一平は"政声隊"の群れに向かう。
気合を入れながら、両手の"ライオンハート"を構える。
その中の黒シャツたち――"力人衆"――が、拳を一平に向ける。
トルクの戦士たちの拳に、炎、氷と雷が覆われた。
「そういうシンプルなの、嫌いじゃないぜ!!」
眼鏡を掛けた短髪の男が、炎に包まれた力いっぱい右の直拳撃を一平に打ち込む。
一平は警戒に右に半身を引いた。
左足を軸にして、大きく時計回り。
炎に包まれた拳激を回転しながら躱す。
一平は、右の裏拳を男の後頭部に放った。
つんのめりに短髪の男が一平の背後で倒れると、稲光を弾かせた拳を持つ坊主頭の男が迫る。
男が、左右と拳撃を二発放つ。
牽制用の軽拳撃だろう。
しかし、右拳を右耳の下に置く"悪い拳撃"とわかると、一平は牽制の二撃を難なく流す。
一平は気合を入れながら、牽制を放って空いた禿頭の懐に飛び込んだ。
禿頭から放たれた、電位差の槍。
しかし、一平の前で消える。
一平の頭突きが、戸惑う禿頭の顎を砕いた。
――つうか、痛ぇけど、スキーア……なんとかで、どうにかなった!!
サミュエルが触れた"命熱波"由来の結界と言える何か。
自分でも意識していなかったが、出せたようだ。
――確か……"爆衝烈拳"とかいう攻撃で、接近戦や防御はどうにかしていたけど……割と、これも便利だな……。
"ベネディクトゥス"からは、最低限の"命導巧"の使い方と、"命熱波"については聞いていた。
"爆衝烈拳"と"爆轟咆破"という技を聞いたのはその時である。
しかし、戦略に至っては、手探りが多い。
初めて戦った"命熱波使い"は、槍と双剣のそれぞれを得物とする二人を――龍之助もその場にいて――どうにか退けた。
最近の戦績で言うなら、少し前の上万作学園の大乱闘とロックと一対一で戦ったくらいだろう。
"命熱波使い"の戦い方についての知識はゼロと言ってもいい。
しかし、それでは足りない。
――龍之助まで……まだまだ遠いな。
黒シャツ集団の後ろにいる、眼鏡を掛けた矛槍型"命導巧"を構える親友――原田 龍之助。
彼と拳を交える為に、少し近づけたくらいだ。
氷の拳を構える黒シャツ男の二人が迫る。
一人目が左の白い拳打で一平を狙った。
一平が避けると、それを見計らったかのように、後ろから来た男の右の白い直拳撃が顔面を捉える。
一平は左腕の"ライオンハート"を突き上げ、壁を作った。
黒シャツ男の氷の右拳打を流し、一平はがら空きとなった男の胴に右腕の"ライオンハート"から"爆轟咆破"による炎の弾丸を撃つ。
黒シャツ男の氷の拳を砕きながら、胴に受けた一撃で吹っ飛んだ。
相方を倒された怒りからか、もう一人の氷の拳を持つ黒シャツが叫びながら、右側から一平に迫る。
しかし、黒シャツ男が歩みを止めた。
いや、止めざるを得なかった。
星屑の様に煌く何かに男の視界が奪われる。
それは、一平が、先ほど倒した男が装備していた氷の拳の破片だった。
一平は、氷の冷たさ、溶けた水で視界を遮られた男の腹に左を入れる。
間髪入れずに右鉤拳打で男の左頬から顎を刈り取った。
意識を失った黒シャツ男を盾に、トルクを纏い炎、氷に雷で武装した""力人衆"へ突っ込む。
黒シャツ男の背に、"命熱波"による結界を張っているため、"人型"の攻撃は受け付けない。
一平の突進で、黒シャツの群れを突っ切ろうとした。
その時、雷鳴が地表から湧いて出た。
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