対峙―⑤―
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「……なんだよ、アレ!?」
そう言ったのは、サキの隣にいた堀川。
ブルースに羽交い絞めにされながら、彼が呟く。
サキは、堀川がブルースによって抱えられ、地面から離れていることに気づいた。
他の"政市会"会員は尻餅を突き、地面と密着している。
「"雷命の蔦"……端的に言うと、あの女の出す雷で命を吸っている」
ブルースの言葉と同時に、"政市会"会員から目を奪うような光が迸った。
光の中で"政市会"会員たちの血が沸騰。
その身体が、炭化して崩れた。
「……何しやがった、仲間なのに……アンタは何てことをしやがった!!」
堀川の慟哭が夕焼けに染まる、市役所前に響く。
間もなく、周囲の戦いの音にかき消されていった。
だが、サキの目がある少女に留まる。
「……秋津さん」
サキは思い出したが、彼女には他の"政声隊"のメンバーの纏うトルクがなかった。
上万作学園の大乱闘の時に加え、今回も。
彼女の眼が堀川を映す。
彼女の眼に涙が溜まっていた。
涙を流さないように、歯を食いしばっている。
サキは、その理由を考えかねた。
しかし、それがすぐに分かる。
それは、彼女の背後にいる存在だった。
"政声隊"の幹部にして、護憲派弁護士の三条 千賀子。
彼女によって涙を流せない。
考えも述べられない。
ただ、彼らの平和の伝道者でしかない。
同時に、大人たちの追認者以外の何者でもなかった。
――彼女は、私だったのかもしれない。
"白光事件"の中心にして、犠牲者という名の生贄。
"平和を盲信する者たち"の尖兵にされるしかない存在。
サキはエヴァンスに"命導巧":"フェイス"を向ける。
「……仲間だと? 人様の考えや属性でしか判断できない人間だぜ……死んだ方が"世の為"じゃねぇか?」
オーツが立ち上がり、堀川を睨みつける。
「……そういうことを言う、お前らも結局、誰かを利用して、利用されているだけじゃないか!!」
堀川に言い返されることを想定していなかったのか、オーツが黙る。
"アンダー・プレッシャー"の頭蓋ほどの大きさの分銅が、反論の代わりに放たれた。
堀川の頭に目掛けて飛んできたが、
「逃げろ!!」
ブルースが抱えていた堀川を放り投げる。
"ヘヴンズ・ドライヴ"の二刀流で交差して、強襲してきた分銅型"命導巧"を受けた。
彼が気合と共に、二刀のショーテルで弾き飛ばす。
「……言い返せないってことは、堀川ってのが正しいようだな」
ブルースが核心を突いた笑みで、オーツの悔しげな顔をその眼に映す。
「……あなた、凄い瑞々しくて、美味しそうね?」
虚ろな眼で、サキに目を向けるエヴァンス。
「エヴァンス、俺はブルース=バルトを殺る。お前は、サキと言う女だ」
オーツの両側に頭蓋台の分銅が二つ並ぶ。
サキと向き合いながら、エヴァンスが脚に電流を帯びさせた。
「サキは傷つけないよ――」
サキは、鍛冶に向けて"フェイス"の蒼白い弾丸を放つ。
「……私は引いた方が良いようですね」
鍛冶はそう言って、前線から下がった。
「……新人のクレーマー対処として、完璧」
「でも、敵は玄人だらけだけど、ブルース……どうする?」
ブルースに褒められたが、サキは冷静に返す。
「エヴァンス、あのサキ……ちゃんと原型留めとけよ?」
「……味見するだけなら良いわよね?」
オーツとエヴァンスのやり取りに、
「おいおい、主菜を前にケチなことを言うなよ?」
ブルースが、オーツに双刃を斬りつけた。
「『食べられるなら、食べてみな?』、そして『火傷に注意!!』」
サキは、エヴァンスから放たれた雷命の蔦を避ける。
寸暇を入れずに、蒼白く輝く"フェイス"をエヴァンスに向けて撃った。
「サキ、ロックより煽りが上手いな!!」
サキは返す間もなく、"ヴァージニア"を呼ぶ。
鶏冠兜の女射手の矢が、エヴァンスに向かった。
煌く矢をエヴァンスが当たる寸前で、跳躍して躱す。
幾層もの刃物を生やした靴が、獲物を食らおうとする肉食獣の牙を思わせた。
『はい、一丁上がり!!』
サキの隣に現れるのは、右手を剣に変える"ライラ"。
彼女の刺突が、上空のエヴァンスを捉える。
しかし、"雷命の蔦"に包まれたエヴァンスを貫けない。
「さて、どう料理してあげ――!!」
"雷命の蔦"を解いた瞬間、エヴァンスが目を見開いた。
彼女を纏っていた煌きがいきなり、エヴァンスを焼き尽くす。
"ヴァージニア"の"フォトニック結晶"。
先ほど放たれた、矢の全体に細かくしたものが覆われていたのだ。
"ライラ"が両手を上げて、苦しむエヴァンスを前に喜びを表現する。
"ヴァージニア"も笑顔を見せないまでも、口元を緩めた。
「クソッタレ……クソッタレ!!」
口汚く吐き捨てる、エヴァンス。
彼女の両脚が、銀経色に煌く。
その表面に映るのは、ブルースとオーツ。
ブルースの"命導巧":"ヘヴンズ・ドライヴ"の二刀流が、オーツに迫る。
オーツが分銅型"命導巧":"アンダー・プレッシャー"でブルースに応戦。
一投目を右の剣で振り払い、二投目を神速の速度で避ける。
オーツが蛇行で戻ってきた一投目を突き出して、ブルースの攻撃を防いだ。
しかし、その像が電流で消える。
電流の蔦が地面を這った。
それが、サキに届く瞬間、エヴァンスが声にならない叫びを上げる。
「どうした、エヴァンス!!」
ブルースの斬撃を、"命導巧"ではなく、不可視の結界――サキが前に聞いていた"磁向防"という"リア・ファイル"由来の電磁結界――で防ぎ始めたオーツが問うた。
サキの目の前で、エヴァンスが雷命の蔦を放った。
しかし、放つ度に、
「何が……どうなってるの、狙っているのに……どうして当たらないの!?」
困惑と涙に滲むエヴァンスの両眼が、悠然と立つサキと二体の"命熱波"の守護者を映した。
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