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【完結】クリムゾン・コート・クルセイド Vol.Ⅱ ”平和たる軍靴"  作者: アイセル
第五章 Face/Off

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対峙―④―

当作品の無断転載、AIを含めたあらゆる二次利用を禁止します!!

Do not reupload / use my writing for any purposes, including for AI!!

 サキは"命導巧(ウェイル・ベオ)":"フェイス"の蒼白色の刃で、オーツの分銅型"命導巧(ウェイル・ベオ)":"アンダー・プレッシャー"の片割れを斬った。


 斬撃に弾かれた分銅型"命導巧(ウェイル・ベオ)"が、オーツへ戻っていく。


 夕暮れ時。


 市役所は西日を背に建っている。


 サキ達は、夕陽の作る影に覆われる"政市会"陣営からの攻撃に苦戦していた。


――見えにくいな……。


夕陽を背にしている"政市会"。


 直接戦うことに分を悪く感じているのか、物陰から"スウィート・サクリファイス"を撃っている。


 それに加えて、オーツの"アンダー・プレッシャー"がその間を縫うように、サキとブルースを"政市会"陣営から遠ざけるように攻撃。


 この作戦は意外と彼らにとって有効だった。


 サキとブルースは、目標(ターゲット)に近づけない。


 頭痛の種だった。


「サキ、大丈夫か!?」


 ブルースは、入口の植え込みに身を屈めて言う


「突っ込めないから、キツイかな?」


 サキは植え込みの影から顔を出して、周囲を見る。


 西日を背に立つ市役所。


 その正面では、ロックと"銀鏡色"の鎧を纏った人物が衝突。


 "花鎧"が三条の側にいた以上、"政声隊"側であるのは明らかだった。


 しかし、"政市会"にとっては、二(・)人(・)が(・)敵(・)で(・)は(・)あ(・)る(・)も(・)の(・)の(・)、その戦いの激しさに手を出せない。


 同時に"政声隊"にとってもロックも脅威であることは変わらないが、彼から放たれる獰猛な戦意が加勢はおろか、駆け寄ることすら許さなかった。


 次に、一平と龍之助だが、二人の戦いも続いている。


 一平の持っている"命導巧(ウェイル・ベオ)"――マンションで"ライオンハート"とサキは聞いた――による、射撃で距離を詰める。


 対して矛槍型"命導巧(ウェイル・ベオ)":"セオリー・オブ・ア・デッドマン"から発射した水の弾丸で、龍之助は一平を遠ざけた。


 時折、一平から距離を詰め、接近戦に持ち込んでいる。


 一方で、南側の駐車場にいる、サミュエルとシャロン。


"命熱波(アナーシュト・ベハ)"を使える三条を標的に攻撃し、"政声隊"が彼女を守っていた。


 サキとブルースが、オーツ。


 一平が、龍之助と戦う。


 最後は、ロック、サミュエルとシャロンが三条を抑える。


 以上の組み合わせで戦況を乗り切ろうとした。

 

 そんな中"花鎧"が乱入して、ロックを三条から突き放す。


 加えて、"薄紫色の牙《ヴァイオレット・ファング》"という女性の放った煙幕で"政市会"と"政声隊"の攻撃を封じていたが、そ(・)れ(・)は(・)す(・)で(・)に(・)消(・)え(・)て(・)い(・)た(・)。


 サミュエルとシャロンが、三条の大きな両手の攻略を試みているが、"政声隊"の赤、白、青緑の人型から放たれる炎、氷と雷の攻撃に阻まれている。


 "薄紫色の牙《ヴァイオレット・ファング》"が、彼らに援護射撃をしているが、突破口に欠けていた。


――あれ?


 サキはふと考えた。


 "薄紫色の牙《ヴァイオレット・ファング》"の姿だが、どこかサキの中で引っ掛かる。


 そ(・)の(・)理(・)由(・)が(・)わ(・)か(・)ら(・)な(・)い(・)。


 思考を変えることにして、視界を"政市会"陣営に向ける。


 鍛冶 美幸を中心に"命熱波(アナーシュト・ベハ)使い"のオーツが守っていた。


 駐車場の北側を拠点にしている"政市会"を見ながら、


「そういえば、オーツってロ(・)ッ(・)ク(・)と(・)戦(・)っ(・)た(・)って……」


 サキはブルースに話題を振る。


 サキの知らない情報。


 それが突破口になると考えた。


「ああ……"スコット決死隊"はロックと戦って、いずれも身(・)体(・)の(・)一(・)部(・)に(・)大(・)け(・)が(・)を(・)負(・)っ(・)た(・)。オーツの場合は両(・)眼(・)だ」


 ブルースも"政市会"に目を向ける。


 彼が舌打ちをすると、


「両眼から脳にいたる致命傷を負ったが、"リア・ファイル"がそこを修復。"命導巧(ウェイル・ベオ)"を通して、視界すべての情報を把握できる能力を得た」


「……じゃあ、"アンダー・プレッシャー"は"ド(・)ロ(・)ー(・)ン(・)"の様なもの?」


 サキの言葉に、ブルースが頷いた。


「同時に、オーツはそのモデムでwi-fi(ワイファイ)も担っているな……」


 噴水の向こう側で、オーツの上からこちらまで接近するが、円を描いている。


 つまり、射程があった。


 考えていると、サキはある人物に目が留まる。


――……堀川君?


 髪が短く、小綺麗な同年代の男子だ。


 彼が"政市会"の側で、"スウィート・サクリファイス"を構えている。


 彼とはあまり会話をしたことがない。


 そもそもクラスが違うから無理もなかった。


 "政市会"の中でも"同年代のまとめ役"を彼が担っている。


 人伝(ひとづて)で知っていたので、この場にいることは、状況的に珍しいことではない。


 しかし、彼の目線の先にいる少女。


 それが、サ(・)キ(・)の(・)中(・)で(・)引(・)っ(・)掛(・)か(・)っ(・)た(・)。


――……秋津さん!?


 堀川が、長髪を二房に分けている"S,P.E.A.R.(スピア)"の代表の少女を見ている。


 ロックが大乱闘した時、堀(・)川(・)が(・)敵(・)対(・)団(・)体(・)で(・)あ(・)る(・)秋(・)津(・)を(・)庇(・)っ(・)て(・)い(・)た(・)のを思い出した。


「ブルース……あの、堀川っていう"政市会"の小綺麗な男の子、見える?」


 サキに促されて、ブルースが見る。


 彼が頷くと、


「ブルース……"政市会"は、地理的優位に加えて、第一の壁で"スウィート・サクリファイス"を構えた"政市会"と第二の壁としてオーツ……それがややこしくしているのよね?」


 サキの確認に、ブルースが曖昧に肯定する。


「だから、ブルース――」


 サキの言葉に、ブルースが耳を傾けるが、


「出来るのか、サキ?」


 サキは強く頷いた。


「"ヴァージニア"、"ライラ"、二人で攻撃して!! ア(・)レ(・)を(・)!!」


 "命熱波(アナーシュト・ベハ)"の二人の守護者――短髪の少女と鶏冠(ガレア)の少女――が出てきて、


『よし来た!!』


『承知しましたわ』


 二人が交戦の意思を見せると、ブルースが駆け出した。


 彼女たちに反応したのは、オーツの"アンダー・プレッシャー"。


 "政市会"会員も遅れて、"スウィート・サクリファイス"をサキ達に向ける。


 羊の頭蓋骨から放たれる、青白い弾丸はブルースに集中。


 彼が、"磁向防《スキーアフ・ヴェイクター》"を発動させて、凌ぐ。


「"磁向防《スキーアフ・ヴェイクター》"!! "命熱波(アナーシュト・ベハ)使い"として当然だが、この攻撃には耐えられねぇぜ?」


 オーツの勝ち誇った笑み。


 彼の言う通り、"磁向防《スキーアフ・ヴェイクター》"は"命熱波(アナーシュト・ベハ)"による攻撃を防ぐ。


 しかし、万(・)能(・)で(・)は(・)な(・)い(・)。


 直撃は避けられるが、衝(・)撃(・)に(・)よ(・)る(・)ダ(・)メ(・)ー(・)ジ(・)は(・)別(・)だ(・)。


 つまり、"磁向防《スキーアフ・ヴェイクター》"は削ぎ落され、致命傷は免れない。


 しかし、ブルースの笑みが崩れない。


 それをオーツが眼に焼き付けた時、それが起こった。


 何かが爆発する音。


 それは、市役所前で戦う者たちの眼を奪った。


 その中で、最(・)も(・)戸(・)惑(・)い(・)を(・)隠(・)せ(・)な(・)か(・)っ(・)た(・)のが、


「――"アンダー・プレッシャー"が!?」


 "スコット決死隊"のオーツ。


 彼の目に、大(・)き(・)く(・)上(・)る(・)水(・)の(・)柱(・)が(・)映(・)っ(・)た(・)。


 背が高く、肩幅の広い男は、あまりの光景に動転する。


 しかし、彼の目を奪ったのはそれだけではない。


 突如、荒れ狂う光の乱反射。


 それが、"政市会"会員たちの手足を貫く。


 サキは戸惑うオーツに、飛び込んだ。


 彼女は"フェイス"の横殴りの斬撃をオーツの腹にぶち込む。


"磁向防《スキーアフ・ヴェイクター》"の手ごたえを感じたが、オーツがその衝撃にくぐもった息を漏らした。


『さて、やっちゃおうか!!』


 短髪の守護者、"ライラ"の右腕の剣がオーツを上から両断した。


 "磁向防《スキーアフ・ヴェイクター》"が火花を散らした斬撃が、オーツの顔を歪める。


『飛びなさい!』 


"ヴァージニア"の右手の弓から、結晶の鏃(やじり)も放たれた。


 オーツの腹に命中すると、光が弾ける。


 弾けた光の欠片が、オーツの全身を貫いた。


 サキの目の前で倒れるオーツの向こうで、


「確保!!」


 ブルースが、堀川を羽交い絞めにして叫んだ。


 "政市会"会員が、"スウィート・サクリファイス"を突き出す。


 しかし、ブルースの気迫に勝てず、彼らは、ややあって羊の頭蓋の銃を下した。


 堀川を確保したブルースと、オーツを倒したサキの対角線上。


 その先に、鍛冶が立つ。


 目の前の結果に動じず、肩をすくめて、


「……なるほど、オ(・)ー(・)ツ(・)の(・)"ア(・)ン(・)ダ(・)ー(・)・プ(・)レ(・)ッ(・)シ(・)ャ(・)ー(・)"を(・)停(・)止(・)さ(・)せ(・)る(・)た(・)め(・)に(・)、噴(・)水(・)を(・)壊(・)し(・)ま(・)し(・)た(・)か(・)」


 鍛冶の指摘した通りだった。


オーツの頭脳で操っている、分銅型"命導巧(ウェイル・ベオ)":"アンダー・プレッシャー"。


その役割は格闘戦の分銅に限らず、"ドローン"の代わりとしても使えた。


 破壊された視神経と脳をモデム代わりに、オーツが"アンダー・プレッシャー"を上空に飛ばす。


 "政市会"会員達が"スウィート・サクリファイス"で守りを固めることで、要塞を作り上げた。


 しかし、そこには致命的な弱点が一つだけあった。


 水は電波を通さない。


 "アンダー・プレッシャー"の射程内にある噴水を壊すことで、サキはその空白を作った。


 更に、"ヴァージニア"による破壊で散乱した"フォトニック結晶"を噴水の周りに展開。


"ライラ"の放ったレーザーを結晶の大小問わず粒子を通し、"政市会"会員たちに向けて散乱させる。


 その間にブルースが堀川を確保したのだ。


「見事です……まあ、市販のWi-Fi(ワイファイ)製品に後れを取ることが"命導巧(ウェイル・ベオ)"は無いですが、そ(・)れ(・)で(・)も(・)空(・)白(・)は(・)一(・)瞬(・)で(・)き(・)ま(・)す(・)か(・)ら(・)ね(・)。でも、終(・)わ(・)り(・)で(・)す(・)……"彼(・)女(・)"が来(・)ま(・)し(・)た(・)か(・)ら(・)」


 サキの目の前の鍛冶の背後から、雷が疾走(はし)った。


 雷がツタとなり、"政市会"会員を捕らえる。


「……お腹が空いたわ(ハングリー)……すごく寒いわ《ブラッディー・コールド》……」


 白いハーフコートを着た女。


 その肌には、銀経色が微かに混ざり、痩せこけている。


 サキは、前(・)に(・)写(・)真(・)で(・)見(・)た(・)の(・)で(・)、名前は知っていた。


「……エヴァンス」

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© 2026 アイセル

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