対峙―③―
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『……三条、しばらくの間、例の"試運転"に入る、時間を稼げ』
"花鎧の戦士"が、ロックの"ブラック・クイーン"の斬撃を受けながら、三条に語りかける。
後ろの三条が、感情的なものを振り払う様に鼻を鳴らし、
「……わかりました」
三条の召喚した大きな左手の甲でサミュエルの攻撃を受け、右掌でシャロンの"滑輪板"による突撃を防いだ。
"磁向防"が三条に向かうサミュエルとシャロンを遮る。
サミュエルとシャロンが斥力に飛ばされた。
息を整えながら、三条と向かい合うと、
「兄さん、まずい……このままだと」
サミュエルに指摘されて、ロックは気づいた。
催涙弾の煙幕が薄れ始めている。
"政市会"と"政声隊"に加わっていた民間人は逃げていたが、それ以外が問題だ。
「……"コーリング・フロム・ヘヴン"の炎と雷が、襲い掛かってくるな」
「……ついでに言うと、"政市会"もね……両腕の"スウィート・サクリファイス"は、"コーリング・フロム・ヘヴン"ほどじゃないけど、あちらも数の力は劣っていない」
龍之助を説得する。
それが、ロックとサキに課せられた仕事のはずだった。
しかし、いつの間にか両政治団体の戦いに巻き込まれている。
――肝心の一平は……!?
龍之助に向け、一平がひたすら追撃していた。
間合いを取り"爆轟咆破"の炎の榴弾で、龍之助を攻撃。
龍之助が"セオリー・オブ・ア・デッドマン"の水の矛槍を振り回し、一平の攻撃をかき消していく。
しかし、そんな一平に、"政声隊"の一人が"コーリング・フロム・ヘヴン"の人型を向けた。
身体の幅が広く、黒縁眼鏡の大男が嗾ける青緑の"アンペア"。
攻撃の速さで知られている。
一平に目を向けていると、
『余所見とは……余裕だな?』
"花鎧の戦士"の突き出す日本刀型"命導巧":"モーニング・グローリー"の切っ先がロックの喉でちらつく。
刃には、ロックが歯がゆくしている顔が浮かんだ。
しかし、青緑の人型から雷撃は放たれない。
薄紫のバラクラバと同色のシャツを纏った女性――"薄紫色の牙"の放った金的蹴りが、幅が広く、巨大なブロック塊の印象を与える大男の動きを封じる。
野太い男の声が甲高い悲鳴を上げる。
間髪入れず"薄紫色の牙"が右足を移動。
大男の左太腿に、右回し蹴りを放った。
痛みに堪える大男が、絹を裂いたような怒号を放ち、"薄紫色の牙"に覆いかぶさる。
しかし、薄紫色の牙の動きの方が速い。
左太腿への右回し蹴りをすかさず、左脇腹に放つ。
脂肪と筋肉が蹴りへの衝撃で揺らしながら、大男が泡を吹いた。
「カンタ!!」
歯をヤニで染めた痩せた女が叫ぶと、"薄紫色の牙"が軽やかに下がった。
移動しつつ、"薄紫色の牙"が右後ろ回し蹴りをカンタと言う大男の土手っ腹に叩き込む。
吹っ飛んだカンタの背に潰れるヤニ歯の女が、脂肪太りの眼鏡女も掴んだ。
カンタ、ヤニ歯と脂肪太りの三人が絡み合いながら、仲良く倒れる。
二人が目に怒りの色を灯し、薄紫色の牙を睨んだ。
しかし、薄紫色の牙の抱えていた携帯型騎兵銃の下に備え付けられた榴弾発射機から放たれた飛翔体が悪意に応える。
放たれたのは、暴徒鎮圧用のゴム弾が二つ。
ヤニ歯の女と脂肪太りの女の額に当たると、二人は勢いよくぶっ飛ぶ。
トルクを纏った黒いシャツと参加者を二人の体重で道連れにした。
ロックは安堵したが、目の前の光景に衝撃を覚える。
"花鎧"に覆われた"花葬"と言う男。
"薄紫色の牙"に向け、男の眼が一瞬揺らいだ。
「余所見とは余裕だな?」
ロックは言い返して、獰猛な笑みを浮かべる。
"駆け抜ける疾風"の神速で、ロックは"花葬"に全体重を掛けた。
神速に身体を浮かせる、"花鎧"の男。
ロックは"花葬"を盾に、"政声隊"のトルク集団を跳ね飛ばしていく。
鋼鉄の男のバリケード越しの突進で、男女問わずトルク集団が"コーリング・フロム・ヘヴン"を出す隙も与えない。
ロックは"政声隊"の群れを抜け、コンクリートで作られた花壇の植え込みを"花葬"で破壊。
市の花であるマンサクの枝を爆散させながらさらに加速させる。
市役所職員の車のボンネットに、"花鎧"の戦士を叩きつけて止めた。
衝撃で車体が凹み、フロントガラスが散乱。
爆炎と粉塵を受けて輝く。
"ブラック・クイーン"の刃を引っ込めるロックは、左手で"花葬"を凹んだボンネットに押さえつけた。
花葬へ"超微細機械":"リア・ファイル"で強化した右鉤拳撃を見舞う。
一撃が入り、機械と金属の破裂する音が、"疑似物理現象"の織り成す爆音に混じった。
しかし、ロックは乱打を止めない。
四打撃目が入りかけ、
『調子に乗るな!!』
"花葬"の怒号と共に放たれた右足が、ロックの腹に入る。
ロックは腹に力を入れ、"磁向防"で防ぐ。
しかし、衝撃による痛みに頭がふらついた。
"花葬"が、"モーニング・グローリー"を順手に構え、右袈裟切りをよろけるロックに放つ。
意識を取り戻し、ロックは柄だけとなった"ブラック・クイーン"の"籠状護拳"で防ぐ。
ロックは右手の"籠状護拳"で流しながら、"花葬"の右わき腹に向け、左回し蹴りを放った。
命中した衝撃が伝わると、ロックの左足が"花葬"の右腕に包まれる。
銀鏡色の"花鎧"からの左突きが、ロックに牙を剥いた。
ロックは、"花葬"の攻撃で緩んだ右腕の拘束を跳躍で解く。
左拳撃を躱し、跳躍した反動越しの右回し蹴りを、ロックは"花鎧"に繰り出した。
両足の靴に鉄板を仕込んで威力は増すが、その分反動が強い。
"金属製"の鎧なら猶更だった。
ロックは地面に落ちる前に、左足でバランスを取る。
辛うじて立つと、鉄入りの靴を食らった衝撃に足元がふらつく"花葬"が目の前にいた。
「……やっとらしくなったな、"花葬"?」
"花鎧"は銀鏡色。
泥にまみれ、ひび割れから鋭い眼光が見える。
銀鏡の兜が、ロックの余裕の笑みに彩られていた。
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