エピソード2 さらば、愛人
提督「…」
加賀が、轟沈してから
いくつと経ったか…
あの日々は忘れる事はない…
それはそれは永く…
淋しく…
提督「…ここにいると…思い出してしまうな…」
度ある中で、いつも加賀の帰りを待っている
幾度となく
でも
その思いは届くことなく
虚空へと溶け 僕の頬を撫でていく…
提督「…加賀…」
最後に…言っておけばよかった…
愛してるって…
さようならって…
ガタン
提督「…何だ…?」
物音がした
あそこは、加賀しか入れない部屋だった
提督「!?」
加賀「…」
提督「…加賀…なのか…?」
加賀「提督」
提督「…嘘…だよな…」
加賀「嘘ではありません」
提督「だって…加賀は…」
加賀「私は確かに轟沈しました」
提督「じゃあ…なんで…」
加賀「…やるべきことを、終わらせに来ました」
提督「…やるべきこと…?」
加賀「…提督、これを」
提督「…これは…結婚指輪…」
加賀「…はい、そうです」
提督「そ、その前に…!着替えを…!!」
ギュッ…
提督「!?」
加賀「…貴方が…温めて欲しいわ…」
提督「…加賀…」
加賀「…温かい…」
提督「…良かった…」
加賀「…提督」
提督「…どうした、加賀」
加賀「…今でも…私のこと…好きですか…?」
提督「…ッ!」
思わず涙が出た
今でも
こんな僕を
愛してくれている
そう想った
提督「…もちろんだろ…!」
僕は思わず叫んでしまった
今でも
加賀の驚いた顔が
頭から離れない
加賀「…そう…」
あぁ
こんな僕が
こんな可愛い奥さんを
持っても良いのだろうか
当時は、ずっと想っていた
提督「…そうだ、指輪…つけないとな」
加賀「…えぇ、そうね」
涙で視界が歪んで
上手く指にはめられなかった
提督「…」
加賀「…綺麗ね…流石に気分が高揚します…」
提督「…そうだな…まるで…加賀みたいだ…」
加賀「…冗談はよしなさい」
提督「…冗談じゃないさ…」
不思議だ
君の前では
全てを曝け出せる…
感情も…本音も…
加賀「…最後に…」
提督「…何だよ…お別れみたいにさ…」
僕は、気がついたら加賀に抱きついていた
まるで子供かのように
加賀「…ほんと、往生際の悪い人ね…それが良いのだけれどね…」
提督「…」
加賀「…さようなら…提督…いや…」
─旦那様…
驚くほどに早かった
まるで、一秒で終わったかのように
僕の手の中には
指輪が握られて、脳裏で加賀の一言が響き続ける
今もずっと…響き続けてる…
…ほんっと、不器用な女だった…
最期まで…
提督「…ッ!!!!」
提督「…加賀…!!!」
そうして、砂浜には
加賀の使用していた
弓、矢、甲板、前掛けが
ボロボロの状態で流れ着いていた
まるで、還って来たと言わんばかりにね…




