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夢追い非凡の異世界改造記  作者: 七草八千代
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魔力


 「『魔術』そう言うわ。エイリアス」


 (ようやく魔術か!! 魔法は魔素をエネルギーとして発動可能な技術で、魔術は魔力を……まさか、また魔法と同じ魔力の説明からか? 早く使いたいんだが……)


 そんな雪綱の不安を感じ取ったのか、エイリアシアは「大丈夫よ、もう少し説明したら、あなたにも実技をしてもらうわ」とエイリアスの頬をつつきながら言う。


 「いい、エイリアス? 魔術の使用には魔力が必要な事はさっき言ったわよね?」


 (ああ、聞きました! 聞きましたとも!! それよりも早く魔法が使いたいんだ……魔法は難しいか…… まっ魔術! 魔術だ!!)


 「んっ!! エイリアスはちゃんと覚えているんよ!」


 (……思っている言葉と微妙に異なる言葉を話す……この感覚は……何とも言えないな。何だか私が率先して幼稚な言葉を話している気分になるな……)


 「ふふふふふ、いい子ね、エイリアス。そうよ、魔力は魔術に必要な必須要素で、魔力は魔素と同様に全ての生物が生まれながらに持つ生物構成の必須要素。生体電気と似て、魔力は細胞一つ一つから生成される、魔たる力の(みなもと)・魔力元素……そう正式には呼ばれる力。でも魔素と違って危険性は少ないわ。とは言え、流石に自らの魔力適性と耐性を大きく越える魔力は危険よ」


 (……当然だな。大抵の生物にとって必要な酸素も、生物にとって本来は毒だからな。その事を考えれば当たり前か‥…どんなものでも『過ぎたるは及ばざるが如し』という事か……二十一世紀には危険とされていた放射能ですら、ごく少量なら生物には必要とされているからな……)


 「他には? 他には? お姉さま!! 他には無いん? それに、冠位魔力って何なん? お姉様、エイリアスに教えてほしいんよっ!! お姉さま!!」


 (あ~もうっ、騒ぐな幼い私!! そっちが興奮するとこっちにも興奮が伝わるんだぞ!! あ~手がジンジンしてきた!!)


 雪綱は小学生の頃の遠足の前の晩、興奮して手の平がじんわりと疼きなかなか眠れなかった事を頃を思い出す。


 「はいはい、冠位魔力については最後に説明するから落ち着きなさい。それよりも、魔力の基本性質について、まだ説明しなけれならない事があるから、そっちが先よ。いい、エイリアス。魔力は使い過ぎて身体から失われたとしても、数日もすれば回復するわ。もちろん、回復量と回復力は個人差があるけれど問題は無いわ……魔力が無くなっても魔力痛と呼ばれる筋肉痛に似た感じの症状が起こるくらいよ。症状と言っても精々、ちょっとした距離を全力で走った時の息苦しさが……そうね……魔力の量が最大魔力容量の三分の二以上に回復するまで続くわね。でも、安心なさい。魔力が回復するにつれ魔力痛は軽減されるから、最初の二十四時間は厳しいわよ。ふふふふふ」


 (よく笑う人だが、この笑い方は先に経験した事のある人の笑い方だな。それにしても全力疾走した後の息苦しさが二十四時間なんて、最早ただの苦行だな)


 「お姉さま! 魔力についてもっと教えてほしいんよ」


 「そうね、次は……魔力が生物に与える影響についてね。いい、エイリアス? 魔力は体の中で巡らせる事で生物が元々持つ基礎能力を強化する事が出来るわ。簡単に言うと、筋力や免疫力、視力と言った生物が元々持つ生物由来の能力ね。そして、魔力を持って自らを強化する事を『魔力を巡らす』そう言うの。どこまで強化されるかは、巡らした魔力の質と量、それに魔力を巡らした対象の持つ適正と耐性の高さによって決まるわ。ただ、魔力痛と同じで自らの限界以上の質と量の魔力を巡らしたり、外から取り込んだりした場合は危険よ。運が悪ければ死んでしまうわ。もっと運が悪ければ……精神に変調をきたした状態で体が変化し、通常の魔物とは異なる通常の魔物とは異なる魔力汚染体と呼ばれる魔物へと変化する事になるわ。通常の魔物は……」


 (魔物……大抵のゲームや物語で普通の動物よりも強力な生き物だった気がする。そんなのがこの世界には居るのか? それに、汚染体って明らかに危険な名前だな……)


 姉曰く、どうやら魔物とは一時的に魔力を取り込み強化された状態の生物ではなく、生物的に根本から変化した生物の事で進化の様なもの考えられているらしい。それも時間を掛けた進化ではなく魔力による急速な進化だと。


 基本的に全ての生物は魔力を巡らし、自らを強化する事が可能であり、つまり、全ての生物は魔物となる可能性を持っており、人間も例外では無い。

 そして、生物が魔物へと変化する確定的な条件は、まだ分かっておらず。可能性として……


 「魔力を巡らせた状態で、心身に一定以上の負荷を掛けると魔物へと変化すると考えられているわ。呼び方は、人なら魔者ない魔人。でも、言葉的に紛らわしいから、魔人と呼ばれることが多いわ。ふふふふふ。生物が魔物に変化する可能性として、対人、対生物、対魔物と言った対象と戦ったりする者や、厳しい環境に身を置く者の身体能力の差は、普通の人と比べて大きく異なるわ。下手をすると魔力を巡らしていない状態でも、身体能力に三倍以上開きが起こる事もあるわ」


 (三倍!? 化け物じゃないか!! 日常生活は大丈夫だとは思うが……突発的な状況だとかなり危険な気がするな……ちょっと「ワァッ!!」って、いたずらしただけで、突き飛ばされて……骨折なんてことも……)


 「お姉さま? 魔人になった人の生活は大丈夫なん? 悪いことする気は無くても、物を壊してしまうかもしれへんのんよ? 誰かを傷つけるつもりは無くても傷つけてしまうかもしれへんのよ?」


 「そうね、エイリアス。魔人となった人は、日常の生活では無意識に力を抑えているわ。でもエイリアスあなたの言う通り、とっさの状況では危険ね。でもね。大きな問題になったことは無いわ」


 「よかったんよぉ……魔人になった人も普通に生活出来て」


 「まぁ、優しい子ね。ええ、そうよ、エイリアス。魔人になった人も日常生活に問題は無いわ。ふふふふふ」


 「お姉さまも魔人なん? ん~~」


 (魔物に決まっているだろうっ!! 今朝の我々への所業を忘れたのか!? それに、何より、これだけの知識がある以上、常人とは思えない。あの金属製の杖にしても、詳しく調べたわけじゃないが、あの大きさと長さから考えれば、何の金属かは分からなくても、重さの予測位は付く。魔者だ! 魔者!! 魔人でも魔物でもどちらでもいい、取り敢えず、化け物だ。持たざる化け物……悲しぃ~~~)


 好き放題発言する雪綱に、エイリアスは再び、パッと小さくぷにぷにとした手で自らの口を必死に覆い隠す。不用意な発言が飛び出さないように……雪綱は忘れているがエイリアスはまだ覚えている。お尻がまだひりひりとしている事に。


 「んっ~~んんっ~~~」


 「……」


 「……んっ、はぁはぁはぁ……ふぅ~たえたんよぉ~」


 「……まぁ……いいわ……ええ……いいわよ……疑わしきは罰せよ。でも今は我慢……我慢よ私。エイリアス、私は、魔人よ。私だけではないわ。お母様もお父様も、私たちの一族はみんな魔人よ。それに、私たちの一族に直接仕える者達はみんな魔物化しているわ。でも、動植物が魔物化した場合、その子供も先天的に魔物として生まれて来るのに対し、人の場合は後天的に魔物化する以外の魔物化した事例は少ないわ。魔物化した両親から生まれた子供でも、先天的に魔物化して生まれて来る事は少ない上に記録上でも殆ど無く、魔物化して生まれてきても常人より少し能力が高いだけで、常人と能力的差はあまりないわね。少し鍛えてしまえば無くなるくらいの差よ。それに、魔物化と言っても、その能力には個人差が大きいわ。冠位が異なればなおのことよ」


 (……冠位……小学校で習った、聖徳太子こと厩戸皇子(うまやどのおうじ)の冠位十二階を思い出す言葉だな。それに疑わしきは罰せよって! 私はまだ子供だぞ!! 我慢って心の声が漏れている。……媚だ! 媚を売るんだ幼い私!! それしか我々の……)


 雪綱の思いにエイリアスは、小さな手でエイリアシアの腕を『ギュっ』っと掴み。


 「お姉さま……冠位……魔力? ……じゅうにかい? もう教えてくれるん?」


 「ええ、もちろんよ、エイリアス。でも、エイリアス……あなた、何処で十二階を知ったの?」


 「?? ……エイリアスがそう()()たんよぉ~」


 「そう……まぁ良いわ。とりあえず、エイリアス。冠位魔力の前に、もう少し魔力についてお話をするわね」


 (冠位魔力についてはもう少しお預けか……まぁ、あと少しだろう)


 「いい、エイリアス。今まで説明した魔力の基本性質は、全てある一つの魔力性質を意味しているわ。分かるかしら?」


 (魔力性質……魔力痛に生物強化。そして、急速な進化。強化か?)


 「……強化?」


 「ええ、そうよ。強化……でも、魔力は生物のみならず、全ての物質を強化する性質を持つわ。つまり、生物も物質……自然有機物も無機物も、両方ともに物質と言う枠組みに入るのよ。だから、魔力によって強化が可能なの。そして、魔力は水にも似た性質を持つわ。それも、無重力下での水よ。いい、エイリアス。水は基本的に無重力下だと物体に纏わりつこうとするの。これは、水だけじゃなく液体に分類される状態の物質は、基本的に無重力下だと表面張力の影響で最も安定した姿、球体の状態になろうとするの。球体は、如何なる体積でも、表面積が最も小さくなる形で安定するのよ。……分かる?」


 (しまったわ……さっきから、この子の語彙を越えた内容を話しているわ。それにしても、久しぶりに良く話したわ。……別に私は、ボッチではないわ。ボッチでは。友人は少ないてけど……。それにしても、この子の本当に理解しているような態度に、つい話が進んでしまったわね。それに、この内容は、十歳くらいの内容よね。……この子、本当に理解しているのかしら?)


 「エイリアス? あなた……表面張力の効果を分かっているの?」


 (……表面張力か、確か……液体の表面に働く表面積を小さくしようとする働き……だったような)


 「んっ、分かるんよ。見た目を小さくしようとする働きぃ~」


 「……まぁ、そうね。間違ってはいないわ。とりあえず、エイリアス。魔力は自然界に漂う形で存在し、一定以上の密度があれば様々な物質と結合しようとするわ。その現象を魔化と呼ぶの。魔力を含んだ物質は通常の物質よりも強化され、例え、同じ物質でも魔力と結合すると、元々の物質と比べあらゆる点で性質が強化されているわ。つまり、魔力は、無機物、有機物問わず、その物質そのものを強化する性質があるの。ただ、これは物質そのものだけでなく、物質の形状による性質も強化するわ。これを形状強化と言い、別名『魔力纏い』ともと言うのよ。つまり、刃物のなら刃の切れ味が強化されるという事。もっと正確に言うと刃先の強度や、摩擦力の向上による分子結合に対する切断力の強化ね。他にも縄なら引張強度が強くなるわ。でも、物の硬さを示す剛性も高くなる場合があるから、そこは注意が必要よ」


 (……なんだか物理的な話が出て来たな。おかしいな知っているはずの知識なのに、頭がうまく回らない)


 雪綱の記憶には、うっすらとした記憶の靄が掛かり、知っているはずの知識的な記憶を、再び一から学んでいるような。そんな感覚に陥っていた。


 「うぅぅ~~お姉さまぁ~冠位はまぁ~だ?」


 少し頭を振りかぶりながら、そう質問するエイリアスの目蓋は重しが乗っているかの様に、少し下がり始めていた。


 「今から冠位魔力について説明するから、もう少し頑張りなさい。いい、エイリアス。冠位魔力とは魔力の位を表す言葉で、魔力の位と言うのは、魔力の質を意味し、質とはある種の強さを意味するの。冠位魔力は色の呼び名で位を表し、呼び方は位の低い順から、『一位・黒色級(こくしょくきゅう)』『二位・灰色級(はいしょくきゅう)』『三位・白色級(はくしょくきゅう)』『四位・青色級(しょうしょくきゅう)』『五位・赤色級(せきしょくきゅう)』『六位・緑色級(りょくしょくきゅう)』『七位・藍色級(あいしょくきゅう)』『八位・緋色級(ひしょくきゅう)』『九位・碧色級(へきしょくきゅう)』『十位・黄色級(おうしょくきゅう)』『十一位・橙色級(とうしょくきゅう)』『十二位・紫色級(ししょくきゅう)』と言うのよ。いいかしら?」


 (!? ……色と順位こそ違えど間違いなく冠位十二階に酷似している。それに数の低い数字ほど位が低く、数が大きい数字ほど位が高い点も似ている……それに、緋色は日本古来の色の呼び名だぞ……)


 「エイリアス?」


 無言で考え込む雪綱に引っ張られたエイリアスも無言となり、少し強い力でエイリアシアに揺さぶられて、初めて自らが考え込んでいた事に気が付いた。


 「……おねっ……んっ……何でもないんよぉ。お姉様、もっと、冠位魔力について知りたいんよ。どうして、冠位魔力は色の名前で呼ぶん?」


 「…………いい、エイリアス。魔力は基本的に水にも似た液体の様な形態で空間中に存在する無味無臭かつ無色透明な物質よ。でも、魔力は一定以上の密度になると色を持つわ。そして、色を持った魔力が一定以上の密度に達する(ごと)に、魔力の色が変化し、変化した色にちなんだ名前が付けられるのよ」


 (……密度が増すごとに、魔力の色が変化するという事は、性質やエネルギー量も変化しているという事なのか?……確認しないといけないな……ただ、密度という事は、……圧縮が必要なのか……?)


 「……圧縮ぅ~……!! お姉さま? 魔力は密度を増すと色が変わって質が上がるん? それなら……もし、そうなら……冠位魔力の高い人の体の中で作られる魔力はぁ……始めから圧縮されているん?」


 (……この子……さすが私の弟ね!! この年で、ここまでの事を思考できるなんて‥‥…お仕置きは無し……はつまらないわね。それに、これは別問題よ)


 「そうよぉ~エイリアス~生物の体内で作られた魔力の質は、その生物の持つ冠位魔力によって質が決まるの。そしてそして一度、密度が増した魔力は時間を掛けて減衰し、結合が……繋がりが解けていくのよ。でも、これは体外でのお話。つまり、生物の体の中では魔力の自然減 衰は基本的に起こらないわ」


 「……でも、お姉さま? 魔力の色の変化には密度が必要って教わったんよ? つまり、圧力が必要……人の中はすごい圧力なん?」


 (!? …………この子は……本当に……)


 (……どれ程の圧縮で、魔力の質と色が変化するかは、分からないが……少なくとも人の体の中で、そんな圧力が発生している時点で、それはもう……人間じゃないような気が……)


 「……大丈夫よ。エイリアス。冠位魔力は圧縮する事で色と質が変化するのだけれど、それは圧縮された事によって、魔力元素同士の結び付が強くなり、魔力の冠位が変化するという事よ。でも、魔力を行使する場合は、体の中で作られる魔力の冠位は自動的に自らが作り出せる最大冠位魔力の状態で作られるわ。つまり、魔力の圧縮による魔力調整は必要なく、はじめから自らの生成可能な最大冠位で魔力を作るか、調節した冠位で魔力を作るかは、個人次第という事よ」


 「……お姉さまの冠位は何色なん?」


 「……ふふふふふ、私の冠位は緑色級よ」


 (……冠位・第六位・緑色級……可も無く不可も無く……か。そもそも、魔力がどれ程の力を……エネルギーを持っているかが分からない以上、判断が付かないな……これも、調べないと……)


 「……緑色級は普通なん? それともすごいん?」


 「そうね……緑色級は、エイリアス。あなたが思った通り冠位魔力全十二階位の中で丁度、真ん中の位よ。だから、大したことは無いわ。それに私は魔術師であって、魔法使いじゃないのよ。あくまで、誰でも使える技術・魔術を前提とした技術の研究を行っているのよ」


 「!? ……お姉さまは研究者なん?」


 「ええ、そうよ。だから、エイリアス。あなたにちゃんとした魔術を教えてあげられるのよ」


 「!! ……本当に魔術を教えてくれるん? 他にもお勉強があるぅって言うたりしぃへん?」


 「ふふふふふ、さぁ~エイリアス……魔術のお勉強の時間よ」


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